水産物の輸入規制、輸入手続き
インドネシアの輸入規制
1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)
調査時点:2023年11月
これまでインドネシアは、東京電力福島第一原子力発電所事故発生時より、日本産農産物について放射性物質の検査報告書の提出を求めていましたが、2022年7月26日付けでこの提出義務が解除されました。これにより、インドネシアにおける放射性物質輸入規制が撤廃されました。
詳しくは、関連リンクの農林水産省のウェブサイトにある「インドネシアによる日本産食品の輸入規制の撤廃について」を参照してください。
水産物の輸入にあたっては、インドネシア海洋水産省から「水産物と活魚の持ち込みに関する推薦」を取得したうえで、インドネシア商業省に輸入承認を申請し、これを取得することを義務付けています。詳細は、「輸入手続き」の「1.輸入許可、輸入ライセンス等、商品登録等(輸入者側で必要な手続き)」の項を参照してください。
2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)
調査時点:2023年11月
日本から水産物を輸入するためには、輸出者側で、利用する水産食品最終加工者(加工がなく保管のみを含む)がインドネシア向け輸出水産食品最終加工者として登録されている必要があります。登録の要件や手順は、農林水産省のウェブサイトにある「インドネシア向け輸出水産食品の取扱要綱」を参照してください。
輸入通関にあたり、輸出者側で用意すべき書類は次のとおりです。
- 衛生証明書(病原体に汚染されていない旨証明する水産検疫分野の衛生証明書および/あるいはヒトの消費に適していることを表明する品質分野の衛生証明書)
- 原産地証明書
- 漁獲証明書
- 包装された水産物の場合はラベル、液体のものの場合はインボイスやパッキングリストなどの書類
- インドネシア国家規格(SNI)やほかの規定の条件に従って試験・検査され、輸入される水産物に細菌やその他の危険な化学物質の残留や汚染が認められない旨が表明されたラボラトリー試験結果
- 養殖水産物の場合、養殖生産工程管理手法(Good Aquaculture Practice = GAP)認証の提出。
衛生証明書、原産地証明書、漁獲証明書の取得手順などついては水産庁のウェブサイトを参照してください。ラベルについては「食品関連の規制」の「6. ラベル表示」の項を参照してください。
また、冷凍水産物の場合は最大20%のグレーズにしなければならないほか、新種の魚および/あるいはインドネシアに初めて搬入される水産物の場合は水産物輸入リスク分析の実施も求められています。
なお、アワビ・ナマコおよびその加工品を輸出する場合、2022年12月1日施行の水産流通適正化法により、適法に採捕されたことなどを示す、国が発行する適法漁獲等証明書の添付が必要です。ウナギの稚魚は、2025年12月1日施行から同証明書が必要です。詳細については、関連リンクの「特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律」を参照してください。
3. 動植物検疫の有無
調査時点:2023年11月
輸出の都度、最寄りの地方農政局に対して衛生証明書の発行を申請する必要があります。これまで一般財団法人 日本食品検査がインドネシア向け輸出水産食品にかかる施設認定および衛生証明書発行業務などを担っていましたが、令和4年度以降は対応していません。
この衛生証明書の発行には、官能検査の結果、官能検査基準を満たしていることが要件とされています。官能検査についての詳細は、農林水産省のウェブサイト「インドネシア向け輸出水産食品の取扱要綱」(令和5年9月1日付け)を参照してください。
関連リンク
- 関係省庁
- 農林水産省
- その他参考情報
- 農林水産省「インドネシア向け輸出水産食品の取扱要綱」(289KB)
- 農林水産省「地方農政局一覧」
インドネシアの食品関連の規制
1. 食品規格
調査時点:2023年11月
水産検疫・水産物品質安全管理庁(BKIPM)のサイトには、冷凍製品37品目、乾燥製品28品目、ボイル製品3品目、発酵製品5番号、缶詰8品目、生鮮品5品目など、合計107品目のインドネシア国家規格(SNI)が挙げられていますが、取得が必須とされている水産品はイワシ、サバ、マグロの缶詰のみ(ex. 1604.13.91、1604.13.11、1604.13.11、1604.13.91、1604.13.91、1604.12.10、1604.12.10、1604.13.91、1604.16.10、1604.12.10、1604.12.10、1604.15.10、1604.19.20、1604.19.30、1604.14.11、1604.19.90、1604.14.19)となっています。
