インドの貿易と投資(世界貿易投資動向シリーズ)

要旨・ポイント

  • 2022年度のGDP成長率は7.2%と堅調な伸びを記録。
  • 貿易は最大輸入品目の原油が前年比50.6%増、輸出も伸びたが貿易赤字は拡大。
  • 対内直接投資は前年比2.0%増。シンガポール、米国、モーリシャスの3カ国で全体の6割を占める構図は変わらず。
  • 日本への輸出が減少した一方で輸入は伸び、対日貿易赤字が拡大。

公開日:2023年11月29日

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マクロ経済 
2022年度も堅調に経済成長

2022年度(2022年4月~2023年3月)の実質GDP成長率は前年度比7.2%と、新型コロナウイルス禍後にV字回復を遂げた前年度の9.1%をやや下回ったが、堅調な伸びを記録した。GDPのうち約6割を占める民間最終消費支出の伸びが7.5%と高い水準を維持したほか、国内総固定資本形成も11.4%と前年度に引き続き2桁成長となり、両者がインド経済をけん引した。財・サービスの輸出(13.6%)も伸びたものの、前年度と逆に同輸入(17.1%)の伸びが上回ったため、輸出入全体では成長率を押し下げる要因となった。

表1 インドの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2021年度 2022年度 2023年度
年間 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1
実質GDP成長率 9.1 7.2 13.1 6.2 4.5 6.1 7.8
階層レベル2の項目民間最終消費支出 11.2 7.5 19.8 8.3 2.2 2.8 6.0
階層レベル2の項目政府最終消費支出 6.6 0.1 1.8 △ 4.1 △ 0.6 2.3 △ 0.7
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 14.6 11.4 20.4 9.6 8.0 8.9 8.0
階層レベル2の項目財・サービスの輸出 29.3 13.6 19.6 12.2 11.1 11.9 △ 7.7
階層レベル2の項目財・サービスの輸入 21.8 17.1 33.6 23.1 10.7 4.9 10.1

〔注〕年度は4月~翌年3月、2011年度基準。四半期の伸び率は前年同期比。
〔出所〕統計・計画実施省から作成

2023年度第1四半期も堅調な個人消費や企業の設備投資などの投資活動に支えられ、実質GDP成長率は7.8%となった。ただ、輸出がマイナス成長となる一方で輸入は増加し、純輸出のマイナス幅は拡大した。インド準備銀行(RBI)の予測(2023年8月時点)では、農村部の所得回復による消費拡大や、サプライチェーン正常化による投資活動の拡大など明るい兆しがある一方で、世界需要の低迷や金融市場の変動リスクといった懸念も踏まえ、2023年度の実質GDP成長率を6.5%としている。

消費者物価指数の上昇率は、2022年1~10月および2023年1~2月にかけ、RBIが目標基準値とする2~6%の範囲を上回る7%前後で推移した。この状況を踏まえ、RBIはそれまで2年間にわたり4.0%に据え置いていた政策金利(レポレート)を2022年5月から段階的に引き上げ、2023年2月に6.5%とした後、10月現在も6.5%に据え置いている。

現地通貨ルピーの対ドル為替相場は、貿易赤字幅の拡大に伴い、ルピー安傾向が続いた。2022年1月(月平均、以下同)の1ドル当たり74.4ルピーから、9月には80ルピー台となり、2023年2月以降は82ルピー台で推移している。

貿易 
輸出入とも過去最高となり、貿易赤字幅がさらに拡大

2022年の貿易(通関ベース)は、輸出が前年比14.6%増の4,532億6,440万ドル、輸入は25.7%増の7,202億3,310万ドルとなり、ともに2年連続で過去最高を記録した。貿易収支は2,669億6,870万ドルの赤字となり、赤字幅は前年比1.5倍に拡大した。

輸出を品目別にみると、最大品目の石油製品が前年比74.5%増と大幅に増加し、輸出額全体の2割を占めた。主要輸出先としては、オランダ(構成比9.9%、前年比2.4倍)やアラブ首長国連邦(8.4%、80.6%増)向けが急増した。機械・器具も、主要品目である電子機器や酪農用機械の米国向け輸出が好調だった結果、15.3%増となった。

