パリでデザインを募集します ‐絣の未来を紡ぐため‐

2020年10月29日

日本の伝統工芸品の一つ、久留米絣(くるめがすり)。そのデザインをパリで募集した。そこには未来に技術を継承したい職人の思いがあった。果たして思惑通りにデザインは集まり、革新的な絣を作ることはできるのか。織物を通じて、伝統の技を継承し、地域経済を活性化させようと奮闘する企業の取り組みを追った。

(11分09秒)

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テキスト解説:視覚障害のある方のための文字おこしテキストです。

映像説明: ジェトログローバルアイオープニングタイトル。 薄い青を基調としたコンピューターグラフィックスの背景画。 世界地図の上で回転する、中が空洞になった地球儀から、もうひとつ地球儀が飛び出す。 拡大表示された地球儀の横にタイトルが現れる。 「世界は今 ジェトログローバルアイ」

映像説明: スタジオ。地球儀と世界地図の画像をバックに、女性キャスターが入ってくる。 胸元にフリルのあり、光沢があるベージュのブラウスにグレーのガウチョパンツをはいている。 画面左上に色とりどりの織物の写真が表示される。青や赤、うぐいす色のかすれた模様が入った生地が重ねて置かれている。

テロップ: 八木 ひとみ(やぎ ひとみ)

八木(やぎ)キャスター: 世界は今、ジェトログローバルアイ。 久留米絣をご存じでしょうか。風合いの美しい、日本を代表する織物の一つです。今回は、伝統を大切にしながら、世界のクリエーターと連携して文化を守ろうとする地域の取り組みを紹介します。

テロップ: パリでデザインを募集します ‐絣の未来を紡ぐため‐

映像説明: 雲が浮かぶ青空。薄茶の塔が高くそびえている。冬枯れの木立に囲まれた公園を人々が散歩している。

テロップ: パリ

ナレーション: フランス、パリ。

映像説明: 街路樹が植えられた歩道。茶色い屋根のカフェの前を大勢の人が歩いている。

ナレーション: 世界中から人が集まる流行の発信地。

映像説明: 交通量の多い車道。石造りの建物が立ち並ぶ道の奥に、装飾が施された凱旋門が建てられている。

テロップ: 2020年2月

ナレーション: 2020年の2月、新型コロナウイルスがまん延する、少し前。

映像説明: ホールの中。赤や黒の柄(がら)が入った織物が長机(ながづくえ)に並べられている。壁には織物の製造工程の説明が書かれた写真入りの垂れ幕が掛けられている。たくさんの人が展示を見ている。 3人の女性が長机(ながづくえ)に並べて置かれた図案と織物を眺めている。 壁に掛けられた大きなスクリーンの前で茶色いスーツを着た男性がマイクを手に話をしている。スクリーンには織物の拡大図が映し出され、日本語とフランス語で説明が書かれている。前にはたくさんの聴衆が座っている。

ナレーション: 工業デザインを勉強する学校で、久留米絣を紹介する講演が行われた。

映像説明: 聴衆の様子。黒いセーターを着て席に着いた女性が真剣な表情をしている。 大勢の人がメモを取りながら話に耳を傾けている。

ナレーション: 会場には、日本の織物を学ぼうと、学生からテキスタイル分野のプロフェッショナルまで多くの人が集まった。

映像説明: スクリーンの前に立つ茶色いスーツを着た男性が、花をモチーフにしたような赤い幾何学模様が入った織物を手に話をしている。 茶色いスーツを着た男性が織物を腕に掛け、身ぶりを交えて話を続ける。

茶色いスーツを着た男性: 久留米絣は、幅が38センチの織物です。 幅の狭い生地で、このスーツも、この着物もできてます。

映像説明: スクリーンの前。茶色いスーツを着た男性が話を続ける。

テロップ: 下川織物(しもがわおりもの) 下川 強臓(しもがわ きょうぞう) 社長

ナレーション: そう語るのは、今回の講演を企画した久留米絣の職人の下川(しもがわ)さん。

映像説明: 工場の中。細い通路の両側に並べられた何台もの織り機が勢いよく動いている。それぞれの織り機は天井近くに設置された高速で回転する滑車にベルトでつながれている。通路の奥で青いシャツを着たスタッフが作業をしている。画面右下の四角い枠に福岡県周辺の地図。八女市は福岡県南部の県境(けんざかい)に位置していて赤い星印で示されている。西部の海沿いには福岡市があり、赤い丸印で示されている。 藍色の糸が無数に巻きつけられた織り機のローラーが少しずつ回転している。