2. 残留農薬および動物用医薬品
調査時点:2023年11月
残留汚染物質のモニタリングが海洋水産大臣規則PER. 02/MEN/2007において規定されています。
関連リンク
3. 重金属および汚染物質
調査時点:2023年11月
細菌と化学物質、重金属は規制の対象です。これらの基準値はインドネシア国家規格(SNI)で定められています。該当のSNIについて、そのSNI番号は水産検疫・水産物品質安全管理庁(BKIPM)のウェブサイトで確認できます。また、それぞれのSNIが規定する内容については国家標準化庁(BSN)のウェブサイトに記載されています(Judul欄でキーワード検索を行うことが可能ですが、各SNIを確認するためにはインドネシアで有効なIDカード番号を添えてユーザー登録を行う必要があります)。
パラメーター | 単位 | 必要条件 | |
---|---|---|---|
a 官能評価 |
スコア7以上 (SNI 2729:2013の別紙Aによる評価に基づく) |
||
b 微生物汚染* | - ALT(細菌のコロニー数) | コロニー/g | 5.0 x 105 |
- 大腸菌 | Most Probable Number/g | <3 | |
- サルモネラ菌 | — | ネガティブ/25g | |
- コレラ菌 | — | ネガティブ/25g | |
- 腸炎ビブリオ | Most Probable Number/g | <3 | |
c 金属汚染* | - ヒ素(As) | mg/kg | 最大 1.0 |
- カドミウム(Cd) |
mg/kg mg/kg |
最大 0.1 最大 0.5** |
|
- 水銀(Hg) |
mg/kg mg/kg |
最大 0.5 最大 1.0** |
|
- 錫(Sn) | mg/kg | 最大 40.0 | |
- 鉛(Pb) | mg/kg |
最大 0.3 最大 0.4** |
|
d 化学* | - ヒスタミン*** | mg/kg | 最大 100 |
e 残留化学物質* | - クロラムフェニコール**** | — | 混入してはならない |
- マラカイト・グリーンとロイコマラカイト・グリーン**** | — | 混入してはならない | |
- ニトロフラン類(SEM、AHD、AOZ、AMOZ)**** | — | 混入してはならない | |
f 生物毒素* | - シガトキシン***** | — | 検出されないこと |
g 寄生虫* | — | 混入してはならない |
4. 食品添加物
調査時点:2023年11月
保健大臣規則2012年第33号は、食品に使用が禁止される食品添加物として次の19の物質を挙げています。
- ホウ酸
- サリチル酸とその塩
- ジエチルピロカーボネート
- ズルチン
- ホルムアルデヒド
- 臭素酸カリウム
- 塩素酸カリウム
- クロラムフェニコール
- 臭化物食用油
- ニトロフラゾン
- ズルカマラ
- コカイン
- ニトロベンゼン
- アントラニル酸シンナミル
- ジヒドロサフロール
- トンカ豆
- ショウブの根茎からとれる精油(Calamus oil)
- ヨモギギクの精油(Tansy oil)
- サッサフラスの精油(Sasafras oil)
また、保健大臣規則2012年第33号では使用が認められる食品添加物をリストアップしています。使用規制量についてはBPOM令2019年第11号に記載されています。
5. 食品包装(食品容器の品質または基準)
調査時点:2023年11月
食品用の容器包装(食品接触材)については、2019年国家医薬品食品監督庁(BPOM)規則第20号に、食品接触材への使用が禁止されている原料のリストと、使用が許可されている原料のリストがあります。使用が許可されている原料には、食品への移行量の規制があるものと、ないものがそれぞれリストアップされています。
このほか、食品接触材への使用が認められる原料としては、プラスチック(モノ/マルチレイヤー)、ゴム/エラストマー、紙とカートン、レジン/ポリマーレイヤー、陶器、ガラス、金属があるとし、食品への移行量の制限つきでリストが定められています。また、ふた/ガスケット/封印についても、食品接触材の対象となります。
リストにない要素や原料は、その安全性が検査された後、BPOM長官より承認を得た後に使用が可能となります。