他方、宝石・宝飾品と医薬品・精製化学品はそれぞれ3.0%、2.8%増加と、いずれも横ばいに近かった。宝石・宝飾品は、アラブ首長国連邦(14.2%、16.1%増)やベルギー(7.3%、17.5%増)向けは堅調に伸びたものの、最大相手国である米国(34.8%、2.8%減)向けが、主要品目の真珠・貴石・半貴石と金・その他貴石宝飾品において減少したことが大きく響いた。医薬品・精製化学品も、米国向け主要品目である製剤・バイオ医薬品が伸び悩んだ結果、最大相手国である米国(29.4%、2.6%増)が微増にとどまった。

輸入を品目別にみると、原油が50.6%増、石油製品が36.9%増と石油関連の伸びが目立った。原油は数量ベースでは5.5%増であったが、国際価格の上昇を受け、従来の主要な輸入相手国であるイラク(22.3%、42.5%増)、サウジアラビア(18.8%、68.0%増)、アラブ首長国連邦(10.6%、45.6%増)からの輸入額が軒並み伸びた。なお、2022年2月のウクライナ侵攻後に欧米諸国による経済制裁対象となったロシア(13.1%、9.1倍)からの原油輸入は、数量ベースでも6.9倍と飛躍的に増加し、原油の輸入相手国として3位に急浮上した。石油製品においても、カタール(26.8%、47.2%増)、アラブ首長国連邦(19.8%、28.2%増)、サウジアラビア(10.3%、27.5%増)など中東諸国を中心として輸入が大きく増加した。

石油関連以外では、主要輸出品目の宝石・宝飾品の原料となる金・銀(25.9%減)において、最大相手国であるスイス(31.0%、50.9%減)からの輸入が半減し、次ぐ南アフリカ共和国(7.8%、18.5%減)も減少したことから、大幅な減少に転じた。他方、真珠・貴石・半貴石(11.0%増)はアラブ首長国連邦(31.9%、14.8%増)や米国(18.0%、5.5%増)を中心に輸入が増加した。一般機械(13.6%増)は、同品目の4割を占める酪農用機械をはじめとして、中国(39.5%、23.6%増)やドイツ(11.0%、10.3%増)からの輸入が増加した一方、日本(6.6%、1.4%減)からの輸入は微減した。

表2-1 インドの主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
石油製品 54,399 94,915 20.9 74.5
宝石・宝飾品 38,057 39,183 8.6 3.0
機械・器具 28,857 33,260 7.3 15.3
医薬品・精製化学品 24,574 25,250 5.6 2.8
鉄金属・非鉄金属 22,137 24,592 5.4 11.1
輸送機器 22,913 24,301 5.4 6.1
有機・無機農業化学品 17,988 19,412 4.3 7.9
織物用糸・布地 19,045 16,895 3.7 △ 11.3
鉄・鋼鉄 21,200 15,363 3.4 △ 27.5
電子通信機器 6,702 11,096 2.4 65.6
合計(その他含む) 395,495 453,264 100.0 14.6

〔出所〕商工省・通商情報統計局(DGCI&S)から作成

表2-2 インドの主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
原油 106,355 160,159 22.2 50.6
石油製品 34,911 47,805 6.6 36.9
金・銀 57,880 42,916 6.0 △ 25.9
真珠・貴石・半貴石 29,244 32,451 4.5 11.0
一般機械 25,799 29,296 4.1 13.6
電子部品 21,815 27,545 3.8 26.3
鉄金属・非鉄金属 21,782 25,303 3.5 16.2
輸送機器 16,919 23,153 3.2 36.8
人造樹脂・プラスチック材 18,073 21,596 3.0 19.5
肥料 10,274 19,058 2.6 85.5
合計(その他含む) 573,173 720,233 100.0 25.7

〔出所〕商工省・通商情報統計局(DGCI&S)から作成

米国が引き続き最大の輸出相手国、ロシアが輸入相手国6位に浮上

2022年の輸出を国別にみると、米国(構成比17.7%、前年比12.4%増)が11年連続で最大だった。米国向け主要品目としては、宝石・宝飾品(17.0%、2.8%減)や医薬品・精製化学品(9.3%、2.6%増)が微増だった一方、機械・器具(9.3%、23.8%増)や石油製品(7.0%、38.0%増)は2桁増だった。アラブ首長国連邦(6.9%、23.5%増)向けは、石油製品(25.6%、80.6%増)が大きく増加したほか、宝石・宝飾品(17.8%、16.1%増)や電子通信機器(8.1%、30.7%増)も好調で、2年連続で輸出相手国2位となった。中国(3.3%、34.2%減)向けは、石油製品(13.2%、15.4%増)や水産物(9.0%、30.4%増)が増加した一方、有機・無機農業化学品(7.2%、40.3%減)や鉄金属・非鉄金属(6.9%、61.8%減)が大幅に減少した。

