和歌山テキスタイルの挑戦 ‐“ここしかできない”技術で世界のニーズをつかむ‐
2019年01月10日
「世界は今」のアクセシビリティ対応について
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和歌山の繊維産業が世界のファッション業界から注目されている。橋本市高野口町のパイル織物と紀の川市貴志川町のニット。いずれも、長年の歴史の中で磨かれた高い技術力をもとに、世界のトレンドを捉えた独自のアイデアで勝負する。例えば、あるメーカーの「エコファー」は、動物保護意識の高まりを背景に、海外の高級ブランドにも採用されている。その和歌山を、新たな素材を求めて欧米の有名ブランドのバイヤーが訪れた。和歌山のテキスタイル製品は、バイヤーたちの心をつかむことができたのか。“ここしかできない”ものづくりで海外市場への挑戦を続ける産地の今を取材した。
(13分23秒)
テキスト解説:視覚障害のある方のための文字おこしテキストです。
映像説明: ジェトログローバルアイオープニングタイトル。 薄い青を基調としたコンピューターグラフィックスの背景画。 世界地図から飛び出した、中が空洞になった地球儀が、回転しながら拡大表示される。 さらに世界のさまざまな都市の画像が周囲を取り巻きタイトルが現れる。 「世界は今ジェトログローバルアイ」
映像説明: スタジオ。 地球儀と都市の画像をバックに、女性キャスターが入ってくる。 シルバーのスヌードを首に巻き、白のブラウスにスモーキーブルーのスカート姿。 首にゆったりと巻かれたスヌードがアップになる。 女性キャスターが両手を添えながら話を続ける。
テロップ: 宮瀬 茉祐子(みやせ まゆこ)
宮瀬キャスター: 世界は今、ジェトログローバルアイ。 和歌山の繊維産業(さんぎょう)が、世界から注目を集めています。 こちらのスヌード、実は本物の毛皮ではなく、化学繊維で出来たエコファーなんです。 ふわふわで、とっても手触りがいいです。 これらの製品の中には、世界の名だたる高級ブランドで使われているものもあります。 歴史が培った確かな技術力とそれに裏打ちされた企画力で世界を魅了する、和歌山のテキスタイル企業の取り組みをご紹介します。
テロップ: 和歌山テキスタイルの挑戦 ‐“ここしかできない”技術で世界のニーズをつかむ‐
映像説明: 大きなホール。ハンガーラックが何本も並び、生地や洋服がかけられている。ラックのあいだにはテーブルと椅子が用意されている。薄い緑のセーターの外国人男性が、ラックからグレーの生地を取り出し眺める。傍らには眼鏡をかけた年配の日本人男性。 ポニーテールに黒と赤のセーター姿の外国人女性が、ラックに掛かったベージュのサンプルの手触りを確かめる。
ナレーション: 海外ブランドのバイヤーが集まるテキスタイルの商談会。 そこで、関心を集めていたのが…
映像説明: 白のブラウスを着たブロンドの外国人女性が、生地のサンプルをテーブルに置く。
ブロンドの女性・英語: Nice!
