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市場・トレンド情報

報道等にみられる食に関する消費動向・トレンド

2011年1月
分野:食品・農林水産物

食の多様化への努力求める声 ‐ 米食主義から脱却、たんぱく源も見直しへ

2010年は気候変動による異常気象で世界的に食糧危機となった。インドネシアでも米をはじめとした基本食糧の収穫が軒並みダウンし、価格が高騰して庶民の生活を圧迫した。こうした状況を「食の多様化で乗り切ろう」という声が上がっている。また「食の多様化で栄養の偏りを改善しよう」という意見もある。

米依存からの脱却を

食の多様化努力を求める声が上がっている。2010年12月22日付け「ビジネス・ニュース」誌は、2010年末に国内の米備蓄量不足から米の緊急輸入が決まった問題に触れ、「米不足による価格上昇が長引けば国内消費者の購買力が低下し、民間消費が牽引しているインドネシアの経済成長を減速させかねない事態にある」と指摘した上で、「政府は米輸入を一時的に解禁して現状を乗り切ろうとしているが、本来はこれを機に米に依存するインドネシア人の食習慣を、高所得層から順に米以外の食品、例えばパンやシリアルなどを摂取するように多様化する努力をしなければならず、そうしなければ将来インドネシアは大変なことになる」と提議した。

インドネシアの家庭では、パンを食べただけで米を食べていなければ食事をしたと見なさないのが一般的で、それほどインドネシア人は米に依存している。こうした国で米不足や米価格の上昇が発生すれば大きな問題になるのは必至である。政府は2011年の年明け経済閣議で「昨今の食糧価格の高騰で2010年に13.3%まで下がった(インドネシア中央統計局発表)貧困率が、2011年には再び14.5%に上昇する恐れがある」と危機感を募らせた。しかしこれはマクロ的な視点で、これに対して食の多様化への努力で対応しようというのはミクロ的視点と言えようか。米離れが叫ばれる日本とは対照的であるが、インドネシアでは情勢に合った意見である。

高まる栄養教育の重要性 ‐ 栄養への関心と理解広めて

順調な経済成長により中間所得層が厚くなるにつれ、栄養への関心が高まっている。学校で食育を実施するところも増えてきており、親をも巻き込んだ栄養教育が行われている。一方で、基本食糧の価格高騰に対する対策から、物価上昇の影響を受けやすい低所得層にも「政府がイニシアティブをとって栄養に関する教育をしていくべき」との意見も上がっている。

始まった食育、成人にも必要

栄養が子供の成長に与える影響についての関心が広まっている。2010年10月27日付け「コンパス」紙は栄養についての広告記事の中で、科学の授業の中で栄養について教えているという小学校の例を取り上げた。「栄養のある食事が健全な心身を作り、健全な心身が保たれれば学業はさらに進む」というのが同校の考え方で、生徒たちばかりでなく親への栄養に対する関心を高める努力もなされているという。例えば、生徒に弁当持参を義務付け、教師はこれら弁当の内容や生徒の食べる様子などをチェックし、発育にかかわる問題が見られるようであれば連絡帳を通じて親に伝えている。「出来合いのものを与えたり、スナック菓子ばかりを与えて子供の満腹感を得るだけでは栄養が不足しかねない」と同紙は警告した。

貧困率が13.3%(2010年現在、インドネシア中央統計局発表)といまだ高いインドネシアにおいては、とかく栄養不足は低所得層の問題と思われがちである。栄養不足が乳幼児の死亡や児童の発育不全を引き起こし、インドネシアの将来の安定を脅かしかねない問題であることは十分に理解されているものの、それは国が解決すべきと考えている人が多い。その中で、所得が安定している層でも「栄養に無関心であれば健全な心身は望めない」という意見が出てきていることは注目すべき変化といえよう。この変化は、ネスレをはじめとした食品会社の宣伝によるところが大きいが、こうした考え方の定着が期待される。

また、全国の小中学校の93%で実施されている給食(2003年5月1日現在、文部科学省の調査より)を通じて食育を行う日本とは逆に、インドネシアの学校ではむしろ、弁当持参を義務付けて食への関心を高める努力がなされるのも特徴的な動きである。インドネシアの都市部ではさまざまなインドネシア料理を提供する屋台が立ち並び、大家族でなければ家庭で料理するよりこうした屋台で複数の副食を購入した方が安上がりだった時代が長かったこともあり、外で頻繁に料理を購入する家庭も少なくない。こうした状況下では、弁当制度を導入することにより、学校における児童に対する食育活動を行うのと並行して、その親である大人に対する啓発活動も積極的に行っていく必要があろう。

基本食糧の価格高騰から栄養教育の必要性唱える声

一方で、2010年末からの基本食糧価格の高騰が、生活様式の見直しを余儀なくしている面もある。2011年1月23日付け「ビジネス・インドネシア」紙の日曜版によると、インドネシア中央統計局(BPS)は「2010年12月中に低・中級米の価格は30.1%、砂糖は9.3%、調理油は28.6%上昇した」と発表したが、最も庶民生活に打撃を与えているのは、インドネシア料理に欠かせないチリソースの原料であるトウガラシの価格が140.1%も高騰し、やはりチリソースに入れるにんにくも63.9%も値上がりしたことである。必然的にレストランや屋台は価格を引き上げたため、大手携帯電話会社に勤めるVivianti氏は「これまで毎週末に家族で外食していたのを最近は1カ月に1回に抑えたばかりでなく、自宅でもチリソースを添えないで食事をするよう我慢している」と語った。