ナレーション: 福岡県の八女市にある織り元の三代目だ。

映像説明: 畳が敷かれた部屋の写真。天井に渡されたさおに、さまざまな柄(がら)の織物が掛けられている。それぞれの織物に、青いストライプ、太いライン、白い四角形が規則的に並んだ模様が入っている。画面左下に九州北西部の地図。筑後地方は福岡市の南部に位置している。 織り機の写真。ところどころに白い四角い模様が入った藍色の織物がローラーに巻かれている。 色とりどりの織物の写真。青や赤、うぐいす色のかすれた模様が入った生地が重ねて置かれている。

ナレーション: 久留米絣は福岡の南部、筑後地方で200年以上続く綿織物。国の伝統工芸品にも指定されている。

映像説明: 束ねられた糸の写真。白と藍色のしま模様の束が山積みになっている。 織り機の写真。白と青い四角形が規則的に並んだ模様が入った織物がローラーに巻かれている。

ナレーション: 染めた経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を組み合わせて、多様な柄(がら)を生み出すのが特徴だ。

映像説明: 室内。柄(がら)の入った黒い着物が鳥居のような形をした衣桁に掛けられている。傍らには、さまざまな模様が織り込まれた生地も置かれている。「久留米絣」、「資料館」、「入場無料」と書かれた看板がそばに立てられている。 筒状に巻かれ、値札が付けられた織物が棚に何本も並べられている。 白と藍色のチェック柄のスニーカーが化粧箱の上に置かれている。 格子縞(こうしじま)のクッションが、籐椅子(とういす)の上に並べられている。 肩には藍色の織物が縫い付けられたベージュのブラウスを着せたマネキンが立てられている。

ナレーション: 古くは庶民の普段着として定着していたが、洋服が普及したことで需要が減少。今はスニーカーや雑貨など新たな用途の模索が続いている。

映像説明: 2分割された画面。さまざまな織物の写真が映し出される。左には短い白い線が無数に入った色違いの織物。右にはカラフルなストライプに白い円が並んだ生地や濃淡のある赤い生地。画面が切り替わり、左に白とオレンジのチェック柄やグレーと黒の格子縞(こうしじま)の織物。右には白と紺のしま模様や紺地に白のいびつなドット柄の生地。

ナレーション: 世界各地には絣と似た技法で作られた織物がある。しかし、近代化の流れの中でその技が受け継がれず、製造が途絶えたものも少なくない。

映像説明: 屋上。奥に短い煙突のある建物が続いている。下川(しもがわ)社長がインタビューに答える。

テロップ: 下川織物(しもがわおりもの) 下川 強臓(しもがわ きょうぞう) 社長

下川(しもがわ)社長: 日本(にほん)では数は減ったとはいっても、まだまだ残っている。 商業用として、ある程度の生産量を保ちながら、作られているってのは、 実は、世界中見ても、かなり日本(にほん)の絣っていうのは、かなり希少性が高い。

映像説明: 室内。日本語と英語で「フィンランド×下川織物(しもがわおりもの)」、「オランダ×下川織物(しもがわ おりもの)」、「スウェーデン×下川織物(しもがわおりもの)」、「フランス×下川織物(しもがわおりもの)」と題された4枚のポスターが壁に貼られている。ポスターには織物や人々の写真があり、日本語と英語で説明が書かれている。

ナレーション: その下川(しもがわ)さんは、海外のアーティストと連携し、作品を作ってきた。

映像説明: 畳の上に白と紺の色違いの織物が2枚置かれている。織物には眉や目、鼻、口がいくつも描かれた模様が入っている。

ナレーション: こちらはフィンランドのデザイナーと共同制作したもの。モチーフは、こけしだ。新たな連携が、斬新なデザインを生んだ。

映像説明: ホールの中。水色のワイシャツを着た男性と下川(しもがわ)社長が並べられたいすのそばで話をしている。

ナレーション: その経験から下川(しもがわ)さんが講演で仕掛けたことがある。

映像説明: 白い水玉模様が入った赤い織物が台に置かれている。そばには数値が書かれた水玉模様の図案が並べられている。

テロップ: 絣のデザイン公募

ナレーション: それが絣を作るためのデザインの公募だ。

映像説明: 工場の中。短い白い線が無数に入った生地を織り機が織っている。織られている生地のアップ。

ナレーション: 糸を組み合わせることで模様を出す久留米絣は、事前に精巧な図案を作る必要がある。

映像説明: ホールの中。スクリーンの前に立ち、マイクを手にした下川(しもがわ)社長が花をモチーフにしたような幾何学模様が描かれた図案を聴衆に見せながら話をしている。