映像説明: テーブルに花柄や色の異なる柄(がら)のふわふわとした生地のサンプルが置かれている。薄い紫色のサンプルに、男性の手が伸びる。
テロップ: エコファー
ナレーション: エコファーだ。 今、世界でエコファーが注目されている。
映像説明: サンプルを手に取っていたブロンドの女性がインタビューに答える。
テロップ: 米国のファッションブランド 3.1 フィリップ リム
ブロンドの女性・英語: 商品企画や販売のチームは、エコファーを求めている。 ニューヨークの他のファッションブランドのあいだでも、人気が高まっている。
映像説明: テーブルに置かれたゼブラ模様のサンプル生地。 ラックには、エコファーを使った茶色いバッグや白い斑点の鹿の子模様がデザインされたエコファーがかけられている。 別のラックには青や黄色(きいろ)、緑のサンプル生地。 エコファーで作られた薄い黄色(きいろ)のバッグと茶色のコートも展示されている。 テーブルの上にはベージュやグレー、黒のエコファーのサンプルが置かれている。
テロップ: 世界のブランドが相次いで エコファーを導入
ナレーション: 動物保護意識の高まりなどから、近年、世界のブランドが相次いでエコファーを導入しているという。
映像説明: 真っ赤に色づいたもみじの先に住宅街が広がる。その奥にはなだらかな山が連なる。
ナレーション: そんな世界の潮流に乗り、海外の有名ブランドから注目を集めている織物メーカーがある。
映像説明: 山のふもとに広がる住宅街。画面左下に紀伊半島の地図のイラストが示される。大阪府、奈良県、三重県の南にある和歌山県。高野口町(こうやぐちちょう)は県の北東部に位置、地図のイラストの中で赤い星印で示されている。
ナレーション: 和歌山県、高野山(こうやさん)のふもと、高野口町(こうやぐちちょう)。
映像説明: 白い壁のどっしりとした平屋の建物。庭には手入れされた松の木が生えている。 ブロック塀(べい)の上には「株式会社岡田織物」と書かれた看板。 木製のラックに掛かった茶色やベージュ、グレー、黒、紫のエコファー。 黒と白のしま模様や紫、青、ピンク、赤などの色鮮やかなサンプルも掛かっている。 4体のトルソーにディスプレイされた茶色、シルバー、紺色のスヌードと、黒、茶色、グレーのロングコート。
テロップ: 和歌山県 高野口町(こうやぐちちょう)
テロップ: 岡田織物
ナレーション: 昭和7年創業の岡田織物。 エコファーを扱う専門メーカーだ。
映像説明: 紺色のジャンパーを着た男性が、さまざまな色のエコファーが掛かったラックを背に、腕組みをしながらインタビューに答える。
ナレーション: 3代目の岡田社長。
テロップ: 岡田織物 岡田 次弘(おかだ つぐひろ) 社長
岡田社長: プラダさん、ルイ・ヴィトンさん、グッチさん、シャネルさん、モンクレールさん、ほとんどのところが一度は使用していただいてるとは思います。
映像説明: 木製ラックにバラエティーに富んだ色や柄(がら)のエコファーがずらりと並ぶ。 シルバーラックにかけられたエコファーと茶色いコート。
ナレーション: そのきっかけは、販路開拓に訪れた、海外の展示会。有名ブランドに見初められ、そこから評判が広まった。
映像説明: 岡田社長が、ハンガーに掛かった、ふわふわの茶色いコートを手に持つ。
ナレーション: このエコファーを有名ブランドが認める理由。そのひとつは、本物さながらの毛並みの良さ。
映像説明: 岡田社長が2種類の鹿の子模様のエコファーをラックの上に並べる。 左側のサンプルを手で触ると、エコファーが光を反射して輝く。 右側のサンプルは、手で動かしてみても光沢感がなく、マットな質感。
岡田社長: つや感についてはね、同じ柄をプリントしているんです。 こっちはすごいその透明感があって、透き通ったような繊維だと。 こっちは逆に、そのー、つや消しというかすごくマットな素材でギラギラしない。
