韓国の貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2024年のGDP成長率は2.0%に回復。
  • 輸出が回復し、貿易収支は3年ぶりに黒字に。
  • 対内直接投資は日本や中国を中心に増加し、過去最高を記録。
  • 対外直接投資はほぼ前年並み。3分の1以上が米国向け。
  • 日韓貿易は前年並み。日本からの直接投資は過去最高を記録、対日直接投資は4年連続で減少。

公開日:2025年7月3日

マクロ経済 
2024年のGDP成長率は回復、2025年は厳しい見通し

2024年の韓国の実質GDP成長率は2.0%と、前年の1.6%から回復した。需要項目別にみると、最大の牽引役は輸出で、前年比6.8%増を記録した。輸出から輸入を控除した純輸出の寄与度は1.7%と、実質GDP成長分の9割弱を占めた。一方で内需は伸び悩んだ。民間最終消費支出は1.1%増と新型コロナ禍の2020年(4.6%減)以来の低い伸びにとどまった。物価高などが消費マインドを冷やした。また、建設投資は3.3%減で、GDPを押し下げた。地方を中心に新築住宅の取引が停滞し、完成後も売れずに販売活動を続ける「完成在庫」住宅が積み上がったこと、資材価格や人件費などの建設費用が上昇したことが影響した。

2025年の実質GDP成長率については、厳しい見方が強まっている。韓国銀行(中央銀行)発表の2025年の実質GDP成長率見通しをみると、2024年2月発表時には2.3%だったものが、その後、2.1%(2024年5月、8月)、1.9%(2024年11月)、1.5%(2025年2月)、0.8%(2025年5月)と下方修正が続いた。特に、2024年11月から2025年5月の発表にかけて、大幅に引き下げられた。厳しい見方が強まった理由には国内要因と海外要因がある。国内要因としては、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領(当時)が2024年12月3日に非常戒厳を宣布したことに端を発する政治的混乱により、内需が冷え込んだことが挙げられる。結局、尹大統領は罷免され、2025年6月3日の大統領選挙で進歩(革新)系「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補が勝利し、新大統領に就任した。他方、海外要因としては、最大の輸出先の中国の景気減速や、2位の輸出先の米国の関税政策見直しなどが挙げられる。

表1 韓国の需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2022年 2023年 2024年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 2.7 1.6 2.0 1.2 △ 0.2 0.1 0.1
階層レベル2の項目民間最終消費支出 4.2 2.0 1.1 0.5 0.0 0.4 0.2
階層レベル2の項目政府最終消費支出 4.0 1.9 2.1 0.9 0.8 0.9 0.4
階層レベル2の項目総固定資本形成 △ 0.2 △ 0.2 △ 0.8 2.2 △ 1.9 △ 0.1 △ 1.4
階層レベル2の項目財・サービスの輸出 3.9 3.4 6.8 1.3 1.5 0.0 0.6
階層レベル2の項目財・サービスの輸入 4.2 3.0 2.5 △ 0.3 1.6 1.3 0.2

〔注〕四半期データは季節調整済み・前期比。2024年は暫定値。
〔出所〕韓国銀行

貿易 
輸出が回復し、貿易収支は3年ぶりに黒字に

2024年の輸出(通関ベース、以下同様)は前年比8.1%増の6,836億949万ドルと、2022年(6,835億8,476万ドル)を上回り、2年ぶりに過去最高を更新した。他方、輸入は1.7%減の6,317億6,721万ドルだった。貿易収支は2021年以来3年ぶりに518億4,228万ドルの黒字を記録した。産業通商資源部は2025年1月1日付プレスリリースで、輸出について「2022年とは異なり、原油価格が落ち着く中で、半導体などのIT品目、船舶、自動車などの主力品目、バイオヘルスや農水産食品、化粧品などの消費財が幅広く増加し、過去最高の輸出実績を記録した。2022年に比べ、内容面でも良好だった」と総括した。一方、輸入が減少した主要因として「エネルギー関連品目の輸入減」を挙げた。

ついで、2024年の輸出を主要品目別(韓国独自コードのMTI3桁ベース)にみると、最大の輸出品目の半導体が前年比43.9%増と大幅に増加した。寄与率を計算すると84.2%となり、2024年の輸出増の大部分が半導体のそれによるものであることが分かる。産業通商資源部は前述のプレスリリースの中で、「半導体の輸出は2023年11月以降、増加が続いている。特に、2024年第4四半期(10~12月)は、汎用メモリ価格の下落にもかかわらず、DDR5・HBM(高帯域幅メモリ)などの高付加価値製品を中心に輸出が増加した」と述べた。半導体に次ぐ自動車は前年比0.1%減と微減にとどまった。同部ではその理由について「2024年の下半期(7~12月)に主要完成車・部品メーカーのストライキなどにより、一部で生産に支障を来した影響」と述べている。さらに、同部では、船舶海洋構造物・部品は「船価が高かった2021年に受注したLNG運搬船、大型コンテナ船などの高付加価値船の輸出が本格化したため、2桁で増加」、合成樹脂など石油化学製品は「下半期の原油価格下落に伴う輸出単価下落にもかかわらず、輸出数量が増加した」としている。

表2-1 韓国の主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
農林水産物 10,843 11,664 1.7 7.6
鉱産物 58,659 55,847 8.2 △ 4.8
階層レベル2の項目鉱物性燃料 52,509 50,807 7.4 △ 3.2
階層レベル3の項目石油製品 51,999 50,326 7.4 △ 3.2
化学工業製品 95,823 94,716 13.9 △ 1.2
階層レベル2の項目石油化学製品 45,704 47,988 7.0 5.0
階層レベル3の項目合成樹脂 22,944 23,590 3.5 2.8
階層レベル2の項目精密化学製品 40,885 37,666 5.5 △ 7.9
プラスチック・ゴムおよび革製品 14,643 15,368 2.2 5.0
繊維類 10,915 10,463 1.5 △ 4.1
生活用品 8,583 9,658 1.4 12.5
鉄鋼・金属製品 50,188 48,731 7.1 △ 2.9
階層レベル2の項目鉄鋼製品 35,192 33,282 4.9 △ 5.4
機械類 183,064 185,852 27.2 1.5
階層レベル2の項目基礎産業機械 17,516 17,090 2.5 △ 2.4
階層レベル2の項目産業機械 20,268 18,047 2.6 △ 11.0
階層レベル2の項目輸送機械 119,980 123,239 18.0 2.7
階層レベル3の項目自動車 70,864 70,782 10.4 △ 0.1
階層レベル3の項目船舶海洋構造物・部品 21,792 25,636 3.8 17.6
電子・電気製品 196,465 245,948 36.0 25.2
階層レベル2の項目産業用電子製品 36,167 43,099 6.3 19.2
階層レベル2の項目電子部品 137,275 179,306 26.2 30.6
階層レベル3の項目半導体 98,630 141,920 20.8 43.9
階層レベル2の項目電気機器 15,079 15,569 2.3 3.3
雑製品 3,043 5,362 0.8 76.2
合計(その他含む) 632,226 683,609 100.0 8.1

〔注〕品目区分は韓国独自コードMTIに依拠。MTI1桁ベース全品目、2桁ベース上位10品目、3桁ベース上位5品目を掲載(いずれも2024年)。
〔出所〕韓国貿易協会

