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外国産品の先行事例分析

米国発のカフェとヨーグルトが急伸 ‐ フランチャイズ方式で店舗を拡大

2010年12月
分野:食品・農林水産物

国内産業の保護と食品の安全性監督の観点から食品輸入にさまざまな規制が設けられているインドネシアでは、輸入された外国産品が国内市場でブームとなるケースはきわめてまれで、米国発のカフェブームとヨーグルト製品の人気は特筆に価する。フランチャイズ方式で開業したこれらの店がその人気を維持していくには、時勢を読んだ舵取りが欠かせないようである。

巧みな空間演出を施した米国発カフェが人気

地場小売大手のミトラ・アディ・プルカサ社(MAP)は2002年、子会社のサリ・コーヒー・インドネシア社を通じて米国発のカフェ「スターバックス」の国内展開をスタートさせた。コーヒー1杯2万9,000ルピア(約272円、2010年12月14日の市中レート1円=106.5ルピア、以下同様)からという価格設定は、首都ジャカルタでも屋台の食事が1食1万ルピア(約94円)程度で済ませられるのに比べるとかなり割高であるが、労働年齢層を中心に人気を集め、国内の店舗総数は2010年末までに80店舗前後に達した。

インドネシアは世界3位のコーヒー生産国で、以前からコーヒーショップも少なくはなかった。ただ一方で、コーヒーに対して健康上ネガティブなイメージを持っているインドネシア人も少なくない。「スターバックス」はこうした状況に、ただ単にコーヒーを提供する店だけでなく、消費者が店内で自由にゆっくり過ごせる空間を提供するというカフェのコンセプトを持ち込んだ。広い店内に大きなソファをいくつも置いたり、隣接する外のスペースにもパラソル付のテーブルとイスを配したりするのは、インドネシアではそれまでスター・ホテルのコーヒーショップでしか見られなかった光景である。

インドネシアでフェイスブックやツイッターのようなソーシャルネットワーキングの利用が爆発的に広まり、ネット人口の急速な拡大が見込まれる状況になると、「スターバックス」は店内にいち早く無線LANシステム(Wi-Fi)を設置した。このような従来のコーヒーショップにはないコンセプトが、インドネシア人の消費者を引き付けたようだ。

クレジットカードとのタイアップが奏功

また「スターバックス」は、クレジットカードの特典サービスを大いに利用した。クレジットカードでコーヒーを購入すればサイズの大きい商品をサービスする、といったようなキャンペーンである。これを、前期はA銀行発行のクレジットカード、中期はB銀行のもの、後期はC銀行、というように異なるクレジットカードで順に実施していくことで、可能な限り多くの顧客にサービスできるようにした。また、対象となるクレジットカードのクラスも、ゴールドカード以上だけではなくシルバーカード・ホルダーも対象に含める等、より広い客層へのアプローチに努めているようだ。

インドネシアでは都市部を中心に2005年くらいからクレジットカード保有者が急速に増加した。ある調査では、首都圏のクレジットカード保有者は労働人口の3割程度に達する計算とされている。また、インドネシア・クレジットカード協会によると、小額の支払いにまでクレジットカードを利用する傾向があるのがインドネシア人の特徴だという。クレジットカードの普及やこのような国民性が「スターバックス」の人気を後押ししたようだ。

さらに、都市部での夜型人口の増加に伴い、ジャカルタ首都特別州政府が数年前から深夜営業や24時間営業を許可するようになったことも、「スターバックス」には追い風となったとみられる。

ドーナツチェーン店が急成長

J.COドーナツ&コーヒー南ジャカルタ・チランダック店

カフェ人気が定着する中で、コーヒーと一緒に購入される菓子やスナックの需要も拡大した。その一つがドーナツで、人気の火付け役は、国内でサロンを展開してきたジョニー・アンドレアン・グループが2005年に開業した「J.COドーナツ&コーヒー」である。当初はどこの店舗でもドーナツ目当ての客で長蛇の列ができるほどの人気で、その後チェーン展開が急速に進み、4年余りの間に国内15都市で73店舗を構えるまでに急成長し、近年は海外進出も果たした。

「カラフルで多種類のドーナツがずらりと並ぶ様子がインドネシア人の消費者を引きつけた」、「コーヒーを頼むとグレージー(基本のドーナツ)が1個ついてくるというサービスがインドネシア人向きだった」といったことが人気の理由ともいわれているが、専門家の間では、当時インドネシアでは珍しかったシースルーキッチン・システム(ドーナツの製造過程をガラス越しに見せる演出)を採用したことが顧客を店に呼び込むきっかけになった、という評価もなされている。

