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市場・トレンド情報

報道等にみられる食に関するトレンド

2010年10月
分野:食品・農林水産物

高まる消費者の健康意識‐国やメディアがブームをリード

ベジタリアンが増加

インドネシアにおいて健康志向ブームはまだまだ一部の層に限られているとみられるが、その数は着実に増加しているようだ。2010年9月25日付け英字紙「ジャカルタ・ポスト」は、翌月に控えた第39回世界ベジタリアン会議について伝える記事の中で、インドネシアン・ベジタリアン・ソサイエティの会員が1998年の約5,000人から2007年の6万人へと急増した、という同ソサイエティ代表の発言を取り上げている。

野菜嫌いな国民が多いインドネシアで、第39回世界ベジタリアン会議がジャカルタとバリの2都市で開催されるほど、ベジタリアン人口が増えていることは驚くべきニュースだ。首都ジャカルタなどで営業する日本食レストランで、ベジタリアンの顧客はもはや珍しくないと聞いた。インドネシアの一部の層では健康志向が急速に高まっているようだ。

成人病予防には食習慣の改善が必須

2010年9月26日付け日刊紙「ビジネス・インドネシア」の日曜版は、インドネシア料理について「鶏肉や牛肉などのたんぱく源を油で炒めて、甘く料理するのが特徴で、野菜は控えめで繊維質は最低限。このため糖尿病や高血圧、痛風などの生活習慣病(成人病)に悩む人が少なくない。これを予防するためには食習慣の改善が不可欠」と伝えている。さらに「野菜や果物の摂取をもっと増やし、油分やコレステロールが多く含まれる食品はできるだけ避けること、炒めたり揚げたりするのは控え、電子レンジを使用したり、ゆでたり焼いたりする調理法を採用すべきだ」と述べている。

こうした記事は最近のインドネシアでは特に目新しいものではないが、頭では理解していても実践に移すのは大変難しい、と感じている人が少なくないのも事実。特にインドネシアでは若年層でさえ味覚に保守的な人が多く、油分と甘味たっぷりの食習慣を変えることは日本よりもさらに容易ではないようで、このような記事を頻繁に目にする。

機能性食品に注目

一方で、健康維持のため機能性食品に注目するインドネシア人も少なくない。月刊誌「フード・レビュー」2010年9月号は機能性食品について特集を組んでいる。この中で国家食品医薬品監督庁(BPOM)の食品製造基準化局長が、「健康意識の高まりがインドネシア国民の加工食品の選択に大きな影響を与えるようになった。つまり、単に満腹になる、おいしい、という観点ばかりでなく、健康に良いという点も今や加工食品選択ポイントの一つとなっている」と指摘している。

都市部の住民を中心に健康に対する意識が、ここ数年のうちに急速に高まったことにより、栄養や食品・食材に含まれる機能に対する知識欲が拡大している印象が強い。ただ、こうした健康知識の内容が既に日本では常識となっているものと異なるケースも見受けられる。食と健康に関する正しい知識を広めていくことも政府・業界の役割と考えられる。

ハーブ類の普及に期待

インドネシアにおけるハーブの普及を期待する向きもある。2010年10月1日付け「ビジネス・ニュース」誌は、「インドネシアの各民族が育んできた伝統生薬の文化はインドネシア国民の間にハーブを普及させる基礎になり得る。 「バック・トゥー・ネイチャーの機運が高まっている今こそハーブの普及に努めるよい機会だ」という見解だ。政府も国内でのハーブ紹介に力を入れているようで、国家食品医薬品監督庁(BPOM)は13種の植物産業開発を振興しているという。ハーブ・ブームが起こり得る理由としては上述のほか、より安全で安価であること、廃棄しても自然に回帰するため多くの化粧品等のメーカーが注目していることが挙げられている。

ただし「ビジネス・ニュース」誌の記事で気になるのは、ハーブを食用ではなくあくまでも医薬品に代わるものとしてとらえている点だ。政府がハーブとして開発を振興しているのもジャムー(ジャムウ)に代表されるインドネシアの伝統生薬で使用されてきたような土着の植物ばかりだ。ハーブが、日常的に摂取するような、もう少し食品に近い存在になり得た時に、普及努力の効果が出るのではないか。また日本人が連想するような欧米由来のハーブをインドネシア人に紹介するチャンスが生まれる可能性がある。

