韓国の貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2023年のGDP成長率は1.4%の低成長。
  • 輸出は半導体市況悪化などで不振、貿易収支は赤字。
  • 対内直接投資は過去最高を記録。対外直接投資は前年比2割減。
  • 日韓貿易は輸出入とも減少。日本の対韓直接投資はサービス業を中心に減少。韓国の対日直接投資は新規法人設立数ベースで過去2番目の高水準。

公開日:2024年7月30日

マクロ経済 
2023年の韓国経済は輸出不振などで低成長、2024年は回復へ

2023年の韓国の実質GDP成長率は1.4%と、前年の2.7%に比べ大幅に低下した。長期でみても、統計が整備された1954年以降、GDP成長率が2%を切った年は6回しかなく、2023年は景気の減速感が強い年となった。韓国経済は輸出依存度が高い構造にあるが、財貨・サービスの輸出の伸び率は、半導体輸出や中国向け輸出が振るわず、前年の3.9%から3.6%に減速した。内需も全般的に振るわなかった。民間最終消費支出の伸びは高金利や物価高などで1.8%と、前年の4.2%に比べ大きく低下した。設備投資の伸びは半導体市況の低迷などの影響で1.1%となった。建設投資の伸びも1.5%にとどまった。

2024年の実質GDP成長率について、韓国銀行(中央銀行)は2023年11月に2.1%、韓国政府は2024年1月に2.2%とする見通しをそれぞれ発表した。いずれも、半導体などの輸出の回復で、実質GDP成長率は2023年よりも高まるとみた。その後、韓国銀行は、輸出が予想以上に回復し、民間消費も徐々に回復していることから、2024年の実質GDP成長率を2.5%に上方修正した新たな経済見通しを2024年5月に発表している。

表1 韓国の需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2021年 2022年 2023年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 4.6 2.7 1.4 0.4 0.6 0.8 0.5
階層レベル2の項目民間最終消費支出 3.7 4.2 1.8 0.5 △ 0.3 0.1 0.4
階層レベル2の項目政府最終消費支出 5.6 4.0 1.3 0.4 △ 2.1 0.3 0.5
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 4.3 △ 0.2 1.4 △ 0.2 0.5 0.5 △ 1.0
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸出 10.8 3.9 3.6 4.2 1.1 1.9 3.9
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸入 10.2 4.2 3.5 3.9 △ 1.8 0.3 1.6

〔注〕四半期データは季節調整済み、前期比。2023年は暫定値。
〔出所〕韓国銀行

貿易 
2023年の輸出は半導体などの不振により前年比減

2023年の輸出は前年比7.5%減の6,322億2,600万ドル、輸入は12.1%減の6,425億7,200万ドルだった。貿易収支は103億4,600万ドルの赤字と、2022年に次いで赤字となった。半導体や電子部品、石油製品などの輸出額が前年比で大幅に減少した。ただし、月別にみると、輸出は2023年9月まで前年同月比で減少が続いた後、10月以降は同増加に転じている。産業通商資源部の方文圭(パン・ムンギュ)長官(当時、2024年1月離任)は2023年の輸出入について、「厳しい環境にもかかわらず、10月に輸出増と貿易黒字を同時に達成し、競合国に比べ輸出の危機を早期に克服した」(2024年1月1日付プレスリリース)と総括した。

2024年の輸出目標について、産業通商資源部では、2023年10月以降に輸出が前年同月比でプラスに転じた勢いを加速させ、過去最高の輸出額の達成を目指すとしている。同部の安德根(アン・ドックン)長官は2024年1月24日、「2024年世界市場戦略会議」を開催し、2024年の輸出目標を前年比10.8%増の7,010億ドルにすることを明らかにした。

2023年の輸出を主要品目別(韓国独自コードのMTI3桁ベース)でみると、半導体(前年比23.7%減)、電子部品(20.2%減)、石油製品(17.3%減)、合成樹脂(18.3%減)など、全体的に大きく減少した。その一方で、自動車(31.1%増)は大幅に増加した。

特に、最大の輸出品目の半導体が前年比減となった大きな要因として、半導体価格の下落や出荷量の減少が続いたことが挙げられる。世界の半導体需要が低迷し、半導体需給が悪化したために在庫が積み上がった。ただし、月別に半導体輸出をみると、2023年10月まで15カ月連続で前年同月比減となったが、11月に増加に転じ、それ以降、増加が続いている。

自動車輸出が前年比で大幅に増加した理由として、主に高価格エコカーの対米輸出拡大戦略が奏功したことが挙げられる。2022年から2023年の自動車輸出増加額の59.3%が対米輸出増によるもので、2023年の自動車輸出総額に占める対米輸出の割合は45.4%に達している。

表2-1 韓国の主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
農林水産物 10,480 10,843 1.7 3.5
鉱産物 69,911 58,659 9.3 △ 16.1
階層レベル2の項目鉱物性燃料 63,212 52,509 8.3 △ 16.9
階層レベル3の項目石油製品 62,875 51,999 8.2 △ 17.3
化学工業製品 106,734 95,823 15.2 △ 10.2
階層レベル2の項目石油化学製品 54,316 45,704 7.2 △ 15.9
階層レベル3の項目合成樹脂 28,078 22,944 3.6 △ 18.3
階層レベル2の項目精密化学製品 43,219 40,885 6.5 △ 5.4
プラスチック・ゴムおよび革製品 15,502 14,643 2.3 △ 5.5
繊維類 12,301 10,915 1.7 △ 11.3
生活用品 8,659 8,583 1.4 △ 0.9
鉄鋼・金属製品 56,259 50,188 7.9 △ 10.8
階層レベル2の項目鉄鋼製品 38,448 35,192 5.6 △ 8.5
機械類 161,030 183,064 29.0 13.7
階層レベル2の項目基礎産業機械 16,842 17,516 2.8 4.0
階層レベル2の項目産業機械 19,434 20,268 3.2 4.3
階層レベル2の項目輸送機械 98,929 119,980 19.0 21.3
階層レベル3の項目自動車 54,067 70,864 11.2 31.1
階層レベル3の項目自動車部品 23,316 22,954 3.6 △ 1.6
電子・電気製品 240,026 196,465 31.1 △ 18.1
階層レベル2の項目産業用電子製品 46,053 36,167 5.7 △ 21.5
階層レベル2の項目電子部品 172,113 137,275 21.7 △ 20.2
階層レベル2の項目電気機器 13,834 15,079 2.4 9.0
階層レベル3の項目半導体 129,229 98,630 15.6 △ 23.7
雑製品 1,147 1,298 0.2 13.1
合計(その他含む) 683,585 632,226 100.0 △ 7.5