ナレーション: そのデザインをパリに求めた。

下川(しもがわ)社長: 皆さんに、こういうデザインを募集して、ということを、ちょっと考えてます。 今日、ここで出会った皆さんと、未来を創れたらなと、私は考えてます。

映像説明: たくさんの人が席で下川(しもがわ)社長の話を聞いている。

ナレーション: 会場に集まった人の反応は…。

映像説明: 壁のそば。グレーのマフラーをした女性がうなずきながらインタビューに答える。

テロップ: 参加者

グレーのマフラーをした女性・フランス語吹き替え: 伝統的な技術を知り、すごく勉強になったわ。 もう廃れてしまったけど、以前はフランスにも、似た技法があったの。

映像説明: ホール内の席のそば。ブロンドのロングヘアの女性が笑顔でインタビューに答える。

テロップ: 参加者

ブロンドのロングヘアの女性・フランス語吹き替え: とても興味深かったです。 市場に合わせて製品を作るのではなく、 伝統に合わせて何ができるのか考えたいです。

映像説明: 街路樹が植えられた歩道。下川(しもがわ)社長が石造りの建物の前を歩いている。千鳥格子のコートを着た男性が下川(しもがわ)社長の前を進んでいる。 千鳥格子のコートを着た男性と下川(しもがわ)社長が立ち止まって辺りを見回しながら話をしている。

ナレーション: 久留米絣を未来に受け継ぐため、パリに来た下川(しもがわ)さん。販路開拓にも積極的だ。

映像説明: ホールの中。織物の製造工程の説明が書かれた写真入りの垂れ幕が掛けられた壁のそばで、黒いセーターを着た男性と下川(しもがわ)社長が周りを見ながら話をしている。

ナレーション: 二人三脚(ににんさんきゃく)で取り組むのが、ジェトロの専門家の池田。テキスタイルのスペシャリストだ。

映像説明: 十文字を組み合わせて並べたような模様が入った黒い織物が長机(ながづくえ)に置かれている。そばで水色のワイシャツを着た男性と下川(しもがわ)社長が身ぶりを交えて話をしている。

ナレーション: 販売につなげるには伝統工芸品としての価値だけではなく、今の流通に乗せることが不可欠だという。

映像説明: 屋上。千鳥格子のコートを着た池田がインタビューに答える。

テロップ: ジェトロ テキスタイルの専門家(当時) 池田 豊

池田(ジェトロ テキスタイルの専門家(当時)): 今後、バイヤーさんとね、コラボというのか、要は相手さんの、こう、デザインであったりとかね、要望であったりとか、それに対して、 じゃ、こちらがどれだけ応えられるのか。これ、ものだけじゃなくて、コスト、納期も含めてね。

映像説明: 石造りの建物の出入り口。池田が外門(そともん)の扉の前でスマートフォンを耳に当てている。スーツケースを手にした下川(しもがわ)社長と栗色の髪の女性がそばに立っている。

ナレーション: その人脈を生かして訪問したのが、パリでも著名なファッションデザイナーのアトリエ。

映像説明: 本棚のある部屋。白い上着を着た女性がテーブルに置かれた藍色の織物をめくっている。紺のカーディガンを着た男性と栗色の髪の女性、下川(しもがわ)社長がそばで見守っている。

テロップ: ファッションデザイナー アドリーヌ・アンドレ さん

ナレーション: アドリーヌ・アンドレさんは自然な風合いの服を作ることで知られている。

映像説明: 白い上着を着たアドリーヌ・アンドレさんが興味深げに織物を持ち上げている。

ナレーション: 日本の伝統的な生地に関しても知見がある。

映像説明: 池田が白とコーラルピンクの格子縞(こうしじま)の織物をテーブルに置く。白い上着を着たアドリーヌ・アンドレさんが生地をめくりながら話をする。 アドリーヌ・アンドレさんの後ろに立っている紺のカーディガンを着た男性が織物に手を触れる。

池田・フランス語: アンドレさん、肌触りはどうですか?