表2-2 韓国の主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
農林水産物 45,955 44,705 7.1 △ 2.7
階層レベル2の項目農産物 24,909 24,300 3.8 △ 2.4
鉱産物 197,010 188,722 29.9 △ 4.2
階層レベル2の項目金属鉱物 23,405 24,147 3.8 3.2
階層レベル2の項目鉱物性燃料 171,695 162,808 25.8 △ 5.2
階層レベル3の項目原油 86,158 85,334 13.5 △ 1.0
階層レベル3の項目石油製品 23,162 25,057 4.0 8.2
階層レベル3の項目天然ガス 36,049 29,272 4.6 △ 18.8
化学工業製品 70,784 61,327 9.7 △ 13.4
階層レベル2の項目精密化学製品 47,436 37,702 6.0 △ 20.5
プラスチック・ゴムおよび革製品 7,879 8,194 1.3 4.0
繊維類 18,876 19,261 3.0 2.0
生活用品 21,695 21,595 3.4 △ 0.5
鉄鋼金属製品 42,858 42,020 6.7 △ 2.0
階層レベル2の項目鉄鋼製品 22,554 21,118 3.3 △ 6.4
階層レベル2の項目非鉄金属製品 19,238 19,760 3.1 2.7
機械類 86,342 87,893 13.9 1.8
階層レベル2の項目精密機械 23,076 24,776 3.9 7.4
階層レベル3の項目半導体製造装置 20,904 22,261 3.5 6.5
階層レベル2の項目輸送機械 32,503 32,239 5.1 △ 0.8
電子・電気製品 149,428 156,231 24.7 4.6
階層レベル2の項目産業用電子製品 41,553 41,058 6.5 △ 1.2
階層レベル2の項目電子部品 83,190 89,675 14.2 7.8
階層レベル3の項目半導体 62,371 72,216 11.4 15.8
雑製品 1,746 1,821 0.3 4.2
合計(その他含む) 642,572 631,767 100.0 △ 1.7

〔注〕品目区分は韓国独自コードMTIに依拠。MTI1桁ベース全品目、2桁ベース上位10品目、3桁ベース上位5品目を掲載(いずれも2024年)。
〔出所〕韓国貿易協会

2024年の輸出を国・地域別にみると、最大の輸出先の中国、2位の米国とも増加を記録した。中国は2022年、2023年と前年比減が続いていたが、3年ぶりの増加となった。中国は半導体、石油化学などの主要品目の輸出が堅調だった。ただし、最も多かった2021年(1,629億1,297万ドル)と比べると1割以上減少している。他方、米国は、2018年以降7年連続で過去最高を更新するなど、増加基調が続いている。対米輸出を品目別にみると、多い順に、自動車、半導体、自動車部品となるが、このうち、特に、半導体が前年比116.2%増と2倍以上に増加し、対米輸出増加分の半分弱を占めたのが目立った。半導体の輸出増加は、米国のビッグテック企業のデータセンター投資の拡大などを受けたものである。また、最大の輸出品目の自動車も前年比7.9%増と好調だった。

表3 韓国の国・地域別輸出入(通関ベース)(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
アジア 335,509 373,811 54.7 11.4 306,340 307,730 48.7 0.5
階層レベル2の項目日本 29,001 29,607 4.3 2.1 47,656 47,594 7.5 △ 0.1
階層レベル2の項目中国 124,818 133,011 19.5 6.6 142,857 139,878 22.1 △ 2.1
階層レベル2の項目香港 25,194 35,022 5.1 39.0 1,832 2,256 0.4 23.2
階層レベル2の項目台湾 20,179 33,969 5.0 68.3 24,371 30,225 4.8 24.0
階層レベル2の項目ASEAN 109,123 114,011 16.7 4.5 78,033 78,828 12.5 1.0
階層レベル3の項目シンガポール 18,752 18,224 2.7 △ 2.8 11,179 10,560 1.7 △ 5.5
階層レベル3の項目タイ 7,548 7,678 1.1 1.7 7,367 7,174 1.1 △ 2.6
階層レベル3の項目マレーシア 9,760 10,443 1.5 7.0 15,237 13,981 2.2 △ 8.2
階層レベル3の項目インドネシア 9,140 7,948 1.2 △ 13.0 12,146 12,564 2.0 3.4
階層レベル3の項目フィリピン 9,009 10,247 1.5 13.7 4,645 4,431 0.7 △ 4.6
階層レベル3の項目ベトナム 53,480 58,323 8.5 9.1 25,942 28,444 4.5 9.6
階層レベル2の項目インド 17,950 18,696 2.7 4.2 6,728 6,431 1.0 △ 4.4
北米 124,131 138,113 20.2 11.3 77,467 78,985 12.5 2.0
階層レベル2の項目米国 115,696 127,761 18.7 10.4 71,272 72,132 11.4 1.2
欧州 92,386 91,285 13.4 △ 1.2 89,075 83,443 13.2 △ 6.3
階層レベル2の項目EU27 68,188 68,080 10.0 △ 0.2 67,863 64,749 10.2 △ 4.6
階層レベル3の項目ドイツ 10,317 9,037 1.3 △ 12.4 23,611 22,292 3.5 △ 5.6
階層レベル2の項目英国 5,958 6,642 1.0 11.5 5,148 4,572 0.7 △ 11.2
階層レベル2の項目ロシア 6,133 4,529 0.7 △ 26.2 8,892 6,873 1.1 △ 22.7
中東 18,798 19,683 2.9 4.7 93,802 93,158 14.7 △ 0.7
階層レベル2の項目GCC 11,736 13,051 1.9 11.2 79,708 78,496 12.4 △ 1.5
階層レベル3の項目サウジアラビア 5,325 5,235 0.8 △ 1.7 32,763 31,450 5.0 △ 4.0
中南米 24,632 29,008 4.2 17.8 30,154 27,741 4.4 △ 8.0
階層レベル2の項目メキシコ 12,222 13,604 2.0 11.3 7,631 7,514 1.2 △ 1.5
階層レベル2の項目ブラジル 4,344 5,251 0.8 20.9 6,724 7,299 1.2 8.5
大洋州 27,584 22,211 3.2 △ 19.5 36,057 32,946 5.2 △ 8.6
階層レベル2の項目オーストラリア 17,791 15,598 2.3 △ 12.3 32,823 29,955 4.7 △ 8.7
アフリカ 9,115 9,428 1.4 3.4 7,482 7,315 1.2 △ 2.2
その他 71 71 0.0 △ 0.9 2,196 450 0.1 △ 79.5
合計 632,226 683,609 100.0 8.1 642,572 631,767 100.0 △ 1.7

出所:韓国貿易協会

2024年の輸入を品目別にみると、天然ガスなどの鉱物性燃料や精密化学製品などが減少し、輸入額を押し下げた。このうち、天然ガスは輸入数量が増加していることから、輸入額の減少は単価の低下によるものといえる。精密化学製品について詳細にみると、「その他精密化学原料」の輸入額が44.1%減となり、精密化学製品全体の減少の主要因となった。他方、「その他精密化学原料」の輸入数量は2.1%増であることから、輸入額の減少は単価下落によるものといえる。「その他精密化学原料」は主に二次電池材料を指す。世界的な電気自動車(EV)需要の減速により、リチウムなど電池材料価格が下落したことが影響した。

2024年の輸入を国・地域別にみると、最大の輸入元の中国は前年比2.1%減だった。品目別にみると、精密化学原料が68億804万ドル減少し、対中輸入額減少の主要因となった。2位の米国は1.2%増だった。特に、最大品目の原油が輸入数量の増加に伴い19億3,185万ドル増加し、対米輸入増を牽引した。