〔注〕品目区分は韓国独自コードMTIに依拠。MTI1桁ベース全品目、MTI2桁ベース上位10品目(2023年)、MTI3桁ベース上位5品目(同)を掲載。
〔出所〕韓国貿易協会

表2-2 韓国の主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
農林水産物 50,912 45,955 7.2 △ 9.7
階層レベル2の項目農産物 27,312 24,909 3.9 △ 8.8
鉱産物 247,229 197,010 30.7 △ 20.3
階層レベル2の項目金属鉱物 26,971 23,405 3.6 △ 13.2
階層レベル2の項目鉱物性燃料 218,101 171,695 26.7 △ 21.3
階層レベル3の項目原油 105,964 86,158 13.4 △ 18.7
階層レベル3の項目石油製品 26,711 23,162 3.6 △ 13.3
階層レベル3の項目天然ガス 50,022 36,049 5.6 △ 27.9
化学工業製品 77,055 70,784 11.0 △ 8.1
階層レベル2の項目精密化学製品 49,927 47,436 7.4 △ 5.0
階層レベル3の項目精密化学原料 21,812 22,138 3.4 1.5
プラスチック・ゴムおよび革製品 8,449 7,879 1.2 △ 6.7
繊維類 19,901 18,876 2.9 △ 5.2
生活用品 23,012 21,694 3.4 △ 5.7
鉄鋼・金属製品 48,889 42,858 6.7 △ 12.3
階層レベル2の項目鉄鋼製品 24,947 22,554 3.5 △ 9.6
階層レベル2の項目非鉄金属製品 22,746 19,238 3.0 △ 15.4
機械類 88,602 86,342 13.4 △ 2.6
階層レベル2の項目精密機械 26,237 23,076 3.6 △ 12.0
階層レベル2の項目輸送機械 30,706 32,503 5.1 5.9
電子・電気製品 165,139 149,428 23.3 △ 9.5
階層レベル2の項目産業用電子製品 45,900 41,553 6.5 △ 9.5
階層レベル2の項目電子部品 94,038 83,190 12.9 △ 11.5
階層レベル3の項目半導体 74,786 62,371 9.7 △ 16.6
雑製品 1,955 1,370 0.2 △ 29.9
合計(その他含む) 731,370 642,572 100.0 △ 12.1

〔注〕品目区分は韓国独自コードMTIに依拠。MTI1桁ベース全品目、MTI2桁ベース上位10品目(2023年)、MTI3桁ベース上位5品目(同)を掲載。
〔出所〕韓国貿易協会

2023年の輸出を国・地域別にみると、中国(19.9%減)、台湾(23.0%減)、日本(5.2%減)、ASEAN(12.6%減)と主要アジア諸国・地域向けの輸出がすべて前年比減となった。また、長年、巨額の黒字を計上してきた対中貿易収支が31年ぶりに赤字となった。半導体メモリ市場の不況のほか、中国での生産活動の低迷が要因として挙げられる。一方、米国は前年比5.4%増加し、対米貿易黒字は過去最高額を更新した。主に自動車関連品目が対米輸出を牽引した。韓国は、これまで対中輸出依存の高さが課題となっていたが、2023年は対中輸出と対米輸出が拮抗(きっこう)するなど、従来の輸出構造が転換点を迎えたことが確認できる。なお、湾岸協力会議(GCC)への輸出は前年比14.4%増と2桁増を記録した。自動車や電力用機器、建設・鉱山機器などが輸出を牽引した。

表3 韓国の国・地域別輸出入[通関ベース] (単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2022年 2023年 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
アジア 392,803 335,509 53.1 △ 14.6 337,221 306,340 47.7 △ 9.2
階層レベル2の項目日本 30,606 29,001 4.6 △ 5.2 54,712 47,656 7.4 △ 12.9
階層レベル2の項目中国 155,789 124,818 19.7 △ 19.9 154,576 142,857 22.2 △ 7.6
階層レベル2の項目香港 27,651 25,194 4.0 △ 8.9 1,878 1,832 0.3 △ 2.4
階層レベル2の項目台湾 26,198 20,179 3.2 △ 23.0 28,275 24,371 3.8 △ 13.8
階層レベル2の項目ASEAN 124,889 109,123 17.3 △ 12.6 82,529 78,033 12.1 △ 5.4
階層レベル3の項目シンガポール 20,205 18,752 3.0 △ 7.2 10,348 11,179 1.7 8.0
階層レベル3の項目タイ 8,584 7,548 1.2 △ 12.1 7,877 7,367 1.1 △ 6.5
階層レベル3の項目マレーシア 11,473 9,760 1.5 △ 14.9 15,249 15,237 2.4 △ 0.1
階層レベル3の項目インドネシア 10,216 9,140 1.4 △ 10.5 15,735 12,146 1.9 △ 22.8
階層レベル3の項目フィリピン 12,306 9,009 1.4 △ 26.8 5,178 4,645 0.7 △ 10.3
階層レベル3の項目ベトナム 60,964 53,480 8.5 △ 12.3 26,725 25,942 4.0 △ 2.9
階層レベル2の項目インド 18,870 17,950 2.8 △ 4.9 8,897 6,728 1.0 △ 24.4
北米 117,605 124,131 19.6 5.5 90,324 77,467 12.1 △ 14.2
階層レベル2の項目米国 109,766 115,696 18.3 5.4 81,785 71,272 11.1 △ 12.9
欧州 91,219 92,386 14.6 1.3 96,843 89,075 13.9 △ 8.0
階層レベル2の項目EU27 68,072 68,188 10.8 0.2 68,190 67,863 10.6 △ 0.5
階層レベル3の項目ドイツ 10,068 10,317 1.6 2.5 23,615 23,611 3.7 0.0
階層レベル2の項目英国 6,341 5,958 0.9 △ 6.0 5,775 5,148 0.8 △ 10.9
階層レベル2の項目ロシア 6,328 6,133 1.0 △ 3.1 14,817 8,892 1.4 △ 40.0
中東 17,524 18,798 3.0 7.3 109,459 93,802 14.6 △ 14.3
階層レベル2の項目湾岸協力会議(GCC)諸国 10,260 11,736 1.9 14.4 92,323 79,708 12.4 △ 13.7
階層レベル3の項目サウジアラビア 4,865 5,325 0.8 9.4 41,640 32,763 5.1 △ 21.3
中南米 26,590 24,632 3.9 △ 7.4 32,739 30,154 4.7 △ 7.9
階層レベル2の項目メキシコ 12,654 12,222 1.9 △ 3.4 8,577 7,631 1.2 △ 11.0
階層レベル2の項目ブラジル 4,976 4,344 0.7 △ 12.7 7,930 6,724 1.0 △ 15.2
大洋州 26,629 27,584 4.4 3.6 49,023 36,057 5.6 △ 26.4
階層レベル2の項目オーストラリア 18,753 17,791 2.8 △ 5.1 44,929 32,823 5.1 △ 26.9
アフリカ 11,132 9,115 1.4 △ 18.1 9,323 7,482 1.2 △ 19.7
その他 82 71 0.0 △ 13.0 6,437 2,196 0.3 △ 65.9
合計 683,585 632,226 100.0 △ 7.5 731,370 642,572 100.0 △ 12.1

