農業だってDX! ‐東南アジアに芽吹くデジタルのチカラ‐

2021年02月18日

「デジタルトランスフォーメーション(DX)」、IT技術やデータの活用を通じて、ビジネスモデルを変革させようとする動きが、農業分野にも広がっている。東南アジアの農場では、デジタル技術を通じ、科学的知見をもとに作物の生育状況を管理し、省力化や品質を向上する取り組みが行われていた。カンボジアでの稲作、タイでのいちご栽培でDXを促そうとする日本のスタートアップを取材した。

(11分00秒)

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テキスト解説:視覚障害のある方のための文字おこしテキストです。

映像説明: 繁華街。交通量の多い車道沿いに街路樹が植えられ、ビルが立ち並んでいる。

テロップ: DX デジタルトランスフォーメーション

ナレーション: DX、デジタルトランスフォーメーション。

映像説明: 室内。グレーのストライプのシャツを着た男性がスマートフォンを耳に当てている。 紺のシャツを着た人物がデスクでキーボードを操作している。

テロップ: IT(アイティー)

テロップ: データ

テロップ: 変革

ナレーション: IT(アイティー)技術やデータを活用して、サービスやビジネスモデルを変革する取り組みのことだ。

映像説明: 生い茂った緑の葉。青いシャツを着た人物が白い小型の機器を手にし、葉に当てている。 ビニールハウスの中。長いフレームが立てられ、イチゴの苗床がセットされている。グレーのハットをかぶった男性がかがんで歩きながら実を取り、白い化粧箱に入れている。箱の側面には「SAKURA ICHIGO」と書かれたロゴが描かれている。

ナレーション: デジタル技術によって情報を見える化することで、ビジネスを見直す動きが広がっている。

映像説明: 広大な黄緑の田んぼ。白い小型のドローンが宙に浮いている。紺のジャケットを着た女性がドローンのほうを見つめている。 会議室。マスクを着け、白いトップスを着た女性が長机(ながづくえ)でノートパソコンの画面を指さしている。画面には緑の作物が植えられた畑の写真が映っている。写真には数珠つなぎになった15個ほどの青い円が何列も描かれている。傍らには「生育診断(結球後) 総数733個 平均サイズ2.74cm」などと書かれた表が表示されている。

ナレーション: 日本政府(にほんせいふ)も、ASEANでの実証実験を支援するなど、国内外でDXの実現に向けた取り組みが加速している。

映像説明: ジェトログローバルアイオープニングタイトル。 薄い青を基調としたコンピューターグラフィックスの背景画。 世界地図の上で回転する、中が空洞になった地球儀から、もうひとつ地球儀が飛び出す。 拡大表示された地球儀の横にタイトルが現れる。 「世界は今 ジェトログローバルアイ」

映像説明: スタジオ。地球儀と世界地図の画像をバックに、女性キャスターが入ってくる。 リボンタイの付いた薄紫のブラウスにフレッシュピンクのスカートをはいている。

テロップ: 八木 ひとみ(やぎ ひとみ))

八木(やぎ)キャスター: 世界は今、ジェトログローバルアイ。 DX、デジタルトランスフォーメーションという言葉を、最近、耳にする機会が多いと思います。デジタル技術によって、さまざまな産業で生産性や品質の向上に向け、変化が起きていますが、農業も例外ではありません。東南アジアでコメやイチゴの栽培を変えようとする日本企業(にほんきぎょう)の取り組みを取材しました。

テロップ: 農業だってDX! ‐東南アジアに芽吹くデジタルのチカラ‐

映像説明: 街なかのロータリー。つえをささげて正座をする黒い男性の像が巨大な円形の台座の上に建てられている。台座の周りの車道を車やバイクが走っている。

テロップ: カンボジア

テロップ: Cambodia(カンボジア)

ナレーション: カンボジア。

映像説明: 道沿いに店が立ち並んでいる。店の前にはパラソルが何本も立てられ、バイクやリヤカーが止められている。 色鮮やかな花が供えられた一角。カーキ色(いろ)の上着を着た男性が上のほうを見上げ、顔の前で手を合わせている。白いトップスを着た女性が上のほうを見ながら念仏を唱えている。

