インドネシアの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2023年の実質GDP成長率は5.1%、前年を下回るも堅調に推移。
  • 貿易は国際的な資源価格下落を主な要因とし、輸出入額ともに前年比減。
  • 対内直接投資は前年から10.2%増加し、過去最高。
  • 日本インドネシアEPA(JIEPA)の改正交渉が大筋合意。
  • 日本からの直接投資は前年比30.2%増加。

公開日:2024年10月23日

マクロ経済 
2023年の経済成長率は5.1%、前年を下回るも堅調に推移

2023年の実質GDP成長率は5.1%だった。成長率は2年連続で5%を超えたものの、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)禍から回復した前年(5.3%)からは鈍化した。国際資源価格の下落などを背景に輸出が減少したものの、内需は堅調に推移した。四半期別にみると、第1四半期(1~3月)は前年同期比5.0%、第2四半期(4~6月)は5.2%、第3四半期(7~9月)は4.9%、第4四半期(10~12月)は5.0%だった。

需要項目別にみると、インドネシア政府(以下、政府)が2023年6月に新型コロナについてパンデミック(世界的流行)からエンデミック(一定の周期で繰り返される流行)に移行したと宣言したことなどから、内需は堅調に推移した。実質GDP成長率の約5割を占める家計最終消費が前年比4.8%増だったほか、国内総固定資本形成(投資)が4.4%増だった。政府最終消費支出は、新首都関連の支出を主要因とし、3.0%増だった。伸び率が最も高かったのは民間非営利団体最終消費支出で9.8%だった。2024年2月に実施された大統領選挙の準備に関わる活動が成長率を大きく引き上げたとみられる。一方、国際資源価格の下落や最大の貿易相手国である中国の景気停滞など外需低迷を背景に、財貨・サービスの輸出は1.3%の成長にとどまり、輸入は原材料・補助材料の減少を主な要因として1.7%減となった。産業別では、全ての産業でプラス成長だった。実質GDP成長率の18.7%を構成する製造業が4.6%増だったほか、運輸・倉庫が14.0%増、その他サービスが10.5%増、宿泊施設・飲食10.0%増と高い成長となった。

金融市場では、2023年に2度の政策金利の引き上げが行われた。インドネシア中央銀行(以下、中銀)は2022年8月に2018年11月以来となる引き上げを実施して以来6カ月連続で政策金利を引き上げ、2023年1月には5.75%とした。その後は政策金利を据え置いていたものの、米国の利上げなどで10月にはルピアが1ドルあたり1万6,000ルピア近くまで下落したことから、中銀は10月、ルピアの安定性を維持することを目的に2023年1月以来9カ月ぶりに政策金利を引き上げ、6.0%に設定した。消費者物価指数(CPI)の上昇率は、エルニーニョ現象の影響などを受け食料品価格が高騰したものの、5月以降は政府目標である2~4%の範囲内で推移した。

表1 インドネシアの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2021年 2022年 2023年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 3.7 5.3 5.1 5.0 5.2 4.9 5.0
階層レベル2の項目家計最終消費支出 2.0 4.9 4.8 4.5 5.2 5.1 4.5
階層レベル2の項目民間非営利団体最終消費支出 1.6 5.7 9.8 6.2 8.6 6.2 18.1
階層レベル2の項目政府最終消費支出 4.3 △ 4.5 3.0 3.5 10.6 △ 3.9 2.8
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 3.8 3.9 4.4 2.1 4.6 5.8 5.0
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸出 18.0 16.2 1.3 12.2 △ 3.0 △ 3.9 1.6
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸入 24.9 15.0 △ 1.7 3.8 △ 3.1 △ 6.8 △ 0.2

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。
〔出所〕 インドネシア統計庁(BPS)

貿易 
国際資源価格の低下などを背景に貿易黒字は減少傾向

2023年の貿易額(通関ベース)は、輸出が前年比11.3%減の2,588億5,700万ドル、輸入が6.6%減の2,218億8,600万ドルとなり、いずれも過去最高だった2022年を下回った。パーム油や石炭といったインドネシアの主要輸出商品の価格低下、および中国など主要貿易相手国の景気減速が輸出総額の減少に影響した。輸入については、原材料・補助材料の減少が影響した。貿易収支は前年比32.2%減の369億7,100万ドルの黒字となり、2020年以降4年連続で黒字となった。

輸出を品目別にみると、輸出額の20%超を占める鉱物性燃料が前年比16.2%減少したほか、主要な輸出品目であるパーム油などの動植物性油脂が19.2%減少し、鉄鋼は4.0%減少した。鉱物性燃料や動植物性油脂については、資源の国際価格下落が輸出額減少の主要因とみられる。国・地域別にみると、主要相手国への輸出額は軒並み減少した。最大の輸出相手国である中国への輸出は前年比1.5%減にとどまったものの、米国向け(17.6%減)、日本向け(16.3%減)は減少が顕著だった。

輸入を品目別にみると、機械類・原子炉・ボイラーが前年比1.8%増加したほかは、主要品目が軒並み減少した。主要な輸入品目のうち、輸入額の約18%を占める鉱物性燃料は10.6%減、電気機器・部品は2.3%減、鉄鋼は18.3%減となった。また、コメの輸入額は前年比で約9倍となった。コメについては、エルニーニョ現象に伴う干ばつによりコメ生産量が2022年の3,154万トンから3,110万トンに減少し、コメの国内価格が上昇した。食糧調達公社(BULOG)は、コメの備蓄量と供給量を維持しつつ、コメ価格上昇によるインフレ圧力を緩和するため、前年比約7倍に相当する306万トンのコメ輸入を実施した。また輸入額の増加には7月以降にインドが一部のコメ輸出を禁止したことによる国際価格上昇も要因となった。品目の用途別にみると、消費財と資本財が前年比で2022年を上回る一方、原材料・補助材料は主に鉱物性燃料、鉄鋼、プラスチック製品の輸入の減少を背景に11.1%減となった。国・地域別にみると、主要国からの輸入について軒並み減少した。最大の輸入相手国である中国からの輸入が7.2%減少したほか、シンガポールからの輸入は5.2%減、日本からの輸入は3.8%減となった。