出所:韓国貿易協会

2023年の輸入を品目別にみると、ほぼすべての主要品目が前年比マイナスとなった。特に半導体(16.6%減)、鉱物性燃料(21.3%減)などが大幅に減少した。後者はエネルギー価格の下落などが要因として挙げられる。

2023年の輸入を国・地域別にみると、アジア(日本12.9%減、中国7.6%減、ASEAN5.4%減)、北米(14.2%減)、欧州(8.0%減)、中東(14.3%減)、中南米(7.9%減)、アフリカ(19.7%減)、とほぼすべての地域・国からの輸入が減少した。輸入シェアで2割を超える中国からの輸入は、最大の輸入品目である半導体が大幅に減少したものの、輸入額2位の精密化学原料と3位の乾電池・蓄電池は増加した。特に、乾電池・蓄電池は前年比47.1%増と大幅に増加した。

通商政策 
グローバルサウス諸国とのFTA締結に注力

韓国は、世界的な自由貿易協定(FTA)拡大の流れに対応すべく、2003年以降FTAを積極的に締結する方針に転じた。FTA締結による経済効果を上げるために、物品分野での関税撤廃のほか、サービス、投資、政府調達、知的財産権、技術の標準化など多様な規定を含んだ包括的な協定となるよう取り組んでいる。2024年4月時点で、59カ国・地域と21のFTAが発効しており、FTA発効済国との貿易額が全貿易額に占める割合は、2023年は輸出75.9%、輸入66.3%、輸出入総額71.1%となっている。

また、近年はアジア・中南米・中東諸国といったグローバルサウス諸国とのFTA締結に向け、積極的に取り組んでいる。2023年の動きをみると、1月1日にインドネシアとの包括的経済連携協定(CEPA)が発効した。同協定は、より確固とした経済協力関係を築くために商品・サービス貿易のほか、投資など関連サービス全般を包括した内容となっている。同月14日には、韓国にとって初のデジタル通商協定となる韓国・シンガポール・デジタルパートナーシップ協定(KSDPA)が発効した。2月には、モンゴルと経済連携協定(EPA)の交渉開始に関する共同声明に署名した。9月に、ASEAN加盟国としては5番目の2国間FTAとなるフィリピンとのFTAに署名した。10月には、エクアドルとの間で戦略的経済協力協定(SECA)の交渉が妥結した。同協定により、品目数ベースで韓国は輸入の96.4%、エクアドルは同92.8%の関税を最終的に撤廃する。特に韓国政府は、最大で40%の自動車関税がSECA発効後15年間で撤廃されることに期待を示している。さらに、同月にアラブ首長国連邦(UAE)とのCEPA交渉が妥結した。韓国とUAEは発効後10年以内に、品目数ベースでそれぞれ92.8%、91.2%の関税を撤廃する。12月にはGCCとのFTA交渉が妥結した。GCC諸国はエンジン車(5~20年)、自動車部品(10~20年)、機械類(即時~20年)、武器類(即時~20年)など、韓国の主力輸出品に課してきた5%の関税を最長20年かけて段階的に撤廃することとなった。韓国政府は、中東諸国との貿易・投資を拡大し、エネルギーや建設分野の他、製造業、医療、コンテンツといった新たな協力分野での拡大を図るともに、エネルギー需給を安定させ、経済連携の強化を図りたい考えだ。

韓国政府は、2024年も引き続き「グローバスサウス協力ベルト(ネットワーク)」を構築し、通商ネットワークを拡大し、「FTA経済領土(全世界のGDPに占めるFTA発効済国のGDPの割合)」を90%水準まで引き上げるとの目標を発表している。

2024年に入ると、1月には、韓国・中米FTAにグアテマラの加入が署名された。3月は、マレーシア・韓国FTA交渉を4年半ぶりに再開することが発表されたほか、韓国・タイEPAの策定に向けた付託条項(TOR)も署名された。5月には、日中韓サミットで2019年以降中断している日中韓FTA交渉の再開が提案された。また中東諸国との初の2国間FTAとなるUAEとのCEPAにも署名した。

対内・対外直接投資 
対内直接投資は3年連続で過去最高を更新

2023年の対内直接投資(申告ベース。以下同じ)は前年比7.5%増の327億1,887万ドルと、3年連続で過去最高を更新した。産業通商資源部では、「世界最大規模の『半導体メガクラスター』造成や国家先端産業育成政策の推進などの先端産業育成に向けた官民の努力が(過去最高額の対内直接投資を)下支えした」「大統領の海外訪問時に誘致した対内直接投資も実績に寄与した」「これらの投資は韓国の輸出拡大のみならず、良質な雇用機会の創出など、韓国経済の活力回復に多方面で寄与した」(2024年1月4日付プレスリリース)と総括している。1点目についてはさらに具体的に、「半導体・二次電池・バイオなどの6大先端産業分野で韓国企業が550兆ウォン規模の投資を進めており、これに関連した先端素材・部品・製造装置の海外からの直接投資が対内直接投資全体を牽引した」(同上)と言及している。なお、2023年までの対内直接投資の累計額は、申告ベースで4,659億1,595万ドル、実行ベースでは申告ベースの62.1%に当たる2,935億7,188万ドルだった。

業種別にみると、製造業は前年比4.5%減の119億1,497万ドルだった。前年比でみると減少したものの、前年の2022年が過去最高で、2023年も過去2番目の高い水準だったことから、製造業の対内直接投資は活発だったとみるべきだろう。製造業の内訳をみると、電気・電子、化学工業が特に多く、これら2業種で製造業全体の64.9%を占めた。電気・電子は過去最高額だった。化学工業は前年比31.6%減だったものの、2022年、2019年に次ぐ過去3番目に高い水準だった。これら業種について、さらに詳細をみると、電気・電子では「二次電池および蓄電池製造業」が、化学工業では「基礎化学物質製造業」 が多かった。他方、サービス業は前年比7.3%増の177億9,203万ドルと、2021年に次ぎ過去2番目に高い水準となった。特に、金融・保険が前年の2倍を超える97億7,289万ドルを記録し、対内直接投資を牽引した。

