外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用
最終更新日:2023年09月29日
外国人就業規制
外国人に対する職種制限はないが、南アフリカ共和国(以下、南ア)での就労を希望する外国人には、就労ビザの取得が必須である。外国人に対する就労ビザ発給にあたっては、原則として、当該職種における適切な南ア国民の採用が難しいことが条件となっている。
南アの法体系は、日本の労働基準法に相当する雇用基準法「BASIC CONDITIONS OF EMPLOYMENT ACT, 1997」を中心とし、雇用均等法(EMPLOYMENT EQUITY ACT)、労働関連法(LABOUR RELATIONS ACT)等で構成されている。
雇用基準法は2002年に改正され、2010年1月15日には雇用基準法43条(子供の就業禁止)、44条(15歳以上の子供の就業)についての附則、子供の危険業種への就業規制「Regulation on Hazardous work by Children in South Africa, 2010」 が公布されるなど、労働関連の法整備が進められている。これらの法律は、外国人労働者を含む南アで働くすべての労働者に適用されるが、政府の防衛機関・研究機関・秘密機関に所属する労働者やボランティアに従事する者は適用対象外となる。
- 雇用契約
雇用者は、雇用契約を締結する際には、次の事項を労働者に書面で提供し、明示しなければならない。- 雇用者の氏名、会社名および住所
- 当該労働者の氏名、役職および職種
- 当該労働者の勤務地
- 契約開始日
- 1週間の就業日数と1日の就業時間
- 賃金と給与の計算方法
- 時間外手当
- その他手当
- 給与支払いの頻度
- 給与に控除額があればその金額
- 休暇
- (期間の定めのある雇用契約の場合)雇用期間および契約終了日
雇用契約の内容に変更が生じた場合、雇用者は労働者に対して変更した旨を記した書面のコピーを送付しなければならない。
労働省:雇用契約ガイド “Basic Guide to Employment Contracts(Learnerships)”
- 就業規則
就業規則の作成は法定されていない。しかし、多くの企業は社内規則として、就業規則(Regulation)で懲戒規定(Disciplinary code)や、 労働方針(Policies)を設けている。
在留許可
南アで就労する非居住者(外国人を含む)は、就労ビザの取得が必要となる。2016年9月27日に入管法(Immigration Act)が改正された。
外国人が取得できる主な就労ビザは3種類あり、外国人は南アで就労する前に、次のいずれかの就労ビザの取得を申請する必要がある。なお申請窓口は、内務省からVISA Facilitation Services(VFS)と呼ばれるビザ申請の代行機関に変更された。駐日南アフリカ共和国大使館で申請する場合、来館のために事前の予約が必要。
駐日南アフリカ共和国大使館:IMMIGRATION – VISA INFO
- 企業内転勤ビザ (Intra Company Transfer Visa)
日本法人との雇用契約に基づき、同日本法人の関連企業である現地法人(関連会社・支店を含む)に出向する者に対し、4年間を上限として発行されるビザ。
ビザ申請前に、申請者は出向元の日本法人との間で6カ月以上の雇用関係がなくてはならないとされており、日本から南ア国内の関連会社・支店に初めて赴任する者が、よくこのビザを取得する。
原則として、申請者の母国に置かれた南ア大使館で申請することが推奨されている。 - 一般労働ビザ (General Work Visa)
現地法人(関連会社・支店を含む)との雇用契約に基づき、一般労働者として南アに赴任する場合、5年間を上限として発行されるビザ。
申請に先立ち、申請者は南アの労働省から、申請者のほかに同国内には適格者がいないことの証明などを入手する必要がある。なお内務省に対しては、労働省からの証明書の免除を申請することができる。この就労ビザに基づく滞在が5年を経過すると、永住許可申請が可能になる。申請者の母国に置かれた南ア大使館または南ア国内での申請が可能。南ア国内での申請は、原則として、現在保有している同ビザの有効期間が切れる60日前までに、本人が直接VFSに出向いて申請書類を提出することになる。
官報No.37679 “Immigration Regulation 2014(5.07MB)”
- クリティカル・スキル・ビザ(Critical Skill Visa)
現地法人(関連会社・支店・駐在員事務所を含む)との雇用契約等に基づき、内務省が定めたリストに記載された特定の技能を有する人を対象として、最長5年を限度として発行されるビザ。南アにとって有益な特定の技能を有する外国人を招き、その技能を南ア国内へ移転することを目的としており、対象となる技能は、官報Government Gazette No. 47812, 02 AUGUST 2022に記載されている。
