知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)特許出願からみた最近の日韓ビジネス状況

2014年06月25日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.70)
日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所 副所長 岩谷 一臣

近年の日韓関係の冷え込みにより、日本の対韓投資や旅行者が大幅に減少したとのニュースが連日のように伝えられている。しかし、2013 年の対韓投資は、2012 年を除き、ここ10 年間で最も高い額であり、2014年Q1 も高水準を維持している。また、日本国民の訪韓者も確かに減少してはいるが、ここ数年が特に多く、2008 年ごろの水準に戻っただけということもできる。
このように、一時のいわゆる韓流ブームは過ぎ去ったのであろうが、逆に、地に足の着いたビジネス環境は継続しているといって良いのではないだろうか。そこで、特許出願から見た最近の日韓ビジネス状況を見てみたい。

旺盛な日本企業の対韓国出願

海外からの対韓特許出願は、日本企業によるものが最も多く、リーマンショックによる落ち込みが見られるものの、その後、再び増加に転じております。

海外出願人の対韓特許出願

また、日本企業の対韓特許出願は、2013 年も1 万6 千件水準を維持していると伝えられており、依然として旺盛な対韓特許出願が行われている模様です。しかし、人口規模5000 万人であり、必ずしも内需が好調ではない韓国において、これほど多くの対韓特許出願が行われている原因は、いったいどこにあるのでしょうか?

日本企業が韓国に特許出願をするワケ

日本企業が市場規模としては小さい韓国に旺盛な特許出願を行う理由の一つは、日韓の貿易構造から見て取ることができます。すなわち、よく知られるように、韓国では、日本の部品・素材を輸入し、それを完成品として組み立てる構造が定着しています。そのため、企業・消費者間取引(BtoC)製品の市場規模としては小さくても、、企業間取引(BtoB)を製品としては比較的大きな地位を占めているのです。

韓国の技術貿易収支

また、韓国では、このような貿易構造は、技術貿易収支にも表れております。すなわち、コア技術について、海外企業のライセンスに頼っており、好調な貿易黒字とは裏腹に、赤字がなかなか解消しない状況に陥っております。

韓国の対日貿易赤字

ただし、韓国政府も、部品素材産業における対日貿易赤字ないし対日依存度の高さは、きわめて重要な課題であると認識しており、それらを担う中小・中堅企業の育成に官民あげて取り組んでおります。現に、先の対日貿易赤字を見ると、部品素材産業の赤字幅も減少のきざしをみせており、いつまでも技術の優位性に対する油断は禁物です。いずれにせよ日本企業の対韓ビジネスは、現在においても堅調であり、地に足の着いたビジネス環境が継続しているものと思われます。

今月の解説者

日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所
前副所長 岩谷 一臣(7/1 付けで特許庁に帰任)

どうなる韓国 新・知財最前線は今

本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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