国・地域別にみると、最も多かったのが米国で、前年比29.4%減の61億2,834万ドルだった。前年に比べ3割近く減少したものの、金額自体は2022年、2019年に次ぐ過去3番目の水準だったことから、活発だったとみるべきであろう。業種別にみると、製造業が全体の56.6%、サービス業が43.4%を占めた。製造業の中では化学工業、電気・電子が、サービス業の中では情報通信が多かった。なお、韓国政府は、2023年4月に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が国賓として訪米したのに合わせ、エアープロダクツ( Air Products)、グリーンツィード(Greene Tweed)など6社(総額19億ドル)の投資申告式を開催した。さらに、同年11月に尹大統領がAPEC首脳会議出席のため訪米した際にも、デュポン( DuPont )など4社(総額1兆5,000億ウォン)の投資申告式を開催した。

米国の次に多かったのはケイマン諸島、次いで、英国、シンガポール、中国の順となった。このうち、英国は前年の約6.2倍の36億449万ドルと急増した。英国からの直接投資を支えたのが電気ガス・水道・環境浄化・建設で、2023年の英国からの直接投資総額の39.2%を、2022年から2023年にかけての直接投資増加額の43.7%をそれぞれ占めた。さらに細かくみると、この業種の直接投資の全量が「発電業」だった。一方、事例をみると、2023年11月に英国のコリオ(Corio)とbpがそれぞれ、洋上風力発電関連で投資を申告している。

シンガポールは前年比16.8%減の27億194万ドルだった。金融・保険業が全体の45.8%を占め、最も多かった。さらに詳細にみると、直接投資の中心は「信託業・集団投資業」「その他金融業」だった。

中国は前年比6.7%増の15億8,049万ドルだった。製造業が全体の82.2%を占め、直接投資の主体となった。さらに詳細にみると、「その他食品製造業」を中心とする食品、「その他化学製品製造業」を中心とする化学工業、「二次電池・蓄電池製造業」を中心とする電気・電子にまとまった規模の投資があった。「二次電池・蓄電池製造業」については、車載電池材料を生産する合弁会社を韓国に設立する動きがみられた。米国のインフレ削減法(IRA)の規定により、中国産重要鉱物を組み込んだ車載電池を搭載した乗用車の場合には税額控除が見込められなくなる半面、米国とFTAを締結している韓国で重要鉱物を抽出・加工すれば税額控除の要件充足に貢献することになった。これを受けて、韓国に生産拠点を設ける中国企業の動きが活発になった。

なお、韓国政府は2024年の対内直接投資額について、「2024年経済政策方向」(2024年1月4日プレスリリース)の中で「過去最大の350億ドルの誘致」との目標を掲げた。その上で、目標達成に向けて、外資誘致専門機関の強化、現金支援(キャッシュ・グラント)予算の大幅拡大などを行うとした。

対外直接投資の5割が北米に集中

対外直接投資(実行ベース、グロス)は2021年、2022年と2年連続で過去最高を更新したが、2023年は前年比22.2%減の633億8,327万ドルと、減少に転じた。前年比減になったことについて、企画財政部では「米国の金利が2001年以降で最も高くなるなど、世界で金利が高止まりした上に、中国の景気鈍化や欧州の地政学的リスクなどが作用した結果と解釈できる」(2024年3月15日付プレスリリース)と総括した。

業種別にみると、最も多かったのが金融・保険業で、全体の40.5%を占めた。次いで、製造業が全体の32.0%を占めた。この2つの業種が対外直接投資の中核をなしている。また、2022年から2023年の減少額が特に大きかった業種も製造業(49億5,547万ドル減)と金融・保険業(47億1,896万ドル減)で、この2業種で、全体の減少額の53.4%を占めた。業種をさらに細かくみると、減少額が特に大きかったのが、製造業では「メモリ用電子集積回路製造業」(46億4,201万ドル減)、金融・保険業では「その他金融投資業」(ベンチャーキャピタルなど。62億1,582万ドル減)で、特定の業種の投資額減少が対外直接投資全体の減少につながった。「メモリ用電子集積回路製造業」は後述する2022年の中国での大型投資の反動減によるところが大きく、「その他金融投資業」は金利高の影響が大きかったと考えられる。

地域別には、北米が対外直接投資全体の49.4%を占め、直接投資が集中した。特に、米国が対外直接投資全体の43.7%を占め、突出して多かった。その米国は、前年比5.7%減の277億1,610万ドルと、前年に比べ減少したものの、直接投資額自体は2022年、2021年に次いで過去3番目に高い水準だったことから、直接投資は比較的活発だったとみるべきである。次いで、対米直接投資を業種別にみると、不動産業が前年比17億3,039万ドル減(同51.3%減)の16億4,431万ドルと、減少額が最も大きかった一方で、製造業は同28億8,620万ドル増(同38.4%増)の104億790万ドルと、3年連続で増加した。製造業をさらに細かくみると、「蓄電池製造業」(37億9,892万ドル、前年比3.41倍)、「メモリ用電子集積回路製造業」(23億4031万ドル、同75.1%増)の増加が顕著で、この2業種で製造業の増加分を大幅に超過した。これら2業種の対米直接投資の増加は、米国国内生産の増強などを目的とした米国の「CHIPSおよび科学法」やIRAに対応すべく、韓国の半導体・車載電池・同材料メーカーが一斉に米国に投資を行っていることを反映している。例えば、サムスン電子はテキサス州に最先端半導体工場を建設中である。投資額は、同社では当初170億ドルと発表していたが、2024年4月時点の各種韓国メディアは400億ドル以上に増える見通しと伝えている。車載電池では、SKオンをはじめ、大手各社が新工場を建設中である。他方、対カナダ直接投資は、前年比44.3%増と、大幅に増加した。業種別にみると、鉱業や「蓄電池製造業」を中心とする製造業が対カナダ直接投資を牽引した。後者については、例えば、LGエナジーソリューション(LG Energy Solution) がステランティス(Stellantis)と合弁で、オンタリオ州で車載電池工場を建設している。