輸入においては、前年に引き続き、中国(14.2%、17.1%増)が最大の相手国となった。主要品目としては、一般機械(11.3%、23.6%増)、電子部品(11.1%、16.7%増)、コンピュータハードウエア・周辺機器(7.9%、7.9%増)など、工業品が中心だった。また、中東の産油国であるアラブ首長国連邦(7.3%、22.3%増)やサウジアラビア(6.0%、58.8%増)などが前年同様に上位国に入った。その他、ロシア(4.7%、4.1倍)も原油(61.9%、9.1倍)の輸入が飛躍的に増えた結果、輸入相手国として前年の21位から6位に浮上した。なお、米国(7.1%、24.2%増)は、真珠・貴石・半貴石(11.4%、5.5%増)や石油製品(5.7%、6.1%増)が堅調に推移した一方、輸送機器(4.1%、2.9倍)が激増した。

表3-1 インドの国・地域別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
米国 71,197 80,056 17.7 12.4
アラブ首長国連邦 25,382 31,335 6.9 23.5
オランダ 10,228 18,560 4.1 81.5
中国 23,051 15,176 3.3 △ 34.2
バングラデシュ 14,737 13,976 3.1 △ 5.2
シンガポール 10,631 11,805 2.6 11.0
英国 10,420 11,263 2.5 8.1
ドイツ 9,516 10,460 2.3 9.9
サウジアラビア 8,227 10,049 2.2 22.1
トルコ 7,246 10,012 2.2 38.2
日本 6,070 5,711 1.3 △ 5.9
合計(その他含む) 395,495 453,264 100.0 14.6

〔出所〕商工省・通商情報統計局(DGCI&S)から作成

表3-2 インドの国・地域別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)
国・地域 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
中国 87,637 102,610 14.2 17.1
アラブ首長国連邦 43,042 52,649 7.3 22.3
米国 41,314 51,318 7.1 24.2
サウジアラビア 27,279 43,315 6.0 58.8
イラク 26,209 37,230 5.2 42.0
ロシア 8,251 34,026 4.7 312.4
インドネシア 16,718 28,502 4.0 70.5
シンガポール 18,100 24,320 3.4 34.4
韓国 17,076 20,700 2.9 21.2
オーストラリア 15,089 19,693 2.7 30.5
日本 14,415 15,729 2.2 9.1
合計(その他含む) 573,173 720,233 100.0 25.7

〔出所〕商工省・通商情報統計局(DGCI&S)から作成

通商政策 
インド政府は既存の貿易協定の見直しにも意欲

インド政府は、慢性的な貿易赤字解消のために輸出促進を図る手段として、2021年以降、新たな二国間の自由貿易協定(FTA)・経済連携協定(EPA)の締結・交渉を積極的に進めている。これまでに締結した多国間を含むFTA・EPAの締結数は計13件となっている。2022年は、新たにアラブ首長国連邦(2022年2月調印、同年5月発効)とオーストラリア(2022年4月調印、同年12月発効)とEPAを締結した。また、2022年1月に英国とのEPA交渉を開始し、同年6月にEUとの交渉も9年ぶりに再開している。同年3月にはカナダとEPA交渉再開に、同年11月には湾岸協力理事会(GCC)ともEPA交渉開始にそれぞれ合意した。さらに、インドにとって貿易収支が赤字となっている国・地域との既存EPAに関しては、見直しにも意欲的な姿勢を見せている。2022年1月には韓国との包括的経済連携協定(CEPA)について、2023年8月にはASEANインド自由貿易協定(AIFTA)のうち、物品貿易協定(AITIGA)について、改定に向けた協議を行うことを発表した。

他方、インド政府は新たな多国間貿易協定の枠組みへの参加には消極的だ。インドは2022年5月に発足した米国主導のインド太平洋経済枠組み(IPEF)に参加しつつも、同年9月のIPEFにおける貿易分野への交渉参加は見送ることを表明している。