表2-1 インドネシアの主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
項目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
鉱物性燃料 71,000 59,495 23.0 △ 16.2
階層レベル2の項目石炭 46,739 34,592 13.4 △ 26.0
階層レベル2の項目石油・ガス 9,822 8,777 3.4 △ 10.6
動植物性油脂 35,204 28,453 11.0 △ 19.2
階層レベル2の項目パーム油 27,766 22,685 8.8 △ 18.3
鉄鋼 27,824 26,705 10.3 △ 4.0
階層レベル2の項目フェロアロイ 13,708 15,300 5.9 11.6
階層レベル2の項目ステンレス鋼のフラットロール製品 6,818 5,539 2.1 △ 18.8
電気機器 14,553 14,347 5.5 △ 1.4
階層レベル2の項目電話機、携帯電話 1,980 2,542 1.0 28.3
階層レベル2の項目電気機器(固有の機能を有するものに限る) 2,312 1,887 0.7 △ 18.3
輸送機器(鉄道除く) 10,981 11,153 4.3 1.6
階層レベル2の項目乗用車(公共交通機関除く) 5,545 6,067 2.3 9.4
階層レベル2の項目輸送用機器の部分品 2,003 2,038 0.8 1.7
鉱石、スラグおよび灰 10,300 8,721 3.4 △ 15.3
階層レベル2の項目銅鉱 9,244 8,326 3.2 △ 9.9
天然又は養殖の真珠 6,304 7,506 2.9 19.1
階層レベル2の項目身辺用細貨類及びその部分品 3,783 5,529 2.1 46.2
ニッケル及びその製品 5,978 6,816 2.6 14.0
機械類・原子炉・ボイラー 6,955 6,460 2.5 △ 7.1
階層レベル2の項目印刷機・プリンター 1,775 1,354 0.5 △ 23.7
履物 7,742 6,439 2.5 △ 16.8
合計(その他含む) 291,979 258,857 100.0 △ 11.3

〔出所〕Global Trade Atras (原データはインドネシア中央統計庁(BPS))

表2-2 インドネシアの主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
項目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
鉱物性燃料 44,897 40,120 18.1 △ 10.6
階層レベル2の項目石油・歴青油(原油除く) 23,399 20,280 9.1 △ 13.3
階層レベル2の項目石油・歴青油(原油に限る) 11,455 11,142 5.0 △ 2.7
機械類・原子炉・ボイラー 31,572 32,155 14.5 1.8
階層レベル2の項目自動データ処理機械 3,630 2,741 1.2 △ 24.5
階層レベル2の項目ブルドーザー、アングルドーザー、地ならし機、スクレーパーなど 2,709 2,096 0.9 △ 22.6
電気機器・部品 26,388 25,782 11.6 △ 2.3
階層レベル2の項目電話機、携帯電話 6,425 6,398 2.9 △ 0.4
階層レベル2の項目集積回路 3,960 3,937 1.8 △ 0.6
鉄鋼 13,928 11,381 5.1 △ 18.3
階層レベル2の項目鉄・非合金鋼の半製品 2,361 2,156 1.0 △ 8.7
輸送機器(鉄道除く) 9,500 10,200 4.6 7.4
階層レベル2の項目トラクターなど部分品および附属品 4,147 3,661 1.6 △ 11.7
階層レベル2の項目貨物自動車 2,418 2,622 1.2 8.4
プラスチックおよびその製品 11,123 9,402 4.2 △ 15.5
有機化学品 7,712 6,422 2.9 △ 16.7
穀物 4,455 5,953 2.7 33.6
階層レベル2の項目小麦およびメスリン 3,810 3,758 1.7 △ 1.4
階層レベル2の項目コメ 202 1,789 0.8 785.5
鉄鋼製品 3,985 4,349 2.0 9.1
食品工業において生ずる残留物およびくずならびに調製飼料 4,582 4,312 1.9 △ 5.9
階層レベル2の項目大豆油かす 3,194 3,018 1.4 △ 5.5
合計(その他含む) 237,447 221,886 100.0 △ 6.6

〔出所〕Global Trade Atras (原データはインドネシア中央統計庁(BPS))

表3-1 インドネシアの主要国・地域別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
アジア・大洋州 203,985 182,242 70.4 △ 10.7
階層レベル2の項目ASEAN 61,166 52,795 20.4 △ 13.7
階層レベル3の項目シンガポール 14,396 12,607 4.9 △ 12.4
階層レベル3の項目マレーシア 15,452 12,460 4.8 △ 19.4
階層レベル3の項目フィリピン 12,903 11,040 4.3 △ 14.4
階層レベル3の項目タイ 8,169 7,285 2.8 △ 10.8
階層レベル3の項目ベトナム 8,286 7,536 2.9 △ 9.0
階層レベル2の項目中国 65,924 64,939 25.1 △ 1.5
階層レベル2の項目日本 24,845 20,790 8.0 △ 16.3
階層レベル2の項目インド 23,379 20,291 7.8 △ 13.2
階層レベル2の項目韓国 12,814 10,302 4.0 △ 19.6
階層レベル2の項目台湾 8,703 6,704 2.6 △ 23.0
階層レベル2の項目オーストラリア 3,470 3,178 1.2 △ 8.4
階層レベル2の項目香港 2,953 2,651 1.0 △ 10.2
米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA) 31,181 26,713 10.3 △ 14.3
階層レベル2の項目米国 28,202 23,251 9.0 △ 17.6
欧州 25,269 20,998 8.1 △ 16.9
階層レベル2の項目EU27 21,498 16,655 6.4 △ 22.5
階層レベル2の項目英国 1,664 1,522 0.6 △ 8.5
湾岸協力会議(GCC)諸国 5,243 6,086 2.4 16.1
階層レベル2の項目アラブ首長国連邦 2,300 2,649 1.0 15.2
合計(その他含む) 291,979 258,857   100.00 △ 11.3