ナレーション: 手触りは柔らかいのに、ボリュームはしっかりしている。
映像説明: テーブルに置かれた白のエコファー。 ふわりとした毛先がアップで映し出される。
テロップ 三菱レイヨン(現 三菱ケミカル)と共同開発
ナレーション: その秘密は、糸にあった。 大手繊維メーカーと、共同開発した素材だ。
映像説明: 画面の青い枠の中に2種類の毛先の顕微鏡画像が映し出される。加工前の毛先は、太いまま。加工後の毛先は3本に細く分かれている。左側の加工前の画像から右側の加工後の画像に向かって矢印が現れる。(画像提供 岡田織物) テーブルの上の白いエコファー。毛の長さが不ぞろいで、毛先が細く、ふんわりとしている。 岡田社長が鹿の子模様のエコファーを触りながら、テーブルで話をする。 テーブルの上に置かれた鹿の子模様のサンプル生地。岡田社長が両手でしわを寄せるように握りしめる。 生地のサンプルを前後に細かく振る。 たくさんのエコファーが掛かったラックの前で座りながら話を続ける岡田社長。
ナレーション: 特殊な加工で糸を割り、毛先と根元の太さを変えている。 根元が太く、毛先が細いという、天然の毛並みを、これで再現。 さらに、化学繊維ならではの、扱いやすさも実現できた。
岡田社長: あのー、触っていただければ、もう、すぐ分かると思います。非常に柔らかい生地なので。 柔らかい生地っていうのは、やっぱり弱いっていうイメージがあって、着用しているあいだに、こうクシャクシャになってしまうんだと。 この素材のいいのは、やっぱりこれが振ってもらうと全部戻ってくるっていう、消えてくる、綺麗な状態になるっていう。 あのー、毛先が割れて柔らかくて根元が、あのコシがあるって、理想的な素材だっていうことで…。
映像説明: 蛍光灯がともる作業場。長いローラーが取り付けられた、幅の広い大型機械の横を岡田社長が歩く。歩みをとめると、機械の上の方を指さす。 白い幅広の機械。ローラーに、黒の生地が巻いてある。 機械の両端(りょうはし)から生地を置く台をまたぐように、カットするアームが取り付けられている。
テロップ: 島精機製作所製 ファー専用裁断機
ナレーション: さらに、仕上がりを左右する裁断機にも秘密があるという。 こちらは、編み機などで世界的に有名なメーカー、島精機製作所にオーダーしたファー専用の特注裁断機だ。
映像説明: 岡田社長が台の上の薄いビニールをめくって機械で裁断した黒いエコファーを持ち上げる。端から出ている毛先に触れ、裏地を指さす。
岡田社長: 毛が全部残ってるでしょ、端に。 これはその、裏地だけを切って、毛を切ってないんですよね。
映像説明: 裁断した黒の生地。裏地の先端から細い毛先がのぞく。 台(だい)の上の黒い生地。裏地の下からたくさんの毛が出ている。 裁断機の横に置かれた液晶ディスプレーとコントローラー。 指の爪よりも小さなカッターが、カットする部分に固定されている。 台(だい)の上に広げられた生地の上で、裁断機のアームが滑らかに動き、裁断していく。
ナレーション: ファーは毛足(けあし)が長く、生地の裁断で余計な毛をはさんでしまう。 手作業で切るしかなく、工程のネックとなっていた。 この裁断機なら、刃の長さ、スピードなどを自動で調節し、生地を速く精密にカットできる。
映像説明: 裁断機の横に立ちながら話をする岡田社長。
岡田社長: これはやっぱり生地の特性によってその、刃圧っていいますか、刃を入れる、ほんとに0.1ミリ単位で変わるので。
映像説明: マスクをした若い女性従業員がコントローラーのスティックを操作する。 スティックを動かすと、台(だい)の上の生地に映し出された型紙の線が動く。
ナレーション: 仕上がりはもちろん、作業効率も上がり、かつての6倍ものオーダーを受けられるようになった。
