知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)子どもたちの発明教育に力を入れる韓国政府
―発明教育法の施行―

2017年10月11日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.109)
日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所 副所長 浜岸 広明(特許庁出向者)

韓国政府は、発明教育を国家レベルで体系的に支援し、幼稚園・小中高校教育に反映する「発明教育の活性化および支援に関する法律(以下、「発明教育法」)および同施行令を本年9月15日に施行しました。韓国政府はこれまでも各地域に発明教育センターを設置する等、発明教育に力を入れてきましたが、今回の法制化により発明教育をさらに活性化し、将来を担う子どもたちの創造性の育成を強化しようとしています。本稿では、今般施行された発明教育法の概要について、ご紹介します。

発明教育法の目的

発明教育の目的は、単なる暗記型教育ではなく、様々な知識を有機的に融合・複合する創造的な思考力を育てることにあります。これまで発明活動を促進するための「発明振興法」がありましたが、発明教育を支援するための具体的な内容が十分とはいえませんでした。今般施行された「発明教育法」により、幼稚園・小中高校の教育課程に発明教育を反映し、発明教育を国家レベルで体系的に支援することで、国民の発明知識、探究能力及び創造力を育て、国家と社会の発展に資することを目的としています。

発明教育基本計画・施行計画の策定・施行(第4条)

韓国特許庁の庁長は、教育部など関係中央行政機関と協議した上で、発明教育基本計画を5年ごとに策定することとしました。この基本計画には、(1)発明教育の基本目標と推進方向、(2)発明教育に関わる各機関の協調に関する事項、(3)発明教育専門人材の体系的育成及び支援策、(4)発明教育の内容に関する研究・開発及び普及、(5)発明教育に必要な施設及び装備の拡充・管理に対する支援等が含まれています。
特許庁長および各地域の教育監は、この基本計画の内容と各地域の教育環境を考慮して、年度別の発明教育施行計画を策定・施行することになります。
最初に策定される発明教育基本計画は本年12月31日までに、また施行計画は来年3月1日までに策定することとしています。

発明教育に関する情報体系の構築・運営(第6条)

発明教育に関する情報や資料等を国民に効率的に伝え、発明教育の活性化に必要な政策を効率的に策定・施行するために、特許庁長は、発明教育に関する情報体系を構築・運営することとしています。

児童・生徒による発明活動の促進(第7条)

国および地方自治体は、発明教育の教育課程等の研究開発及び普及に対する支援、発明について優秀な才能を持つ児童・生徒の発掘及び育成に対する支援、発明教育に必要な施設等の拡充・管理に対する支援、発明教育に関わる部活動・展示会・発表会等、発明教育活動及び行事に対する支援など、児童・生徒向けの発明教育を活性化させるため事業を実施できるものとしています。

教員に対する研究機会の提供(第9条)

国および地方自治体は、発明教育に対する教員の専門性強化及び発明教育専門教員の育成のために研修と再教育の機会を提供できることとしています。

発明教育センターの設置・運営(第10条)

韓国特許庁と市・道教育庁などが共同で設置・運営し、児童・生徒向け発明教育の実施を行っている発明教育センター(全国199箇所)の設置・運営、発明教師の研修、教育実績資料の作成・管理等の関連規定について再整備しました。これにより、各学校における発明教育が体系的に運営・管理されることになります。

発明教育開発院の指定・運営(第11条)

発明教育センターの運営支援等、発明教育を効率的に研究開発及び支援するため、発明教育開発院の指定要件を規定しました。発明教育開発院は発明教育課程などの体系的な研究と、教諭の専門性向上にかかわる業務を行うことになります。

産業財産権の専門人材育成支援(第12条)

学校の教育課程に産業財産権を反映したり、産業財産権に関わる学科の設置・運営を支援すること、さらに産業財産権の研究所を大学等に設置することの奨励について定められています。

今般の発明教育法の施行により、国家全体としての発明教育の位置づけや方向性が明確になるとともに、発明教育センター等の運営について予算を配分する等、政府として必要な支援を行っていくための法的な裏づけが出来たと言えます。

なお、発明教育法および施行令の仮訳をジェトロ韓国知財ウェブサイトに掲載しておりますので、是非ご覧ください。

今月の解説者

日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所 副所長 浜岸 広明(特許庁出向者)
98年特許庁入庁。情報処理分野の審査官・審判官、国際課課長補佐、審判課課長補佐、知的財産活用企画調整官等を経て、17年6月より現職。

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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