〔注〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔出所〕 Global Trade Atras(原データはインドネシア中央統計庁(BPS))

表3-2 インドネシアの主要国・地域別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
アジア・大洋州 174,822 160,405 72.3 △ 8.2
階層レベル2の項目ASEAN 50,184 46,871 21.1 △ 6.6
階層レベル3の項目シンガポール 19,409 18,410 8.3 △ 5.2
階層レベル3の項目マレーシア 12,476 10,761 4.8 △ 13.7
階層レベル3の項目タイ 10,989 10,253 4.6 △ 6.7
階層レベル3の項目ベトナム 4,818 5,300 2.4 10.0
階層レベル2の項目中国 67,724 62,881 28.3 △ 7.2
階層レベル2の項目日本 17,177 16,517 7.4 △ 3.8
階層レベル2の項目韓国 11,718 10,526 4.7 △ 10.2
階層レベル2の項目オーストラリア 9,863 9,300 4.2 △ 5.7
階層レベル2の項目インド 9,330 6,701 3.0 △ 28.2
階層レベル2の項目台湾 4,453 3,948 1.8 △ 11.3
階層レベル2の項目香港 2,976 2,527 1.1 △ 15.1
欧州 13,864 16,324 7.4 17.7
階層レベル2の項目EU27 11,667 14,121 6.4 21.0
階層レベル2の項目英国 1,040 1,169 0.5 12.4
米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA) 14,951 13,793 6.2 △ 7.7
階層レベル2の項目米国 11,614 11,277 5.1 △ 2.9
サウジアラビア 5,491 4,067 1.8 △ 25.9
アフリカ 10,231 9,861 4.4 △ 3.6
階層レベル2の項目ナイジェリア 4,321 3,941 1.8 △ 8.8
合計(その他含む) 237,447 221,886 100.0 △ 6.6

〔注〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔出所〕 Global Trade Atras(原データはインドネシア中央統計庁(BPS))

政府は国内産業の保護・競争力強化を推進

政府は独立100周年にあたる2045年の先進国入りを目標に掲げている。同目標達成に向けて、国家開発企画庁(Bappenas )は2023年6月、「2025~2045年国家長期開発計画(RPJPN) 」 の最終案を発表した 。同案によると、2045年までに「中進国の罠」を脱して先進国 入りを達成するには、2025年から2045年までの期間に平均GDP成長率6~7%を達成しなければならない。

しかし、経済成長の基盤である製造業のGDPに占める比率は、2005年の27.4%から2022年には18.3%へと低下している 。同庁は2045年の目標として製造業の同比率を28%に設定 しており、目標の実現に向けて、国内産業の競争力強化を目的とした政策を進めている。政府が進める産業競争力強化の政策としては、国産品優先政策(P3DN政策)、商品バランスシステム、鉱物資源の国内加工および川下産業育成の推進も含めた産業の高付加価値化があるが、同時に輸入制限の側面を持つ政策としても捉えることができる。

政府は、2018年からP3DN政策 を実施している。同政策は、産業の競争力強化についてのプログラムで、インドネシア産の原材料・部品の利用を積極的に促進するものだ。インドネシアは同プログラムに基づき、個別商品ごとに国産化率証明書を付与するなどして、国産品の活用を奨励している。政府調達では、国産化率(TKDN)が40%以上の製品(国産品)の調達が義務付けられている。政府調達以外においても、携帯電話、太陽光発電関連機器、バッテリー電気自動車など特定の製品は、⼀定以上の国産化率を満たすことが義務付けられている。また、国産化率は、税制などの優遇措置を受ける際の条件としても活用される。

政府調達での国産品調達義務など国産化率に関する措置は、本来は輸入規制が目的ではないが、最近では輸入に対しても制度の運用が広がり、企業活動への影響が散見される。具体的には、日系企業が輸入許可の申請を行う過程で、輸入が必要である理由や国産代替品の有無、国産化に切り替える予定の有無などを工業省から確認され、回答内容によって許可される輸入量や許可期間が削減される事例が生じている。

商品バランスシステム(SINAS-NK)の導入も進んでいる。SINAS-NKでは、政府が一定期間の国内需要と国内外の供給量などの情報データを収集した上で需給バランスを決定し、需給バランスに従って輸入割当量が決定される。同システム導入の目的は、輸出入における許可手続きの簡素化と透明化、工業用原材料や補助剤の在庫確保などがある一方、実質的には政府が推進するP3DN政策の一環として、輸入制限措置として機能させることが狙いだと考えられる。

商業大臣規程2020年第25号に基づき導入されたSINAS-NK は、当初、コメ、砂糖、牛肉、塩、魚類の5 品目のみを対象とするものであった 。 政府は、2023年から鉄鋼・合金鋼およびその派生物、プラスチック原料、ガラスシートなど、対象品目をHSコードベースで3,917品目に順次拡大する方針を示し、これら商品の輸入の締め付けにつながるのではとの指摘があがっていた。

実際に2023年のシステムが稼働すると、輸出入を所管する工業省や商業省が同制度に基づいた輸入割当量を算出できない事態が発生し、同年 2月下旬に経済担当調整大臣府から関係省庁に対して、SINAS-NK導入前の算出方法に基づいた輸入割当量の決定を行うよう指示が出された。この過程で鉄鋼やプラスチック原材料など複数の製品分野で、企業による輸入割当の取得手続きが進まない事態が発生したものの、現在は解消している。

