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外国産品の先行事例分析

急伸する韓国産食品・農林水産物 ‐ 高品質、低価格で消費者の信頼を獲得

2011年2月
分野:食品・農林水産物

ジェトロ香港は2010年末から2011年初めにかけて、香港における日本食品販売動向の把握のため、取り扱い業者(日系および地場系の輸入卸)数社に聞き取り調査を行った。その際、いずれの業者からも異口同音に「ここ1~2年の韓国産食品および農林水産物の香港への販売拡大はめざましい」と語られた。今回はこの動きを掘り下げてみた。

韓国食品の輸入が急増

香港統計局の国別食品輸入統計によると、2008年に約7億6,000万香港ドルであった韓国からの食品輸入額が、2009年には約25%増加し、国別の伸び率が第1位となっている(表1)。

最近は、日系小売店でも韓国食品フェアを頻繁に行うほど、香港での韓国食品に対するニーズが高まっている。そこで、外国産品を香港へ売り込むヒントを探るため、近年の韓国食品の販売状況について、韓国政府農林部の外郭団体で、食品・農林水産物の輸出支援を担う農水産物流通公社(以下aT)香港支社担当者に話を聞いた。

表1:香港の国別食品輸入額(単位: 1,000香港ドル)
2006年 2007年 2008年 2009年 前年比
(%)
国別シェア
(%)
中国 16,856,042 18,113,636 20,681,105 22,921,374 10.83 21.88
米国 6,775,495 7,871,198 12,552,123 14,854,323 18.34 14.18
ブラジル 5,006,001 7,705,892 11,181,167 12,161,967 8.77 11.61
タイ 3,788,010 4,711,592 5,778,332 6,623,445 14.63 6.32
日本 3,855,911 4,565,586 4,841,195 5,610,230 15.89 5.35
オーストラリア 4,024,348 4,303,810 5,062,387 5,410,325 6.87 5.16
韓国 766,929 765,512 761,393 950,805 24.88 0.91
合計 64,590,953 75,849,304 95,485,231 104,775,422 9.73 100

出所:香港統計局

TVドラマ・映画が普及に貢献

香港の消費市場において韓国の食品・農産物に対する人気が高まっている最も大きな要因として韓国文化の浸透があげられる。韓国文化の理解促進に大きく貢献したのが、韓国のテレビドラマや映画を通しての情報発信である。2000年代初めから香港で放送され始めた韓国ドラマは、現在では香港のローカルテレビ局において平日のゴールデンタイムに放送されるほど人気がある。aT香港支社は約3年前に設置されたが、その時に既に、韓国ブームが広まっていたという。

日常的に韓国のドラマや映画に接し、韓国の文化・生活様式・食事風景などを目にする機会が増えた香港人にとって、韓国産商品は今や身近な存在で、食品のみならず、電化製品などの工業製品も人気が高い。

また、海外旅行先に韓国を選ぶ香港人も増加しており、実際に韓国へ行って情報を得、帰国後も継続して韓国製品を購入するという状況が生まれている。これは香港に限ったことではなく、東南アジアのほかの国々でも同様の傾向がみられるとのことである。

生産コスト削減で競争力

韓国産食品の販売カタログ
サプライヤーリストとともに代表料理のレシピを紹介。

韓国からの食品・農林水産物輸入のうち、野菜類は、2008年は373トンに過ぎなかったのに対し、2009年は2,709トンと飛躍的に増加しており、2010年も増加傾向にあった(表2)。小売店では、高品質で味のよい韓国産は、中国産よりはるかに高価ではあるものの、日本産農産物の半値ほどで販売されている。

日本と同様、韓国は、世界の農業国と比べると生産農地は限られている。しかし、良質な農産物を日本産よりもリーズナブルな価格で香港へ供給できるのはなぜか。

日本への駐在経験もあり、日本産農産物の流通事情にも詳しいaT社の担当者は「日韓の労働賃金と農地価格の差によるものが大きいのではないか」と指摘する。また、農業の早期施設化、大規模化もコスト削減に貢献している。aTも、今から約20年前に大規模な農業施設の団地化を主導した。大規模化により、生産コストの低減が実現し、施設化により計画生産化を図れるようになった。輸出農産物の生産に最適な体制を構築してきたといえる。

また、aT社と韓国食品協会が共同で発行する加工品および食材の販売カタログ(図1)によると、ほとんどの食品加工工場および生産農場でISOやHACCP、GAPなどの国際基準を満たしており、安全・安心な食品を求める傾向が強い香港人のニーズに合致しているといえる。