特定の技能に当てはまるかどうかは、学歴、技能、資格、経験などによって総合的に判断される。また申請にあたっては、資格能力局(South African Qualifications Authority:SAQA)が認めた専門団体などへの登録(Recognition of Professional Bodies)およびSAQAの評価証明書(Evaluation of Foreign Qualifications)が必要。どのような専門家団体へ登録するかは、申請する技能によって異なる(日本語が話せるだけでは、本ビザを申請することはできないため、注意が必要)。
現地法人との雇用契約があり、特定の技能を有していることが申請要件であるが、本就労ビザに基づく滞在が5年を経過すると、南アの永住許可申請が可能になる。
申請者の母国に置かれた南ア大使館または南ア国内での申請が可能で、南ア国内での申請における注意事項は、一般労働ビザと同じ。
管轄官庁:内務省(Department of Home Affairs)
所在地:1st Floor Rivonia Village, Cnr Rivonia Boulevard and Mutual Rd, Sandton
Tel:+27 (12) 425 3000
E-mail:info.dhasa@vfshelpline.com
現地人の雇用義務
現地人の雇用が原則であるが、その職種の適格者が国内にいない場合や特殊技能有資格者については外国人の就労を認め、当該外国人に就労ビザを発給する。
政府調達に際しては、黒人、カラード、女性など歴史的に不利益を受けてきた南ア国民(Historically Disadvantaged South Africans:HDSA)の雇用割合が入札時の評価に加えられているほか、1998年に制定された雇用均等法(Employment Equity Act)によって、企業に平等な雇用を義務付けている。
また従業員が50人以上、あるいは一定の売上高(製造業の場合3,000万ランド以上)がある企業に対しては、一定の割合でのHDSA雇用が、雇用均等法に基づいて求められる。さらに、社内において雇用均等に関する従業員との協議が求められるほか、従業員が150人未満の場合、雇用機会計画の策定や雇用機会均等に関する2年ごとの報告書の労働省への提出が必要となる。
南ア政府:雇用均等法 “Employment Equity Act”
政府調達や鉱業権免許など、政府の認可が必要とされる業種については、認可に当たって雇用均等などが考慮される(備考「ブラック・エコノミック・エンパワーメント(BEE)政策」を参照)。
雇用均等法は2023年度中に改正予定。
その他
在留届、就労日本人に同行する家族、観光ビザ。
在留届
外国に住所または居所を定めて3カ月以上滞在する日本人は、住所または居所を管轄する現地の日本大使館または総領事館(在外公館)に、「在留届」を提出することが義務付けられている。従って、滞在先の住所が決まり次第、在南ア日本国大使館へ在留届を提出する必要がある。またビザ保有者が住所を変更した際は、14日以内に内務省に通知することが必要である。これらの手続きをとることにより、南ア国内で事件や事故に巻き込まれた場合、迅速な安否確認や緊急連絡などが可能となる。
ビザの有効期間が切れた不法滞在者は、不法滞在期間に応じ、南アへの再入国が一定期間制限される。不法滞在期間が30日以内の場合は最長2年、31日以上の場合は5年再入国が禁止される。
就労日本人に同行する家族
- 帯同家族ビザ(Visitor's Visa)
就労ビザ等を得た日本人に帯同する扶養家族に対しては、就労ビザが企業内転勤ビザ、または一般労働ビザの場合は3年、クリティカル・スキル・ビザの場合は5年を上限としたビザが発行される。なお、就労ビザが企業内転勤ビザまたは一般労働ビザであっても、当局の裁量により、就労ビザと同じ有効期間の帯同家族ビザが、実務上発行される場合がある。
帯同家族は南ア国内では就労はできず、学齢期の家族は後述するスタディー・ビザ(Study Visa)を、別途取得する必要がある。また南ア国内で出生した子どもも、帯同家族ビザを取得する必要がある。
なお、18歳未満の子どもを伴って外国に旅行する場合には、出入国時に子どもの出生証明書などの書類を提示する義務がある。 - スタディー・ビザ(Study Visa)
南ア国内の教育機関から許可を得た留学生、または就労ビザ等を得た外国人の扶養家族が南アの学校に所属する場合に申請するビザで、有効期間は全就学期間(初等学校教育は8年以内、中等学校教育は6年以内)が上限とされている。ただし扶養家族の場合は、通常、就労ビザ保有者のビザの有効期間が上限になる。
家族の就労ビザまたは帯同家族ビザと同時に申請することが可能であるが、提出書類が異なるため注意が必要である。なお、すべての申請書類は英語に翻訳する必要がある。
観光ビザ
観光目的で南アに入国した者は、入国時、パスポートに滞在日数90日を上限とする滞在許可のスタンプが押される。このスタンプでは、就労、就学、ボランティア活動などはできず、南ア国内で同スタンプの延長や他のビザへの更新もできない。長期滞在するためには、一旦母国に帰国し、母国に置かれた南ア大使館で適切なビザを取得する必要がある。