2023年の混乱もあり、2024年度の対象品目は制度導入当初の5品目(コメ、砂糖、牛肉、塩、魚類)に加え、トウモロコシ、航空燃料、LPガス(液化天然ガス)、天然ガス、天然ガス凝縮液、原油、燃油(灯油、ガソリン、ディーゼル、船舶用ディーゼル)への範囲拡大にとどまっている。一方で商業省は「同システムの対象品目については拡大が検討されている」と説明していることから、今後の対象品目の拡大に留意する必要がありそうだ。米国通商代表部(USTR)は 2023年版「外国貿易障壁報告書(NTE)」の中で、SINAS-NKに関し「インドネシア政府が商品の生産量と消費量のバランスに基づいて輸入の許認可を行うことは貿易制限的な措置である」と指摘した。

2023年からボーキサイト鉱石の輸出を禁止

インドネシアは国内に豊富な天然資源を有し、輸出に占める一次産品の比率が高い状況にある。政府は、国際資源価格変動の影響を受けやすい資源依存型の経済構造から脱却することを狙いとし、未加工鉱石の輸出を禁止し国内での鉱石の精製や製錬等を義務付けることで、資源の国内加工および川下産業育成の推進も含めた高付加価値化を進めようとしている。特にニッケル鉱石については世界最大の埋蔵量と産出量を擁しており、自国におけるニッケルの生産・精錬をはじめ、電気自動車(EV)車両およびバッテリーのサプライチェーン拠点化を目指している。これまでのインドネシアの鉱物資源政策を振り返ると、未加工鉱石の輸出禁止に関しては、2009年1月に施行された法律2009年第4号(2009年鉱物石炭鉱業法)で、鉱物資源の高付加価値化のため、同法施行から5年後の2014年1月には、未加工鉱石の輸出を禁止し国内に精錬所の設置など行うことを定めた。実際に同年同月から、ニッケルの未加工鉱石が輸出禁止となったが、2017年1月にはエネルギー鉱物資源相規則2017年第5号で輸出禁止の条件を緩和し、2022年1月までは低品位のニッケル鉱石の輸出を可能とした。その後政府は、ニッケルの精錬所が増加したことを理由に期限を2年前倒しして、2020年1月から再びニッケル鉱石の輸出を禁止した。2009年鉱物石炭鉱業法の改正法にあたる法律2020年第3号(2020年鉱業法)では、施行日(2020年6月10日)の3年後から、原則、未加工鉱物にかかる輸出を全面禁止にするとした。

政府は2023年6月、2020年鉱業法に従い 、ボーキサイト鉱石の輸出も禁止した。一方、同じく禁輸措置を導入予定だった銅精鉱などについては、国内の製錬設備が整っていないことを理由に、製錬所の建設進捗率 に応じた輸出税を課すことを条件に、輸出を認めている。9 月には国内戦略産業への供給確保を目的として、重要鉱物47種類が指定され、禁輸されたニッケルやボーキサイトのほか、これまでにも輸出禁止鉱物の対象候補として浮上した錫や銅などが含まれており、国内の製錬所建設進捗率に応じて、今後これらの鉱物資源についても禁輸される可能性がある。

2024年2月の大統領選に勝利し、10月に大統領に就任するプラボウォ・スビアント国防相は、ジョコ・ウィドド現政権が進めている鉱業にかかる高付加価値化政策を継続し、パーム原油(CPO)や海藻類のバイオ燃料や化粧品への加工など、農業、漁業などへも拡大する意向を示している。

通商政策 
日インドネシアEPA(JIEPA)の改正交渉が大筋合意

商品バランスシステムの導入や鉱物資源の輸出禁止など保護主義的ともとれる政策運営が見られるインドネシアだが、他国・地域との二国間・多国間の枠組みでの自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)については、積極的に推進する通商政策を展開している。

2022年1月に発効した地域的な包括的経済連携協定(RCEP)について、インドネシアは2022年8月に国会における批准手続きを終了し、2023年1月に発効した。同月には2020年12月に署名されていた韓国との包括的経済連携協定(CEPA)が発効、また9月にはアラブ首長国連邦(UAE)とのCEPAも発効した。UAEとのCEPA発効により、インドネシアの発効済みの二国間自由貿易協定(FTA)/EPAは6本となった。

また、新規のFTA交渉のみならず、既存FTAの改定交渉にも注力している。

2023年12月には日インドネシアEPAの改正交渉が大筋合意に至り、2024年8月に両国間で改正議定書に署名された。同EPAは2008年7月に発効し、2013年12月に一般見直しの開始に合意、2015年5月に改正交渉が開始していた。改正EPAが発効すれば、日本からインドネシアへの輸出について自動車7品目や鉄鋼製品5品目の関税の段階的撤廃が実現するほか、鉄鋼7品目等の関税が削減される。また、日本原産の鉄鋼・鉄鋼製品等のインドネシアへの輸出に関し、条件を満たす事業者に免税を適用する「特定用途免税制度」が改善される見込みである。また、新たな電子商取引章が設けられ、情報越境移転の制限禁止やコンピューター関連設備の設置要求の禁止、ソースコード開示要求の禁止などの規定が盛り込まれた。インドネシア商業省は2025年中に国内における承認手続きを終えるとしている。同EPAについては、2023年6月から原産地証明書(CO)の電子データ交換の運用が開始された。これまでは発給機関の窓口においてCOの紙原本を受け取り、輸入者に紙原本を郵送する必要があったが、輸出国におけるCO発給機関と輸入国税関との間でCOの電子データが直接交換されることにより、COの真正性の確保、リードタイムの短縮につながると期待される。

インドネシアが加盟するASEANの枠組みでも、2023年8月にASEAN・オーストラリア・ニュージーランドFTA(AANZFTA)の第2改定議定書に署名したほか、ASEAN中国FTA(ACFTA)3.0の改定交渉が2024年2月に開始した。ACFTA3.0は2024年内の妥結を目指して複数回の交渉会合が開催されるなど活発な動きを見せている。

