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外食産業の動向

外食産業の成功のポイント‐ファッション性重視の消費者を意識

2010年10月
分野:食品・農林水産物

近年、インドネシアの外食産業の発展にはめざましいものがある。もともとインドネシア人は外食好きだが、ファッション性のある食生活への関心が高まっており、それが海外からの外食産業の進出に拍車をかけている。

外食産業成功の背景

けた違いに豊かな高所得者層から一般家庭まで、インドネシアでは外食を楽しむ家庭が多い。華僑系はもともと外食志向であり、インドネシア人も屋台やそれに準じる屋台風の食堂で食事をする人が少なくない。しかも大家族で外食をするので、10人以上の予約というのも珍しくない。中には30人くらいの大きなグループで外食を楽しんでいる光景もよく目にする。インドネシアでは国民全体が外食志向であり、これが外食産業発展のベースとなったといえるだろう。

インドネシアにおいて外国生まれの外食産業が成り立つということを裏付けたのは、1990年前後の「マグドナルド」や「ケンタッキーフライドチキン」の成功である。米国では大衆相手の外食チェーンであるが、当時はその価格帯からインドネシアには時期尚早という声も聞かれ、定着を疑問視する人も多かった。しかし、フタを開けてみると、これらの米国発外食チェーンはまたたく間にインドネシアの各都市に広まった。

現在、最も安いメニューでも3万ルピア(約270円)するにもかかわらず、高校生や中学生までがカウンターに友人らと列を作っている。親の月給が300万ルピア(約2.7万円)以上の中流および富裕層ならともかく、多くの国民はそこまで達していないのがインドネシアの現状だ。普通は一回の食費を8,000ルピア(約75円)程度で抑える人たちでも、たまにこうしてファッション性のあるライフスタイルを楽しむ消費がインドネシア人の間に顕著に見られる。人口が多く、しかも若者が多いので、月に一度か二度程度でも、繁華街のモールなどでは長い行列ができることになる。

インドネシアでは、可処分所得に比してファッションやグルメに金を使う比率が高い。あるマーケティング関係者によると、一般の消費者にとっては少々価格が高いと感じられる商品でも、リッチでおしゃれな感覚を表現できれば、それなりの顧客を獲得できるという。

もともとインドネシアにはチキン料理が豊富にある。それにもかかわらず、なぜ今さらケンタッキーフライドチキンなのかと思う人も少なくない。しかし、食事もファッションの一部だと考えればその疑問は解けるのではないか。笑顔で迎えられ、手際よく注文を聞いてもらい、冷房の効いた清潔な空間で、米国生まれのコーラと一緒に唐揚げチキンを食べるところに消費者はファッション性を感じ、同時に優越感を味わえるのだ。

また、ケンタッキーフライドチキンやマクドナルドは、親が子供の誕生日パーティーを開いているのをよく見かけるが、これがステータスシンボルとなっている側面も無視できない。

日本の外食ブランドの進出

日本食の外食産業に注目してみると、以前から高級ホテル内で営業するような「伝統的な」日本食レストランはあったが、より気軽に利用できる大衆向けレストランがこぞって進出したのは最近のことである。2008年末に「モスバーガー」がジャカルタ市内にオープン、次いでステーキ中心の「ペッパーランチ」、食事処を狙った「大戸屋」、元気寿司系列の「千両」、和風パスタ中心の「パスタ・デ・和楽」が進出し、ついには牛丼の「吉野家」も登場した。ほかに「ミスターカレー」というカレー専門店も営業をスタートしている。

ただ、見せ方、売り方は日本発といっても、パスタやステーキは洋食であるため、日本文化の一端を担う日本食とは言い難い。

牛丼チェーン大手の吉野家はジャカルタの高級モールに最近オープンしたばかりだが、価格は2万2,000~2万8,000ルピア(約200~260円)が中心で、インドネシアのミドルアッパー層が消費意欲をそそられそうな価格帯となっており、今後、消費者にどの程度受け入れられるか注目される。