映像説明: 「ヤマシタパイル有限会社」と書かれた看板のある白い建物の出入口。奥にダンボール箱がいくつも積まれている。 黒、グレー、白、黄色(きいろ)、水色、ピンク、赤のエコファーが筒状に巻かれ、ラックに載っている。 チェック柄のシャツを着た中年の男性が、ラックからグレーの生地を手に取って話す。 アウトラストによる温度調整のしくみが説明されているパネル。「適温で快適」と書かれた下に、アウトラストファイバーの拡大イラストが描かれている。 衣服を着た肌の拡大イラスト。衣服の下の肌の表明温度は32±1度と書かれている。
テロップ: 和歌山県 高野口町(こうやぐちちょう)
テロップ: ヤマシタパイル
テロップ: アウトラストファー 吸熱発熱(きゅうねつはつねつ)素材
ナレーション: ほかにも、高野口には、独自の機能を持たせたエコファーがある。 それがこの、アウトラストファー。 温度を調節し、表面を心地よい一定の温度に保てる。
映像説明: 英語でアウトラストファーについての説明が書かれたパネル。地球をバックに宇宙服姿の宇宙飛行士の写真が大きく載っている。 エコファーが掛かったラックの前で、グレーの生地を手にして話すチェック柄のシャツを着た男性。
ナレーション: もともと、アメリカのアウトラスト社が、NASAで使う宇宙服のために開発した素材。 これをファーにしたいと考えたのが、山下パイル。裏地が得意なメーカーだ。
テロップ: ヤマシタパイル 山下 慎二 社長
山下社長: えー、外気温(がいきおん)が低い所は、あの皆さんジャンパーを…こういうコートを付けたものを羽織りますので。 もう、こう、部屋の中に入ってしまって脱げない場合は、どんどん暑くなるわけですね。 で、それをまあ軽減できないかなということで。
映像説明: ラックに掛かった色とりどりのエコファー。その前で、うなずきながら話を続ける山下社長。
ナレーション: 裏地が得意なメーカーならではの視点で作ったオリジナルの機能性ファーで、販路の拡大を目指す。
映像説明: 瓦屋根のある木造3階建ての建物。通りに面した部分は全てガラス戸になっている。
ナレーション: 高野口は、パイル織物の国内最大の産地。
映像説明: 大型の機械がシルバーの花や複雑な模様の入った赤い生地を織りあげていく。 分割された画面に3種類のパイル織物が映し出される。毛皮のような茶色のエコファー、グレー、緑、青、赤などのベルベット、表面の起毛で作られた模様が美しいモケット。右下に、「服飾」「車両シート」「インテリア」「工業資材」という用途の説明が表示される。
テロップ パイル織物 パイル(毛状の糸)が織り込まれている生地
ナレーション: パイル織物とは、毛羽やループが織り込まれた生地のこと。 エコファー、ベルベット、モケットなど、服飾だけでなく、車両シート、インテリア、工業資材など、さまざまな用途で使われる。
映像説明: 薄い茶色やベージなどの、淡い色合いの織物。円や四角(しかく)、三角の幾何学模様や、薄いピンクの小さな花の模様が織り込まれている。 布を広げた台の前に若い男女が座って作業をしているセピア色(いろ)の写真。「再織(さいおり)の秘法(ひっぽう)製作光景(昭和9年・亀岡織物工場)」と書かれている。 石畳の路地。道路に沿って大きな瓦屋根がある木造家屋が建っている。 糸車などの古い木製の道具が並ぶ室内。
テロップ: 売り上げは10分(じゅうぶん)の1に…
ナレーション: 明治初期から、織物の産地として栄え、最盛期には300もの織屋(おりや)が軒を連ねた。 しかし、中国などの安い製品に押され、売り上げは一時、10分(じゅうぶん)の1まで落ち込んだという。
映像説明: 木で組み上げられた古い機織りの機械。糸が掛けられ、機織りの様子が再現されている。 大きな円の中心に持ち手(もちて)が付いた木製の糸車。横には草や花をデザインした織物が展示されている。
テロップ: 長年 培われた技術力 産地全体で協働(きょうどう)