表4 インドネシアのFTA発効・交渉状況(単位:%)
FTA 発効年月 インドネシアの貿易に占める構成比(2023年)
往復 輸出 輸入
発効済み アラブ首長国連邦・インドネシア包括的経済連携協定 2023年9月 1.0 1.0 1.1
韓国・インドネシア包括的経済連携協定 2023年1月 4.3 4.0 4.8
EFTA・インドネシア包括的経済連携協定 2021年11月 0.8 1.1 0.5
オーストラリア・インドネシア包括的経済連携協定 2020年7月 2.6 1.2 4.2
チリ・インドネシア包括的経済連携協定 2019年8月 0.1 0.1 0.1
日本・インドネシア経済連携協定(JIEPA) 2008年7月 7.6 8.0
ASEAN物品貿易協定(ATIGA)
(旧:ASEAN自由貿易地域(AFTA)形成のための共通効果特恵関税(CEPT)協定)
1993年1月 20.8 20.4 21.2
交渉中 EU・インドネシア自由貿易協定 6.4 6.4 6.4
インド・インドネシア包括的経済協力協定 5.6 7.8 3.0
メルコスール・インドネシア包括的経済連携協定(CEPA) 1.6 0.6 2.8
ユーラシア経済連合(EAEU)・インドネシア自由貿易協定 0.8 0.4 1.2
カナダ・インドネシア包括的経済連携協定 0.7 0.5 1.0
インドネシア・トルコ包括的経済連携協定 0.4 0.6 0.3

〔注1〕構成比については、輸出はインドネシア原産品(再輸出を除く)、輸入は輸入総額を使用。
〔注2〕署名(発効待ち)の協定はなし。
〔出所〕:Global Trade Atras、ジェトロ「世界のFTAデータベース」

2024年はOECDの加盟手続きなどが本格化

FTA/EPAに加えて、インドネシアは「先進国クラブ」とも評される経済協力開発機構(OECD)などの経済的枠組みへの積極的な参画にも乗り出した。ジョコ大統領は政権誕生以来、汚職撲滅などの国内改革を重要なアジェンダとして取り組んできたが、OECDへの加盟プロセスを通じて、国際的なスタンダードと整合的な投資環境を整備することで、さらなる改革および外資の投資誘致の促進を目的としている。OECDは2024年2月にインドネシアの加盟協議を開始すると発表し、5月の閣僚理事会では「OECD加盟ロードマップ」が採択された。今後、加盟手続きが本格化すると見込まれる。インドネシアの加盟が実現すれば、アジアからは日本、韓国に次いで3カ国目、東南アジアでは初となる。OECDへの加盟プロセスでは貿易や投資、腐敗防止、環境保護、気候変動対策など26の技術委員会による評価が行われる。また、アイルランガ・ハルタルト経済担当調整相は同じく2月、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)への加入希望を表明した。インドネシアは既にインド太平洋経済枠組み(IPEF)などにも加盟しており、こうした枠組みへの参加を通じた同国ビジネス環境の改善が期待される。

対内直接投資 
対内直接投資は前年に続き過去最高を更新

インドネシア投資省・投資調整庁(BKPM)によると、2023年の対内直接投資額(実行ベース)は502億6,750万ドルで、前年から10.2%増加して過去最高を更新した。

国・地域別では主要な投資元であるシンガポールが153億5,520万ドル(前年比15.6%増)、中国が74億3,840万ドル(9.6%減)、香港が65億480万ドル(18.0%増)、日本が46億3,950万ドル(30.2%増)、マレーシアが40億6,020万ドル(21.4%増)となった。シンガポールからの投資は前年に続き、基礎金属・金属製品・非機械および器具分野が最大だった。中国の投資は、中部スラウェシ州や北スラウェシ州のニッケル精錬所に加え、北マルク州で車載電池大手の寧徳時代新能源科技(CATL)の子会社である寧波普勤時代(CBL)が進めるニッケルの採掘・製錬を含むEV用バッテリー関連事業、2023年10月に運行を開始したジャカルタと西ジャワ州バンドン間の高速鉄道建設などが主要な投資案件とみられる。また、EVにかかる新規投資の発表も相次いだ。上海汽車集団(SAIC Motor)傘下のMG、合衆新能源汽車(NETA)、BYDモーター・インドネシアなどが、今後インドネシアでの現地生産を開始すると発表した。香港からの投資は、2023年5月にインドネシアの鉱山開発企業アネカ・タンバン(Antam)と中国CBLの子会社である香港CBLが、北マルク州にあるニッケル鉱山の部分所有権に関する条件付き株式購入契約を締結し、EVバッテリーエコシステム開発プロジェクト推進にかかる協力関係を表明するなど、北マルク州のニッケル精錬所に関する投資が大きかった。マレーシアからの投資は、韓国化学大手ロッテ・ケミカルのマレーシア法人、ロッテ・ケミカル・タイタン・ホールディングス(Lotte Chemical Titan Holdings)がバンテン州で建設を進める大規模な石油化学コンビナート事業が主な案件とみられる。同事業は2022年に着工し、2025年の完成を見込んでいる。

表5 インドネシアの国・地域別対内直接投資[実行ベース](単位:件、100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2022年 2023年
金額 件数 金額 構成比 伸び率
アジア大洋州 37,341 45,788 41,799 83.2 11.9
階層レベル2の項目日本 3,563 6,155 4,639 9.2 30.2
階層レベル2の項目中国 8,226 6,833 7,438 14.8 △ 9.6
階層レベル2の項目香港 5,514 3,597 6,505 12.9 18.0
階層レベル2の項目韓国 2,298 5,895 2,544 5.1 10.7
階層レベル2の項目ASEAN 16,848 18,254 19,650 39.1 16.6
階層レベル3の項目シンガポール 13,281 14,894 15,355 30.5 15.6
階層レベル3の項目マレーシア 3,343 2,712 4,060 8.1 21.4
階層レベル3の項目タイ 209 458 186 0.4 △ 11.2
階層レベル2の項目インド 128 1,457 275 0.5 115.8
階層レベル2の項目オーストラリア 524 2,522 545 1.1 4.0
欧州 2,902 17,838 3,029 6.0 4.4
階層レベル2の項目EU27 2,098 10,429 2,328 4.6 11.0
階層レベル2の項目英国 628 1,739 387 0.8 △ 38.5
中東 37 1,842 114 0.2 206.3
階層レベル2の項目湾岸諸国会議(GCC) 26 528 78 0.2 201.3
北米 4,800 3,813 4,646 9.2 △ 3.2
階層レベル2の項目米国 3,026 2,130 3,283 6.5 8.5
アフリカ 359 794 541 1.1 50.6
中南米 11 276 13 0.0 15.4
階層レベル2の項目ブラジル 9 110 7 0.0 △ 20.7
合計(その他含む) 45,605 70,898 50,268 100.0 10.2