2025年の輸出入について、韓国政府は2025年1月2日に発表した「2025年 経済政策方向」の中で次のような見方を示した。まず、輸出については、(1)高性能半導体や造船などは輸出が堅調に推移するものの、汎用半導体や石油化学といった競争の激化が予想される品目は輸出鈍化が見込まれる、(2)米国トランプ政権の通商政策の変化などによるリスクが残存する、とした。その上で、2025年の輸出額は前年比1.5%増と見込んだ。輸入については、韓国国内の消費や設備投資の緩やかな回復で増加に転じるものの、原油価格の下落などで増加率は限定的とした。その上で、同年の輸入額は前年比1.6%増と見込んだ。また、1月7日に行われた「2024年輸出・外国人投資実績および2025年展望ブリーフィング」で、鄭仁教(チョン・インギョ)通商交渉本部長(当時、以下同様)は「2024年の輸出額は世界5位の7,000億ドルを達成できる見通しだ」と述べた。

通商政策 
グローバルサウス諸国とのFTA締結を拡大、関連政策を推進

韓国は世界的な自由貿易協定(FTA)拡大の流れに対応し、安定的な海外市場を確保するために、諸外国とFTAを積極的に締結してきた。2025年6月現在、59カ国との間で22件のFTAが発効済みである。尹前政権もFTAを通じて輸出を拡大し、経済成長に寄与することを目標にし、ASEAN諸国、中東諸国、中南米諸国などとのFTA締結を積極的に推進した。2024年第4四半期の韓国のFTA締結国との貿易額が貿易総額に占める割合は、輸出86.3%、輸入85.4%とともに8割を超えた。

2024年の動きをみると、1月に「グアテマラの韓国・中米FTA加入議定書」が正式に署名された。これで、同FTAに加入する中米諸国は6カ国となった。グアテマラは中米諸国のなかでも潜在成長率が高い国といわれており、韓国は両国間の貿易、投資、人的交流がより一層強化されることを期待している。5月にはソウル特別市で第9回日中韓サミットが開催され、日中韓FTAの締結交渉の加速を含む「経済協力と貿易」など、6つの主要分野の協力を盛り込んだ共同宣言が発出された。また、同月に韓国がデジタル経済パートナーシップ協定(DEPA)に加入した。DEPAはチリ、ニュージーランド、シンガポールの3カ国間で署名、運用を開始したデジタル分野特化型の協定で、韓国は2021年9月に同協定への加入を申請していた。6月には、尹前大統領がアフリカ大陸諸国で初となるタンザニアと経済連携協定(EPA)の交渉開始を宣言し、同月にアラブ首長国連邦(UAE)と正式にCEPA(包括的経済連携協定)を締結した。また、11月には、鄭通商交渉本部長とジョージア経済・持続的発展省のゲナディ・アルベラゼ(Genadi Arveladze)次官が韓国・ジョージアEPA交渉妥結をソウル特別市で宣言した。12月にはフィリピンとのFTAが発効した。韓国はフィリピンからの主要輸入品目であるバナナの関税を段階的に削減し、5年で撤廃するとした。一方で、フィリピンは自動車を含む韓国製工業製品9,747品目の関税をFTA発効後に即時撤廃した。

2024年の関連政策動向では、2月に産業通商資源部がFTA支援事業を発表し、8つの中央政府部門ならびに21の関連企業が共同で「2024年度FTA支援事業」を行うとした。具体的には、輸出時などにFTA活用を検討する中堅中小企業に1対1形式のコンサルティングを提供するとしたほか、専用教育プログラムの充実などを提示した。8月には「第44回国政懸案関係長官会議」を開催し、過去2年間の通商政策の成果や今後の通商政策の方向性を盛り込んだロードマップを発表した。このロードマップでは、「世界第1位のFTA経済ラウンドの確保」「重要品目の供給網安定および経済安全保障強化」「主要4カ国との戦略的協力および通商懸案の集中的管理」「グローバルサウスと経済協力の裾野拡大」を柱とする政策推進課題を掲げ、主要国・地域とのFTA締結拡大に意欲を示した。

対内・対外直接投資 
対内直接投資は4年連続で過去最高を更新

2024年の対内直接投資額(申告ベース、以下同様)は前年比5.7%増の345億7,018万ドルと、4年連続で過去最高を更新した。産業通商資源部は「米国大統領選挙などの主要国の政治的変化、地政学的対立など、不確実性が残る内外の環境の中で、過去最高の実績を達成した」「世界の投資家が、最近の韓国国内情勢にもかかわらず、韓国経済のファンダメンタルズに対して引き続き信頼を寄せていることを示した」(2025年1月7日付プレスリリース)と、高く評価した。なお、2024年末までの対内直接投資累計額は、申告ベースでは5,004億8,140万ドル、実行ベースでは申告ベースの61.6%に当たる3,082億8,938万ドルだった。

業種別にみると、製造業が前年比21.6%増の144億9,282万ドルと大幅に増加し、対内直接投資を牽引した。内訳をみると、製造業の中でも機械装置・医療精密と電気・電子がそれぞれ10億ドル以上増加した。さらに詳細にみると、機械装置・医療精密は、半導体製造装置やロボット製造業などを含む「特殊目的用機械」が特に多かった。電気・電子は、二次電池関連を中心とした「一次電池・蓄電池」と「半導体」が多かった。つまり、韓国での生産増加が予想されている半導体や二次電池関連の投資が活発だったといえる。他方、サービス業は前年比0.3%増と横ばいだった。内訳をみると、不動産の伸び率が高かったが、これは2023年に投資が落ち込んだことによる反動といえる。金融・保険は14億ドル以上減少したものの、過去最高を記録した2023年に続く過去2番目の水準になるなど、投資は引き続き活発だった。

表4-1 韓国の業種別対内直接投資[申告ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
業種 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
農・畜・水産・鉱業 92 70 0.2 △ 24.3
階層レベル2の項目農・畜・林業 72 70 0.2 △ 3.1
階層レベル2の項目漁業 0 0 0.0 △ 100.0
階層レベル2の項目鉱業 20 0 0.0 △ 100.0
製造業 11,915 14,493 41.9 21.6
階層レベル2の項目食品 477 180 0.5 △ 62.3
階層レベル2の項目繊維・織物・衣類 3 432 1.3 14,238.1
階層レベル2の項目製紙・木材 3 177 0.5 5,064.5
階層レベル2の項目化学工業 3,672 2,911 8.4 △ 20.7
階層レベル2の項目医薬 331 707 2.0 113.7
階層レベル2の項目非金属鉱物製品 92 633 1.8 585.2
階層レベル2の項目金属・金属加工製品 560 737 2.1 31.6
階層レベル2の項目機械装置・医療精密 857 2,350 6.8 174.0
階層レベル2の項目電気・電子 4,063 5,256 15.2 29.4
階層レベル2の項目輸送用機械 1,758 1,001 2.9 △ 43.1
階層レベル2の項目その他製造 97 108 0.3 11.1
サービス業 17,775 17,832 51.6 0.3
階層レベル2の項目卸売り・小売り(流通) 1,780 1,711 4.9 △ 3.9
階層レベル2の項目宿泊・飲食店 323 174 0.5 △ 46.2
階層レベル2の項目運輸・倉庫 686 602 1.7 △ 12.1
階層レベル2の項目情報通信 1,883 2,143 6.2 13.8
階層レベル2の項目金融・保険 9,773 8,331 24.1 △ 14.8
階層レベル2の項目不動産 1,770 2,968 8.6 67.6
階層レベル2の項目事業支援・賃貸 171 120 0.3 △ 30.0
階層レベル2の項目研究開発・専門・科学技術 1,239 1,374 4.0 10.9
階層レベル2の項目余暇・スポーツ・娯楽 144 257 0.7 78.1
階層レベル2の項目公共・その他サービス 5 153 0.4 3,103.6
電気ガス・水道・環境浄化・建設 2,932 2,176 6.3 △ 25.8
階層レベル2の項目電気・ガス 2,898 1,243 3.6 △ 57.1
階層レベル2の項目水道・下水・環境浄化 21 844 2.4 3,919.6
階層レベル2の項目総合建設 10 44 0.1 325.4
階層レベル2の項目専門職別工事 3 45 0.1 1,341.8
合計 32,714 34,570 100.0 5.7