ナレーション: 日本の半分ほどの国土に1,600万の人が暮らす。

映像説明: 屋内の市場(いちば)。細い通路の両脇に置かれた籠や棚に、さまざまな種類の葉物野菜(はものやさい)や根菜が並べられている。それぞれの店で、女性たちが作業をしている。 パラソルが立てられた店。アスパラガスやインゲン、ズッキーニ、サツマイモ、タマネギ、ジャガイモ、ニンジン、キャベツなどが籠に山積みになっている。ピンクのカーディガンを着た女性がポリ袋を丸めて籠に入れる。 交通量の多い車道。車やバイクが連なり、速度を落として進んでいる。 市場(いちば)の外観。パラソルが立ち並ぶ道をバイクが走っている。

ナレーション: 以前は、国民の半数以上が農業従事者だったが、都市部への人口の集中や工業化などの影響で農家が減少しつつあるという。

映像説明: 田んぼのあぜ道。ベージュのハットをかぶった男性が山のように干し草を積んだトラクターを運転している。ハットをかぶり、布を首に巻いた人物が干し草の上に座っている。画面左下の四角い枠にインドシナ半島の地図。カンボジアは半島の南部に位置している。バッタンバンは国の北西部にある街で赤い星印で示されている。プノンペンはバッタンバンの南東部に位置していて赤い丸印で示されている。タイは半島の中央部にあり、東でカンボジアと国境を接している。

テロップ: カンボジア バッタンバン

映像説明: 白い小型のドローンがあぜ道に置かれている。マスクを着け、紺のジャケットを着た女性がタブレット端末を操作する。ドローンが砂ぼこりを上げながら、浮き上がる。マスクを着け、白いポロシャツを着た男性がドローンのほうにスマートフォンを向けている。 ドローンが広大な黄緑の田んぼの上を低空飛行している。

ナレーション: そんななか、タイとの国境に程近いバッタンバン州では、水田の上にドローンを飛ばしている人の姿が…。一体、何をしているのだろうか。

映像説明: 紺のジャケットを着た女性が水田の上を飛ぶドローンを見つめている。 ドローンが水田の上の空中で静止している。

ナレーション: 実は今、栽培するコメの生育状況を確認しているのだ。

映像説明: 白いトップスを着た人物がノートパソコンの画面を指さしている。田んぼを上空から撮った写真が映っている。写真が拡大表示される。 「画像比較」と題されている画面。2分割された画面の右側に「比較画像」と題された水田の写真、左側に「比較対象画像」と題された濃い緑と薄い緑の無数のドット画像が表示されている。濃い緑の部分に比べて薄い緑の部分が少なく、むらが出来ている。画像の下に「Area ratio(エリア レーティオ): 27.5%」と書かれている。

テロップ: 葉色(ハしょく)解析サービス

ナレーション: 利用しているのは、日本企業(にほんきぎょう)が開発した葉色(ハしょく)解析サービス。ドローンで撮影した写真の葉の色から農作物(のうさくぶつ)の状態をAI(エーアイ)が分析してくれる。

映像説明: ノートパソコンの画面。右側の「比較画像」と題された緑の田んぼの写真のあとに、左側の「比較対象画像」と題された濃い緑と薄い緑の無数のドット画像が映される。「比較対象画像」と題された濃い緑と薄い緑の無数のドット画像が指でさされる。 田んぼ。黄緑の作物で覆われている。