アジアでは、ベトナムが26億3,735万ドル(前年比7.2%減)で、最も多かった。過去の推移を振り返ると、韓国の対ベトナム直接投資は2010年代に入り増加傾向が続き、2019年に46億2,088万ドルでピークを付けた。2020年に29億5,264万ドルに減少したものの、その後も20億ドル台後半で安定的に推移してきた。2023年の対ベトナム直接投資の4分の3は製造業で、その中でも特に、「電子部品・コンピュータ・映像・音響および通信装置製造業」が多かった。具体的な投資事例としては、LGイノテック(LG Innotek)によるスマートフォン用カメラモジュールの工場増設などが挙げられる。ベトナムの次に多かったのがインドネシアだった。前年比伸び率が41.6%と高いのは、2022年が前年比19.4%減と低調だったことの反動によるところも大きい。業種別にみると、製造業と金融・保険業で全体の9割以上を占めた。製造業の中では特に、「その他非鉄金属製錬・精錬および合金製造業」が突出して多かった。具体的な事例をみても、ニッケル精錬関連の投資がみられた。例えば、ポスコホールディングス(POSCO Holdings)はハルマヘラ島にニッケル精錬工場を建設することを発表した。また、車載電池材料メーカーのエコプロ(EcoPro)は、中国・格林美などが出資するインドネシアのニッケル工場に対して、2022年に続き追加出資を行う契約を締結した。これらは、車載電池のサプライチェーン強靭化や米国IRA対応のために、韓国企業各社が車載電池材料の確保に動いたことによる。金融・保険業では、現地の金融機関を買収したり、現地法人に増資したりする動きが相次いだ。

中国は前年比78.1%減の18億6,682万ドルと、2002年(11億6,394万ドル)以降で最も少なかった。また、対外直接投資総額に占める対中直接投資額の割合は2.9%と、1990年(1.9%)以降で最も低く、低調な対中直接投資の状況を象徴するかたちとなった。この比率は最も高かった2003年には39.4%に達していたので、隔世の感がある。なお、前年比78.1%減と、前年の5分の1の水準に激減したのは、2022年の対中直接投資が一時的な要因で増加したことの反動によるところも大きい。2022年は、対中直接投資全体の60.4%に当たる51億5,784万ドルが遼寧省の「メモリ用電子集積回路製造業」に計上されている。これはSKハイニックス(SK hynix)のインテル大連工場買収に伴うものとみられる。SKハイニックスは2020年10月にインテルのNAND型フラッシュメモリ部門を90億ドルで買収することを発表した。買収対象にインテルの大連工場が含まれており、それが2021年から2022年の対中直接投資に反映されたもようである。仮にこの大型M&Aがなければ、2022年の対中直接投資は33億8,236万ドルにとどまり、2023年は前年比44.8%減だったことになる。 次いで、2023年の対中直接投資を業種別にみると、製造業が全体の4分の3を占めた。製造業の内訳をみると業種は分散している中で、「乗用車・その他旅客用自動車製造業」「蓄電池製造業」が比較的多かった。事例をみると、現代自動車グループ(Hyundai Motor Group)は広東省広州市で燃料電池システム生産工場を竣工した。SKオンは江蘇省塩城市で車載電池工場を新設している。

欧州では、ルクセンブルクが最も多く、次いで、アイルランド、ガンジー島、英国の順だった。いずれの国・地域とも、投資の中心はベンチャーキャピタルなどの金融・保険業だった。さらに、英国に次いで直接投資が多かったハンガリーは、「蓄電池製造業」を中心とする製造業が全体の半分強を占めた。具体的な事例としては、エコプロ・グループ各社が共同で、車載電池のコア部品の正極材の工場建設に着手した事例が挙げられる。

中南米では、ブラジルが2011年(11億6,894億ドル)を抜き、過去最高を記録した。ただし、前年比で約11倍に急増したのは、2022年が2021年比83.6%減と急減したことの反動も影響している。業種別には製鉄業を中心とする製造業が投資を牽引した。他方、メキシコは前年比8.5%増だった。業種別には、自動車部品を中心とした製造業が全体の9割弱を占めた。具体的には、ポスコインターナショナル(POSCO INTERNATIONAL)がコアウイラ州で電気自動車(EV)向け駆動モーターコア工場を完工した事例が挙げられる。

表4-1 韓国の業種別対内直接投資[申告ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
業種 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
農・畜・水産・鉱業 1 92 0.3 6,993.8
階層レベル2の項目農・畜・林業 1 72 0.2 5,442.2
階層レベル2の項目漁業 0 0.0
階層レベル2の項目鉱業 20 0.1
製造業 12,479 11,915 36.4 △ 4.5
階層レベル2の項目食品 975 477 1.5 △ 51.1
階層レベル2の項目繊維・織物・衣類 133 3 0.0 △ 97.7
階層レベル2の項目製紙・木材 18 3 0.0 △ 81.1
階層レベル2の項目化学工業 5,366 3,672 11.2 △ 31.6
階層レベル2の項目医薬 161 331 1.0 105.4
階層レベル2の項目非金属鉱物製品 20 92 0.3 361.1
階層レベル2の項目金属・金属加工製品 565 560 1.7 △ 0.8
階層レベル2の項目機械装置・医療精密 1,058 857 2.6 △ 19.0
階層レベル2の項目電気・電子 3,453 4,063 12.4 17.7
階層レベル2の項目輸送用機械 656 1,758 5.4 167.8
階層レベル2の項目その他製造 73 97 0.3 33.5
サービス業 16,577 17,792 54.4 7.3
階層レベル2の項目卸売り・小売り(流通) 3,414 1,798 5.5 △ 47.3
階層レベル2の項目宿泊・飲食店 145 323 1.0 122.2
階層レベル2の項目運輸・倉庫 928 686 2.1 △ 26.1
階層レベル2の項目情報通信 3,572 1,883 5.8 △ 47.3
階層レベル2の項目金融・保険 4,687 9,773 29.9 108.5
階層レベル2の項目不動産 2,479 1,770 5.4 △ 28.6
階層レベル2の項目事業支援・賃貸 18 171 0.5 840.8
階層レベル2の項目研究開発・専門・科学技術 1,236 1,239 3.8 0.3
階層レベル2の項目余暇・スポーツ・娯楽 83 144 0.4 73.0
階層レベル2の項目公共・その他サービス 13 5 0.0 △ 63.7
電気ガス・水道・環境浄化・建設 1,388 2,920 8.9 110.3
階層レベル2の項目電気・ガス 1,092 2,886 8.8 164.3
階層レベル2の項目水道・下水・環境浄化 4 21 0.1 397.4
階層レベル2の項目総合建設 280 10 0.0 △ 96.3
階層レベル2の項目専門職別工事 12 3 0.0 △ 74.2
合計 30,445 32,719 100.0 7.5