なお、インドネシア国内で販売される食品の包装には、食品に適した安全な容器を使用していることを示すロゴの表示が義務付けられています。またプラスチック容器については、リサイクルのコードと使用しているプラスチックの種類を表記することが定められています。
6. ラベル表示
調査時点:2023年11月
日本から輸入する水産物で包装されたものについてはラベルの添付が必要となります。液体の水産物についてはインボイスやパッキングリストなどの書類でラベルに代替できますが、これらには少なくとも次の事項の記載が必要です。
- 製品名(商品名または学名)
- 重量/内容量
- 生産者/輸入者の名称と住所
ラベル表示は、インドネシア語、アラビア数字、アルファベット表記での表示が義務付けられています。
また、2024年10月より、食料品に対するハラール認証の取得およびラベル表示(ハラール認証を取得していないことの表示を含む)が義務付けられることとなります。生鮮の水産物はハラール認証の取得および表示の対象外ですが、加工を経たものについては対象となります。ハラール認証および表示が求められる具体的な品目は宗教大臣令2021年748号別紙に記載されています。
関連リンク
- 関係省庁
- 海洋水産省(インドネシア語)
- 水産検疫・水産物品質安全管理庁(BKIPM、インドネシア語)
- 根拠法等
- 政令1999年第69号(インドネシア語)(87KB)
- 海洋水産大臣規則No.11/PERMEN-KP/2019(インドネシア語)(586KB)
- 海洋水産大臣規則2023年第6号(インドネシア語)
- 海洋水産大臣規則No.49/PERMEN-KP/2019(インドネシア語)
- 宗教大臣令2021年748号(インドネシア語)(4.5MB)
- その他参考情報
- 農林水産省「各国の食品・添加物等の規格基準」(2023年4月)
- ジェトロ「インドネシアにおける食品添加物の輸出可能性調査(2023年3月)」
7. その他
調査時点:2023年11月
- 食品安全・衛生規制
- インドネシアで販売する食品に関しては、2019年政令第86号で、食品の安全・衛生、食品添加物、遺伝子組換え食品、食品の放射線照射、食品の包装、食品の品質保証とラボラトリー試験、汚染食品に分けて規定されています。
関連リンク
- 関係省庁
- 保健省(インドネシア語)
- 根拠法等
- 政令 食品の安全に関する2019年政令第86号(インドネシア語)
インドネシアでの輸入手続き
1. 輸入許可、輸入ライセンス等、商品登録等(輸入者側で必要な手続き)
調査時点:2023年11月
水産物の輸入にあたっては、2022年より商品バランスシステムに基づく輸入承認の取得が義務付けられています。これを取得するには、一般輸入業者認定番号(API-U)または生産者認定番号(API-P)として有効な事業基本番号(NIB)を有する輸入者が、INSWシステム(インドネシアシングルウインドウシステム)を通じ、毎年9月までに翌年の供給、流通、販売計画およびこれに関する誓約書、海洋水産大臣からの「水産物と活魚の持ち込みに関する推薦」を添えたうえで、翌年の輸入予定の水産物の需要提案申請を行う必要があります。輸入者から提出された需要計画に不備がある場合は5営業日以内に通知がされ、この通知がない場合、輸入者からの需要計画は受理されたとみなされます。需要計画の提出後には、関係省庁による供給計画が策定され、供給計画に基づいた翌年の輸入承認が商業省より発行されます。なお、海洋水産大臣から「水産物と活魚の持ち込みに関する推薦」を取得するには、輸入承認の申請に先立ち、輸入者はINSWシステムを通じて、次の情報を入力する必要があります。
- 目的と目標
- 水産品/魚の種類名(一般名、商品名、学名のいずれか)
- HSコード
- 数量
- 原産国
- 運送手段
- 搬入地
- 搬入スケジュール
また、申請には次の書類を添付する必要があります。
- 輸入識別番号として有効なNIB(事業者識別番号)
- 1年間の事業計画(少なくとも、次の項目を含む)
- 倉庫または保管場所の容量
- 輸送設備の有無
- 魚の需要およびマーケティング (サプライヤーの情報、レストランのPurchase Order など)
- 流通の場所(原材料および工業用補助材料として輸入されるものを除く)
- 加工適正証明(SKP:GMPを適用済で、衛生標準作業手順(SSOP)の要件を満たしていることの認証証明)のコピー
- 水産物輸入リスク分析結果報告書
- 国際獣疫事務局(OIE)加盟国から初めて輸入されるものはその初めての輸入の時のみ必要
- OIE加盟国以外からの輸入の場合はその輸入の都度必要
なお、魚介類およびえさ用活魚の輸入の推薦を申請する事業者はこれらに加え、次のものも添付する必要があります。