ナレーション: これにより、今まで目が行き届いていなかった農地でも適切な収穫時期や範囲、必要な農薬の量などを把握することができるという。

映像説明: 水田。マスクを着け、紺のジャケットを着た女性がタブレットを持ち、田んぼのほうを見ながらインタビューに答える。

紺のジャケットを着た女性・英語: 農地の見回りに多くの時間を費やしていましたが、ドローンを使えば素早く農地を見回ることができる。

映像説明: 8階建てのグレーのビルの外観。歩道沿いに軽トラックが止まっている。

テロップ: 東京都 中央区

映像説明: オフィスのエントランス。「Skymatix(スカイマティクス)」、「Remote Sensing as a Service(リモート センシング アズ ア サービス)」と書かれた立体ロゴが壁に掲げられている。「Sky」の部分だけが青文字になっている。 窓際に観葉植物が飾られたオフィス。4人の人物が、それぞれのデスクでパソコンに向かっている。全員がマスクを着けている。

テロップ: スカイマティクス

ナレーション: このサービスを提供しているのが東京に本社を構えるスカイマティクス。画像解析のソフトウェア開発を行うIT(アイティー)企業だ。

映像説明: 紺のパーカーを着た男性と紺のジャンパーを着た男性が、それぞれのデスクでパソコンに向かっている。 白い小型のドローンがテーブルに置かれている。十文字のボディーの4つの先端にプロペラが1つずつ取り付けられている。ボディーの中ほどに「PHANTOM」と書かれたロゴが刻まれている。 ボディーの下に取り付けられたカメラのアップ。レンズの周りのフレームに「dji」と書かれたロゴがある。

ナレーション: ドローンなどで撮影した画像を、AI(エーアイ)を使って解析するサービスを展開しており、農業をはじめ、インフラや測量などといった分野でデジタルソリューションを提供している。

映像説明: マスクを着け、白いトップスを着た女性が長机(ながづくえ)でノートパソコンに向かい、うなずきながら画面を指さしている。

ナレーション: その1つ、葉色(ハしょく)解析サービスは、コメだけでなく、さまざまな作物の生育状況を管理することができ、日本でも、すでに100件以上、導入されている。

映像説明: 分析された畑の画像がノートパソコンの画面に映っている。画像は赤とオレンジ、黄色(きいろ)、水色、青、紺のドットで表示されている。傍らに2つの小さな表が表示されている。 キャベツ畑(きゃべつばたけ)の写真が映っている。畝に並んだキャベツの玉が黄色(きいろ)や水色、青の円で囲まれている。傍らに「グループ3 生育診断(結球前) 総数50個 平均サイズ23.57cm」と書かれた表が表示されている。「サイズ(cm(センチメートル))」、「個数」、「個数割合(%)」、「平均サイズ(cm(センチメートル))」といった項目があり、サイズごとに色分けされている。

白いトップスを着た女性: 生育診断っていうのをやっていて、キャベツの結球した玉の直径をAI(エーアイ)で認識してるんですけど、大きさごとに色分けがされていて…。

映像説明: あぜ道。両側に田んぼが広がっている。 紺のジャケットを着た女性が黄緑の田んぼの上で静止しているドローンのほうを見つめている。

ナレーション: 海外にも展開を進めており2018年にカンボジアに進出。日本の技術を使って農業支援を行う現地のパートナーと連携し、サービスの普及を進めている。

映像説明: スカイマティクスのオフィス。壁際に観葉植物が飾られている。マスクを着け、白いトップスを着た女性が長机(ながづくえ)でノートパソコンに向かっている。画面に表示された緑の田んぼの写真がスクロールされる。 ノートパソコンの画面に、グレーの上着を着て話をする男性が映っている。

テロップ: スカイマティクス 大路 幸宗(おおじ ゆきむね) ゼネラルマネージャー

ナレーション: 実際に現地の農家を訪れるなか、見えてきたのは生産性の低さ。「この課題を、DXを通じて改善していきたい」と大路さんは話す。

映像説明: レンガの柱がある室内。グレーの上着を着た大路ゼネラルマネージャーがインタビューに答える。(Zoomのビデオ通話) 高床式の茶色い家の外観。開かれた門のそばに赤やオレンジの花が咲いている。家の周りには木々(きぎ)が茂っている。紺のジャケットを着た女性が、赤いテーブルといすが置かれた庭先へ入っていく。紫のチェックのシャツを着た男性とグレーのトップスを着た女性が迎え出る。 茶色いデスクのある室内。マスクを着け、紺のジャケットを着た人物がノートパソコンで畑を上空から撮った写真を見ている。 レンガの柱がある室内で大路ゼネラルマネージャーが話を続ける。

