EPAの原産品判定基準と特恵関税:インドネシア向け輸出

日本からインドネシアに貨物を輸出する場合のEPAの原産品判定基準と関税について教えてください。

日本からインドネシアに日本原産品を輸出する際、「経済上の連携に関する日本国政府とインドネシア共和国政府との間の協定(日・インドネシア経済連携協定/JIEPA)」(2008年7月1日発効)に基づく特恵関税の適用を受けることができます。

I. インドネシア輸入関税の撤廃

当協定の原産地規則で定められた基準を満たした原産品のインドネシア側関税撤廃スケジュールは、日・インドネシア経済連携協定の附属書1に定められています。
このスケジュールに基づき、インドネシア財務省は5年ごとに、当該期間中各年の、日・インドネシア経済連携協定の枠組みにおける品目ごとの輸入関税率を、財務大臣令で決定しています。輸入者はこのスケジュールにて、輸入時に有効な関税率を確認できます。2016年12月時点では、2012年12月17日付財務大臣規則第209号(No.209/PMK.011/2012)にて、2018年までの輸入関税率が示されています。

II. 日本原産品の判定基準

  1. 原産地規則
    当協定では第3章で原産地規則を定めています。これに従い、両国の原産品の判定を行います。原産品とみなされる産品は以下のとおりです。
    1. 当該締約国の領域において得られ、又は生産される産品。
    2. 当該締約国の原産材料のみから当該締約国の領域において生産される産品。
    3. 非原産材料を使用して当該締約国で生産される産品であって、当協定の附属書2(品目別規則)に定める実質的変更基準を満たすもの。実質的変更基準には下記3つの方法があり、通常i.またはii.のどちらかを満たすことが要求されます。以下の基準のどれに該当するかは附属書2の品目別規則に明記されています。HSコード(2002年版)ごとに定められているので、必ず確認してください。
      1. 付加価値基準:加工の結果、産品に付加された価値が特定の比率(例:40%)以上となる場合に、原産品とする。
      2. 関税分類番号変更基準:輸入原料・部品の関税分類番号と完成品の関税分類番号が異なれば、完成品の製造国の原産品とする。品目によってどの程度の番号の変更が求められるかは異なるので、附属書2の品目別規則を確認する必要がある。
      3. 加工工程基準:各製品について、重要と認められた製造作業又は技術的な加工作業を例示し、域内で当該加工が行われたことをもって原産品とする。当協定の場合、繊維製品・化学品が該当する。織物の場合は、製織と染色の2工程が必要となる。化学品の場合は、化学反応・精製・異性体分離・生物工学的工程のいずれかひとつの工程を経ることが必要である。
  2. 救済規定
    上記の基準のほかに救済(例外)規定が設けられています。僅少の非原産材料(価額の10%以下の非原産材料、繊維製品については重量の7%)は考慮しなくてよいこと、自己生産の材料を中間材料として認めること、一方の国の原産材料を用いてもう一方の国で生産した場合、原産材料の価額を累積できることなどがあります。
  3. 積送基準

    日本からインドネシアに輸出する場合、日・インドネシア経済連携協定に基づく特恵関税の適用を受けるためには、原則、直接輸送されなければなりません。途中で第三国を経由するのは、荷の積み替え、積み替えのために荷を良好な状態に保つために保存する作業などを行う場合のみ認められます。

    なお、「日・インドネシア経済連携協定の関税率決定指針に係わる2008年6月30日付関税総局長回状第26号(No.SE-26/BC/2008)」によると、インボイス番号と日付に関する原産地証明書(JIEPA Form)の第7項に一つ以上のインボイスおよび/または日本以外の国で発給されたインボイスが記載されていても、それをJIEPA 特恵関税制度の便宜を供与しない理由とすることはできない、と規定されており、日本・インドネシア以外の第三国による仲介貿易にも、当協定に基づく特恵関税の適用が認められていることが分かります。

III. 日・インドネシア経済連携協定に基づく特定原産地証明書の取り扱い

  1. 発給機関
    日・インドネシア経済連携協定に基づく特定原産地証明書の日本側発給機関は、日本商工会議所です。輸出者は日本商工会議所に企業情報を登録した後、輸出品が日本原産品と認められるかどうかの判定依頼をかけます。判定により原産品と承認された後初めて、特定原産地証明書の発給を申請することができます。以上はオンラインで手続きします(http://www.jcci.or.jp/international/certificates-of-origin/index.php外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。
  2. 特定原産地証明書
    日本商工会議所が発給する原産地証明書(Certificate of Origin Form JIEPA)の様式は、「運用上の手続規則Appendix 1-A(Japan)」に例示されています。
    特定原産地証明書は発給日から1年間有効です。
  3. 輸入通関
    通常必要な書類に加えて、日・インドネシア経済連携協定に基づく特定原産地証明書(Certificate of Origin Form JIEPA)の1枚目を税関に提出します。
    輸入申告書(PIB)の輸入条件遵守便宜の欄には、日・インドネシア経済連携協定の枠組みにおける特恵関税譲許コードであることを示す「56」を記入します。