〔注1〕「-」は、数値がないことを示す。
〔注2〕統計値が過去に遡及して更新されることがある点に留意が必要。
〔出所〕産業通商資源部

表4-2 韓国の業種別対外直接投資[実行ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
業種 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
農業・林業・漁業 35 26 0.0 △ 27.2
鉱業 3,505 3,904 6.1 11.4
製造業 20,619 16,170 25.3 △ 21.6
電気・ガス・蒸気・空気調節供給業 779 565 0.9 △ 27.5
水道・下水・廃棄物処理・原料再生業 32 105 0.2 225.6
建設業 515 710 1.1 37.8
卸売り・小売り 2,525 1,812 2.8 △ 28.2
運輸・倉庫業 413 566 0.9 37.0
宿泊・飲食店業 889 894 1.4 0.6
情報通信業 1,762 3,067 4.8 74.1
金融・保険業 26,891 27,388 42.8 1.8
不動産業 4,263 5,603 8.8 31.5
専門・科学・技術サービス業 1,802 1,655 2.6 △ 8.1
事業施設管理・事業支援・賃貸サービス業 791 1,241 1.9 57.0
公共行政・国防・社会保障行政 0 2 0.0 783.7
教育サービス業 16 17 0.0 2.2
保健業・社会福祉サービス業 187 106 0.2 △ 43.5
芸術・スポーツ・余暇関連サービス業 121 90 0.1 △ 25.1
協会・団体・修理・その他個人サービス業 5 34 0.1 570.3
世帯内雇用活動・他に分類できない自家消費生産活動 0 △ 100.0
不明 0 0 0.0 1,697.8
合計 65,150 63,954 100.0 △ 1.8

〔注1〕「-」は、数値がないことを示す。
〔注2〕統計値が過去に遡及して更新されることがある点に留意が必要。
〔出所〕韓国輸出入銀行

国・地域別にみると、ケイマン諸島のような租税回避地(タックスヘイブン)を除くと、韓国の対内直接投資は米国、欧州、日本、中国が中心である。2024年の特徴は米国と欧州が減少した一方で、日本が4.8倍、中国が3.7倍と急増した点である。米国と欧州の減少について、産業通商資源部は「活発だった前年の反動や、欧州議会選挙や米国大統領選挙などの政治的変化に伴い、様子見の流れになったため」(2025年1月7日付プレスリリース)と述べている。

一方で中国は、従来、最も多かった2018年(27億4,264万ドル)の2倍以上の57億8,609万ドルに達し、過去最高を大幅に更新した。業種別には製造業の寄与率が75.1%で、製造業の投資が対内直接投資全体を牽引した。製造業の内訳をみると、電気・電子の寄与率が38.7%で、特に高かった。電気・電子をさらに細かな業種別でみると、二次電池関連を中心とした「一次電池・蓄電池」と半導体製造装置やロボット製造業などの「特殊目的用機械」の寄与率が高かった。

このうち、「一次電池・蓄電池」については、2023年を中心に中国の二次電池部材企業(特に正極材・前駆体企業など)が単独または韓国企業との合弁で韓国に生産拠点を構築する計画が明らかになっていたが、これらの投資申請が2024年に集中した結果と考えられる。韓国企業は世界の二次電池市場で中国企業に次ぐ高いシェアを有しているが、原材料の多くを中国からの輸入に依存している。中国企業の狙いは、顧客の韓国企業の囲い込みや輸出向け生産拠点の確保である。一方、合弁の場合の韓国企業側の狙いは、中国からの輸入を韓国生産に代替し、サプライチェーンを強靭化することにある。

二次電池材料以外では、半導体関連などで韓国に生産拠点を構築する動きがみられる。例えば、寧波江豊電子材料(Konfoong Materials International)は、半導体用スパッタリングターゲット生産拠点を建設する投資協約(MOU)を建設地の忠清南道などと締結した。生産品はサムスン電子(Samsung Electronics)やSKハイニックス(SK hynix)に供給する構想である。さらに、杭州中泰深冷技術(Hangzhou Zhongtai Cryogenic Technology)は韓国の半導体生産拡大を見越し、ポスコホールディングス(POSCO Holdings)と合弁会社を設立、2024年11月に全羅南道光陽市に半導体向けの高純度貴ガス工場を着工している。

以上のように、中国企業は韓国に積極的に拠点を構築しているが、特に、対米輸出向けの生産拠点の性格が強い案件については、米国トランプ政権の政策の影響を受けることが予想されるだけに、申告された案件の投資が実際に実行されるのか、今後とも活発な対韓投資が継続するのか、不透明な面もある。

サービス業では、幅広い業種で中国の対内直接投資が増加した。具体的な進出事例をみると、電子商取引(EC)では、アリババグループ(Alibaba Group)や越境ECサイト「テム(Temu)」を運営するPDDホールディングス(PDD Holdings)が韓国でのビジネス拡大を目指し、韓国法人を設立した。小売りチェーンでは、名創優品(MINISO)が韓国に再進出し、2024年12月に「MINISO」ブランドの韓国1号店をソウル特別市に開設した。飲料チェーンでは、茶百道 (ChaPanda)、喜茶(HEYTEA)などが2024年に韓国に初めての店舗を開設した。

他方、米国の2024年の対内直接投資額は前年比14.6%減の52億3,624万ドルだった。前年よりも減少したものの、2020年(53億225万ドル)や2021年(52億5,806万ドル)とほぼ同水準だったことからみると、米国からの直接投資は安定的に推移しているといえよう。業種別にみると、製造業が全体の31.5%、サービス業が61.1%を占めた。製造業の7割以上は電気・電子で、その内訳は「半導体製造業」が圧倒的に多かった。サービス業は不動産が突出して多かった。個別事例に関しては、例えば、産業通商資源部は2024年6月26日、オン・セミコンダクター(ON Semiconductor)(2023年に京畿道で竣工した電力半導体専用工場の生産設備増設)、コーニング(Corning)(忠清南道の既存工場の生産設備の高度化)、パシフィコエナジー(Pacifico Energy)(洋上風力発電団地の造成)の3社が投資を申告したことを発表している。