ナレーション: だが、長年培われてきた、それぞれの技術力で協働(きょうどう)し、高野口全体でそれを乗り越えてきた。
映像説明: 水色の作業服を着た白髪で眼鏡をかけた男性が、黒い生地を手に持ってインタビューに答える。
テロップ: 紀州繊維工業協同組合 妙中 清剛(たえなか きよたけ) 理事長
妙中(たえなか)理事長: まあ、皆さんが専門化してきて、でー、ここしかできないっていうのを持ってるとこだけが生き残っとるっていう。 かなりみんな仲良うやっとるんです。 不景気が作った団結力っていうかな。
映像説明: ベージュ色(いろ)の車体にえんじ色(いろ)のラインが入った観光バスが、ハザードランプを点滅させながら走ってくる。 停車したバスからブロンドの女性が降りる。バスの前では緑のジャケットを着た外国人男性がスーツ姿の男性たちとあいさつを交わしている。
ナレーション: そんな高野口に、去年12月、プラダをはじめとする海外ブランドのバイヤーが訪れた。
映像説明: 大きな三角屋根のベージュ色(いろ)の建物。壁に丸いロゴが描かれ、その下に「妙中(たえなか)パイル織物株式会社」と書かれている。 建物の内部。広い空間に、大きなローラーのある機械がいくつも置かれている。 建物の突き当りまでずらりと並んだ織機(おりき)が、絶え間なく動いている。 スーツ姿の日本人と外国人バイヤーたちが10人ほど機械のそばで話をしている。 水色の生地を手にした妙中(たえなか)理事長を数人のバイヤーたちが囲んでいる。ブロンドの女性バイヤーが生地に手を伸ばし、感触を確かめる。
テロップ: 和歌山県 高野口町(こうやぐちちょう)
テロップ: 妙中(たえなか)パイル織物
ナレーション: 一行を迎え入れたのが、妙中(たえなか)パイル織物。 先ほどの妙中(たえなか)理事長が社長を務める、高野口繊維産業(さんぎょう)をけん引する企業だ。
映像説明: 工場の一角で話をする妙中(たえなか)社長とバイヤーたち。 大きな筒状に巻かれた白いクロス。ざらついた表面をバイヤーたちが指で触る。
テロップ: 研磨クロス 妙中(たえなか)パイル製品が 世界で使われる
ナレーション: 主力商品の一つが、研磨クロス。 液晶パネルを作る工程で使われるものだ。 扱いがとても難しい生地だが、妙中(たえなか)パイルの製品が世界でも数多く使われているという。
映像説明: 応接室。天井まで伸びる2段の棚に、カラフルなサンプル生地がぎっしりと収められている。棚の前には長いテーブルが置かれ、バイヤーたちが妙中(たえなか)社長の説明に耳を傾けている。 バイヤーたちの前に立ち、黄色(きいろ)や赤、青の生地のサンプルを掲げる妙中(たえなか)社長。
ナレーション: 世界が認める技術力は、先代からの50年にわたる生地作りのなかで培われた。
映像説明: 妙中(たえなか)社長がさまざまな色のサンプルを指し示す。
妙中(たえなか)社長: うちのいちばん得意なコットンベルベットです。
映像説明: グレー、緑、青、赤のグラデーションになったコットンベルベットのサンプル。 色の濃さが異なる3種類のピンクのサンプル生地と、青、緑のサンプル生地がアップで映し出される。
テロップ: コットンベルベット
ナレーション: 妙中(たえなか)パイルの原点、コットンベルベット。
映像説明: ハンガーにつるされた色とりどりの生地を背に話す妙中(たえなか)社長。 工場。ベージュの生地を織る機械の前に従業員が立ち、パーツの確認をしている。 蒸気が上がる大小の釜(かま)。大きな透明の袋をつかんだアームが、釜のなかで上下に動く。 作業服を着て、眼鏡をかけた男性が、長いグレーの生地を大型の機械に通す。 カラーバリエーション豊かなコットンベルベットのサンプル。 応接室で話を続ける妙中(たえなか)社長。
テロップ: 妙中(たえなか)パイル織物 妙中 清剛(たえなか きよたけ) 社長