表2:香港の野菜類の輸入推移(単位:トン、1,000香港ドル)
2007年 2008年 2009年 前年比 
数量 金額 数量 金額 数量 金額 数量(%) 金額(%)
中国 615,566 1,456,990 619,489 1,518,106 610,212 1,508,731 ▲1.50 ▲0.62
米国 23,479 202,164 26,813 258,690 22,958 248,528 ▲14.38 ▲3.93
日本 2,528 82,727 2,944 94,911 2,849 93,721 ▲3.24 ▲1.25
韓国 480 15,333 373 11,037 2,709 72,291 627.3 554.99
合計 672,024 2,053,733 680,557 2,206,978 679,114 2,270,763 ▲0.21 2.89

出所:香港統計局

輸出を見据えた生産流通体制

農産物の流通面でも、日本との違いが見られる。韓国では農産物の集出荷組織を通じる輸出に加え、生産農場または企業が直接、相手国の輸入業者と輸出契約を結ぶこともある。以前は国内市場の余剰品を輸出していたが、現在は契約に基づき、海外向けに生産された農産物が輸出されている。そのため、香港市場に流通している生鮮農産物は、いちごやパプリカ、ミニトマトやエリンギなど、いずれも農場で生産される品目が多い。特にいちごは、流通に耐えうる固めの果肉、香港人が好む酸味が少ない食味という特徴を兼ね備えた品種が輸入されている(表3)。天候で収穫量が左右されやすい露地栽培の農産物は主に加工用に仕向けられ、年間を通して安定的に供給できるシステムを整えている。

韓国での生産から香港の販売に至るまでの間、商談会の開催や、食品見本市・展示会出展支援、海外バイヤーとのビジネスマッチングなどのきっかけ作りはaT社が担っている。生産現場が販売チャネルの一つとして海外市場を認識し、その後の取引、交渉、契約成立に至るまで、生産組織または輸出業者が積極的に行っている。韓国で開催される大規模な食品見本市などに合わせてバイヤーを招待するだけでなく、香港から近いという地の利を生かし、輸入業者も自ら行き来しているとのことである。そういった交流を重ねた結果、韓国産いちごは、香港だけでなく、中国をはじめ、タイ、ベトナム、インドネシアなどアジア地域への輸出額が前年比20~30%ほどの割合で伸びている。

表3:香港の生鮮いちごの輸入推移(単位:トン、1,000香港ドル)
2007年 2008年 2009年 前年比 (%)
数量 金額 数量 金額 数量 金額 数量(%) 金額(%)
米国 2,423 94,833 2,018 87,176 2,788 104,590 38.12 19.98
韓国 224 12,384 499 24,638 1,059 44,849 111.97 82.03
日本 35 4,664 57 8,201 57 8,324 0.17 1.5
合計 3,519 141,187 3,268 144,033 4,341 175,995 32.83 22.19

出所:香港統計局

日本産とは異なる販売チャネル

aT社が発行する月刊誌
マッコリの飲み方提案や産地紹介が掲載されている。

現在、香港には100軒ほどの韓国料理レストランが存在する。これらの韓国料理店は韓国産食材を直接輸入しているところもあるが、輸入食品の大半は小売店で販売されており、特に韓国人が多く住む地域では、地場系スーパーのパークンショップでも韓国食品売り場が大きく設けられている。韓国人駐在員が生活する上では十分な品ぞろえだ。香港には大規模な韓国系小売店はないが、ローカルストアへの浸透が進んでいる。aT社が発行する月刊誌「KOREA Agra Food」(図2)でも生産地や製造工場からの声を世界の消費者へ伝えており、輸出促進ツールの一つとして活用されているようだ。

韓国産は日本産と住み分けへ

同社が掲げる「aTビジョン2014」に、農林水産物の輸出金額を2014年までに100億USドルとする目標を掲げており、今後もより多くの消費者に韓国の文化、食を理解してもらいたいとしている。良質な商品を、より手軽な価格でボリュームゾーンへ販売強化している韓国産食品と、こだわりの強い高級志向の消費者層をターゲットにする傾向がみられる日本食品は、香港市場では上手に住み分けられるのではないかと考えられる。

「展示会では常に隣同士の韓国と日本のパビリオンであるが、シェアを奪い合うのではなく、相互協力関係を結び、香港市場で相乗効果を発揮できれば」と、aT社の担当者は語っている。

(香港センター)

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