欧州はマルタ、英国、オランダの順となった。このうち、英国は、金融、環境関連、不動産・関連サービスならびに廃棄物処理業等の分野の申告金額の割合が高かった。具体的な事例としては、2024年6月にロンドンに所在するグローバル投資企業のICG(Intermediates Capital Group)が、韓国の不動産会社ホームズカンパニー(HOMES Company)と共同で、シェアハウス・コワーキングスペースを組み合わせた「コリビング」施設開発のために3,000億ウォン規模の不動産ファンドを設定した。また、同社は同年10月にソウル特別市の中心業務地区(CBD)にあるホテルを購入するなど、韓国の不動産への投資を積極的に推進している。オランダは、同年6月にコールドチェーン分野のニューコールド(NewCold)が、忠清南道唐津市に2,000億ウォンを投資して、先端物流センターを設立すると発表した。また、同月にスマートファーム企業のSHS(Safe Heaven Solutions)が忠清南道瑞山市に約1兆ウォンを投資してスマートファーム施設を建設することを発表し、同道とMOUを締結した。さらに、ドイツからは、同年5月に化学品大手メーカーのメルク(Merck)が4,300億ウォンを投資し、大田広域市にバイオプロセスの原料・副資材生産工場を設立することを発表した。

表5-1 韓国の国・地域別対内直接投資[申告ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
アジア大洋州 8,621 16,301 47.2 89.1
階層レベル2の項目日本 1,287 6,121 17.7 375.6
階層レベル2の項目中国 1,580 5,786 16.7 266.1
階層レベル2の項目シンガポール 2,702 2,429 7.0 △ 10.1
階層レベル2の項目香港 1,166 1,008 2.9 △ 13.6
階層レベル2の項目オーストラリア 722 288 0.8 △ 60.0
階層レベル2の項目台湾 377 238 0.7 △ 36.8
階層レベル2の項目マレーシア 10 145 0.4 1,322.3
米州 12,556 10,741 31.1 △ 14.5
階層レベル2の項目米国 6,128 5,236 15.1 △ 14.6
階層レベル2の項目ケイマン諸島 5,590 4,897 14.2 △ 12.4
階層レベル2の項目カナダ 507 567 1.6 11.7
欧州 10,370 7,054 20.4 △ 32.0
階層レベル2の項目マルタ 911 1,580 4.6 73.4
階層レベル2の項目英国 3,604 1,438 4.2 △ 60.1
階層レベル2の項目オランダ 1,102 883 2.6 △ 19.8
階層レベル2の項目フランス 1,175 850 2.5 △ 27.6
階層レベル2の項目ハンガリー 527 1.5
階層レベル2の項目スウェーデン 365 1.1
階層レベル2の項目ドイツ 207 342 1.0 65.6
階層レベル2の項目ノルウェー 303 335 1.0 10.6
階層レベル2の項目デンマーク 692 267 0.8 △ 61.4
中東 1,158 470 1.4 △ 59.4
階層レベル2の項目アラブ首長国連邦 490 396 1.1 △ 19.1
アフリカ 9 4 0.0 △ 50.1
合計 32,714 34,570 100.0 5.7

〔注1〕2024年上位20カ国・地域を掲載。対内直接投資の合計には、その他地域、国際協力機関を含む。
〔注2〕「-」は、数値がないことを示す。
〔注3〕統計値が過去に遡及して更新されることがある点に留意が必要。
〔出所〕産業通商資源部

表5-2 韓国の国・地域別対外直接投資[実行ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
アジア 11,357 12,453 19.5 9.7
階層レベル2の項目シンガポール 1,280 2,694 4.2 110.4
階層レベル2の項目ベトナム 2,725 2,521 3.9 △ 7.5
階層レベル2の項目中国 1,890 1,814 2.8 △ 4.0
階層レベル2の項目インドネシア 2,277 1,189 1.9 △ 47.8
階層レベル2の項目インド 722 929 1.5 28.8
階層レベル2の項目香港 276 804 1.3 191.2
階層レベル2の項目マレーシア 341 717 1.1 110.0
階層レベル2の項目日本 702 600 0.9 △ 14.5
北米 31,614 25,877 40.5 △ 18.1
階層レベル2の項目米国 27,993 22,084 34.5 △ 21.1
階層レベル2の項目カナダ 3,621 3,793 5.9 4.7
欧州 11,045 13,860 21.7 25.5
階層レベル2の項目ルクセンブルク 5,014 5,987 9.4 19.4
階層レベル2の項目ジャージー島 285 2,042 3.2 617.0
階層レベル2の項目ポーランド 369 710 1.1 92.6
階層レベル2の項目ドイツ 506 698 1.1 37.9
階層レベル2の項目オランダ 290 673 1.1 131.9
階層レベル2の項目英国 863 666 1.0 △ 22.8
階層レベル2の項目ガンジー島 869 630 1.0 △ 27.4
中南米 9,786 9,152 14.3 △ 6.5
階層レベル2の項目ケイマン諸島 6,425 6,635 10.4 3.3
階層レベル2の項目メキシコ 754 1,460 2.3 93.5
中東 137 369 0.6 170.0
アフリカ 338 563 0.9 66.6
大洋州 874 1,680 2.6 92.3
階層レベル2の項目オーストラリア 662 897 1.4 35.6
合計 65,150 63,954 100.0 △ 1.8

〔注1〕2024年上位20カ国・地域を掲載。対内直接投資の合計には、その他地域、国際協力機関を含む。
〔注2〕「-」は、数値がないことを示す。
〔注3〕統計値が過去に遡及して更新されることがある点に留意が必要。
〔出所〕韓国輸出入銀行

