市場・トレンド情報

外国産品の先行事例分析

2010年11月
分野:食品・農林水産物

ノルウェー産のサーモンは1998年以降、中国で急速に販売を伸ばし、輸入量は年々増えている。中国はノルウェー産サーモンのアジアでの主要輸入国となっていると同時に、中国の都市地域で一般的な食品ともなりつつある。中国市場に進出した外国産食品の中で、ノルウェー産サーモンは最も成功した事例の一つである。その中で、ノルウェー政府が果たした役割は無視できない。ノルウェー産サーモンは中国消費者の食習慣と外食文化に浸透し、中国のサーモン市場の90%のシェアを手にしている(※1)。
※1, 出所:「ノルウェー産サーモンがメジャー中華料理へ進出」(2008年6月24日付 情報時報)

輸入量が増え続けるサーモン

ノルウェー産サーモンの中国市場への進出は早く、1981年の香港進出に続き、1985年には中国大陸に進出した。しかし当初は輸入量が少なかった。1998年9月30日にノルウェー水産物輸出審議会(NSEC)が中国で代表所(事務所)を開設したが、事務所開設前の1997年のノルウェー産サーモンの中国大陸と香港への年間輸入量は4,800トン、1億6,100万元に過ぎなかった。

代表所の開設を境に、サーモンの輸入量は急速に伸び、その後年平均20%前後の伸び率を続けてきた。

近年中国のノルウェー産サーモンの輸入量は一段と増加している。金融危機の影響を受け、2008年にサーモンの輸入量は2007年より減少したものの、輸入額は11%増加した。2009年には輸入量が2万3,174トン、前年比55%と激増、輸入額も9億元、同42%増加した。2010年に入っても勢いは衰えず、1~8月の輸入量は1万9,300トン、輸入額は8億9,500万元と、8カ月で2009年通年の輸入額を既に上回っている(図1)。また、1998年から2009年の12年間において、中国が輸入したノルウェー産サーモンの量と金額の増加幅は、ノルウェーが全世界向けに輸出した水産物の年平均増加幅をかなり上回っている。

アイスランドのグリトニル銀行の2006年調査報告書によれば、2020年には中国の水産物の消費量は2006年より40%増加する見込みである(※2)。これは、サーモンを含め、ノルウェー水産物への消費需要が今後引き続き拡大していくポテンシャルがあることを意味する。
※2, 出所:「グリトニル海鮮食品業界報告書」(アイスランドのグリトニル銀行 2006年発行)

図1:中国のノルウェー産サーモンの輸入量と輸入額の推移
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出所:ノルウェー水産物輸出審議会中国代表所ウェブサイト(中国語)から作成(2010年11月10日)

中国のサーモン市場を制覇

ノルウェー水産物輸出審議会が中国で代表所を開設する前は、中国の消費者はほとんどサーモンを知らず、食べる習慣もなかった。そのため販売先は4つ星、5つ星のホテルの外国人客に限られていた。

1998年の代表所開設後、ノルウェーは中国へのサーモンの売り込みに力を入れ始めた。「中国漁業報」によれば、現時点でノルウェー産サーモンの中国における知名度は既に95%以上にも達している(※3)。中国の消費者は日本料理の刺身からサーモンを知るようになった。ここ十数年、日本料理の普及や、中国の経済成長と生活水準の向上につれて、消費者のサーモンへの需要も高まってきた。また、ノルウェー産サーモンは栄養が豊富で脂肪分が多く、香ばしい味覚も中国人の口によく合っている。さらに、サーモンは中国でおめでたいことを象徴する赤い色をしているのも好まれる理由の一つだ。こういった強みも追い風になり、ノルウェー産サーモンは中国消費者にサーモンを定着させ、同市場で90%のシェアを誇る。今では中国消費者によく知られる健康によい水産物の一つとなっている。
※3, 出所:「ノルウェー産サーモンの中国での普及と参考価値」(2009年10月5日付 中国漁業報)

ノルウェー産サーモンは中国では比較的高級な食品に当たる。例えば、北京華聯の高級スーパーBHGでは、刺身用の価格は276元/キロ。杭州市の三上日本料理店では、58元/8枚、78元/12枚、98元/18枚といった具合に、高めの価格設定になっている。

今では、中国にあるほとんどの日本料理店、数多くの中華料理店と数百軒のスーパーで、新鮮なノルウェー産サーモンを提供している。サーモンは主にすしと刺身に使われ、消費者層はホワイトカラー、日本での留学や就業の経験がある人、またはおしゃれな生活を好むある程度の経済力を持つ人などである。消費場所は主に日本料理店ほかさまざまなタイプのレストラン。家庭での消費は比較的少なく、小売店の販売はノルウェー産サーモン消費量全体の約25%しか占めていない。

