知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)ソウルでMLB開催!模倣品対策や知財に関する啓発活動の取り組みも活発化

2024年04月09日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.187)
ジェトロ・ソウル 副所長 大塚 裕一(特許庁出向者)

韓国特許庁の商標特別司法警察(以下、「商標警察」)は3月17日から21日まで、MLB(メジャーリーグベースボール)開幕戦に向け、MLB関係の模倣品対策を行い、開催地である高尺スカイドーム(ソウル市九老区所在)周辺やオンライン上の商品販売サイトにおいても商標権侵害などの観点で、模倣品の取り締まりや啓発活動を行いました。

1.注目を集めたソウル開催

今回の出場選手である、キム・ハソン選手(サンディエゴ・パドレス)は、試合会場である高尺スカイドームを本拠地とする韓国プロ野球球団のキウム・ヒーローズで活躍した選手です。また、今回の開幕戦は、韓国で初めてのMLB開幕戦という点でも、韓国内でも大きな注目を集めました。同じく出場選手である、大谷翔平選手(LAドジャース)は、日本や米国のみならず、韓国も含めて世界的に人気の高い野球選手です。MLB開幕戦に先立って、エキシビジョンゲームとして、会場本拠地のキウム・ヒーローズ対サンディエゴ・パドレス、LAドジャース、それぞれの試合と、韓国代表チーム対サンディエゴ・パドレス、LAドジャース、それぞれの試合も開催され、本大会を大いに盛り上げました。このように韓国内をはじめ、世界に向けて注目される試合の情報発信がなされることもあり、模倣品対策についても十分な対策が行われました。

2.開催前の対応

商標警察は、開幕戦の開催前から、MLB側からの要請もあり、模倣品対策を進めてきました。2月22日には、ソウル市東大門・崇礼門(南大門)周辺の衣類卸売店(7店舗)を集中取締り(2024年2月6日~7日)、MLBの模倣品を販売したA氏など卸売業者7人を商標法違反の疑いで書類送致したと発表しました。商標警察によると、A氏(61歳、男性)など卸売業者は東大門市場(2か所)や南大門市場(5か所)に拠点を置き、MLBの商標などを入れたジャージや靴下などの模倣品を全国に流通した疑いがあるとのことでした。また、この集中取締りの結果、MLBの6のチームの商標(LAドジャース、NYヤンキースなど)が使用された計4万4,341点、真正品価格1億5,000万ウォン(約1,680万円)相当の模倣品を押収したとのことです。

3.オンラインでのモニタリング

模倣品は、実店舗での販売のみならず、現在ではオンライン上での販売も行われています。商標警察では、これらの対策として、オンライン上でのモニタリングを強化した結果、数多くの模倣品が流通されていることが確認され、プラットフォーム業者と協力して模倣品販売者の投稿やアカウントを削除(366件)するなどの措置を取ったとのことです。

オンライン上での発見された模倣品の一例(3月14日韓国特許庁のプレスリリースより)

オンライン上での発見された模倣品の一例
(3月14日韓国特許庁のプレスリリースより)

4.試合期間中の対応

韓国特許庁は、試合が開催される期間中も、競技場の最寄り駅とその周辺をパトロールするなど取り締まりを強化したり、知的財産を尊重する文化をつくるPRブースを設置したりという対策も発表しました。
特許庁の産業財産保護協力局長は、「今回のように世界で大きく注目を集めるイベントが国内で開かれると、多くのメディアを通じて韓国の環境・生活・文化などが世界各地に紹介されるが、一部の模倣品流通業者の不法行為のため、韓国の国家ブランド価値が毀損(きそん)されることがないよう、模倣品の取り締まりを積極的に続けていく」と述べたということです。

5.まとめ

今回のMLB開幕戦は、国内外から大きな注目を集めるものとなりました。野球ファンが意図せず模倣品の被害に遭うことを防ぎ、また、世界に向けて情報発信されることも念頭に国家としての価値を毀損されないように、韓国特許庁の種々取り組みも行われました。韓国においては、新韓流に関連した世界的なイベントが今後も行われることから、今後もこのような取り組みが推進されますが、消費者側にもより一層の知財マインドが求められます。


今月の解説者

日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所
副所長 大塚 裕一(日本国特許庁知財アタッシェ)
2002年日本国特許庁入庁後、特許審査官・審判官として審査・審判実務や管理職業務に従事。また特許庁 総務課・調整課・審判課での課長補佐、英国ケンブリッジ大学 客員研究員、(国)山口大学大学院技術経営研究科准教授、(独)INPIT 知財人材部長などを経て現職

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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