貿易保護主義的な政策も

インド政府は、貿易赤字の縮小や新規雇用の創出を目的として、スローガン「メーク・イン・インディア」や「自立したインド」の下、国内製造業の振興を図っている。GDPのうち製造業が占める割合を、2014年度の約15%から将来的に25%にまで引き上げる目標の達成に向け、投資誘致のための各種インセンティブを発表している。代表的なインセンティブとしては、2020年から導入された生産連動型優遇策(PLI)が挙げられる。PLIの仕組みは、政府の承認を得た新規投資の実行後、所定の要件を満たしていれば、新たに製造された製品の売り上げの増加額などに対して、複数年にわたり一定割合の補助金が製造者に支払われるというものだ。インド政府は現在、PLIの対象として14の重点分野を指定しているが、今後の拡充可能性にも言及している。

一方、インドでは貿易保護主義的な政策も打ち出されている。2022年2月にはドローンが輸入禁止品となったほか、2023年5月にはリンゴが、同年11月にはノートPCやタブレットが輸入規制対象となった。また、インド独自の強制認証規格の対象品目が順次拡大され、化学品の輸入に当たって情報開示義務が強化される動きは、輸入に対する非関税障壁にもなっている。

対内・対外直接投資 
対内直接投資は前年比増で引き続き好調

商工省産業国内取引促進局(DPIIT)の発表によると、2022年のインドの対内直接投資額(実行ベース)は前年比2.0%増の523億4,555万ドルとなり、2020年に次いで過去2番目に高い金額を記録した。国別にみると、前年と同様に、シンガポール(構成比33.0%、前年比28.9%増)、米国(15.3%、6.3%減)、モーリシャス(14.4%、13.7%減)の上位3カ国が全投資額の6割以上を占めた。

表4-1 インドの国・地域別対内直接投資【実行ベース】(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
シンガポール 13,392 17,266 33.0 28.9
米国 8,518 7,983 15.3 △ 6.3
モーリシャス 8,744 7,543 14.4 △ 13.7
オランダ 3,014 4,116 7.9 36.6
アラブ首長国連邦 1,131 3,290 6.3 190.9
日本 1,840 2,006 3.8 9.0
英国 1,653 1,816 3.5 9.9
ケイマン諸島 3,008 1,699 3.2 △ 43.5
キプロス 301 1,247 2.4 314.6
カナダ 403 817 1.6 102.8
合計(その他含む) 51,339 52,346 100.0 2.0

〔出所〕商工省"FDI Newsletter"から作成

表4-2 インドの国・地域別対外直接投資【届け出ベース】(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
シンガポール 7,202 5,136 21.9 △ 28.7
英国 1,516 5,004 21.3 230.1
米国 4,473 2,969 12.6 △ 33.6
アラブ首長国連邦 1,089 2,742 11.7 151.8
オランダ 2,291 1,496 6.4 △ 34.7
モーリシャス 1,386 1,196 5.1 △ 13.7
ノルウェー 141 494 2.1 250.9
英国領ヴァージン諸島 294 390 1.7 32.8
英国領ジャージー島 17 385 1.6 2,139.1
日本 4 4 0.0 0.1
合計(その他含む) 24,220 23,498 100.0 △ 3.0

〔出所〕インド準備銀行"Overseas Direct Investment" から作成

業種別では、全体の約2割を占めるコンピュータのソフトウエア・ハードウエア(23.5%、2.2%増)が前年に引き続き最大となったが、サービス(金融・BPOなど:15.9%、27.3%増)、貿易・卸売(10.9%、64.7%増)、建設(インフラ開発:5.5%、24.5%増)などが大きく伸びた。一方、前年に大きく増加した自動車産業(4.4%、64.0%減)は大幅な減少に転じた。

表5-1 インドの業種別対内直接投資【実行ベース】(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
業種 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
コンピュータのソフトウエア・ハードウエア 12,012 12,278 23.5 2.2
サービス(金融、BPO等) 6,552 8,341 15.9 27.3
貿易・卸売 3,456 5,694 10.9 64.7
建設(インフラ開発) 2,314 2,880 5.5 24.5
自動車産業 6,414 2,307 4.4 △ 64.0
非従来型エネルギー 1,375 2,077 4.0 51.1
医薬品 1,451 2,026 3.9 39.6
化学品(肥料以外) 714 1,875 3.6 162.8
合計(その他含む) 51,339 52,346 100.0 2.0