〔出所〕韓国産業通商資源部

表4-2 韓国の業種別対外直接投資[実行ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
業種 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
農業・林業・漁業 41 35 0.1 △ 12.9
鉱業 2,415 3,384 5.3 40.1
製造業 25,209 20,254 32.0 △ 19.7
電気・ガス・蒸気・空気調節供給業 3,217 774 1.2 △ 75.9
水道・下水・廃棄物処理・原料再生業 1,265 32 0.1 △ 97.5
建設業 553 512 0.8 △ 7.3
卸売り・小売り 2,617 2,551 4.0 △ 2.5
運輸・倉庫業 733 415 0.7 △ 43.4
宿泊・飲食店業 136 888 1.4 554.1
情報通信業 4,127 1,733 2.7 △ 58.0
金融・保険業 30,378 25,659 40.5 △ 15.5
不動産業 7,388 4,242 6.7 △ 42.6
専門・科学・技術サービス業 2,736 1,786 2.8 △ 34.7
事業施設管理・事業支援・賃貸サービス業 480 791 1.2 64.7
公共行政・国防・社会保障行政 0 0.0
教育サービス業 19 16 0.0 △ 12.6
保健業・社会福祉サービス業 45 187 0.3 317.3
芸術・スポーツ・余暇関連サービス業 132 119 0.2 △ 9.6
協会・団体・修理・その他個人サービス業 19 5 0.0 △ 73.9
世帯内雇用活動・他に分類できない自家消費生産活動 0 0 0.0 △ 38.2
合計 81,509 63,383 100.0 △ 22.2

〔注〕過去に遡及して値が更新されることがある。
〔出所〕韓国輸出入銀行

表5-1 韓国の国・地域別対内直接投資[申告ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
アジア大洋州 7,050 8,639 26.4 22.5
階層レベル2の項目シンガポール 3,248 2,702 8.3 △ 16.8
階層レベル2の項目中国 1,481 1,580 4.8 6.7
階層レベル2の項目日本 1,529 1,305 4.0 △ 14.7
階層レベル2の項目香港 385 1,166 3.6 202.6
階層レベル2の項目オーストラリア 153 722 2.2 371.6
階層レベル2の項目タイ 7 671 2.1 9,247.5
階層レベル2の項目台湾 20 377 1.2 1,802.9
米州 14,546 12,556 38.4 △ 13.7
階層レベル2の項目米国 8,685 6,128 18.7 △ 29.4
階層レベル2の項目ケイマン諸島 4,424 5,590 17.1 26.3
階層レベル2の項目カナダ 508 507 1.5 △ 0.2
欧州 8,476 10,357 31.7 22.2
階層レベル2の項目英国 581 3,604 11.0 520.5
階層レベル2の項目ルクセンブルク 155 1,382 4.2 789.5
階層レベル2の項目フランス 215 1,175 3.6 447.8
階層レベル2の項目オランダ 4,922 1,102 3.4 △ 77.6
階層レベル2の項目マルタ 967 911 2.8 △ 5.8
階層レベル2の項目デンマーク 105 679 2.1 545.6
階層レベル2の項目スペイン 182 434 1.3 138.2
階層レベル2の項目ノルウェー 116 303 0.9 162.0
中東 282 1,158 3.5 310.1
階層レベル2の項目アラブ首長国連邦 201 490 1.5 143.5
階層レベル2の項目サウジアラビア 0 457 1.4 138,508.2
アフリカ 24 9 0.0 △ 61.9
合計 30,445 32,719 100.0 7.5

〔注1〕2023年上位20カ国・地域を掲載。
〔注2〕合計にはその他地域、国際協力機関を含む。
〔出所〕韓国産業通商資源部

表5-2 韓国の国・地域別対外直接投資[実行ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
アジア 20,250 10,665 16.8 △ 47.3
階層レベル2の項目ベトナム 2,843 2,637 4.2 △ 7.2
階層レベル2の項目インドネシア 1,477 2,092 3.3 41.6
階層レベル2の項目中国 8,540 1,867 2.9 △ 78.1
階層レベル2の項目シンガポール 3,058 1,239 2.0 △ 59.5
階層レベル2の項目日本 1,151 677 1.1 △ 41.2
階層レベル2の項目インド 371 453 0.7 22.0
北米 31,892 31,318 49.4 △ 1.8
階層レベル2の項目米国 29,397 27,716 43.7 △ 5.7
階層レベル2の項目カナダ 2,495 3,602 5.7 44.3
欧州 15,665 10,657 16.8 △ 32.0
階層レベル2の項目ルクセンブルク 4,959 4,952 7.8 △ 0.1
階層レベル2の項目アイルランド 929 871 1.4 △ 6.3
階層レベル2の項目ガンジー島 1,589 869 1.4 △ 45.3
階層レベル2の項目英国 1,206 863 1.4 △ 28.4
階層レベル2の項目ハンガリー 1,841 863 1.4 △ 53.2
階層レベル2の項目ドイツ 509 506 0.8 △ 0.6
中南米 11,520 9,412 14.8 △ 18.3
階層レベル2の項目ケイマン諸島 9,475 6,166 9.7 △ 34.9
階層レベル2の項目ブラジル 107 1,178 1.9 998.7
階層レベル2の項目メキシコ 686 744 1.2 8.5
中東 144 132 0.2 △ 8.4
アフリカ 124 338 0.5 173.5
大洋州 1,914 862 1.4 △ 55.0
階層レベル2の項目オーストラリア 1,495 660 1.0 △ 55.8
合計 81,509 63,383 100.0 △ 22.2