IV. 特定用途免税制度(User Specific Duty Free Scheme: USDFS)

特定用途免税制度は、「インドネシア共和国と日本との経済連携に関する合意の枠組みにおける特定用途免税制度を用いた関税率の決定に関する2008年6月30日付財務大臣規則第96 号〔No.96/PMK.011/2008、2010年2月12日付財務大臣規則第31号(No.31/PMK.011/2010)で変更〕」および「インドネシア共和国と日本との経済連携に関する合意の枠組みにおける特定用途免税制度を用いた関税率の利用が可能な産業グループに関する2008年7月1日付工業大臣規則第43号〔No.43/M-IND/PER/7/2008、2013年2月11日付工業大臣規則第4号(No.4/M-IND/PER/2/2013)で変更〕」 により、インドネシア政府が指定する検査機関により承認を受けた生産者が直接輸入した日本原産品が特定の用途に使われるものである場合に適用されます。特定用途とは、(1)自動車・二輪車およびその部品、(2)電気・電子機器、(3)建設機械および重機、(4)石油・ガス・電力産業の4分野で、インドネシア産品と競合しないことが条件となっています。また、インドネシア政府は2008年7月1日付工業大臣規則第44号(No.44/M-IND/PER/7/2008)にて、PT. Surveyor Indonesiaを検査機関として指定しています。

検査機関により承認を受け、特定用途免税制度工業検査証明書(SKVI-USDFS)を取得した生産者=輸入者は、財務省関税総局通関技術局長に申請し、その審査を経て、当制度の関税率の使用について財務大臣決定を受ける必要があります〔2008年6月30日付財務省関税総局長規則第9号(No. P-09/BC/2008)〕。

V. その他

日・インドネシア経済連携協定では、MFN税率(最恵国税率=WTO協定税率)とEPA特恵関税率を比べてMFN税率の方が低い場合、特定原産地証明書を取得する必要はありません。MFN税率が低い場合、誤って特定原産地証明書を提出しても低い方の関税率が適用されますが、事前にEPA特恵関税率とMFN税率をご確認ください。

参考資料・情報

外務省:
日インドネシア経済連携協定(日本語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
日インドネシア経済連携協定 附属書1(Annex 1 referred to in Chapter 2 Schedules in relation to Article 20)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(2.1MB)
運用上の手続規則(関税割当制度、特定用途免税制度、原産地規則・証明手続関係)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(300KB)

日本商工会議所:
経済連携協定(EPA)に基づく特定原産地証明書の発給手続きについて外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

ジェトロ:
国別情報 日本・インドネシア経済連携協定
EPA活用マニュアル 日本インドネシアEPA版PDFファイル(2.2MB)
インドネシア共和国と日本との経済連携に関する合意の枠組みにおける特定用途免税制度を用いた関税率の決定に関するインドネシア共和国財務大臣規定 No. 96 /PMK.011/2008(和訳)PDFファイル(143KB)
インドネシア共和国と日本との経済連携に関する合意の枠組みにおける特定用途免税制度(USDFS/User Specific Duty Free Scheme)を用いた関税率の利用が可能な産業グループに関するインドネシア工業大臣規定 No.43/M-IND/PER/7/2008(和訳)PDFファイル(165KB)
インドネシア共和国と日本との経済連携に関する合意の枠組みにおける関税率実施指針に関する通達関税総局長回状 No.SE-26/BC/2008(和訳)PDFファイル(220KB)

関係法令

2010年財務大臣規則第31号(2008年財務大臣規則第96号の変更)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(90KB)
2012年財務大臣規則第209号(2013~2018年の日・インドネシア経済連携協定の枠組みにおける輸入関税率)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(5.1MB)
2008年工業大臣規則第27号(特定用途免税制度工業検査証明書について)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2008年工業大臣規則第44号(特定用途免税制度の検査機関指定)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2013年工業大臣規則第4号(2008年工業大臣規則第43号の変更)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2008年関税総局長規則第9号(特定用途免税制度利用者の登録)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(31KB)

調査時点:2016/12

記事番号: E-080310

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