表6 韓国の主な対内直接投資案件(2024年)
企業名 国・地域 時期 投資額 概要
寧波江豊電子材料(Konfoong Materials International) 中国 2月 5,300万ドル 忠清南道牙山市に半導体用超高純度スパッタリングターゲット工場を建設する投資協約を忠清南道、同道牙山市と締結。製品はサムスン電子(Samsung Electronics)、SKハイニックス(SK hynix)に供給予定。
PDDホールディングス(PDD Holdings) 中国 2月 1億ウォン(資本金) 越境ECサイト「テム(Temu)」を運営する同社は子会社経由で韓国法人を設立。同社では「韓国の協力企業との協業を含め、現地法人の役割を遂行する計画」としている。
東京応化工業 日本 2月 31億円(用地取得価格) フォトレジストの研究開発・製造・販売の現地法人・TOK尖端材料(TOK Advanced Materials)において、新工場建設のために京畿道平沢市で工場用地を新たに取得することを決定。既存の仁川工場との相乗効果の最大化を図り、将来的な事業拡大を図る。
アリババグループ(Alibaba Group) 中国 3月 3年間で11億ドル 韓国国内に18万平方メートル規模の統合物流センターを構築する。それにより、海外向け通販「アリエクスプレス(AliExpress)」の商品配送期間が大幅に短縮できる見込み。また、韓国国内の販売事業者の海外進出を支援する。さらに、消費者保護を目的に顧客サービスセンターを開設する。
住友化学 日本 4月 子会社の東友ファインケム(DONGWOO FINE-CHEM)が半導体用高純度ケミカル生産能力増強のため、全羅南道益山市に工場用地を取得。顧客の旺盛な需要に対応する。さらに、半導体や通信関連の先端技術・材料など次世代材料開発加速のため、ソウル特別市近郊に研究開発センターを新設する。
東レグループ 日本 5月 5,000億ウォン(2025年まで) 東レと韓国法人の東レ先端素材(Toray Advanced Materials Korea)は、高機能炭素繊維・アラミド繊維、環境に優しい素材などの新成長分野の投資を亀尾国家産業団地で行う内容の投資了解覚書(MOU)を産業通商資源部・慶尚北道・同道亀尾市と締結。
メルク(Merck) ドイツ 5月 4,300億ウォン メルク(Merck)は、大田広域市にバイオプロセスの原料・副資材生産工場を設立することを発表。同社は2023年に同市に工場を設立するため産業通商資源部とMOUを締結していた。2026年の竣工を目標にしている。
富士フイルム 日本 6月 京畿道平沢市で先端半導体材料のイメージセンサー用カラーフィルター材料工場を竣工。平沢には先進技術を有する企業やサプライヤーが集積している。新工場での他の先端半導体材料の生産も検討し、顧客ニーズに合った製品のタイムリーな市場投入を加速する。
SHS(Safe Heaven Solutions) オランダ 6月 1兆ウォン SHS(Safe Heaven Solutions)は、忠清南道瑞山市に1兆ウォンを投資して5年以内にスマートファーム施設を建設すると発表。瑞山市は、SHSの先進的なスマート農業システムを同市に構築し、技術協力・関連教育を行うことで、韓国のスマート農業システムの高度化を図るとした。
オン・セミコンダクター(ON Semiconductor) 米国 6月 2023年10月に京畿道富川市にSiC(シリコンカーバイド)電力半導体専用工場を完工したが、自動車メーカー向け販売拡大を見越し、設備増強を行う。
コーニング(Corning) 米国 6月 現地法人コーニング精密素材(忠清南道牙山市)の生産設備の高度化のための投資を実施する。韓国国内のディスプレイ、スマートフォン、半導体、自動車など多様な分野向けの販売拡大を目指す。
杭州中泰深冷技術(Hangzhou Zhongtai Cryogenic Technology) 中国 8月 ポスコホールディング(POSCO Holdings)と合弁で韓国に法人を設立。杭州中泰深冷技術(Hangzhou Zhongtai Cryogenic Technology)の出資比率は24.9%。合弁会社は2024年11月、全羅南道光陽市に半導体用の高純度貴ガス工場を着工。2025年末の商業生産開始を目指す。
無錫恒新光電材料(Wuxi Hengxin Optoelectronic Materials) 中国 9月 1兆1,200億ウォン サムスンSDI(Samsung SDI)の偏光フィルム事業を取得。サムスンSDIは、中国企業の台頭により収益性が悪化していた同事業から撤退。
エターナルホスピタリティグループ 日本 9月 ソウル特別市に韓国1号店の「鳥貴族ホンデ本店」を開店。

〔出所〕産業通商資源部プレスリリース、各社プレスリリース、報道などから作成

なお、2025年の対内直接投資の見通しについて、2025年1月7日に行われた「2024年輸出・外国人投資実績および2025年展望ブリーフィング」で、鄭通商交渉本部長は「2024年に面会した在韓外資系企業のトップは、韓国の製造業のファンダメンタルズが良好で、充実したFTAネットワークを有していることや、相対的に安定した供給網体系を構築している点を評価していた。2025年の対内直接投資も増加が予想される」「特に、トランプ政権の発足以降、米中対立構図の下で世界的に生産ネットワークが再構築・再調整されうる。これをうまく活用すれば、直接投資をさらに誘致できるとみている」と述べた。

対外直接投資はほぼ前年並み

2024年の対外直接投資(実行ベース)は前年比1.8%減の639億5,381万ドルと、ほぼ前年並みだった。企画財政部では「2024年の対外直接投資は、世界的な金利高、地政学的リスクなど、不確実性がある状況で、比較的堅調だった。先進国のオルタナティブ資産投資の活発化、韓国企業の米国先端産業(半導体、二次電池など)に対する投資の持続など、複合的な投資需要が作用した結果と解釈される」(2025年3月14日付プレスリリース)と総括した。

業種別にみると、最も多かったのが金融・保険業で全体の42.8%を占め、次いで、製造業が25.3%だった。それ以外の業種のシェアは1桁にとどまった。さらに細かくみると、金融・保険業ではベンチャーキャピタルなどの「その他金融投資業」や「持ち株会社」などが多かった。持ち株会社は進出先で投資会社の役割を担うことが多い。製造業では「電子装備製造業」が製造業の4割弱を占め、圧倒的に多かった。さらに、「電子装備製造業」の内訳をみると、リチウムイオン二次電池など「その他二次電池製造業」が中心だった。「電子装備製造業」に次いで多かったのは「化学物質および化学製品製造業(医薬品を除く)」、その次に「自動車およびトレーラー製造業」だったが、いずれも「電子装備製造業」の3~4割程度の金額にとどまった。

国・地域別では米国が全体の34.5%の220億8,439万ドルと、最も多かった。前年比21.1%減と2年連続で減少したが、これは対米直接投資が減少傾向にあることを意味するものではない。対米直接投資は過去20年間、増加傾向にあるが、特に2021年に急増した。対米直接投資ブームは現在も続いているとみるべきで、第2次トランプ政権発足後も、米国生産拠点拡大計画などを発表する韓国企業が相次いでいる。2024年について業種別にみると、金融・保険業(全体の43.2%)、製造業(29.5%)の2業種に集中した。金融・保険業では「持ち株会社」が、製造業では「その他二次電池製造業」を中心とする「電子装備製造業」が、それぞれ最多だった。「その他二次電池製造業」については、米国のインフレ削減法(IRA)に対応すべく、韓国の二次電池メーカーや同材料メーカーが一斉に米国生産拠点の新増設を行っていることを反映したものである。ただし、二次電池関連については、米国EV市場の伸び率が想定ほどではないことなどにより、一部では対米投資の見直しも行われている。

カナダは2020年以降、韓国からの直接投資が活発で、2024年は過去最高の37億9,267万ドルを記録した。業種別には鉱業が全体の4割弱を占め最多で、そのほとんどを「原油・天然ガス採掘業」が占めた。次いで、「その他二次電池製造業」をはじめとした製造業、「その他金融投資業」をはじめとした金融・保険業が多かった。具体的な案件としては、1月にサムスンSDI(Samsung SDI)が二次電池原料の確保を目的にカナダニッケル(Canada Nickel)に出資する契約を締結している。また、教村F&B(Kyochon F&B。チェーン名は「教村チキン」)、ダイニングブランドグループ(Dining Brand Group。チェーン名は「bhcチキン」)などの外食チェーンが相次いで進出した。

アジアでは、シンガポール、ベトナム、中国の順で多かった。シンガポールは全体の5割強が「持ち株会社」「その他金融投資業」などの金融・保険業だった。ベトナムは前年比7.5%減の25億2,134万ドルだった。韓国の対ベトナム直接投資は2000年代後半以降、増加基調が続き、2019年に46億2,206万ドルに達した。その後は減少に転じたものの、25億ドルから30億ドルの間で推移しており、投資は底堅い。2024年について業種別にみると、エレクトロニクスを中心とした製造業が6割強を占めている。具体的な投資案件としては、LGイノテック(LG Innotek)(ハイフォン市のカメラモジュール工場の生産能力拡充のため追加投資)、LGディスプレイ(LG Display)(ハイフォン市の有機ELディスプレイ工場の生産能力拡充のため追加投資)などがあった。

中国は前年比4.0%減の18億1,379万ドルだった。過去をみると2022年(85億3,851万ドル)にピークを付けた後、投資は回復していない。2024年の投資額は2002年(11億6,392万ドル)以来の低水準にとどまった。業種別にみると、半導体や二次電池関連など製造業が全体の9割弱を占めた。具体的な投資案件としては、LGエナジーソリューション(LG Energy Solution)が電力貯蔵システム(ESS)などの工場建設について、江蘇省南京市の浜江経済開発区と投資意向書を署名した。また、現代自動車は、業績不振が続く既存の合弁企業の財務構造改善とEVなどの新技術・新製品開発・生産支援を目的に、合弁会社に追加出資した。