〔注〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔出所〕インドネシア投資調整庁(BKPM)

業種別では、第一次産業で4.0%減(67億8,240万ドル)、第二次産業で16.2%増(286億8,970万ドル)、第三次産業で6.7%増(147億9,540万ドル)だった。基礎金属・金属製品・非機械および 器具分野の投資は全体の23.4%(117億8,720万ドル)を占め、最大の投資分野だった。同分野には中国、香港企業によるニッケル精錬所などの大規模投資が含まれる。投資が大幅に伸びたのは紙・製紙(34億3,080万ドル、2.1倍 )、機械・電機 ・医療・光学機器・時計等(14億7,840万ドル、87.4%増)、建設(2億8,180万ドル、70.5%増)だった。第二次産業が全体に占める割合は前年の54.1%から57.1%に上昇した。第三次産業は新首都関連を含む建設を筆頭に、ホテル・レストラン(8億1,110万ドル、62.9%増)、運輸・通信・倉庫 業(56億1,550万ドル、36.1%増)などが増加した。

表6 インドネシアの業種別対内直接投資[実行ベース](単位:件、100万ドル、%)(△はマイナス値)
業種 2022年 2023年
金額 件数 金額 構成比 伸び率
第一次産業 7,065 2,828 6,782 13.5 △ 4.0
階層レベル2の項目農業・牧畜業 1,789 1,320 1,946 3.9 8.7
階層レベル2の項目林業 99 182 96 0.2 △ 2.9
階層レベル2の項目水産業 32 357 26 0.1 △ 18.6
階層レベル2の項目鉱業 5,145 969 4,715 9.4 △ 8.4
第二次産業 24,679 14,524 28,690 57.1 16.2
階層レベル2の項目食品 2,425 3,037 2,263 4.5 △ 6.7
階層レベル2の項目繊維 658 1,303 458 0.9 △ 30.5
階層レベル2の項目皮革製品・製靴 630 593 782 1.6 24.1
階層レベル2の項目木材加工 243 582 158 0.3 △ 35.1
階層レベル2の項目紙・製紙 1,630 633 3,431 6.8 110.5
階層レベル2の項目化学・医薬品 4,506 1,779 4,805 9.6 6.7
階層レベル2の項目ゴム・プラスチック 363 938 576 1.1 58.7
階層レベル2の項目非金属鉱物 537 353 523 1.0 △ 2.6
階層レベル2の項目基礎金属 ・金属製品・非機械及び器具 10,961 1,318 11,787 23.4 7.5
階層レベル2の項目機械・電機・医療・光学機器・時計等 789 1,481 1,478 2.9 87.4
階層レベル2の項目自動車・輸送機器 1,523 1,118 2,046 4.1 34.4
階層レベル2の項目その他 415 1,389 382 0.8 △ 7.8
第三次産業 13,861 53,546 14,795 29.4 6.7
階層レベル2の項目電気・ガス・水道 3,763 852 2,742 5.5 △ 27.1
階層レベル2の項目建設 165 1,962 282 0.6 70.5
階層レベル2の項目商業・修理業 737 20,209 944 1.9 28.1
階層レベル2の項目ホテル・レストラン 498 7,088 811 1.6 62.9
階層レベル2の項目運輸・通信・倉庫業 4,125 2,959 5,615 11.2 36.1
階層レベル2の項目不動産・工業団地・オフィス関連 3,015 6,336 2,575 5.1 △ 14.6
階層レベル2の項目その他 1,558 14,140 1,827 3.6 17.2
合計 45,605 70,898 50,268 100.0 10.2

〔注1〕 産業分類は「国際標準産業規格(ISIC)改訂第3版」に基づくもの。金融、石油・ガスを除く。
〔注2〕「農業」はプランテーションなどを含む。
〔注3〕2018年第4四半期以降、業種はリグループされ24セクターから23セクターになった。
〔出所〕インドネシア投資調整庁(BKPM)

新首都「ヌサンタラ」で民間によるホテルや病院の建設が開始

投資に関しては、新首都移転に向けた動向も注目されるトピックである。インドネシア政府は2022年2月、新首都に関する法律2022年第3号を公布・施行し、新首都の名称を「ヌサンタラ」(「インドネシア群島」を意味する単語)と定めた。第一期工事は2022年に開始され、2023年9月下旬からは民間企業による開発が本格化している。

不動産大手アグン・スダユーグループ(Agung Sedayu Group)が主導するコンソーシアムが中心となり、「ホテルヌサンタラ」の建設が開始されたほか、アブディ・ワルヨ病院やインドネシアサッカー協会(PSSI)によるナショナル・トレーニングセンターなども着工。2023年11月には複合企業マヤパダグループ(Mayapada Group)がマヤパダ病院、不動産大手パクウォン・ジャティ(Pakuwon Jati)がホテルや商業施設を併設する統合型施設の建設を開始した。12月には不動産大手のウランダリ・バングン・ラクサナ(Wulandari Bangun Laksana)が開発するショッピングモール、ホテル、アパートなどが一体となった複合施設「ヌサンタラ・スーパーブロック」が着工した。