〔注1〕2023年上位18カ国・地域を掲載。
〔注2〕過去に遡及して値が更新されることがある。
〔出所〕韓国輸出入銀行

表6 韓国の主な対内直接投資案件(2023年)
企業名 国籍 時期 投資額 概要
格林美 中国 3月 最大 1兆2,100億ウォン(3社合計) SKオンおよびエコプロとの間で、全羅北道セマングムに年産5万トン規模の前駆体合弁工場を建設する内容の投資協定を締結。
エアプロダクツ 米国 4月 n.a. アンモニア・水素の貯蔵・生産施設を構築。
グリーンツイード 米国 4月 n.a. 半導体装置部品(Oリング)の生産施設を新設。
ADEKA 日本 4月 21億円 韓国子会社が先端半導体メモリ向け高誘電材料の生産設備増強を決定。半導体市場の拡大と、微細化・三次元実装化などの技術革新に対応する目的。
ヒルハウスキャピタル シンガポール 6月 4億ドル ファイナンシャル・インベスター(金融機関系投資家)の同社は、コンソーシアムを通じ、車載電池製造のSKオンに出資。
中偉新材料 中国 6月 約1兆 5,000億ウォン(3社合計) ポスコホールディングスおよびポスコフューチャーエムとの間で、二次電池用ニッケル精製と前駆体生産を行う2つの合弁会社を慶尚北道浦項市に設立する契約を締結。
イメリス フランス 6月 n.a. 二次電池導電材用カーボンブラック生産拠点を構築。
ヒルハウス・キャピタル シンガポール 6月 4億ドル ファイナンシャル・インベスター(金融機関系投資家)の同社は、コンソーシアムを通じ、車載電池製造のSKオンに出資。
トゥービット ケイマン諸島 7月 n.a. 仮想通貨取引所のトゥービットが韓国市場の取り込みを狙いソウル市に拠点を設立する計画を発表。
東京応化工業 日本 8月 70億円以上 韓国半導体市場の拡大を受け、製品のさらなる高品質化と供給能力の拡大を目的に、現地法人TOK尖端材料の仁川工場に新検査棟を建設。
コーニング 米国 9月 15億ドル(2028年までの5年間) 折りたたみスマートフォン・先端自動車ディスプレー向けの超薄板ガラスの生産施設を忠清南道で構築
ニトリホールディングス 日本 10月 n.a. アジア地域での出店の一環として11月に韓国1号店をソウル市に開設。今後10年間で200店舗を目標に韓国国内で店舗網を構築する計画。
アマゾン ウェブ サービス 米国 10月 7兆8,500億ウォン(2027年まで) データセンターなどのクラウド・インフラを整備する計画を発表。生成AIなど、クラウド・コンピューティング需要の急増に対応する目的。
トライセンティス 米国 10月 n.a. テストソリューションと品質エンジニアリングの同社がソウル市に韓国支社を開設。韓国市場での事業拡大を目指す。
デュポン 米国 11月 2,000億ウォン以上 韓国政府が発表している世界最大級の「半導体メガクラスター」造成計画に対応すべく、半導体素材・部品の生産工場・研究開発センターを増設。
コリオ 英国 11月 11億6,000万ドル(コリオ、BPの投資額の合計) 釜山市、蔚山市、全羅南道などで合計2.9GW(ギガワット)の洋上風力発電団地8カ所を開発。
BP 英国 11月 朝鮮半島の南海岸地域における洋上風力発電団地に関連した投資を申告。
杭州中泰深冷技術 中国 12月 n.a. ポスコホールディングスとの合弁で、半導体向けなどの高純度希少ガス生産施設を全羅南道に構築することを決定。

〔出所〕韓国産業通商資源部発表、各社発表、報道などから作成

表7 韓国の主な対外直接投資案件(2023年)
企業名 投資国 時期 投資額 概要
エコプロ・グループ ハンガリー 4月 3,827億ウォン 韓国の正極材メーカーとして初の欧州生産拠点を着工。2025年に正極材の量産を開始する予定。
現代自動車グループ、SKオン 米国 4月 50億ドル(両社合計) ジョージア州に車載電池工場を建設することを決定。年産35GWhで、2025年下半期の稼働を目指す。
ポスコホールディングス インドネシア 5月 4億4,100万ドル ハルマヘラ島に年産5万2,000トン(ニッケル含有量ベース)クラスのニッケル中間財工場を建設。2025年生産開始目標。
現代自動車グループ 中国 6月 2030年までに85億元(建設費・運営費含む) 燃料電池システム生産工場「HTWO広州」を竣工。急成長する中国の燃料電池自動車市場の取り込みを狙う。
LGイノテック ベトナム 6月 10億ドル ハイフォン工場を増設し、スマートフォン用カメラモジュール生産拡大する。2025年の量産開始の予定。
LGエナジーソリューションなど インドネシア 8月 98億ドル(コンソーシアム全体) LGエナジーソリューションが主導するコンソーシアムが正極材工場を建設すると発表。ニッケル鉱確保から、精錬、前駆体生産、載電池セル生産に至るサプライチェーンを確保する狙い。
ロッテエナジーマテリアルズ スペイン 8月 5,600億ウォン 年産3万トン規模の車載電池用ハイエンド銅箔生産工場を建設、2025年完工目標。欧州の顧客企業の現地生産要請に対応。
ポスコインターナショナル メキシコ 10月 n.a. コアウイラ州で電気自動車(EV)向け駆動モーターコア工場を完工。製品は北米の自動車メーカーに供給。さらに、2024年に第2工場の建設を開始する予定。
ポスコ 中国 10月 41億2,500万元(全体) 河鋼集団との合弁企業・河鋼浦項の第1工場(河北省唐山市、自動車用亜鉛めっき鋼鈑生産、年産45万トン)竣工を発表。狙いは、中国国内の新エネルギー車(NEV)需要獲得。
新韓銀行 英国 11月 3兆2,000億ウォン(今後5年間) 英国政府と投資協約を締結。英国国内のインフラ、ESG(環境・社会・ガバナンス)関連分野などに投資する予定。
クーパン 英国 12月 5億ドル ファッションやブランド品のラインアップ強化などを目的に、ブランド衣料品通販のファーフェッチ・ホールディングスを買収。

〔出所〕各社発表、報道などから作成

対日関係 
対日貿易は輸出入とも減少

2023年の対日貿易は、輸出が前年比5.2%減の290億62万ドル、輸入が12.9%減の476億5,647万ドルで、輸出入とも減少に転じた。過去の推移を長期でみると、対日輸出・輸入とも2011年をピークに減少に転じた後、2010年代後半以降は、ほぼ横ばいで推移している。一方、この間の韓国の輸出入総額は増加しているため、輸出入総額に占める対日輸出入の割合は減少傾向が続いている。

2023年の対日貿易収支は186億5,585万ドルの赤字だった。対日貿易収支は構造的に赤字が続いているが、2023年の赤字額は前年に比べ54億4,967万ドル減少し、2002年(147億1,305万ドルの赤字)以降で最も少なくなった。

対日輸出を品目別(韓国独自の品目分類のMTI3桁ベース)でみると、石油製品、鉄鋼板、半導体などの輸出が増加した。この要因について、産業通商資源部では、石油製品(さらに細かくみると「自動車揮発油」が最も多い)は「日本政府の燃料油価格激変緩和補助金や観光需要増加」、半導体は「デジタルトランスフォーメーション産業の成長や大規模データセンターの投資拡大などによる需要の拡大」(2024年1月1日付プレスリリース)を挙げている。逆に、農薬および医薬品、合成樹脂などは、対日輸出が減少した。いずれも、前年に大幅に増加したことによる反動が影響したと思われる。例えば、2022年の農薬および医薬品の対日輸出は前年比85.4%増と急増していた。この理由について、産業通商資源部では、「下半期の新型コロナウイルス感染症流行拡大(以下、新型コロナ)に伴う検査キットの輸出増」(2023年1月1日付プレスリリース)と説明していた。2023年はコロナ禍の収束により検査キットの対日輸出が減少したものと考えられる。

