為替管理制度
最終更新日:2024年06月11日
- 最近の制度変更
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2024年5月31日
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管轄官庁/中央銀行
国家外貨管理局、中国人民銀行
為替相場管理
銀行間外貨取引市場、銀行・顧客間のリテール市場、公開市場操作、基準為替レート
中国の外国為替市場は、銀行間取引市場と銀行・顧客間のリテール市場という2つの部分から構成される。
銀行間外貨取引市場
- 会員制。銀行間外貨取引は、中国外貨取引センターで行われる。外貨業務を経営する金融機関およびその支店は、申請と許可を経て中国外貨取引センターの会員となり、取引に参加できる。また、『非金融企業とノンバンクの銀行間当期外貨市場会員資格申請の実施細則(暫定)』(2005年12月29日実施)により、許可を得て、非金融企業とノンバンクも銀行間当期外貨市場の会員として、取引に参加することができる。
- オークション取引方式と価格問い合わせ取引方式(OTC方式)が併存する。銀行間市場の取引主体は、集中与信と集中競合の方式か、または相互間与信・決済の取引方式を自主的に選択できる。為替レートは、基本的に市場メカニズムで決められ、管理された変動相場制を採っている。
- 中央銀行の外国為替平衡操作。為替レートを安定させるために、中国人民銀行は、中国外貨取引センターで外貨を売買し、需給を調整する。
- 取引の種類。中国外貨取引センターでは、人民元と米ドル・香港ドル・日本円・ユーロ・英ポンド・オーストラリアドル・カナダドル・マレーシアリンギット・ロシアルーブル・ニュージーランドドル・シンガポールドルの取引、米ドルと香港ドル・日本円・英ポンド・スイスフラン・オーストラリアドル・カナダドル・ユーロ・シンガポールドルの取引、およびユーロと日本円の取引が行われる。
- 2005年7月21日から従来の米ドル単一通貨へのペッグ制をやめ、通貨バスケット制に移行した。
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『銀行間外貨市場の取引レートと銀行の公示レートの管理に関する事項の通知』(2014年7月1日実施)によれば、中国外貨取引センターは各営業日の午前9時15分に、米ドル・ユーロ・日本円・香港ドル・英ポンド・マレーシアリンギット・ロシアルーブル・オーストラリアドル・カナダドル・ニュージーランドドル・シンガポールドル対人民元為替レートの仲値を発表し、当日の銀行間当期外貨市場と店頭取引の仲値とする。同為替レートは価格問い合わせ方式(OTC方式)で確定される。
すなわち、中国外貨取引センターは、毎日銀行間外貨市場が始まる前に、すべての銀行間外貨為替市場のマーケットメーカーに価格を問い合わせ、その上で、すべてのマーケットメーカーが出した価格を人民元対米ドルの為替レートの仲値計算のサンプルとし、最高値と最低値を取り除いた後、加重平均し、当日の人民元対米ドルの為替レート仲値とする。
人民元対香港ドル・カナダドルの為替レート仲値は、中国為替取引センターが当日発表した人民元対ドル為替レート仲値および当日午前9時の国際外貨為替市場の香港ドル・カナダドル対ドルの為替レートによって算出される。
人民元対ユーロ・日本円・英ポンド・オーストラリアドル・ニュージーランドドル・シンガポールドル・マレーシアリンギット・ロシアルーブルの為替レート仲値は、中国外貨取引センターによって、毎日銀行間外貨市場が始まる前に、銀行間外貨市場の各通貨の直接取引を行うマーケットメーカーが出した価格を平均して算出される。
- 銀行間為替市場における人民元対米ドルの取引価格の変動幅は、中国外貨取引センターが発表する米ドルの取引仲値の上下2%以内とする。人民元対ユーロ・日本円・香港ドル・英ポンド・オーストラリアドル・カナダドル・ニュージーランドドル・シンガポールドルの取引価格の変動幅は、人民銀行が発表する同通貨の取引仲値の上下3%以内とする。人民元対マレーシアリンギット・ロシアルーブルの取引価格の変動幅は、人民銀行が発表する同通貨の取引仲値の上下5%以内とする。人民元対それ以外の通貨の取引価格の変動幅は、別途規定する。
銀行・顧客間のリテール市場
『銀行間外貨市場の取引レートと銀行の公示レートの管理に関する事項の通知』(2014年7月1日実施)によれば、銀行は市場需給と自身の実力に応じて、自主的に人民元対各種外貨のレートを設定可能で、公示レートには制限がない。
貿易取引
外貨決済口座、外貨の支払、外貨決済口座の残高制限、外貨計画