政府は同国の独立記念日である2024年8月17日に、記念式典をヌサンタラで開催した。公共事業・国民住宅省によれば、国家予算で建設が進む大統領府や大統領官邸を含む第一期工事の進捗率は、2024年6月時点で70%超だった。

対日関係 
対日貿易は輸出入ともに主要品目で軒並み減少

日本の「貿易統計(通関ベース)」をみると、2023年の日本の対インドネシア輸出は、前年比3.9%減の144億4,900万ドルだった。乗用自動車、ゴム製の空気タイヤなどの輸出は増加した一方、主要な輸出品である機械類・原子炉・ボイラーなどが減少した。

日本の対インドネシア輸入は、前年比14.7%減少の244億ドルだった。輸入額の約35%を占める鉱物性燃料が国際価格の下落を受けて21.3%減だった。その他、主な輸入品目である鉱石、スラグおよび灰が15.4%減、貴金属・真珠が27.2%減、木製品等(家具除く)が31.5%減だった。

表7-1 日本の対インドネシア主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
機械類・原子炉・ボイラー 3,325 3,265 22.6 △ 1.8
階層レベル2の項目ブルドーザー、アングルドーザーなど 430 464 3.2 7.9
階層レベル2の項目エンジン部品 459 394 2.7 △ 14.1
輸送用機器(鉄道除く) 2,840 2,800 19.4 △ 1.4
階層レベル2の項目自動車の部分品 1,826 1,504 10.4 △ 17.6
階層レベル2の項目乗用自動車 399 597 4.1 49.8
鉄鋼 2,269 2,099 14.5 △ 7.5
階層レベル2の項目その他の合金鋼のフラットロール製品(ステンレススチール除く) 626 593 4.1 △ 5.2
階層レベル2の項目鉄又は非合金鉄のフラットロール製品(熱間圧延) 660 528 3.7 △ 20.0
電気機器 1,235 1,260 8.7 2.0
階層レベル2の項目電気回路の開閉用、保護用又は接続用の機器 201 181 1.3 △ 9.8
ゴム製品 576 602 4.2 4.6
階層レベル2の項目ゴム製の空気タイヤ 274 334 2.3 21.6
プラスチック 589 511 3.5 △ 13.3
鉄鋼製品 407 450 3.1 10.6
光学・測定・精密・医療用機器 407 400 2.8 △ 1.8
階層レベル2の項目自動調整機器 179 185 1.3 3.1
銅およびその製品 359 388 2.7 8.2
階層レベル2の項目精製銅又は銅合金の塊 309 339 2.3 9.7
無機化学品および貴金属など 519 375 2.6 △ 27.7
階層レベル2の項目貴金属の無機又は有機の化合物 347 218 1.5 △ 37.1
合計(その他含む) 15,032 14,449 100.0 △ 3.9

〔出所〕Global Trade Atras (原データは 財務省「貿易統計(通関ベース)」)から作成

表7-2 日本の対インドネシア主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2022年 2023年
金額 金額 構成比 伸び率
鉱物性燃料 10,726 8,446 34.6 △ 21.3
階層レベル2の項目石炭 8,018 6,009 24.6 △ 25.1
階層レベル2の項目石油・ガス 2,613 2,237 9.2 △ 14.4
鉱石、スラグおよび灰 2,274 1,925 7.9 △ 15.4
階層レベル2の項目銅鉱 2,264 1,914 7.8 △ 15.5
電気機器 1,793 1,818 7.5 1.4
階層レベル2の項目電気絶縁をした線、ケーブル、その他の電気導体 882 933 3.8 5.9
ニッケルおよび同製品 1,206 1,352 5.5 12.1
階層レベル2の項目ニッケルのマットなど 1,202 1,349 5.5 12.2
貴金属・真珠 1,339 974 4.0 △ 27.2
階層レベル2の項目貴金属くず 1,246 762 3.1 △ 38.9
木製品等(家具除く) 1,204 824 3.4 △ 31.5
階層レベル2の項目合板、ベニヤドパネルなど 794 439 1.8 △ 44.7
ゴム製品 1,129 773 3.2 △ 31.6
階層レベル2の項目天然ゴム、バラタ、グタペルカなど 966 594 2.4 △ 38.5
機械類・原子炉・ボイラー 825 726 3.0 △ 12.0
階層レベル2の項目印刷機・プリンター 238 192 0.8 △ 19.5
輸送用機器(鉄道除く) 644 720 2.9 11.7
階層レベル2の項目貨物自動車 251 322 1.3 28.7
階層レベル2の項目輸送用機器の部分品 311 312 1.3 0.2
プラスチック 609 524 2.1 △ 14.0
合計(その他含む) 28,614 24,400 100.0 △ 14.7

〔出所〕Global Trade Atras (原データは 財務省「貿易統計(通関ベース)」)から作成

日本からの直接投資は約3割増

BKPMによると、2023年の日本の対インドネシア直接投資額(実行ベース)は、前年比30.2%増の46億3,945万ドルだった。業種別では、自動車・輸送機器が55.2%増の17億5,533万ドルで、投資全体の37.8%を占めた。基礎金属・金属製品・非機械および器具分野が5億6,251万ドル(2.3倍)、化学・医薬品が48.8%増の4億1,514万ドルだった。地域別では、西ジャワ州が18億134万ドルで全体の38.8%を占めた。東ジャワ州(14億1,545万ドル)、ジャカルタ特別州(6億7,312万ドル)と続いた。日本の投資実績の大半がジャワ島内に集中した。

自動車・輸送機器分野では、三菱自動車工業が12月15日、軽商用電気自動車の新型「ミニキャブEV(L100 EV)」のインドネシア国内での現地生産・販売を開始したと発表した。また、これまでタイで生産されていたオーストラリア向けの「パジェロスポーツ」の生産の一部をインドネシアに移管した。基礎金属・金属製品・非機械および器具分野への投資は、三菱マテリアルの連結子会社であるインドネシア・カパー・スメルティング(PTS)のグレシック製錬所の銅精鉱の処理能力拡張の案件などが含まれるとみられる。化学・医薬品分野では、大塚製薬のインドネシア法人であるPT大塚インドネシアが、東ジャワ州マラン県に輸液製造の新工場を設立した。