日本流が通用しない現実

すし、しゃぶしゃぶ、鉄板焼き、ラーメンといった日本食のメニューは、インドネシアだけでなく多くの国で親しまれるようになった。しかし、「すしの○○」、「しゃぶしゃぶの××チェーン」というように、個々の店やブランドが世界に広まったわけではない。

ジャカルタでチェーン展開を目指したある日本食レストランは、高めの価格設定にもかかわらず、安価な店が立ち並ぶフードコートのすぐ近くに店をオープンした。しかも、日本人向けのメニューが中心にもかかわらず、店の外観や内装は大衆向け。結果的にその店舗はすぐに撤退となったという。「日本では名の知れた日本食レストランは、海外進出する際、現地の市場調査や研究をおろそかにし、準備不足のまま開店してしまう傾向がある」とジャカルタの日本食レストラン関係者はいう。また、「日本市場を優先するあまり、海外支店をオープンする段階になると、現地スタッフの数だけそろえて済ませるケースもある」とも指摘する。「ジャパンオリジナル」という看板を掲げながら、まぐろ納豆に付いていたからしが冷凍のままだった、ということもあったという。

日本文化を融合したラーメン店が人気

一方、現地企業や他国発の日本食レストランは元気がある。シンガポール発のすしレストラン「SUSHI TEI」は、最初から各市場の地元の消費者をターゲットにして人気店となった。今は若者をコア・ターゲットに、ジャカルタ市内やバンドンで15店舗を経営する。

もう一つ、ジャカルタの中流層を取り込むことに成功した例として「RAMEN 38」というインドネシア発のラーメン専門店がある。第1号店は2003年初めに、日本食スーパーマーケットの2階でオープン。当初の客層は約9割が日本人であった。しかし、ジャカルタ市内に9店舗を構えるまでに拡大した現在では客層も変化している。最近ジャカルタの最高級モールに出した店舗では約9割が非日本人で、午後2時から午後5時のアイドルタイムにも客が絶えないほど人気がある。

イスラム教徒の多いインドネシアでは豚を使用した食品はタブーで、においを嗅ぐのも、また同じ食器を使うことさえ敬遠される。豚骨ラーメンなどはその最たるものだが、「RAMEN 38」はメニューに豚使用の有無を明記し、豚を食べない地元の客も取り込む作戦に出た。このモールの「RAMEN 38」では、イスラムのスカーフをかぶった若い女性がハラル(豚を使用していない)のラーメンを選び、おいしそうに食べる姿をよく見かけるようになった。

さらに注目すべきは、小さなサイズのラーメンを提供していること。初心者のトライアルや、おやつ代わりに食べる客を狙った作戦とも見てとれる。

「RAMEN 38」の店構えは、日本の駅前や大学前などにある大衆ラーメンの雰囲気そのもので、日本のラーメン店と同じくギョーザやチャーハンも扱っている。まさしく日本の食文化をそのまま持ち込み、地元の人に受け入れられているのである。

「SUSHI TEI」「RAMEN 38」とも、日本以外のアジアを拠点とした日本人が創業者である。インドネシアのような海外で日本食レストランを成功させるには、両国の文化を熟知したエキスパートの存在が大きいといえる。

コンセプト重視のカフェが登場

日本食ではないが、「Nanny's Pavillon」は、クラシックなフレンチテイストのカフェで、2010年、バンドンに1号店がオープン。最近、ジャカルタの最高級クラスのモール、パシフィック・プレースにも出店した。パンケーキを中心にしたカフェであるが、南フランス風の洒落た室内装飾を施し、客はゆったりとくつろぎながらお茶ができるので、若年層に人気が高い。「Nanny'sのセールスポイントは、海外旅行気分を味わえる異国情緒で、そのコンセプトは明確。Nanny'sは インドネシア生まれのカフェチェーンになる可能性を秘めている」と、あるマーケティング関係者は高く評価している。

外食産業はある意味、ファッション性が強いといえる。外国発の外食チェーンであれば料理や味だけでなく、自国の文化も売り込む、という視点がないと、インドネシアでの成功はなかなか厳しいと考えられる。現地でのマーケティングを基に、日本文化をいかにうまく加味するかが、今後の課題といえるだろう。

(ジャカルタ・センター)

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