消費者の嗜好変化に業界は危機感‐押し寄せる外国食品の波

外国食品やフランチャイズ店が急増

インドネシア食品業界で、昨今のインドネシア国民の嗜好変化に危機感を唱える声が上がっている。2010年8月30日付け「ビジネス・ニュース」誌は、「今年に入ってから輸入食品が増加、中にはキャンディやビスケット類のように1,000%台の急ピッチで激増している食品もある。元来コメ文化のインドネシアだが、近年は小麦粉をベースとした外国食品やレストランが相次いで参入し、数年で急拡大している状況を肝に銘じるべきだ。庶民の嗜好が取り返しのつかないほど変化してしまう前に、外国食品の大量流入の状況を押しとどめなければ国内食品産業は本当に衰退してしまうだろう」と警鐘を鳴らした。

小麦粉をベースとした外国食品の代表であるバーガー類を例に挙げると、数年前まではマクドナルドとケンタッキー・フライド・チキンのフランチャイズ店しかなかったものが、最近はバーガーキングや、その他のバーガー店も首都を中心に相次いでオープンした。インドネシア人の中間層以下には決して安くはない価格であるにもかかわらず、休日などは賑わいを見せている。

一方、小麦粉食品のパートナーでもあるスターバックスなどのコーヒー販売店も、都市部を中心にその店舗数を増やしていて、休日などは席の取り合いになるほどである。少し前までは、インドネシア人にとってわが家以外で「喫茶」するということはなじみの薄い習慣で、スターバックスの進出当初はその先行きを案じる声も多かった。

インドネシア人の嗜好や習慣の変化が、外国食品業界の活況に顕著に表れているといえる。

水産物の消費を政府が後押し‐期待される水産業界の発展

水産物の消費振興に努力

第25回インドネシア・トレード・エキスポ(開催期間:2010月13~17日)は「インドネシア食品展」(Pangan Nusa 2010)と同時開催であった。同年10月4日付け「ビジネス・ニュース」誌によると、主催者のインドネシア商業省のアルディヤンシャ・パルマン次官は、「陸地面積より広い海域を有するインドネシアにおいて、いまだに水産物の潜在性が最大限に生かされていないというのが今年のインドネシア・トレード・エキスポのテーマの出発点であった」と強調した。また、「この大きな潜在性は放置できない。商業省はインドネシア海洋・水産省と協力して、現在は中小事業者が細々と続けている水産物の国内加工事業への投資誘致に努力する。さらに、エビや魚、海草に代表される水産加工品の消費を積極的に振興していく方針でもある」と表明した。

確かにインドネシアは、日本と同様に海に囲まれた国でありながら、海産物の消費は日本に比べて少ない。インドネシア伝統の魚料理は川魚が多く、海の魚は生臭いとしてあまり好まれない。海草にいたってはその消費は一部の地域に限られ、むしろ化粧品などの原料としか見られない傾向がある。しかしながら、世界第4位の人口が比較的安価に豊富な栄養源を得られるようになれば水産物の消費振興は国民生活的にも、また経済的にも大いに意義ある政策といえよう。

海洋・水産業統合開発推進地域の設置

一方でインドネシア海洋・水産省は、統合された効果的で質の高い、特定の地域をベースとした海洋・水産セクター開発を目指し、2010年5月14日付け『海洋水産大臣規則No.PER.12/MEN/2010』内でミナポリタン(MINAPOLITAN)構想に基づく水産地域開発について決定した。同日付けの『海洋水産大臣決定No.KEP.32/MEN/2010』では全国33州内の197県/市をミナポリタン地域に定めた。

2010年10月8日付け『ビジネス・ニュース』誌によると、「ミナポリタン構想を通じ海洋・水産省は、インドネシアが水産一次産品の供給国にとどまらず、その後の加工も国内で行える水産加工品の供給国ともなれるよう努める方針である」としている。

民間レベルでは、インドネシアから日本へクラゲやうなぎの輸出が始まったという話も聞く。水産一次産品の供給国としてインドネシアは前進しつつあるといえるだろう。政府の言う水産業は食品に限ったものではないが、国内の水産加工の発展により水産加工食品の国内での流通も、より多様化しポピュラーなものになることが期待される。