一方、シースルーキッチン・システムの本家である「クリスピー・クリーム・ドーナツ」は出遅れた。インドネシアには2006年に、日本に何カ月か先行して進出し、価格も「J.COドーナツ&コーヒー」と同じ6,000ルピア(約56円)からに設定したにもかかわらず、「J.COドーナツ&コーヒー」ほどの賑わいは見せていない。

加工コーヒーは外国産に依存

「スターバックス」が米国のカフェのコンセプトをインドネシアに定着させたことにより、その後、インドネシアでは内資・外資の区別なくカフェが乱立、ドーナツ人気も加わり、国内の加工コーヒーの需要を押し上げた。

インドネシアの「スターバックス」は、サリ・コーヒー・インドネシア社が輸入した「スターバックス」ブランドのコーヒー製品を使っている。外国フランチャイズのカフェの場合は、そのフランチャイズの独自ブランドのコーヒー製品を使用することで統一されるので、輸入は避けられない。

一方、フランチャイズではないカフェはこの点自由だが、「イリー」(イタリア)などの外国のコーヒー製品を採用しているところが多いようだ。インドネシアは世界有数のコーヒー生産国である一方、それをロースト、ブレンドして独自のブランドを冠して流通させられるほどに国内の加工業が成熟していないのが現状である。

豊富な資源を背景にインドネシアでは、農林水畜産業がGDPの14%前後のシェアを維持している。これは製造業、商業に次いで3番目で、成長率は毎年4%前後である。しかしながら、インドネシアは一次産品の供給国にとどまっているのが実情で、国内でこれらの加工業を発達させるべきであると、インドネシア政府も投資誘致などのプロモーションに努めている。こうした国内加工業の発展の遅れが、海外からの加工食品の流入を余儀なくさせている一因でもあろう。

表:インドネシアの加工コーヒー輸入(2010年1月~8月)

輸入量(単位:kg)
品目 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 合計
ロースト・コーヒー豆 23,122 35,027 23,855 49,250 21,232 7,920 56,508 52,099 269,013
ロースト・コーヒー粉 1,406 11,466 623 431 17,303 7,506 10,550 2,669 51,954
ロースト・ノンカフェイン・コーヒー粉 1,597 1,017 40 0 17 420 11,275 10,654 25,020
コーヒーエキス調整品 44,258 27,349 57,832 32,699 32,591 40,985 60 332 236,106
輸入額(単位:USドル)
品目 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 合計
ロースト・コーヒー豆 111,883 424,790 132,662 266,827 118,733 43,192 104,715 112,765 1,315,567
ロースト・コーヒー粉 13,633 102,362 5,990 4,280 117,230 41,329 53,863 42,833 381,520
ロースト・ノンカフェイン・コーヒー粉 15,481 8,668 1,255 0 1,038 6,210 23,177 23,945 79,774
コーヒーエキス調整品 137,104 71,721 140,742 107,394 92,605 107,916 1,778 9,215 668,475

ヨーグルトも輸入品が主流

ヨーグルトもまた、国内の加工業の発達の遅れから輸入品が主流になっている商品の一つである。国内でも一部ではヨーグルトの製造が行われており、近年ようやく首都ジャカルタのスーパーマーケットにも並ぶようになったが、市場に多く出回っているのはフランス製やスイス製といった輸入ヨーグルトである。店頭価格は80グラム入りで7,900ルピア(約74円)前後、125グラム入りでは1万2,000ルピア(約113円)にも達している。

インドネシアは一次産品の供給国にとどまらず、国内での加工業を発達させるべきであるという政府の方針から、2006年にヨーグルトには5~10%の輸入関税が課税されたが、2009年に入ってゼロ%へ戻された。店頭では輸入ヨーグルトが主流の状況が今しばらく続きそうだ。

健康志向の女性に訴えた「アクティビア」

インドネシアでのヨーグルト人気はまだ高いとは言い難い。2010年上期のヨーグルトの輸入は、液状の製品の輸入は2、3月および5月はゼロ、その他のタイプのヨーグルトでフルーツなどが入ったものは2月および5、6月はゼロ、プレーン・タイプでは3、4月に輸入があっただけである。

フランスの大手食品会社ダノンは2008年、ヨーグルトのプロバイオティクス食品としては国内初の「アクティビア」をインドネシア市場に投入した。プロバイオティクスとは乳酸菌などの消化器系のバランスを整えて病気の予防に役立つ微生物のことで、これに基づきダノンが独自に開発した乳酸菌を配合したヨーグルトが「アクティビア」である。現在は子会社ダノン・インドネシア社が西ジャワの工場で製造しているため、価格は80グラム入り2,900ルピア程度(約27円)に抑えられていて、国内のプロバイオティクス食品市場では飲料タイプのヤクルトに次いで2位の売り上げを記録している。