これに対して、ノルウェー水産物輸出審議会中国マーケティングディレクターのアシルド・ナッケン氏は、中国の小売分野においてはまだ大きなポテンシャルがあり、今後、より多くの消費者が家庭でノルウェー産サーモンを食べるようになると見込んでいる。そのため、小売市場も積極的に開拓を始めている。

ノルウェー政府が積極的にプロモート

ノルウェー産サーモンが中国市場に順調に進出できた重要な要因の一つに、ノルウェー政府の全面的なバックアップがある。ノルウェー政府は、輸出される水産物に輸出額の0.75%に相当する輸出税を課している。ノルウェー漁業省傘下にある水産物輸出審議会はこの税金を利用して、中国や日本、米国、フランス、スペイン、イタリア、ポルトガル、ドイツ、シンガポール、ブラジル、ロシアなどの世界主要市場に常駐する海外代表所を設け、ノルウェーの水産物(サーモンを含む)の普及に当てている。

また、ノルウェー政府のトップが中国との外交活動の中でサーモンを熱心に売り込んでいる。例えば、2007年3月27日にストルテンブルグ首相が自らカルフール北京店でサーモンのプロモーションに当たった(写真1)。2010年5月27日にはトロンド・ギスケ貿易工業相も広州市での記者会見でサーモンを売り込んだ(写真2)。

政府がサーモンの海外市場の開拓をバックアップすると同時に、ノルウェーの輸出企業、特にサーモン養殖・輸出の大手企業であるMarine Harvest社やSEABORN社、Slakteriet Brekke社などもノルウェー政府のプロモーションに積極的に参加し、市場を共同開拓している。サーモンのプロモーションの際には、販売も展開するように取り組んでいる。

図2に示すとおり、ノルウェー水産物輸出審議会中国代表所が中国でサーモンをプロモートする中で、中国政府機関、特に農業部と国家品質監督検験検疫総局および中国調理協会と中国水産物加工流通協会などの重要な業界団体と良好な関係を作り、それによってプロモーションは順調に進められた。同代表所の中国におけるサーモンのプロモーション戦略といえば、中国地元の有力かつ経験豊富な北京海橋市場推広有限会社にサーモンのプロモーションの企画・実施を依頼したうえで、メディアとの提携やレストラン・スーパーなどの販売先でのプロモーションを通じて、ノルウェー産サーモンを中国消費者の食習慣と外食文化に徐々に浸透させていくというものである。

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写真1:ストルテンブルグ首相がサーモンをプロモーション(2007年3月27日 北京カルフール)

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写真2:トロンド・ギスケ貿易工業相がサーモンをプロモーション(2010年5月27日 広州市記者会見)

図2:ノルウェー水産物輸出審議会中国代表所のサーモンのプロモーション戦略
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メディアと協力して知名度アップ

ノルウェー水産物輸出審議会中国代表所は、中国メディアとのイベント共催、ノルウェーの現地取材へメディアを招待、イベントでメディアの取材・報道を呼び込むなどして、アピールをしている。

メディアとのイベント共催は、例えば2010年4月の上海万博開幕の折に、同審議会が中国最大のポータルサイトである搜狐ネットの「飲食チャンネル」と提携して、ノルウェー産サーモンのネットプロモーションとグルメメニュー公募を共催した。

2010年9月初めには、ノルウェー産サーモン輸入1,000万匹達成を早めるために、同審議会が中国最大の飲食予約サイトである飯統ネットと提携して北京市、上海市、広州市の3都市で「ノルウェー産サーモン、美食を発見、奇跡の証人へ」と題したグルメコンクールを同時に共催した。

また、同中国代表所は、毎年、新華社や搜狐ネットなどの主要メディアをノルウェーの現地取材へ招待し、異なる視点からノルウェーの魚介類(サーモンを含む)と自然風景を紹介・報道してもらっている。これまでにノルウェーで現地取材し、報道した中国大陸と香港の主要メディアは50社を下らない。中国メディアによるノルウェー産サーモンの宣伝は、中国の消費者のノルウェーおよびサーモンへの理解の向上に貢献している。

さらに、プロモーションのイベントでメディアの取材・報道を引き付けることも、独創性があり効果があった。例えば2001年1月に北京市、上海市、広州市などの都市において数十軒の一流ホテルで行われたノルウェー産サーモン「風生水起」イベントでは、新春料理である「風生水起」魚生サラダを試食提供した。

2003年8月にも、北京市をはじめ中国10大都市、100以上のホテルで行われたノルウェー産サーモン「唐風魚宴」イベントで、「唐風魚宴」シリーズの料理を続々登場させた。それによって、ノルウェーから輸入したサーモンと伝統的な中国文化とを有機的に融合させた。

2009年6月に北京市、上海市、広州市3都市で行われたノルウェー産サーモン「マーメード」イベントでは、ノルウェー産サーモンの美容健康・ダイエットの効果をアピールした。これらのイベントはメディアの取材・報道により、すぐにホットな話題となり、消費者の注目を集めた。