国内貨幣
『中国人民銀行法』(2004年2月1日改正)は、中国国内の決済は、原則人民元建てであることを規定している。『外貨管理条例』(1996年4月1日実施、2008年8月5日改正)は、中国国内での外貨流通は禁止されており、外貨決済も不可である。ただし、政府が別途規定した場合を除く。
外資企業は、中国国内で人民元を外貨に自由に交換することはできない。外貨を必要とする場合は、国家外貨管理局の認可が必要で、対外的に外貨支払を行う場合は、輸出取引などにより自ら調整することが求められている。貿易取引の外貨収支には、合法的取引の背景が必要である。外貨収入は、自ら留保することもできれば金融機関に売ることもできる。外貨支出は有効な証拠をもって、自己外貨資金で送金することも、金融機関から外貨を購入して送金することも可能。
詳細はPDFファイル参照。
ジェトロ「中国 為替管理制度 貿易取引」(362KB)
外貨計画
外貨取引は、一般に外貨計画に基づき行われる。計画全体は外貨管理局により調整され、国家発展・改革委員会により他の計画と再調整されてから、国務院により許可される。外貨計画のうち対外貿易、対外借款、対外援助にかかわるものは商務部が作成し、ほかの政府各部門の外貨予算は財政部が作成する。外貨計画のうち、地方政府、各政府部門の貿易外取引、華僑送金などにかかわる部分は、外貨管理局が作成する。
貿易外取引
運賃・保険料、仲介貿易・立替え費用、外貨送金、外貨キャッシュの引き出し、外貨の購入
貿易外取引の対外支払いは、届出制度、書類審査などの手段で管理されている。
外資企業の貿易外取引における運賃や保険料
契約正本、運賃領収書と保険料領収書に基づき、外貨口座から支払うか、または外貨指定銀行を通して支払う。
仲介貿易、立替え費用などによる貿易外取引の外貨支払
契約書と関連書類に基づき、外貨管理局に申請し、許可を受ける必要がある。
サービス貿易、収益と経常移転など貨物貿易以外の経常取引
『サービス貿易外貨管理指引』(2013年9月1日実施)、『サービス貿易外貨管理指引実施細則』(2013年9月1日実施、2015年5月4日改正)によれば、対外支払には制限なし。外貨収入は、規定条件と期間に従い、国内または国外で外貨か人民元で預けることができる。外貨支出は、自己所有外貨または人民元からの両替で支払うことができる。
- サービス貿易とは、輸送、旅行、通信、建設と労務提供、保険、金融、計算機と情報サービス、特許使用、体育文化と娯楽サービス、その他の商業サービス、政府サービスなどを指す。
- 収益とは、仕事報酬、利子、配当、利益、保証費などを指す。
- 経常移転とは、非資本移転の寄贈、賠償、税金、偶然性所得などを指す。
1回につき5万ドル相当超のサービス貿易外貨収支業務は、金融機関にて取引関連書類の審査が必要で、対外支払いの場合、事前に地元の国税機関に税務届出をしなければならない。1回につき5万ドル相当以下の場合、原則取引書類の審査は必要ない。
また、『国家税務総局・国家外貨管理局によるサービス貿易等項目の対外支払税務届出の関連問題に関する公告』(2013年9月1日実施)によれば、次の収益と対外支払は税務届出をする必要はない。
- 国内機関が国外で発生した旅費、会議費、商品展示費
- 国内機関の国外事務所の経費および国内機関が国外で請け負ったプロジェクトの費用
- 国内機関が国外で発生した輸出入貿易仲介費、保険料、賠償金
- 輸入貿易における国外機関が取得した国際輸送費用
- 保険の保険料、保険金
- 輸送または遠洋漁業に従事する国内機関が国外で発生した修理費、油代、港雑費
- 国内旅行会社のツアー料金および予約、宿泊、交通などの費用
- アジア開発銀行と世界銀行グループ傘下の国際金融会社が中国で取得した収入(合弁企業から得た利益と株売却所得、不動産などの貸出・売却収入と中国国内機関への貸出利息などを含む)
- 外国政府と国際金融機関が中国に提供した外国政府のローン(外国政府の混合ローンを含む)と国際金融機関の貸出利息
※国際金融機関とは国際通貨基金、世界銀行グループ、国際開発協会、国際農業開発基金、欧州投資銀行などを指す。 - 外貨指定銀行または財務会社の国外借款、国外同業コール、海外支払立替とその他の債務利息などの対外融資
- 中国省レベル以上の国家機関の対外無償寄付援助資金
- 国内証券会社または登記決算会社が国外機関または国外個人に支払う合法的株配当、配当、利息収入と有価証券売出収益
- 国内個人の国外留学、観光、親族訪問などの費用
- 国内機関と個人が行うサービス貿易、収益と経常移転の外貨還付金