アドリーヌ・アンドレさん・フランス語吹き替え: これは同じ生地かしら? これはいいですね。

映像説明: 白い上着を着たアドリーヌ・アンドレさんがテーブルで織物をめくりながら見ている。

ナレーション: フランスでもサステナビリティが重視されている。単に材料がオーガニックであるだけではなく、その製造や流通など、生地が作られる過程でも求められるという。

映像説明: アドリーヌ・アンドレさんが身ぶりを交えてインタビューに答える。

テロップ: ファッションデザイナー アドリーヌ・アンドレ さん

アドリーヌ・アンドレさん・フランス語吹き替え: 自然な素材や持続可能なものに、社会が今よりも敬意を払うようになれば、 品質の高い伝統工芸品は、おのずと価値が生まれるものだと私は考えています。

映像説明: テーブルを囲んで座り、アンドレさんが話しているのを池田と栗色の髪の女性、下川(しもがわ)社長が聞いている。 下川(しもがわ)社長がほほえみを浮かべなら話をする。

下川(しもがわ)社長: すごい、勇気と希望をいただきました。

映像説明: ホールの中。たくさんの人が席に着いている。 スクリーンの前でマイクを手にした下川(しもがわ)社長が、白い糸の束を聴衆に見せながら話をしている。 本棚のある部屋。テーブルに置いた織物に触れながら、下川(しもがわ)社長が身ぶりを交えてアドリーヌ・アンドレさんと話をしている。 ソファのある部屋。池田と下川(しもがわ)社長を含む5人の人物が円形のテーブルを囲んで話をしている。

ナレーション: 2日間にわたり、精力的に久留米絣のPRを行った下川(しもがわ)さん。このあと八女市に帰って応募のあったデザインを選定し、再びパリに来て表彰式を行う予定だ。

映像説明: ソファのある部屋。下川(しもがわ)社長が笑顔でインタビューに答える。

下川(しもがわ)社長: ファーストステップとしては、ちょっと感触いい、印象というか、感触はつかめたんじゃないかなとは思います。 やっぱり継続して、こう、やっていくっていうことが、やっぱ大事だと思ってるので、今回の1回かぎりでどうこうっていうよりは、もう次につながる何かっていうのを常に探りながら、前に進んでいくっていうことをちょっと心がけたいですね。

映像説明: 白壁の商家の外観。土蔵造りの建物の軒先に白いのれんとちょうちんが揺れている。画面右下の四角い枠に福岡県周辺の地図。八女市は福岡県南部の県境(けんざかい)に位置していて赤い丸印で示されている。西部の海沿いには福岡市があり、赤い丸印で示されている。

テロップ: うなぎの寝床

ナレーション: その八女市に、久留米絣を使った商品を開発し、販売につなげたアンテナショップがある。

映像説明: フローリングが敷かれた部屋。壁際に置かれたハンガーラックに色とりどりのシャツが何着も掛けられている。部屋の中ほどの棚にはカラフルなマフラーなどが並べられている。 白や赤、青の厚手の上着がハンガーラックに掛けられている。 窓際の棚には、さまざまな色やデザインのグラスやピッチャーなどが並べられている。

ナレーション: 店の中には洋服や食器、雑貨などが並ぶ。

映像説明: 障子のある部屋。白いシャツを着た男性が長机(ながづくえ)でノートパソコンを見ながらうなずいている。 ふすまのある部屋。豊富なバリエーションの手袋や靴が棚にずらりと並べられている。 えんじ色(いろ)の厚手の上着や紫のストライプの上着が畳んで棚に置かれている。 棚に鉄製の急須や赤いカップとソーサー、首の長い藍色の花瓶、岩の置物などが並べられている。 セミをかたどった赤いたこや男のお面が壁に掛けられ、白と黒の格子縞(こうしじま)のクッションやけん玉など、さまざまな商品が棚に置かれている。

ナレーション: 今から8年前、20代の若者2人が立ち上げた。当初は筑後地域の産品に力を入れていた。事業が軌道に乗り、今では日本全国(にほんぜんこく)のものを扱っている。

映像説明: 「うなぎの寝床の役割」、「地域文化商社として」と題された垂れ幕が室内につり下げられている。垂れ幕には自然豊かな街で暮らす人々のイラストが描かれ、「うなぎの寝床は2012年7月にアンテナショップとしてはじまりました。今では地域文化商社として、「もの」と「ひと」を介した本質的な地域文化の継承と収束、その在り方を思考し、行動し続ける生態系をつくるために活動を行います。」、「地域文化とは何か? ある一定地域における土地と人、人と人が交わり生まれる現象の総体」と書かれている。