大路ゼネラルマネージャー: これまでの、その、勘と経験に、こう、頼った農業をしているという課題があるというふうに聞きました。 こういう課題に対してですね、弊社のシステムが農業のDX化に寄与をしてですね、 ある程度、科学的な知見に頼ったスマートな農業を実行できるような形になっていけばいいなというふうに思っております。

映像説明: あぜ道。ベージュのハットをかぶった男性が干し草を積んだトラクターを運転している。ハットをかぶり、布を首に巻いた人物が干し草の上に座っている。 高床式の家の庭先。マスクを着け、紺のジャケットを着た女性が紫のチェックのシャツを着た男性とグレーのトップスを着た女性に書類を見せながら話をしている。 青いシャツを着た女の子がいすの上に立ち、背もたれを揺すっている。グレーのトップスを着た女性が女の子を支える。

ナレーション: しかし、トラクターなどの農業機械の普及が進み始めたばかりのカンボジアでは、ドローンへの設備投資まで至らない農家も多い。

映像説明: マスクを着け、紺のジャケットを着た女性と紫のチェックのシャツを着た男性がいすに座って話をしている。二人とも、手に書類を持っている。 紫のチェックのシャツを着た男性が、マスクを着け、紺のジャケットを着た女性が持つ書類の写真を指さす。 田んぼ。マスクを着け、紺のジャケットを着た女性がタブレットを手に持ちながら水田の上を飛ぶドローンのほうを見つめている。

ナレーション: そこで現在、効果を実感してもらうために農家を訪れ、サービスを説明し、ドローンで農地を撮影させてもらっている。

映像説明: ノートパソコンの画面。左側に「比較対象画像」と題された濃い緑と薄い緑の無数のドット画像、右側に「比較画像」と題された緑の田んぼの写真が映っている。

テロップ: 分析結果 撮影画像

映像説明: ノートパソコンの画面。画面左側に表示された「比較対象画像」と題された濃い緑と薄い緑の無数のドット画像のアップ。

テロップ: 濃い緑 薄い緑 収穫には早い → 収穫時期

ナレーション: 葉の色の濃度の違いから収穫可能な範囲などを分析して比較。成長の偏りなどが見られることも。

映像説明: 遠くまで広がる水田。 稲穂がこうべを垂れ、風に揺れている。

ナレーション: 実際にサービスを通じて自分の農地の状況を把握することで、いかに生産性が上がるかを感じてもらう。

映像説明: 高床式の家の庭先。紫のチェックのシャツを着た男性がインタビューに答える。

テロップ: カンボジアの米農家(こめのうか)

紫のシャツを着た男性・クメール語吹き替え: 仕事がすごく楽になるよ。 ドローンを使えば田んぼの中まで見えるからね。

映像説明: 高床式の家の庭先。マスクを着け、紺のジャケットを着た女性と紫のシャツを着た男性がいすに座って話をしている。二人とも、手に書類を持っている。

ナレーション: こうしたデジタル技術が受け入れられつつある状況に、カンボジアの現地パートナーもビジネスチャンスを感じていた。

映像説明: 水田。マスクを着け、紺のジャケットを着た女性がタブレットを操作している。 あぜ道。ベージュのハットをかぶった男性が干し草を積んだトラクターを運転している。ハットをかぶり、布を首に巻いた人物が干し草の上に座っている。 白い天井の室内。黒い上着を着た男性がインタビューに答える。(Zoomのビデオ通話)

テロップ: カンボジアのパートナー企業 JCグループ 髙 虎男(こう ほなむ) 社長

髙社長: カンボジアの農業は、そういうソフトウェアのデジタル化というよりは、 ハードウェアの機械化がようやく普及しましたっていうフェーズかなという理解で…。 そこに、どうやってデジタル化っていうのを付けていくかっていう話だと思うんですけど、 新しいソリューションが、むしろ入りやすいっていう部分があると思うので、 そういう意味ではスカイマティクスさんの技術、広く農業関連のスマートアグリのソリューションって、まさにそれだと思っていて…。