対日輸入を品目別(MTI3桁ベース)でみると、輸入は一様に減少している。特に、輸入額1位の半導体、2位の半導体製造装置については、半導体市況悪化の影響を受けたものと思われる。なお、表には記載がないが、2019年後半以降に活発化した「ノージャパン運動」(日本製品不買運動)の影響を受けた消費財の対日輸入をみると、自動車は前年比38.8%増の6億6,026万ドル、ビールは283.3%増の5,552万ドルと、いずれも大幅に回復している。それでも「ノージャパン運動」前の2018年と比べると、自動車は2018年の53.6%、ビールは70.9%の水準にとどまっており、依然、「ノージャパン運動」前の水準には戻っていない。

表8-1 韓国の対日品目別輸出(FOB)(上位10品目)
[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
順位 品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
1 石油製品 5,134 5,261 18.1 2.5
2 鉄鋼板 2,414 2,516 8.7 4.2
3 半導体 1,350 1,408 4.9 4.3
4 金・銀および白金 963 1,032 3.6 7.1
5 農薬および医薬品 1,216 935 3.2 △ 23.2
6 石鹸・歯磨き粉および化粧品 750 807 2.8 7.7
7 合成樹脂 1,012 802 2.8 △ 20.7
8 精密化学原料 1,197 747 2.6 △ 37.6
9 プラスチック製品 678 606 2.1 △ 10.6
10 自動車部品 517 567 2.0 9.6
合計(その他含む) 30,606 29,001 100.0 △ 5.2

〔注〕韓国独自コードのMTI3桁ベースで2023年輸出上位10品目。
〔出所〕韓国貿易協会

表8-2 韓国の対日品目別輸入(CIF)(上位10品目)
[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
順位 品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
1 半導体 7,768 7,371 15.5 △ 5.1
2 半導体製造装置 5,533 4,631 9.7 △ 16.3
3 鉄鋼板 2,968 2,686 5.6 △ 9.5
4 プラスチック製品 2,082 1,753 3.7 △ 15.8
5 合金鉄・銑鉄およびくず鉄 1,720 1,226 2.6 △ 28.7
6 基礎留分 1,337 1,181 2.5 △ 11.7
7 計測制御分析器 1,196 1,066 2.2 △ 10.9
8 農薬および医薬品 1,140 1,065 2.2 △ 6.5
9 精密化学原料 1,103 953 2.0 △ 13.6
10 電子応用機器 886 922 1.9 4.1
合計(その他含む) 54,712 47,656 100.0 △ 12.9

〔注〕韓国独自コードのMTI3桁ベースで2023年輸入上位10品目。
〔出所〕韓国貿易協会

半導体関連の対韓直接投資が継続

2023年の日本の対韓直接投資(申告ベース)は、前年比14.7%減の13億451万ドルだった。内訳は、製造業が投資総額の49.1%、サービス業が同50.5%だった。製造業の中では化学工業が同17.8%と圧倒的に多く、サービス業では情報通信(19.2%)、卸売り・小売り(同10.5%)が多かった。前年比をみると、製造業が7.4%減、サービス業が21.3%減だった。サービス業の中では、特に金融・保険(54.5%減)、情報通信(40.5%減)が大幅減となった。

具体的な投資事例をみると、化学工業では韓国の半導体生産の拡大を受け、半導体向け素材などの生産能力を増強する事例が多かった。ADEKA(先端半導体メモリ向け高誘電材料の生産設備増強)、東京応化工業(製品の高品質化・供給能力拡大を目的とする新検査棟の建設)、日産化学〔極端紫外線(Extreme Ultraviolet:EUV)材料の供給力強化のため工場を新設〕などが挙げられる。また、車載電池材料のセパレータ事業を強化する動きとして、旭化成(セパレータの塗工能力増強の決定)、ダブル・スコープ〔子会社のダブル・スコープ忠州工場(W-SCOPE CHUNGJU PLANT)への出資比率引き上げ〕といった事例もみられた。

サービス業では、K Villageが2023年3月、スキンケアECや美容情報サイトを運営するカンナムドールを買収した。また、ニトリホールディングスが2023年11月に韓国1号店を開設した。同社では10年間で200店舗の出店を目指している。

他方、2023年の韓国の対日直接投資(実行ベース)は、前年比41.2%減の6億7,653万ドルと、2016年(3億3,163万ドル)以来の低い水準だった。ただし、新規法人数は266社と、2017年(268社)に次いで過去2番目に多かった。2023年は、大型投資はなかったものの、比較的規模の小さい直接投資は活発だったといえる。業種別では、金融・保険業(韓国の対日直接投資額の27.4%)、卸売・小売業(19.7%)、不動産業(15.4%)の順で多く、製造業は7.8%にとどまった。

具体的な投資事例をみると、不動産に関連した分野では、2023年6月にハンファ生命(Hanwha Life Insurance)が日本に不動産投資法人を設立した。また、ハンファソリューション(Hanwha Solutions)は同年12月、北海道ニセコにホテル「ムアニセコ」をオープンした。さらに、ゴルフサービスを運営するショーゴルフ(SHOW GOLF)は同月、さつまゴルフリゾートを買収した。

また、日本における韓国食品「Kフード」人気を受けて、韓国の外食チェーンの日本進出が相次いでいる。例えば、カフェチェーン「ハーリス(HOLLYS)」を運営するKGハーリスF&B(KG HOLLYS F&B)は、日本での店舗展開のため2023年11月に日本法人を設立した。

さらに、韓国のスタートアップの日本進出も相次いでいる。例えば、機械学習データ自動化プラットフォーム事業を行うシュパーブAI(Superb AI)は2023年4月に、生成AI(人工知能)サービス開発のリートンテクノロジーズ(Wrtn Technologies)は11月に、それぞれ日本法人を設立している。

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2021年 2022年 2023年
実質GDP成長率 (%) 4.6 2.7 1.4
1人当たりGDP 米ドル 3万5,125 3万2,394 3万3,192
消費者物価上昇率 (%) 2.5 5.1 3.6
失業率 (%) 3.7 2.9 2.7
貿易収支 (100万米ドル) 75,731 15,620 34,092
経常収支 (100万米ドル) 85,228 25,829 35,488
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 457,169 417,280 414,004
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 630,694 673,296 672,548
為替レート (1米ドルにつき、韓国ウォン、期中平均) 1,143.95 1,291.45 1,305.66


注:
1人当たりGDP:2023年分は推計
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
外貨準備高は金を含む。
出所:
消費者物価上昇率、失業率:統計庁
実質GDP成長率、貿易収支、経常収支、対外債務残高:韓国銀行
消費者物価上昇率、1人当たりGDP、外貨準備高、為替レート:IMF