欧州はルクセンブルク、ジャージー島、ポーランド、ドイツの順だった。このうち、ポーランドについては、2018年に当時の最高額の5億3,512万ドルを記録して以降、比較的高い水準で推移している。2024年は7億1,012万ドルだったが、業種別にみると製造業が全体の94.5%を占めた。さらに細かくみると、製造業の中でも化学に投資が集中した。この中心は二次電池材料関連の投資と思われる。ポーランドにはLGエナジーソリューション(LG Energy Solution)が二次電池工場を建設して以来、関連企業の集積が進みつつある。例えば、セパレーター企業のSKアイイーテクノロジー(SK IE Technology)はポーランド工場の生産能力拡大のため、2024年に200億ウォンを投じたと報じられている。

表7 韓国の主な対外直接投資案件(2024年)
企業名 投資国 時期 投資額 概要
サムスンSDI(Samsung SDI) カナダ 1月 1,850万ドル カナダニッケル(Canada Nickel)の持ち分8.7%を取得する契約を締結。二次電池原料のニッケルを確保する狙い。
LGエナジーソリューション(LG Energy Solution) 中国 3月 8億ドル 動力電池・電力貯蔵システム(ESS)などの工場建設について、浜江経済開発区(江蘇省南京市)と投資意向書を締結。
サムスン電子(Samsung Electronics) 米国 4月 450億ドル テキサス州での半導体工場建設に関し、投資額を当初予定の170億ドルから450億ドルに増額。ファウンドリ工場を追加建設し、先端パッケージング、研究開発施設も建設する。
ハンファオーシャン(Hanwha Ocean)、ハンファシステム(Hanwha System) 米国 6月 1億ドル(ハンファオーシャン4,000万ドル、ハンファシステム6,000万ドル) 2社が各社の米国現地法人を通じ、ペンシルベニア州フィラデルフィアのフィリー造船所(Philly Shipyard)の全株式を買収する契約を締結。米国の商船市場・防衛用艦艇市場に進出する足がかりとする狙い。
LS電線(LS Cable&System) 米国 7月 6億8,275万ドル バージニア州チェサピークに米国最大規模の海底ケーブル工場を建設すると発表。2025年に着工し、2027年に完工の予定。今後10年間で年率30%増が見込まれる米国海底ケーブル市場の先取りを目指す。バージニア州政府から4,800万ドル規模の補助金と税制優遇を、エネルギー省から9,900万ドルのインフレ削減法支援をそれぞれ受ける予定。
LGイノテック(LG Innotek) ベトナム 7月 8億2,300万ドル ハイフォン市の生産拠点に追加投資。カメラモジュールの生産能力を拡充し、カメラモジュール向け伝送装置、センサーモジュールを新たに生産する。
サムスンディスプレイ(Samsung Display) ベトナム 9月 18億ドル バクニン省に最先端の8.6世代有機ELディスプレイの生産拠点を構築する。前工程は韓国国内、後工程はベトナムとする。さらに、今後3年間、毎年10億ドル程度を追加投資し、ベトナムを最大級の有機ELディスプレイ・モジュールの生産拠点とする。大規模投資により生産性を高め、中国勢との競争で先行する考え。
ポスコホールディングス(POSCO HOLDINGS) インド 10月 10兆ウォン インドの鉄鋼大手JSWグループ(JSW Group)との合弁で、オリッサ州に一貫製鉄所を建設すると発表。自動車向けの高級鋼板などを年間500万トン生産する計画。
LGディスプレイ(LG Display) ベトナム 11月 10億ドル ハイフォン市の有機ELディスプレイ工場に追加投資し、生産能力を拡充。今回の投資で同社の対ベトナム投資額累計は56億5,000万ドルに。
CJ第一製糖(CJ CheilJedang) 米国 11月 7,000億ウォン 同社傘下の冷凍食品メーカー・シュワンズカンパニー(Schwan's Company)がサウスダコタ州で新工場を着工。冷凍ギョーザやエッグロールなどの生産ラインに加え、排水処理施設や物流センターなども備えた北米最大規模の製造拠点とする。
現代自動車(Hyundai Motor) 中国 12月 10億9,600万ドル 同社と北京汽車(Beijing Automobile Works)が合弁会社の北京現代汽車(Beijing Hyundai Motor)に両社折半で追加出資。北京現代汽車の財務構造改善と中国専用EV・ハイブリッド車の新技術・新製品開発・生産支援などを狙う。
三養食品(Samyang Foods) 中国 12月 2,014億ウォン 同社の初の海外生産拠点をシンガポール現地法人経由で浙江省嘉興市に建設、2027年1月に竣工予定。中国市場におけるプルダック炒め麺(ポックンミョン)の需要増に対応する目的。

〔出所〕各社プレスリリース、報道などから作成

対日関係 
対日貿易赤字の減少が続く

2024年の対日貿易は、輸出が前年比2.1%増の296億717万ドル、輸入が0.1%減の475億9,383万ドルだった。過去の推移を長期でみると、対日輸出・輸入とも2011年をピークに減少に転じた後、2010年代後半以降はほぼ横ばいで推移している。一方、この間の韓国の輸出入総額は増加しているため、輸出入総額に占める対日輸出入の割合は低下傾向にある。

2024年の対日貿易収支は179億8,667万ドルの赤字だった。対日貿易収支は構造的に赤字が続いているが、2024年の赤字額は前年に比べ6億6,919万ドル減少した。韓国の対日貿易赤字は2010年に361億1,984万ドルを記録したが、2011年以降は緩やかな減少傾向が続いている。その結果、2024年の貿易赤字額はピーク時の半分に減少している。

対日輸出を品目別(韓国独自の品目分類のMTI3桁ベース)でみると、石油製品、石鹸・歯磨き粉および化粧品などが前年比2桁増となった。石油製品の増加は、ガソリン、灯油、ジェット燃料、ナフサなどの対日輸出数量がおしなべて増加したことによる。石鹸・歯磨き粉および化粧品は、日本における韓流ブームが対日輸出を後押しした。他方、半導体の対日輸出は、数量は1.9%減にとどまったが、金額ベースでは19.3%で減少した。農薬および医薬品は、数量ベースでは15.6%増だったのに対し、金額ベースでは21.8%減となった。製品ミックスの変化などが背景にあるものと思われる。

対日輸入を品目別にみると、半導体、半導体製造装置などが伸びた半面、鉄鋼板、基礎留分などが減少した。このうち、半導体製造装置については韓国における半導体生産拡大の動きを反映したものと思われる。

表8-1 韓国の対日品目別輸出(FOB)(上位10品目)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
順位 品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
1 石油製品 5,261 6,873 23.2 30.6
2 鉄鋼板 2,516 2,502 8.5 △ 0.5
3 半導体 1,408 1,136 3.8 △ 19.3
4 石鹸・歯磨き粉および化粧品 807 1,042 3.5 29.1
5 金・銀および白金 1,032 1,040 3.5 0.8
6 合成樹脂 802 831 2.8 3.6
7 農薬および医薬品 935 731 2.5 △ 21.8
8 精密化学原料 747 728 2.5 △ 2.5
9 プラスチック製品 606 606 2.0 0.0
10 半導体製造装置 491 541 1.8 10.2
合計(その他を含む) 29,001 29,607 100.0 2.1