〔出所〕商工省"FDI Newsletter"から作成

表5-2 インドの業種別対外直接投資【届け出ベース】(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
業種 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
製造業 5,348 7,771 33.1 45.3
金融、保険、ビジネスサービス 8,946 6,418 27.3 △ 28.3
卸売、小売、貿易、レストラン、ホテル 3,381 4,434 18.9 31.1
輸送機器、倉庫、通信サービス 952 1,703 7.2 78.9
農業、鉱業 3,610 1,553 6.6 △ 57.0
建設 746 1,195 5.1 60.2
社会サービス 1,012 239 1.0 △ 76.3
電気、ガス、水 195 110 0.5 △ 43.8
合計(その他含む) 24,220 23,498 100.0 △ 3.0

〔出所〕インド準備銀行"Overseas Direct Investment"から作成

最大の対外直接投資先も引き続きシンガポール

インド準備銀行の発表によると、2022年のインドの対外直接投資額(届け出ベース)は、前年比3.0%減の234億9,786万ドルとなった。投資先としては、4年連続でシンガポール(構成比21.9%、前年比28.7%減)が最大であったが、英国(21.3%、3.3倍)が2位に浮上し、前年2位の米国(12.6%、33.6%減)が3位となった。

業種別では、製造業(33.1%、45.3%増)が大幅に伸び最大の投資分野となった一方、インド拠点の親会社による海外子会社への追加投資が中心の金融、保険、ビジネスサービス(27.3%、28.3%減)は減少に転じた。卸売、小売、貿易、レストラン、ホテル(18.9%、31.1%増)や輸送機器、倉庫、通信サービス(7.2%、78.9%増)も大きく増加した。

対日関係 
対日貿易では赤字幅が拡大

2022年の日本向け輸出額は、前年比5.9%減の57億1,050万ドル、日本からの輸入は9.1%増の157億2,900万ドルとなった。日本は、インドの貿易相手国としては輸出が26位(構成比1.3%、前年21位)、輸入が15位(2.2%、13位)であった。インドの対日貿易収支は100億1,850万ドルのマイナスとなり、赤字幅が前年の1.2倍に拡大した。

日本向け輸出を品目別にみると、有機・無機農業化学品(10.7%、20.1%増)が大きく伸びた一方、水産物(8.3%、3.8%増)や鉄金属・非鉄金属(7.0%、6.2%増)は緩やかな増加にとどまった。一方で、機械・器具(8.2%、18.3%減)や石油製品(6.8%、57.9%減)、宝石・宝飾品(6.6%、12.5%減)は減少した。

輸入では、化学材料・製品(14.8%、20.5%増)や鉄・鋼鉄(7.9%、27.8%増)が前年に引き続き拡大した一方、マシニングセンターなどの一般機械(12.3%、1.4%減)や鉄金属・非鉄金属(10.9%、10.0%減)は減少に転じた。

表6-1 インドの対日主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
有機・無機農業化学品 510 613 10.7 20.1
水産物 456 473 8.3 3.8
機械・器具 575 470 8.2 △ 18.3
鉄金属・非鉄金属 376 400 7.0 6.2
石油製品 927 391 6.8 △ 57.9
宝石・宝飾品 430 376 6.6 △ 12.5
輸送機器 306 358 6.3 17.1
鉄・鉄鋼 306 314 5.5 2.5
通信機器 201 284 5.0 41.5
化学残留物 274 270 4.7 △ 1.5
合計(その他含む) 6,070 5,711 100.0 △ 5.9

〔出所〕 商工省・通商情報統計局(DGCI&S)から作成

表6-2 インドの対日主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
化学材料・製品 1,931 2,327 14.8 20.5
一般機械 1,956 1,929 12.3 △ 1.4
鉄金属・非鉄金属 1,910 1,719 10.9 △ 10.0
鉄・鋼鉄 978 1,249 7.9 27.8
人造樹脂・プラスチック材 1,185 1,241 7.9 4.8
輸送機器 1,002 985 6.3 △ 1.8
電子部品 535 668 4.2 24.8
有機化学品 624 628 4.0 0.7
電気機器 559 595 3.8 6.4
機械工具類 569 560 3.6 △ 1.7
合計(その他含む) 14,415 15,729 100.0 9.1

〔出所〕 商工省・通商情報統計局(DGCI&S)から作成

在インド日系企業数は微減、拠点数は増加

2022年の日本からの直接投資(実行ベース)は前年比9.0%増の20億645万ドルとなり、投資国としては6位(前年7位)となった。在インド日本国大使館・ジェトロの調べによると、在インド日系企業数は前年比30社減の1,400社と、2年連続で減少した一方、拠点数は4,901拠点(前年比111拠点増)と増加した。