映像説明: 田んぼ。マスクを着け、紺のジャケットを着た女性が黄緑の田んぼの上で静止するドローンのほうを見つめている。7名ほどの人物があぜ道でその様子を見守っている。 スカイマティクスのオフィス。ノートパソコンの画面の左側に「比較対象画像」と題された濃い緑と薄い緑の無数のドット画像、右側に「比較画像」と題された緑の田んぼの写真が映っている。白いトップスを着た女性が右側に表示された緑の田んぼの写真を指さしている。 木目調のデスクで、ノートパソコンを操作している女性の様子。

ナレーション: 今後もサービスの普及を目指すスカイマティクス。「カンボジアにとどまらず、さらに海外展開を進め、DXによる新しい農業の形を提案していきたい」と大路さんは話す。

映像説明: レンガの柱がある室内。グレーの上着を着た大路ゼネラルマネージャーがインタビューに答える。(Zoomのビデオ通話) 水田。マスクを着け、紺のジャケットを着た女性が、タブレットを手に持ち、田んぼの上を飛ぶドローンのほうを見つめている。 マスクを着け、紺のジャケットを着た女性がタブレットを操作している。 レンガの柱がある室内。大路ゼネラルマネージャーが話を続ける。

テロップ: スカイマティクス 大路 幸宗(おおじ ゆきむね) ゼネラルマネージャー

大路ゼネラルマネージャー: ほんと、DX化っていうのは、いろんな見方があると思うんですけども、 時間を使うべきところに時間を費やせるようになるためのツールだというふうに思っておりますので、 本当にカンボジアを皮切りに、ASEANを中心に各国(かくくに)でですね、そういった農業のDX化なんかに興味のある企業さんと巡り合うことができれば、 あの、その国へも進出していきたいなというふうに考えてます。

映像説明: 大きな石造りの寺院。ところどころが崩れかけている。長い石段が設けられ、装飾の施されたアーチ型の出入り口へ続いている。どっしりとした薄茶色(うすちゃいろ)の台座の周りには、象の上半身の彫刻が何体も飾りつけられている。画面左下の四角い枠にインドシナ半島の地図。チェンマイはタイの北部に位置していて赤い星印で示されている。

テロップ: タイ チェンマイ

映像説明: 寺院の壁面に設けられたアーチ型の空間に、金色の仏像が安置されている。仏像はあぐらをかき、足の甲をももの上に置いている。手は左手の上に右手を重ね、足の上に置かれている。

ナレーション: 一方、タイでもDXによってビジネスモデルを変革しようとする日本企業(にほんきぎょう)があった。

映像説明: 緑豊かな山あいに、丸屋根のビニールハウスが何棟も建てられている。 ビニールハウスの中。淡い赤に色づいたイチゴと黄緑の小さなイチゴが茎の先になっている。 苗床がセットされたフレームが何台も立てられ、ハウス内の奥へ続いている。緑の葉が苗床いっぱいに茂っている。

ナレーション: チェンマイにある、こちらのビニールハウスで栽培されているのは、イチゴ。ここでは日本の生育環境を再現し、日本(にほん)ブランドのイチゴの栽培を進めている。

映像説明: 街なか。街路樹が植えられた車道沿いにビルが立ち並んでいる。 店内。ガラスのショーケースや壁際の棚にブドウやリンゴ、化粧箱入り(けしょうばこいり)のイチゴが並べられている。それぞれの商品の近くに値札が立てられている。 化粧箱には桜の花びらとイチゴのイラストが描かれた透明なフィルムが掛けられている。フィルムには「SAKURA ICHIGO」の文字がある。 ピンクの緩衝材が敷かれた化粧箱に赤く熟した大きなイチゴがきれいに並べられている。