レストラン向けのプロモーションを重視

ノルウェー産サーモンの中国における販売ルートは図3に示すとおりである。ノルウェーのサプライヤーは中国各地の代理店に中国でのサーモン販売を委託する。例えば、広州浚匯輸出入有限会社はノルウェーSEABORN社のサーモンの中国華南地域における唯一の総代理店であり、成都市南春実業有限責任会社はノルウェー水産物輸出審議会が指定した四川地域の「ノルウェー産サーモン」の総代理店である。地域の総代理店、サブ代理店、取扱業者とサブ取扱業者はいずれも日本料理店やレストランにサーモンを卸すことができる。

図3:ノルウェー産サーモンの中国における販売ルート
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日本料理の中国での普及と流行に伴い、ノルウェー産サーモンの日本料理店での販売も拡大しつつあり、特に日本料理のチェーン店が最も有力な販売先となっている。回転ずしチェーン店において、ノルウェー産サーモンは全食材使用量の30%以上を占め、ノルウェー産サーモンがなければ回転ずし店をやっていけないほどである。2008年以降、プロモーション会社は日本料理チェーン店での普及に力を入れ、特に回転ずしチェーン店を最も重要視している。具体的には、回転ずし店の管理者とシェフに対して、ノルウェー産サーモンに関する知識と日本料理での応用に関する研修を強化している。

また、プロモーション会社は、ノルウェー水産物輸出審議会中国代表所が日本料理チェーン店と共催するノルウェー産サーモン回転ずしグルメ祭も企画している。2010年10月13日には、ノルウェー産サーモンの中国への輸入1,000万匹達成を祝うために、同代表所が「禾緑回転寿司」「争鮮回転寿司」「赤坂亭日本料理」「大漁鉄板焼」などの上海の計63カ所のチェーン店と「1,000万匹達成」ノルウェー産サーモン・グルメ祭を共催した。

中華料理店におけるサーモンのプロモーションは、主として創作中華料理を中心に段階的に推進するという戦略を取っている。まずはノルウェー産サーモンに関する知識の普及である。2000年以降、プロモーション会社は毎年全国各地で中華料理シェフを対象に、異なるテーマのノルウェー産サーモン料理研修セミナーを開催している。これまでに、セミナーは累計80都市で開催され、参加したシェフは合計1万2,000人に上り、うち80%以上は各地の一流レストランとホテルの料理長以上の中堅である。

プロモーション会社は全国的な料理コンクールも数多く協賛・主催した。全国的コンクールを通じて、各地のシェフがノルウェー産サーモンを材料に、創作的な中華料理や西洋料理を作り出す機会もでてきた。

また、同代表所は、ノルウェー産サーモンの創作料理を中心に、各地の有名ホテル・レストランと共催で、グルメ祭も開催している。ここ数年、グルメ祭を開催した5つ星ホテルと有名レストランは、累計100カ所を超え、ノルウェー産サーモンの各地における普及と消費に大いに貢献した。

スーパーで消費者に浸透

サーモンの中国での小売は主としてスーパーに依存している。スーパーで販売されるノルウェー産サーモンの仕入れルートは日本料理店、中華料理店と同じである。ただし最近は、サーモンのサプライヤーと直接供給契約を結ぶスーパーも出てきている。その場合、代理店や取扱業者を通さず直接仕入れるため、中間費用を節約し、仕入れの時間も短縮できる。例として杭州世紀聯華スーパーがノルウェーのMarine Harvest社と直接供給協定を結んでいるケースがある。

2001年以降、カルフールなどのスーパーはノルウェー産サーモンの週末促販イベントを行っている。イベントでは、消費者が無料で試食でき、ノルウェー産サーモンのメニューとDVDも無料提供。また研修を受けたシェフと販売促進者が店頭で客にサーモンについて説明したり、質問に答えたりするなどの販促活動も行っている。

このほか、プロモーション会社はスーパーの水産部門と代理店・取扱業者の管理者・スタッフを対象にノルウェー産サーモンに関する知識と販売テクニックの研修セミナーを開催している。こうしたセミナーは毎年全国各地で60~80回行い、サーモンのエキスパートとなり得る中堅スタッフの育成を行っている。

さらに、プロモーション会社は毎年さまざまな新しいデザインのスーパー向け宣伝用品、例えばメニュー入り販促ボックス、フラッグなどを設計および制作している。その上で、大手スーパーに職員を派遣してサーモンの販売コーナーを改善させている。改善された販売コーナーは、面積がより広くかつ分かりやすくなり、ノルウェー産サーモンの販売増進につながっている。以上のような絶え間ない努力が実を結び、今ではほとんどの中国の大手スーパーでノルウェー産サーモンを販売するようになっている。

(北京センター)

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