また、『国家税務総局・国家外貨管理局によるサービス貿易等項目の対外支払税務届出の関連問題に関する補充公告』(2021年6月29日実施)によれば、以下の事項については税務届出をする必要はない。
- 外国投資者が中国国内直接投資から得た合法所得を中国国内へ再投資するもの
- 財政予算内の機関、事業単位、社会団体への非貿易・非経営性外貨支払業務
企業の外貨口座からサービス貿易の外貨キャッシュを引き出す場合
『サービス貿易外貨管理指引実施細則』(2013年9月1日実施、2015年5月4日改正)によれば、次のケースは関連書類の審査が必要となる。
- 国際海運の船長の前借りのための外貨キャッシュ引き出し
- 戦争中であり、外貨規制が厳しく、金融条件が悪い国・地域に行く場合
- 対外労務提供または対外請負工事の関連外貨キャッシュ引き出し、および国外事務所の経費のための外貨キャッシュ引き出し
- 国内機関の公務出国において、1人当たり外貨キャッシュが1万ドル以下の場合
外資企業の外国籍職員が個人で出国する場合、定住・旅行などで外貨を購入する場合
外貨指定銀行に外国人居留証および帰国ビザのある旅券、または外国人出入国証の提出が必要である。
- 現金での引き出し
個人が1日1万ドル相当以下の外貨を現金で引き出す場合は、直接銀行にて行える。1日1万ドル相当を超える外貨を現金で引き出す場合は、本人の身分証明書と関連証明書類を外貨管理局に事前に提出する必要がある。銀行は本人の身分証明書と外貨管理局より認証された「外国人個人外貨収支状況表」をもって関連する手続きを行う。 - 現金での預け入れ
個人が1日5,000ドル相当以下の外貨を現金で外貨預金口座に預け入れる場合には、直接銀行にて行える。1日5,000ドル相当を超える外貨を現金で外貨預金口座に預け入れる場合には、本人の身分証明書、税関の印章のある申請書または本人が預けていた銀行の現金引き出しエビデンスをもって銀行で関連手続きを行う。 - 両替
個人の人民元と外貨の両替は、1人につき年間5万ドルを上限とする。外貨を人民元に両替する際、1人1回につき1万ドル相当以下の場合、直接銀行にて行える。1人1年につき5万ドルを超え、経常項目の場合、本人の身分証明書と取引関連証明書類をもって、銀行にて行える。資本項目の場合、外貨管理局の審査許可が必要である。
なお、外貨代理両替機関と自動両替機業務に関する管理規定(2016年5月19日実施)により、条件を満たした国内機関が銀行の承認に基づき、外貨代理両替機関となる。外貨代理両替機関は、個人に対し、外貨から人民元への両替業務を行うことができ、1人1日の両替上限を1万人民元とし、1人1年の両替上限を5万人民元とする。また、銀行は自動両替機を設置することができ、1人1日の両替上限を5,000人民元とする。
- 外国送金
個人が外貨を国外に送金する場合、送金額が1万ドル相当以下であれば、本人の身分証明書をもって銀行にて行える。送金額が1万ドルを超える場合、本人の身分証明書と本人入国外貨所持申告エビデンスまたは預けていた銀行の現金引き出しエビデンスをもって銀行で行える。 - 出国時の外貨持ち出し
出国する場合、1人当たり5,000ドル以下の外貨持ち出しは申告が不要である。1万ドル以下の外貨持ち出しは可能である。
※外貨購入の年間限度額(中国人対象)
2006年5月1日より、中国人を対象に外貨購入の「年間購入限度額管理」制度が実施されている。2007年2月1日より、1人当たりの年間人民元・外貨の両替限度額は5万ドル相当に引き上げられ(5万ドル以下の場合は本人の身分証明書だけで購入できるが、5万ドルを超える場合は両替の必要性がわかる証明書類が必要となる)、制限が大幅に緩和された。また、国内住民の外貨購入に対する審査手続きとネッティング管理が撤廃された。
資本取引
資本金口座、外貨借入専用口座、借入返済専用口座
資本取引とは、国際収支における資本の輸出入によって生じる資産・債権と債務の取引である。直接投資、対外債務、対外債務の返済、証券投資などがある。
資本取引は原則禁止(個別認可)で、収支ともに、厳格な管理が行われている。
資本取引の収入を留保するか、金融機関に売るかは、基本的に外貨管理当局の許可が必要である。資本取引の支出は、有効な証拠をもって自己資金で送金することもできれば、金融機関から外貨を購入して送金することもできる。ただし、一部は事前の許可が必要である。
詳細はPDFファイル参照。
ジェトロ「中国 為替管理制度 資本取引」(354KB)
関連法
外貨管理条例、外貨決済管理条例、外貨送金管理条例など
詳細はPDFファイル参照。
ジェトロ「中国 為替管理制度 関連法」(199KB)
その他
外貨に関するその他規制など
詳細はPDFファイル参照。
ジェトロ「中国 為替管理制度 その他(134KB)