ナレーション: 実は、近年、タイではイチゴの需要が高まっている。しかし、温暖な気候のタイで栽培するイチゴは、実が硬く、酸味の強いものが多かった。そのため、甘く柔らかい海外からの輸入品に人気が集まっていたが、日本産(にほんさん)は輸送コストなどによって数倍もの価格になるものもあり、手に取られにくかった。

映像説明: 交通量の多い車道。道路沿いに建つ、3階建てのグレーのビルの外観。 オフィスのエントランス。「Nihon Agri (Thailand) Co., Ltd」(コーリミテッド)」と書かれたプレートが壁に掲げられている。 ガラス張りのオフィス。長机(ながづくえ)でマスクを着けた8人の人物が話をしている。それぞれの人物の前にはノートパソコンが置かれている。

テロップ: 日本農業(にほんのうぎょう)

ナレーション: そこで、日本のイチゴの普及のために現地生産に踏み出したのが日本農業(にほんのうぎょう)だ。農産物の生産から販売、ブランディングや知財管理などを手がけるスタートアップ。

映像説明: ガラス張りのオフィス。長机(ながつくえ)で話をしている様子。全員がマスクを着けている。 緑のポロシャツを着た男性が身ぶりを交えて話をしている。隣に座っている薄茶色(うすちゃいろ)のカーディガンを着た女性がうなずいている。2人ともマスクを着けている。

ナレーション: 日本の品種を守りながらも現地での生産に取り組むことで、海外での日本の農産品の普及を目指している。

映像説明: ビニールハウスの外観。ハウスが黒とピンクのネットで覆われている。 ビニールハウスの中。葉が茂った苗床が奥へ続いている。天井近くにサーキュレーターが取り付けられている。 苗床の上に設置されたパイプから、ミストがまかれている。

ナレーション: タイでの栽培試験は2018年に開始。生育環境の整備を進めている。

映像説明: ビニールハウスを背景に、青いシャツを着た男性がインタビューに答える。

テロップ: 日本農業(にほんのうぎょう) 飯塚 崇矩(いいつか たかのり) 海外農業部長

飯塚(いいつか)海外農業部長: われわれ、今、タイのチェンマイで、日本(にほん)の品種と日本(にほん)の技術を用いて、日本品質(にほんひんしつ)のイチゴを現地生産しようという取り組みを進めています。 1つが暑いタイで、イチゴに適した環境を作るための冷却手法の確立と、2つ目がデータを活用して農家の経験と勘によらない生産ノウハウの形式知化というところを進めております。

映像説明: ビニールハウスの中。青いシャツを着た飯塚(いいつか)海外農業部長がイチゴの苗床のそばで身ぶりを交えて話をしている。

ナレーション: そう話すのは、現地での栽培を管理する飯塚(いいつか)さん。

映像説明: 山あいの道。草地の向こうにビニールハウスが立ち並んでいる。 ビニールハウスの中。イチゴの葉が風に揺れている。 イチゴの苗床に水色のパイプが差し込まれていて、床のほうへ延びている。 苗床に緑の葉が茂り、茎の先に赤や白の実が垂れ下がっている。

ナレーション: これまでタイで行われてきたイチゴの栽培方法では、温度などの管理が徹底できておらず、海外から持ち込んだ設備やノウハウも気候や土壌の違いから、生かすことが難しかった。

映像説明: ビニールハウスの中。グレーのハットをかぶった男性が苗床からイチゴの葉を摘み取っている。 花柄のハットをかぶり、ピンクのジャンパーを着て化粧箱を手にした女性が、かがんで歩きながら苗床に手を伸ばしている。 ハウスの中の苗床いっぱいに葉が茂っている。

ナレーション: そこで、日本農業(にほんのうぎょう)は現地パートナーと連携し、デジタル技術を活用して最適な生育環境の実現を試みている。

映像説明: ビニールハウスのあいだの道を飯塚(いいつか)海外農業部長が歩いている。 ビニールハウスの中。壁に取り付けられたファンが回転している。 苗床の上に設置されたパイプから、ミストがまかれている。