(注)韓国独自コードのMTI3桁ベースで2024年輸出上位10品目。
(出所)韓国貿易協会

表8-2 韓国の対日品目別輸入(CIF)(上位10品目)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
順位 品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
1 半導体 7,371 8,374 17.6 13.6
2 半導体製造装置 4,631 5,248 11.0 13.3
3 鉄鋼板 2,686 2,096 4.4 △ 22.0
4 プラスチック製品 1,753 1,932 4.1 10.2
5 計測制御分析器 1,066 1,095 2.3 2.6
6 石油製品 910 1,079 2.3 18.6
7 農薬および医薬品 1,065 1,040 2.2 △ 2.3
8 基礎留分 1,181 979 2.1 △ 17.1
9 精密化学原料 953 881 1.9 △ 7.6
10 電子応用機器 922 831 1.7 △ 9.8
合計(その他を含む) 47,656 47,594 100.0 △ 0.1

(注)韓国独自コードのMTI3桁ベースで2024年輸入上位10品目。
(出所)韓国貿易協会

日本からの直接投資が過去最高を記録

日本からの直接投資(申告ベース)は前年比4.8倍の61億2,099万ドルと、2012年(45億4,162万ドル)を上回り、過去最高を大幅に更新した。業種別では、製造業が前年比7.7倍の48億7,036万ドルと急増、寄与率は87.5%に達した。製造業の中では、化学工業、機械装置・医療精密、電気・電子などの業種が急増した。特に注目すべき業種は化学工業である。韓国半導体企業向けに部材を製造・販売する日本の化学企業による投資案件が相次いだ。顧客である韓国企業の近くで生産、研究・開発を行う動きが活発化した。2024年の各社プレスリリースによると、東京応化工業は、「フォトレジスト製造の新工場建設のための工場用地取得を決定」と発表した(2024年2月13日)。住友化学は、「韓国子会社において、半導体用高純度ケミカル生産能力増強のための工場用地取得を決定、半導体や通信関連の先端技術・材料など次世代材料開発加速のための研究開発センター新設を決定」と発表した(同年4月24日)。富士フイルムは、「韓国・京畿道で先端半導体材料のイメージセンサー用カラーフィルター材料工場を竣工」と発表した(同年6月14日)。JSRは、「韓国現地法人に半導体用フォトレジスト用工場を建設することを決定」と発表した(同年8月30日)。

半導体関連で日本企業が韓国で積極的な投資を行っているのは、韓国の半導体産業の拡大が見込めるからである。韓国政府は2024年1月に「半導体メガクラスター造成案」を発表している。これは京畿道龍仁市など、ソウル特別市南方の京畿道南部に世界最大級の半導体集積地を作るという構想である。企業もこれに歩調を合わせている。SKハイニックス(SK hynix)は2025年2月、龍仁市で2027年の完工を目指し、1棟目の工場を着工した。サムスン電子(Samsung Electronics)も、韓国国内で4番目の大規模生産拠点を龍仁市に建設する予定である。従来は、両社とも韓国と中国を中心に半導体を生産してきたが、米中対立の中、中国生産拠点では生産規模の大幅な拡大や先端品の生産が難しくなっており、韓国国内の拠点の役割は相対的に高まると見込まれる。

2024年の韓国の対日直接投資(実行ベース)は、前年比14.5%減の5億9,965万ドルと、4年連続で減少した。ただし、新規法人数は314社と、過去最高を記録した。2024年は、大型投資案件こそなかったものの、販売拠点の構築をはじめとした比較的小規模の直接投資が幅広い分野で活発だったといえる。なお、業種別では不動産業(韓国の対日直接投資額の23.8%)、卸売・小売業(23.5%)、金融・保険業(17.9%)の順で多く、製造業は10.1%にとどまった。

具体的な投資事例をみると、若年層を中心に韓国文化が定着してきたことを受けて、韓国の外食チェーン、ファッション、コスメティック、芸能関連企業などの日本進出が相次いだ。外食チェーンでは、マムズタッチアンドカンパニー(Mom’s Touch & Company)が運営するハンバーガー・フライドチキンチェーン「マムズタッチ(Mom’s Touch)」の日本1号店が2024年4月に東京・渋谷に開店した。同じく4月にカンブ(Kkanbu)が運営するフライドチキンチェーン「カンブチキン(KKanbu Chicken)」の日本1号店が東京・原宿に開店した。さらに、ヘルキプキ(Helkipooki)が運営する「キトのり巻き」専門店「ヘルキプキ(Helkipooki)」の日本1号店が同年11月、千葉県船橋市に開店した。ファッションでは、ブランドエックスコーポレーション(Brand X Corporation)が運営するスポーツウェアブランド「ゼクシィーミックス(Xexymix)」の日本1号店が同年4月、大阪・梅田に開店したほか、多くのブランドの期間限定店が東京、大阪などで開店した。コスメティック関連では、アイアイコンバインド(iicombined)が展開する香水・コスメブランド「タンバリンズ(Tamburins)」の日本1号店が同年3月、東京・青山に開店した。また、投資企業のSeAH 技術投資(SeAH Capital)が同年8月、複数の韓国コスメブランドの日本総代理店を務める月架世交易に出資した(出資比率8%)。芸能関係では、芸能プロダクションのインコード(iNKODE)が、所属タレントの日本活動のため、同年6月に日本法人を設立した。

前記以外にも幅広い分野で韓国企業の日本進出事例がみられた。ソファ専門メーカーのジャコモ(JAKOMO)は2024年5月、海外初店舗を東京・六本木に開店した。食品メーカーのプルムウォン(Pulmuone)は同年9月、2014年に買収したアサヒコ(埼玉県さいたま市)に対し、「豆腐バー」の生産ライン増設などを目的に、257億ウォンを追加出資した。また、サムスンバイオロジクス(Samsung Biologics)は2024年10月、日本でのバイオ医薬品受注拡大を狙い、東京に営業拠点を開設すると発表した。航空業界では、大韓航空(Korean Air)が同年10月、同社の子会社とともに国際興業との合弁でグランドハンドリング(航空機地上支援業務)を行う新会社を東京に設立した。

さらに、ベンチャー企業では、2017年創業の半導体IPプラットフォームのオープンエッジテクノロジー(Openedges Technology)が2024年6月に横浜に現地法人、京都にR&Dセンターを設立している。

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2022年 2023年 2024年
実質GDP成長率 (%) 2.7 1.6 2.0
1人当たりGDP 米ドル 34,822 35,563 36,129
消費者物価上昇率 (%) 5.1  3.6  2.3
失業率 (%) 2.9 2.7 2.8
貿易収支 (100万米ドル) 15,620 37,658 100,127
経常収支 (100万米ドル) 25,829 32,822 99,043
外貨準備高 (100万米ドル) 417,280 414,004 409,457
対外債務残高 (100万米ドル) 673,296 677,324 672,903
為替レート (1米ドルにつき、韓国ウォン、期中平均) 1,291.45 1,305.66 1,363.38

〔注〕
1人当たりGDP:2024年分は推計
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
外貨準備高は金を含む。
〔出所〕
実質GDP成長率、貿易収支、経常収支、対外債務残高:韓国銀行
1人当たりGDP、外貨準備高、為替レート:IMF
消費者物価上昇率、失業率:統計庁