テロップ: 地域文化商社

ナレーション: 彼らが掲げるのは「地域文化商社」だ。地域文化が持つ特徴をひもとき、現代社会に合った情報に作り変える。

映像説明: 畳が敷かれた部屋。えんじ色(いろ)の厚手の上着やゆったりとした紺のズボンなどが何着もハンガーラックに掛けられている。手前には白と緑のしま模様や紺地に赤と白の模様がある座布団が重ねて置かれている。

ナレーション: それを商品の価値として情報発信とともに販売していく。

映像説明: 障子のある部屋。白いシャツを着た男性が長机(ながづくえ)でノートパソコンに向かっている。

ナレーション: そう話すのは、代表の白水(しらみず)さん。

映像説明: 店内。瓶や袋に詰められた商品が棚に並べられている。棚の前で白いシャツを着た男性がインタビューに答える。 グレーや黒、クリーム色(いろ)の茶碗や縦じまや横じまが入った茶碗が棚に重ねて並べられている。 窓際の棚にジグザグの模様が入った鼻緒や白や紺の鼻緒の草履が並べられている。 持ち手のある竹籠や目の粗いざるがいくつも並べて置かれている。 商品が並べられた棚の前で白いシャツを着た男性が話を続ける。

テロップ: うなぎの寝床 白水 高広(しらみず たかひろ) 社長

白水(しらみず)社長: 地域文化って、やっぱりどんどんグローバルになってって、なくなっていってると思ってて、 ただ、なくなっていくのは結構もったいないなと思ってるので。 例えば、伝統工芸とかものづくりとかも、後継者問題で引き継がれないとか経済の問題が結構大きいので、 商社機能を持ってというか、ちゃんとそれを流通させて、お金を回すことで、 もう一回、地域文化にそれを還元して返していく。

映像説明: ハンガーラックにバラエティーに富んだもんぺが何本もつり下げられている。 白い小さな長方形が並んだ柄(がら)や花柄のもんぺがハンガーラックに掛けられている。

テロップ: もんぺ

ナレーション: 中でもヒットしたのがこちらのもんぺ。色とりどり、デザインも多様だ。

映像説明: 壁際の棚にストライプや無地のもんぺが畳んで置かれている。

ナレーション: 多くが久留米絣で作られている。

映像説明: 青や紺、薄茶のもんぺがハンガーラックにつり下げられている。 色違いの縦じまのもんぺがハンガーラックに掛けられている。

ナレーション: 地元で普段着として慣れ親しまれてきたもんぺを細身の現代風にアレンジ。年間で15,000本以上販売している。

映像説明: 白いシャツを着た白水(しらみず)社長が棚から黒地に白い柄(がら)のもんぺを取って広げる。

ナレーション: 流通に乗せていくためのポイントは、これまでの固定概念にとらわれず、今の消費者に合ったものへと作り変えることだという。

映像説明: 白土の壁際で白水(しらみず)社長がインタビューに答える。

白水(しらみず)社長: 歴史もあるし、家業を継いできたプライドも、もちろんあるし、今までのやり方っていうのがあるので、 それを現代に、こう、転換していくっていうのは、結構、あの、作り手(つくりて)さんの身になったら大変だろうなと。 逆に、なので、僕らみたいな、よそ者(商社)が、提案してったり、作らせてもらって、やれることもあると思いますね。

映像説明: 障子のある部屋。紺と白のチェック柄のワンピースを着た女性と白水(しらみず)社長が長机(ながづくえ)でノートパソコンを見ながらうなずいている。

ナレーション: 商品とともに地域の持つ特徴を情報として発信しているこのアンテナショップには、世界中から問い合わせが来る。

映像説明: 長机(ながづくえ)に置いたノートパソコンの画面に黒いTシャツを着た男性が映っている。その前に座る白水(しらみず)社長と紺と白のチェック柄のワンピースを着た女性と3人で話をしながら笑っている。 ノートパソコンの画面に映っている黒いTシャツを着た男性が話を続ける。