製造業では、凸版印刷(現TOPPAN)が2月に地場フィルムメーカーのマックス・スペシャリティー・フィルムズを、クボタが4月に地場トラクターメーカーであるエスコーツを、それぞれ連結子会社化した。また、パナソニックは4月に配線器具の新工場を南部アンドラ・プラデシュ州で稼働開始したほか、CKDは5月に空気圧機器や流体制御機器などの生産工場を北部ラジャスタン州に建設すると発表した。三菱電機は6月、FA制御システム製品の新工場を西部マハーラーシュトラ州に建設することを明らかにした一方、東海理化は7月、スマートフォンと連動する次世代型の自動車用スマートキーなどをラジャスタン州で生産するための工場建設について発表した。さらに、フジテックが8月、西部グジャラート州にエレベーター工場を有するエクスプレス・リフツの買収を発表した。東レが9月、南部タミル・ナドゥ州チェンナイに水処理研究拠点を開設したほか、エア・ウォーターも10月、チェンナイへの液化ガス製造プラントの新設を発表した。

なお、自動車分野の研究開発を進める動きもみられた。ルネサスエレクトロニクスが3月、財閥系タタ・エレクシーと協業し、電気自動車システム研究開発拠点を南部カルナータカ州ベンガルールに設立したことを発表した。その他、スズキも8月、デリーに100%出資の研究開発(R&D)センターを設立したことを発表した。

非製造業においては、富士通が4月にベンガルールに新たな研究拠点を設立したほか、メルカリは5月に、楽天シンフォニーは7月に、同都市での研究開発拠点設立をそれぞれ発表した。NTTデータが8月、R&Dセンター設立を発表した世界6カ国の中にインドも含まれたほか、PayPayが10月、同社初となる海外開発拠点を北部ハリヤナ州に設立した。

不動産分野では、東急不動産が4月、チェンナイと西部マハーラーシュトラ州ムンバイにおける分譲住宅開発事業に、11月には丸紅がプネの住宅開発・分譲事業に、それぞれ参画することを発表した。また、住友不動産が11月、ムンバイの新都心地区でオフィスビル用地を取得したことを発表した。

ベネッセが3月に学校教育支援事業を行うための現地法人を設立したほか、三菱UFJ銀行が8月、インド初の国際金融特区であるグジャラート州のグジャラート国際⾦融テックシティー(GIFTシティー)に特区初の邦銀支店を開業した。

インドから日本への直接投資(届け出ベース)は前年比0.1%増の377万ドルとなった。インド最大のアイウエア企業であるレンズカートによる、日本のOWNDAYS(オンデーズ)との経営統合が2022年6月に発表された。なお、2023年7月には、自動車部品事業を手掛けるインド地場企業マザーサン・グループが、ホンダの連結子会社である八千代工業の完全子会社化を目的とした株式取得に合意したことを発表している。

基礎的経済指標

人口
14億2,333万人 (2022年推計値)
面積
328万7,263平方キロメートル(2022年)
1人当たりGDP
2,379ドル(2022年)
(△はマイナス値)
項目 単位 2020年度 2021年度 2022年度
実質GDP成長率 (%) △ 5.8 9.1 7.2
消費者物価上昇率 (%) 6.2 5.5 6.7
失業率 (%) 8.8 7.7 7.5
貿易収支 (100万ドル) △ 102,152 △ 189,459 △ 265,291
経常収支 (100万ドル) 24,011 △ 38,691 △ 66,984
外貨準備高(グロス) (100万ドル) 549,087 594,356 521,419
対外債務残高(グロス) (億ドル) 5,734 6,191 6,247
為替レート ( 1 ドルにつき、インド・ルピー、期中平均) 74.1 73.9 78.6

注:
年度は4月~翌3月。
外貨準備高(グロス)、 為替レート:暦年
実質GDP成長率、経常収支、対外債務残高(グロス):2022年度は暫定値。
貿易収支:国際収支ベース(財のみ、BPM6フォーマット)
経常収支:国際収支ベース(BPM6フォーマット)
出所:
人口、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF
面積、実質GDP成長率、消費者物価上昇率:インド政府
1人当たりGDP:世界銀行
失業率:CMIE
貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):インド準備銀行(RBI)