さらに、「アクティビア」の追い風となったのは、インドネシア人女性を中心に高まった健康志向である。ダノンが首都ジャカルタで調査を行ったところ、20~45歳くらいの労働年齢層の女性の3割ほどが便秘など消化器系の問題を訴えたそうである。このため同社は、経済的に多少余裕のある働く女性を販売主要ターゲットとし、女性誌の広告やテレビ・コマーシャルで腸内活動の活発化を大いに宣伝した。また、インドネシア人女性が集まる“アリサン”(注:毎月1回程度開かれる婦人会のようなもの。参加者から集めた金をくじ引きで当たった1人がもらうという無尽講のようなことをするのが伝統的な活動であるが、現在は友人同士定期的に集まって食事をしながら談笑する方が主目的となっているものが多い)の場で試食会を実施してプロモーションに努めたことも奏功したと伝えられている。

若い女性に人気のフローズン・ヨーグルト

消費者の健康志向のさらなる高まりを見て、ダノンは翌年1月、ジャカルタの高級モール内にヨーグルト・バー「ヘブンリー・ブラッシュ」をオープンし、若い女性の人気を集めたが、同年より人気を博したのはヨーグルトを主原料とする冷菓のフローズン・ヨーグルトだった。

その代表格は前年にジャカルタで開業した「サワー・サリー」である。「サワー・サリー」が販売するのは米国発の製法によるフローズン・ヨーグルト。トッピングをつけて価格は2万3,000ルピア(約216円)からと、屋台での食事が1食1万ルピア(約94円)程度のインドネシアでは決して安くはないが、開業当初は長い行列ができた。

ノン・ファットで低カロリーといううたい文句が、ダイエット好きの若い女性に受けたようである。また、ヨーグルトの酸味がアイスクリームよりも健康的なイメージにつながった。

このほか「サワー・サリー」は、10代の学生を中心に広がるキャラクター人気を見込み、イメージキャラクターとしてヨーグルトが大好きな女の子「サリー」を採用している。店内にはサリーの1週間を通じてさまざまなトッピングとフレーバーを組み合わせたフローズン・ヨーグルトを紹介する演出がなされ、Tシャツや人形などのキャラクター商品も販売されている。

人気持続のカギは消費者動向の分析力

「スターバックス」に始まるカフェ乱立の背景に、インドネシア人の間でフランチャイズ事業の人気が高まったことがある。インドネシア・フランチャイズ協会の会長は当時、「スターバックス」がインドネシアで開業した2002年はインドネシアのフランチャイズ事業元年ともいえる年になるだろうと報道されたが、先に述べた「J.COドーナツ&コーヒー」や「サワー・サリー」もまたフランチャイズ・システムで営業網を拡大した。一方で、顧客を飽きさせないようにするのは容易ではない。ドーナツもフローズン・ヨーグルトも一時の行列を今はもう見られない。

これに対して「スターバックス」は、相変わらず一定の人気を保っている。社会の変化や消費者の動向にすばやく対応する姿勢が、「スターバックス」の人気を持続させているとみられる。

最近では2009年9月から、栽培責任を全面的に保証したフェア・トレードのコーヒー豆の販売をインドネシアでも開始したと宣伝している。「われわれのエスプレッソ・ビバレッジまたはコーヒー豆セレクションの購入は、コーヒー農家、環境、社会への貢献につながります」とうたっている。

欧米系の食品・化粧品会社などが持ち出すイメージ戦略で、日本では今や珍しくなくなったが、2007年の会社法改正でようやく企業の社会的責任(CSR)が規定されたインドネシアではまだまだ目新しいものである。深刻な地球温暖化による環境保護と、ミレニアム開発目標(※1)に関わる貧困撲滅が国際的な問題としてしばしば取り上げられるようになってきたインドネシアでは、このようなイメージ戦略もまた、トレンドとして受け入れられる傾向がある。これが「スターバックス」のインドネシアでのイメージアップにつながっていると考えられる。

しかし、「スターバックス」にも問題がないわけではない。サリ・コーヒー・インドネシア社の幹部は、地方における電力・水道等整備の遅れ、商品輸入手続の煩雑さ、優良な労働力の確保難等が店舗増設の勢いをそぐ要因になっていると指摘している。

※1, ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs):2000年9月に採択された国連ミレニアム宣言と1990年代に開催された主要な国際会議やサミットで採択された国際開発目標を統合した共通の枠組み。貧困撲滅、初等教育の達成等8つの目標が掲げられている。

(ジャカルタ・センター)

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