ナレーション: この日は、オランダのデザイナーから、日本とヨーロッパで販売する、新たな商品開発の相談が舞い込んでいた。

映像説明: 畳が敷かれた部屋。白水(しらみず)社長がハンガーラックに掛けられたもんぺを手で示しながら話をしている。

ナレーション: 伝統産業が生き残っていくには、多様な視点を持つことが欠かせないという。

映像説明: 畳が敷かれた部屋。もんぺが掛けられたハンガーラックのそばで白水(しらみず)社長がインタビューに答える。

白水(しらみず)社長: 海外のデザイナーとかアーティストの人に、地域のものづくりとかを再解釈してもらって、 その現代に向けてどう提案できるかっていうところの視点は多い方がいいと思ってて…。

映像説明: 水色の壁の工場の外観。波板(なみいた)が張られた2階の壁に「下川織物(しもがわおりもの)」と書かれた看板が掲げられている。

テロップ: 下川織物(しもがわおりもの)

映像説明: マスクを着けた下川(しもがわ)社長が出入り口の引き戸を開け、工場の中に入っていく。通路の傍らで扇風機が3台回っている。

テロップ: 2020年10月

ナレーション: パリでの講演から8ヵ月後、絣のデザイン選考は進んだのか。

映像説明: 工場の中。蛍光灯のそばで下川(しもがわ)社長が止まっている織り機の中にスパナを差し込んでいる。周りにある織り機は稼動している。

テロップ: 下川織物(しもがわおりもの) 下川 強臓(しもがわ きょうぞう) 社長

ナレーション: 職人として働く下川(しもがわ)さんを訪ねた。だが、ここにも新型コロナウイルスの影響が…。

映像説明: ソファのある部屋。下川(しもがわ)社長が身ぶりを交えてインタビューに答える。

下川(しもがわ)社長: コロナもあって実際向こうへ行けないし、 いろいろ予定してたのも、やっぱ、だいぶちょっと変わったりもしたからですね。

映像説明: ソファのある部屋。下川(しもがわ)社長がノートパソコンを見ながら話をしている。 パソコンの画面には筆で描かれたような黒い鳥の図案が表示されている。

ナレーション: パリで表彰式を行おうにも現地に行くことができない。それでも、応募されたデザインからは刺激を受けたという。

映像説明: ソファのある部屋。下川(しもがわ)社長が身ぶりを交えてインタビューに答える。 円や半円、曲線、いびつな図形が描かれた図案がノートパソコンの画面に表示されている。 下川(しもがわ)社長が笑顔で話を続ける。

下川(しもがわ)社長: 学生さんのやつとかは、すごく独創的なデザインで、未来を感じるみたいな意味では、 絶対、僕らが自分たちで、こういう柄(がら)作ろうっていうとこには恐らくたどりつかないだろう。

映像説明: 横額障子のある部屋。織物の製造工程の説明が書かれた写真入りの垂れ幕が、天井に渡されたさおにつるされている。下川(しもがわ)社長がそばで話をしている。 ノートパソコンの画面に屋外でさおに掛けて干されている白い糸の束の写真が何枚も表示されている。そのうちの1枚の写真がクリックされ、拡大表示される。

ナレーション: 想定外の事態も発生したが、それでも久留米絣を完成させ、パリに届けたいと方法を模索中だ。

映像説明: 青い織物や製造工程の写真が入った垂れ幕が掛けられた部屋。下川(しもがわ)社長がうなずきながらインタビューに答える。

下川(しもがわ)社長: まだ終わってないからですね。 最後まで走り切って、また次につなげていきたいっていう気持ちですね。

映像説明: 工場の中。青と白の縦じま模様の織物が織り機のローラーの上を少しずつ移動している。 細い通路の両側に並べられた何台もの織り機が勢いよく動いている。通路の奥で青いシャツを着たスタッフが作業をしている。

ナレーション: 多様な視点を取り入れながら伝統工芸を守ることができるのか。今日も機織りの音が響いている。

映像説明: 工場の中。蛍光灯のそばで下川(しもがわ)社長が止まっている織り機のバーを手前に引く。動き始めた織り機を下川(しもがわ)社長が注意深く見守る。

テロップ: 下川織物(しもがわおりもの) 下川 強臓(しもがわ きょうぞう) 社長

下川(しもがわ)社長: 経糸(たていと)があって、緯糸(よこいと)があって、それが織物になるっていうのは世界中どこも共通。 職人としてですね、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)で世界中の人と会話ができるっていう、それを実際に証明したい。

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