こうした状況に対し、ある経済アナリストは同紙において「食費を切り詰めるあまりに栄養不足に陥っては元も子もない」と指摘。「たんぱく源としてのアヒルの卵の価格が高ければより安価なたんぱく源である鶏卵で代える、といった具合に考えなければならない」と述べた。「ただし、これには栄養に対する知識が十分であることが不可欠で、食糧の価格高騰の影響を受けやすい中の下クラス以下の庶民こそ栄養の知識が不足しているのが実情であることを考慮すれば、政府がこの機会に国民に対する栄養教育を率先して推進していく必要がある」と強調した。

先の例のように民間での栄養教育や食育はアッパーミドルクラス以上には有効だが、中の下クラス以下には政府が栄養教育を推進する必要がある。

規則正しい食生活、特に朝食は重要

栄養問題に関してはまた、毎日決まった時間に1日3回の食事をとるよう心がけることの重要性にも注目が集まり始めている。「特に朝食を抜くような食生活は改善すべきである」と2010年10月27日付け「コンパス」紙は栄養についての広告記事の中で指摘した。栄養の専門家によると「良質な朝食はわれわれが1日に摂取すべきエネルギーや栄養の30%を吸収することができ、朝食をとることを習慣としている者はより効率的に必要な栄養を摂取できる」とのことで、エネルギー源となる炭水化物、成長を促すたんぱく質やビタミン、ミネラルから成る栄養バランスのとれた朝食をとれるよう、メニューの多様化に努めることを推奨した。

経済成長に伴い、忙しい毎日を送る人や夜型の人が増えたインドネシアで、朝食をとることをおろそかにする人が増えたが、一方で健康志向の高まりから、朝食の重要性を見直す意見が出てきた。

食の安全性向上に努力する政府
‐ ラベル表示取り締まり、有機食品認証制度、水産物品質の統合管理で本腰

食の安全を守る政府は、ラベル表示の取り締まりにとどまらず、有機食品の認証や食品品質の管理にも乗り出した。

食品輸入激増でラベル表示取り締まり強化

2010年は食品・飲料品の輸入が急増した年であった。東南アジア諸国連合(ASEAN)・中国自由貿易協定(AC-FTA)の本格発効で中国より安価な製品が大量に流入することが危惧されたが、実際はマレーシアやタイからの輸入が多いことが明らかになり、政府は密輸の可能性を懸念した。上半期の輸入激増に対し、まず工業省が、国内で販売される食品にインドネシア語のラベル表示が義務付けられていることを確認するよう、関係各所に通知した(2010年9月15日付け工業大臣文書第525号(No.525/M-IND/9/2010))。これを受けて財務省関税総局は全国の税関に対し、1996年第7号食品法および食品ラベルと公告についての1999年第69号政令にて、国内で販売される食品にはインドネシア語、アラビア数字、アルファベットで商品名や原材料、生産者/輸入者、賞味期限等を記載したラベルを包装に表示することが義務付けられていることを確認し、製造業者/輸入業者/供給業者がこれを実行するよう徹底を求めた(2010年10月6日付け回状第19号(No.SE-19/BC/2010))。

2008年後半から国内の小売店舗におけるラベル表示義務の取り締まりが強化されたが、2010年これが輸入食品の急増で通関部門にも拡大された。水際対策をも講じ、政府の食の安全を守る努力が続く。

試行錯誤の有機食品認証制度

健康への関心の高まりとともに、インドネシアでも有機食品の販売・購入量が増えている。店頭で販売されている食品が有機食品であるかどうかについて、有機食品ラベルの有無で判断する購入者は少なくないが、その信頼性について2010年11月1日付け英字紙「ジャカルタ・ポスト」は警鐘を鳴らした。有機食品専門家のインドラ・スロノ氏によると「これまでの有機食品の認証は、有機食品産業はいまだ小規模と判断した政府が本腰を入れなかったために、生産者や供給者によって整備されたシステムを通じて行われたきた。これで認証制度の欠如は埋められたものの、生産・供給側に認められた機関が認証を行うため、独立性に欠けるという欠点があった」

「最近になり政府が有機食品の認証制度に乗り出し、公的機関として7つの検査機関が有機食品の認証機関として指定された。これで独立性は確保されたものの、認証にかかる費用が約2,240ドルにも上り、小規模農家にとっては大きな負担になるため、認証を受けられない有機食品が存在するという事態を招いている。また、これら7つの公的機関は農地をはじめとした環境のみを検査し、最終製品までは検査しておらず、完全性を欠いている」とも指摘された。

インドネシアにおいて有機食品は比較的新しい食品で、現在は都市部でこそ大手スーパーマーケットに行けば入手できるようになったものの、全国的にはまだまだ国民の認知度は低い。政府もようやく目を向け始めたというのが実情で、国内での有機食品に関するさらなる教育・制度整備が期待される。

水産物の検疫と品質・安全性の管理を統合

2010年12月6日付け「ビジネス・ニュース」誌は、水産物検疫品質安全性管理庁の設置を報じた。これまで別々に活動していた水産物の検疫部署と品質管理部署を統合した機関で、海洋水産省は「水産物の検疫と品質管理の活動が統合されたことにより、輸出される水産物ばかりでなく、国内で販売される水産物の品質および安全性が向上することが期待される」と述べた。

水産国の威信にかけて、政府が水産物の品質と安全性の管理に本腰を入れた格好である。

(ジャカルタ・センター)