ナレーション: 複数のビニールハウスを建て、ファンやミストなどを使い、条件を変えつつ、栽培。

映像説明: ビニールハウスの中。飯塚(いいつか)海外農業部長が手にした白い小型の機器を見つめ、うなずく。 飯塚(いいつか)海外農業部長とグレーのハットをかぶった男性が、可動式の淡いピンクの覆いをイチゴの苗床全体にかぶせている。

ナレーション: 50以上ものセンサーを設置し、温度や湿度、日照時間(にっしょうじかん)などをモニタリング。

映像説明: 飯塚(いいつか)海外農業部長が白いテーブルでノートパソコンに向かっている。画面には折れ線グラフや表などが表示されている。 苗床に赤く色づきかけたイチゴの実がなっている。

ナレーション: 数値化したデータを基に管理を行うことで、日本の生育環境に近づけ、甘いイチゴの栽培を可能にした。

映像説明: 店内。壁際の棚に「SAKURA ICHIGO」と書かれたフィルムがかけられた化粧箱入り(けしょうばこいり)のイチゴが並べられている。

ナレーション: こうして生産したイチゴは、バンコクのスーパーなどで販売。

映像説明: 店内。化粧箱入り(けしょうばこいり)の「SAKURA ICHIGO」などが並べられた棚の前で、グレーのシャツを着た男性が身ぶりを交えてインタビューに答える。

テロップ: バンコクの小売店担当者

バンコクの小売店担当者・英語: (お客からは)「おいしい」、「甘い」、「やわらかい」と日本の品質が評価されています。 納得できる価格で、手も届きやすいです。

映像説明: 店内。「SAKURA ICHIGO」と書かれたフィルムがかけられた化粧箱入り(けしょうばこいり)のイチゴが棚に並べられている。 ビニールハウスの中。苗床に緑の葉が茂り、赤や黄緑のイチゴの実がなっている。 グレーのハットをかぶった男性が苗床から葉を摘み取っている。 ハウスの中の苗床いっぱいに葉が茂っている。 ビニールハウスの中で、飯塚(いいつか)海外農業部長が身ぶりを交えて話をしている。

ナレーション: 現地でのイチゴの販売は順調に進み、気軽に日本の味を楽しんでもらえるようになった。今後、さらなる日本の農産品の普及を目指し、データを基に生育環境を整え、生産性の向上を図っていく日本農業(にほんのうぎょう)。これからも発展を続ける農業のDXに飯塚(いいつか)さんも期待が高まっているという。

映像説明: 白い壁の部屋。飯塚(いいつか)海外農業部長がインタビューに答える。(Zoomのビデオ通話) ビニールハウスの中。白地に花柄のハットをかぶり、青いジャージを着た女性が棒の先に白い綿(わた)がついた物を手に、イチゴの苗床にポンポンと当てていく。 グレーのハットをかぶった男性が、かがんで歩きながら実を取り、白い化粧箱に入れている。 飯塚(いいつか)海外農業部長が、手にした白い小型の機器を苗床に茂った緑の葉に当てる。 白い壁の部屋。飯塚(いいつか)海外農業部長が話を続ける。

テロップ: 日本農業(にほんのうぎょう) 飯塚 崇矩(いいつか たかのり) 海外農業部長

飯塚(いいつか)海外農業部長: 農業っていう産業はデジタル化の伸びしろがすごいあると思っていて、 基本的に農業って、人が携わり続けるもの。 それぞれのデジタルに求める役割っていうのはしっかりと意識していくことが重要だろうなと思っていて、 しっかりと人が見えない部分を見える化していく。数字で客観的な評価をしていくってことによって、 改善できる伸びしろはたくさんあると思っていて、もっともっと、こう、農業が新しく、面白くてかっこいい産業になっていくんじゃないかなと思ってます。

スタジオの八木(やぎ)キャスター: 今まで個人の感覚に頼っていたことが、デジタル技術によって見える化されていくんですね。今後も、こうした変化を通じて、さまざまなビジネスが生まれていくことに期待したいと思います。

映像説明: 八木(やぎ)キャスターがおじぎをする。

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