政府は食品の安全確保・消費者保護に躍起‐安全の基準化への取り組み

政府商標の調理油「Minyakkita」

インドネシア商業省は2009年1月より国内の調理油メーカーと協力して政府商標の調理油「Minyakkita」を市場に流通させている。この「Minyakkita」プログラムに参加する国内調理油メーカー12社を表彰したことを伝える2010年10月1日付けの「商業省公報』は次のように同プログラムの意義を強調している。すなわち「このプログラムの目的は、インドネシア料理の調理に、インドネシア国民のあらゆる層で広く消費される調理油の国内価格の安定化、衛生面の安全確保、国内包装産業の発展を図ることによりインドネシア国民の福祉を向上させることにある。販売にかかる付加価値税を政府負担とし、価格を抑えている。インドネシア国家規格(SNI)の基準を遵守し、食品の国内販売に必要なインドネシア国家食品医薬品監督庁(BPOM)からの流通許可を取得済であり、インドネシア指導者会議(MUI)からイスラム遵法(ハラル)食品としての認定も受けており、法務人権省に商標登録されていて、食の安全性、消費者保護の面もクリアしている」という説明だ。

東西に長く広がる多数の島々からなる国土に、人口が散らばるインドネシアに、基準を満たしていない品質の食品が安価に出回って、低所得層がその犠牲となるのを防ぐのは政府の責任である。この「Minyakkita」プログラムはこうした問題への政府の取り組みの一つと考えられる。

違法食品取り締まりは一長一短

インドネシア国家食品医薬品監督庁(BPOM)は市場やスーパーマーケットなどの店頭においてしばしば違法食品の取り締まりを行っている。2010年9月8日付け「BPOM公報」は、2010年1月1日~7月30日の一般取り締まり、特に消費の高まるイスラム断食月を念頭においた同7月31日~9月6日の特別取り締まり、および同9月7日に国家警察、財務省関税総局、全国の保健局・商工局と合同で行われた取り締まりの結果を発表した。それによると「食品の国内販売に必要なBPOMからの流通許可が未取得である食品、賞味期限切れのまま店内に陳列された食品、既に食に適さない状態にもかかわらず販売中の食品、ラベル表示義務を遵守していない食品の摘発を中心に取り締まった結果、流通許可未取得の食品が全体の58.8%にも上り、賞味期限切れ食品も36.5%に達した」とのことである。

流通許可未取得の食品の多くは輸入食品である。これら違法食品の販売に対しては、該当食品の回収命令や事業許可等の剥奪、罰金等の罰則のほか、悪質なものには刑事罰が科せられるとのことである。

こうした取り締まりは、品質等に疑問が残る中国製品のインドネシア国内への大量流入を発端に近年特に厳しくなっている。当初は輸入食品が多く並ぶ日本食スーパーなどがターゲットとなり、「問題の所在とずれているのではないか」と不満の声が上がったが、最近は伝統的食品などにも取り締まりの手が広がったようだ。

「国民食」は安全と確信

「国民食」と呼べるほどインドネシアで大人気の即席めん、その代表格で即席めんの代名詞にまでなっている「インドミー」が台湾で回収命令を受けた。理由は防腐剤が基準値を超えていたためである。これに対しインドネシアの国家食品医薬品監督庁(BPOM)が「台湾当局がどんな基準を用いているかは知らないが、われわれの国際基準に従った検査ではインドミーは安全に消費できるものと認定されている」と反論する騒ぎとなった。

この問題について2010年10月14日付け日刊紙「ジャカルタ・ポスト」は読者の声を掲載した。北スマトラ州メダンの読者は「インドミーはインドネシア国内ばかりか、世界中で消費されている。台湾当局は今ごろ何を言うのか」と抗議。中部ジャワ州クンダリの読者は「これはインドネシア製品を世界の市場から消そうと画策するものではないか。われわれは反ダンピングの罠にかかりつつある」と疑惑を提示し、シンガポール在住のインドネシア人読者も「シンガポール人はインドネシア製品が中国製品より安全なことを知っている。台湾は単にインドネシア製品に勝てないためにこんなことをしたのではないか」と述べた。

一方、別のシンガポール在住のインドネシア人は「メーカーがコスト削減などの理由で原材料を変更したかもしれないし、基準を変えたのかもしれない。これを機に別の国でもインドミーの検査をするだろう。その結果を待つべきだ」と語ったが、このように事態を静観する意見は少数だ。

(ジャカルタ・センター)