- 組合契約書を添付した、申請者またはその組合員が所有する漁船の名称および番号のリスト
- 申請者またはそのパートナーが所有する漁船の漁業免許証
商品バランスシステムに基づく輸入承認の取得が必要な水産物については、「商業大臣規則2022年第25号」の別紙1においてHSコード別に一覧化されています。
2. 輸入通関手続き(通関に必要な書類)
調査時点:2023年11月
日本から水産物を輸入するにあたっては次の書類が必要になります。
- 輸入申告書(PIB)
- 輸入関税・租税納付書(SSPCP)
- インボイス
- パッキングリスト
- 船荷証券
- 海洋水産省水産物加工販売総局からの水産物搬入許可
- 商業省国際貿易総局からの輸入承認
- 水産検疫が行われた場所として利用された検疫所の証明書コピー
- 日本からの衛生証明書
- 原産地証明書
- 漁獲証明書
- ラベルなどのその他の添付書類
- 養殖水産物の場合、日本からのGAP認証
通関は、次のとおりに行われます。
- INSWシステムを通じ、商品バランスシステムに基づく輸入承認を取得
- 輸入予定の水産物の到着1日前までに、搬入地の検疫官にこれらの書類を添付して水産物の到着予定を届ける
- 輸入予定の水産物が到着後、検疫を受ける
- 検疫検査の結果、問題ないとされた場合、安全確認証明書が発行される
- 輸入関税および租税を納付
輸入品のHSコードを特定し、関税率表でその関税率を確認し、必要な租税と一緒に金額を計算した後、関税総局の通関サービス利用者オンラインでeビリングを取得して銀行などで納付し、SSPCPを取得する。 - 輸入申告
PIBをこれらの書類とともに船卸港の税関に提出し、申告書登録番号を受ける - 書類審査
船卸港の税関が申告内容や添付書類、輸入関税の計算などを審査 - 搬出許可(SPP)の取得
税関からの搬出許可が出た後、貨物を引き取ることができます。
3. 輸入時の検査・検疫
調査時点:2023年11月
日本から輸入する水産物については、輸入時に次のような手順で検疫検査が行われます。
- 輸入予定の水産物の到着1日前までに、搬入地の検疫官に「2. 輸入通関手続き(通関に必要な書類)」の項にある書類を添付して水産物の到着予定を届ける。
- 輸入予定の水産物が到着後、検疫官による書類検査が行われる(1営業日以内)。
- 書類検査で問題なしとされた場合、搬入地からの搬出承認書が発行される。
書類検査で検疫検査の必要ありとされた場合、安全性・品質検査ならびにサンプル採取が行われる。(検査期間は最大15日。必要に応じ、さらに15日延長される。)検査の結果に問題がなければ搬出許可書が発行される。輸入時の検査はありませんが、税関エリアを通過後に輸入要件を満たしているかどうかの検査を行うポストボーダー検査の対象になります。この場合の輸入要件とは、インドネシア商業省が発行する輸入承認を指します。ポストボーダー検査のため輸入業者は、輸入承認および輸入申告書(PIB)を少なくとも5年間保管しなければなりません。
輸入業者は当該輸入品を使用、販売、譲渡する前に、輸入要件を満たしていることを表明した宣言書(Self Declaration)を作成し、PIBの番号を記載のうえ、商業省の許認可ポータルサイト(INATRADE)を通して提出します。
4. 販売許可手続き
調査時点:2023年11月
一般輸入業者認定番号(API-U)として有効な事業基本番号(NIB)を有する会社が輸入した水産物はインドネシア国内で一般販売することができます。一方、製造輸入業者認定番号(API-P)として有効なNIBを有する水産物加工会社が輸入した水産物は、当該の水産物加工会社で原材料として使用するために輸入するもので、他者への譲渡・販売はできません。
5. その他
調査時点:2023年11月
なし
その他
調査時点:2023年11月
遺伝子組換え食品は、国内流通に際して国家医薬品食品監督庁(BPOM)からの安全性認証が義務付けられており、認証の前提となる推薦状を取得するために、遺伝子組換え製品安全委員会(KKH-PRG)の評価を受ける必要があります。遺伝子組換え食品安全認証に基づいて安全であることが表明された遺伝子組換え食品には、通常の食品ラベルの表示のほか“PRODUK REKAYASA GENETIK”(『遺伝子組換え製品』の意)と記載します。
輸入の放射線照射食品には、原産国の政府が発行した放射線照射証明の添付が義務付けられています。ラベルには通常の食品ラベルの表示のほか、食品の種類の後ろに“PANGAN IRADIASI”(放射線照射食品の意)と記載し、法令で定められた専用ロゴを付します。