そのほか、インフラ・都市開発の分野では2023年8月に東京電力と中部電力が共同出資する発電会社JERAがインドネシア子会社「JERA Energi Indonesia」を設立したほか、12月に三菱地所が参画するアウトレットモール「The Grand Outlet East Jakarta」が開業した。外食サービスの分野では2023年1月にコメダが運営するコメダ珈琲店がバリ島に1号店、3月にバーストが運営する唐揚げ専門店「中津からあげ渓」のフランチャイズ1号店、物語コーポレーションが7月に「Yakitate KALBI」の1号店、FOOD & LIFE COMPANIESが11月に「スシロー」1号店をオープンした。

日系企業の事業拡大意向は増加傾向

ジェトロの「2023年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」によると、2023年の営業利益で黒字を見込むインドネシア進出日系企業は全体の71.4%で、前年の73.2%から1.8ポイント減少したものの、ASEANの中では最も高い結果となった。黒字企業の割合は、製造業で69.7%、非製造業で73.5%だった。景況感を表すDI値は16.2ポイントとなり、シンガポールやマレーシア、ベトナムなどがマイナスに転じる中、ASEANではラオスに次ぎ高かった。業種別では前年に続き輸送機器で黒字企業の割合が100%だったほか、非製造業の事業関連サービスも88.9%が黒字と回答した。輸送機器が好調である背景としては、新型コロナ禍の収束に伴う需要増や半導体などの部品供給が回復し、取引先の生産量も回復したことなどが挙げられた。

同調査におけるインドネシアの投資環境上のメリットをみると、「市場規模/成長性」と答えた企業の割合が82.5%と最も高く、調査対象のASEAN9カ国の日系企業の中で最大であった。次点の「人件費の安さ」(39.5%)、「ワーカー等の雇いやすさ」(32.5%)と比べて2倍以上の開きが出ており、人口や所得の増加に伴うインドネシアでの消費拡大に対する強い期待感が表れた結果といえよう。他方、投資環境上のリスクをみると、「人件費の高騰」を挙げる企業の割合が70.4%と最も高く、「現地政府の不透明な政策運営」(66.4%)、「税制・税務手続きの煩雑さ」(66.2%)が続いた。人件費の高騰について、在インドネシア日系企業の2023年の平均昇給率(前年比)は5.7%で、ベトナム(5.6%)、フィリピン(5.4%)をやや上回った。2024年についても5.5%と2023年並みの水準が続く見込みである。2024年の昇給率見通しを業種別でみると、製造業が5.9%、非製造業は5.1%となり、製造業での伸びが顕著だった。

また、「現地政府の不透明な政策運営」については、輸入規制品目の追加など、制度が頻繁に変更され、対応に苦慮するといった声も挙げられる。実際、2024年3月10日に施行された輸入手続きに関する商業大臣規則2023年第36号で、電子機器や化粧品、繊維製品などの輸入条件に技術見解書(PERTEK)の取得が必要であると規定した結果、関連省庁からのPERTEKの発行に時間がかかり港湾にコンテナが滞留する問題が発生し、関連業界から批判が相次いだ。このため、政府は改正規則となる商業大臣規則2024年8号を発出し、電子機器や化粧品など一部品目についてはPERTEKの取得を不要とするなど、規制を緩和した。

なお、今後1~2年で事業を拡大すると回答した企業の割合は、前年の47.8%から49.5%に上昇した。業種別にみると、「拡大する」と回答した企業の割合は、製造業では食料品が81.3%と高く、非製造業では金融・保険業が72.7%と高かった。特に食料品では、中間所得層の購買力増加に加え、主要顧客の規模拡大および日系レストランの市場拡大、健康志向の高まりがビジネスチャンスになりえるといった声があった。

表8-1 インドネシアにおける投資環境上のメリット(上位5項目、複数回答)(単位:%)
項目(474)
1 市場規模/成長性 82.5
2 人件費の安さ 39.5
3 ワーカー等の雇いやすさ 32.5
4 取引先(納入先)企業の集積 31.4
5 安定した政治・社会情勢 20.9

〔注1〕( )内は有効回答数
〔注2〕政策運営とは産業政策、エネルギー政策、外資規制等を指す。
〔出所〕ジェトロ:2023年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)

表8-2 インドネシアにおける投資環境上のリスク(上位5項目、複数回答)(単位:%)
項目(479)
1 人件費の高騰 70.4
2 現地政府の不透明な政策運営(注2) 66.4
3 税制・税務手続きの煩雑さ 66.2
4 法制度の未整備・不透明な運用 61.2
5 行政手続きの煩雑さ(許認可等) 50.9

〔注1〕( )内は有効回答数
〔注2〕政策運営とは産業政策、エネルギー政策、外資規制等を指す。
〔出所〕ジェトロ:2023年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2021年 2022年 2023年
実質GDP成長率 (%) 3.7 5.3 5.1
1人当たりGDP (米ドル) 4,351 4,785 4,920
消費者物価上昇率 (%) 1.9 5.5 2.6
失業率 (%) 6.5 5.9 5.3
貿易収支 (100万米ドル) 43,806 62,672 46,453
経常収支 (100万米ドル) 3,511 13,215 △ 1,880
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 144,905 137,233 146,384
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 413.972 396.529 408,464
為替レート (1米ドルにつき、インドネシア・ルピア、期末平均) 14.269 15.731 15.416


貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
出所
1人あたりGDP、実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:インドネシア中央統計庁(BPS)
貿易収支、経常収支、外貨準備高、対外債務残高、為替レート:インドネシア中央銀行