妙中(たえなか)社長: これは、あのアメリカ輸出から始まって、もう、最初はクレームの山でした。 「こんなシワのもんはあかん」とかね、いろいろ言われて。 だけど、それをほんとに工場全体で織(おり)から染色から加工まで、もうほんとに神経とがらせてやって、うちのいちばん得意な商品のひとつなんですけども。 どこにも負けんもん(まけんもん)作りたいっていう気持ちがありますんで、それはもうやりがいがあるっていうか。
映像説明: 作業服を着た男性従業員が、台(だい)の上に載せた生地に手作業で細工(さいく)を施している。その様子をスマートフォンで撮影する女性バイヤー。 複雑な模様の部分がくりぬかれた青いコットンベルベット。ローラーの下に吸い込まれていく。 帽子をかぶり作業服を着た従業員の後ろで、2人のバイヤーが大きな白の生地を手に取り眺めている。 両端(りょうはし)に車輪のような大きな留め具がついた筒をゆっくりと回しながら、マスクをした2人の女性従業員が白い布を巻き付けていく。
ナレーション: 世界を相手に、磨かれてきた技術力。 培われてきた長年のスキルで、海外の市場に通用する高い水準をクリアしている。
映像説明: バイヤーたちを乗せて走る観光バスの中。 緑のジャケットを着た男性バイヤーが、座席にゆったりと座り、外の景色を眺めている。 黒と赤のセーターを着た女性バイヤーが、スマートフォンを片手にカメラに向かって手を振る。 バスのフロントガラスの先には、住宅街が広がる。画面左下に紀伊半島の地図のイラスト。大阪府、奈良県、三重県の南にある和歌山県。貴志川町(きしがわちょう)は、県の北部、大阪府に近い場所に位置し、地図のイラストの中で赤い星印で示されている。
ナレーション: 和歌山には高野口のほかにも、日本を代表する繊維の町がある。 ニット産業(さんぎょう)で知られる、貴志川町(きしがわちょう)。 ニットの生産量は日本一、世界でも有数の産地だ。
映像説明: スタッフの後ろに続いて建物に入っていくバイヤーたち。 広々とした敷地のなかに、三角屋根の大きな倉庫のような建物が2棟並んでいる。 工場の中。ビニールで仕切られたスペースに、丸い形の大きな編み機。側面には車のハンドルのような部品が付いている。 丸い台の上に、いくつもの輪がある編み機。台の下では、太く巻かれた白い生地が回転している。 円柱状の大きな機械。機械の上の丸い部分から円柱に向かって何本もの糸が送られ、円柱の中でアームが動いている。機械の横で、説明に耳を傾けるバイヤーたち。
テロップ: 和歌山県 貴志川町(きしがわちょう)
テロップ: 森下メリヤス工場
ナレーション: 貴志川で視察を受け入れたのが、ユニークなオリジナルニット素材を得意とする老舗のニットメーカー。 創業110年。ヴィンテージから最先端のものまで、200の編み機を生かし、ほかにはない新しいニットの開発に力を入れる。
映像説明: 紺色のジャケットを着た男性が、ロールから白い糸を伸ばしてバイヤーたちに見せながら説明をする。コートを着た女性バイヤーが糸に触れて感触を確かめる。 パーカーを着た男性従業員が、編み機の横のラックに糸を巻き付けている。
紺色のジャケットを着た男性スタッフ: 和紙とポリエステル。
テロップ: 和紙原料の麻 肥料・農薬なしで育つ 自然環境に優しい素材
ナレーション: 和紙の原料で使っている麻は、肥料や農薬がなくとも育つ、環境に優しい素材だ。
映像説明: ロール状に巻かれた白い糸がラックに並ぶ。ブロンドのバイヤーと、緑のジャケットを着たバイヤーが糸や編み機を眺めている。 ラックに掛かった、2種類のグレーのサンプル生地。光沢があるものは和紙とシルクで織られたもの。もうひとつのマットな風合いのものは和紙とポリエステルで織られている。
テロップ: オリジナルニットを企画
ナレーション: 世界の市場では、自然環境保全の機運が高まっている。 その潮流に乗ったオリジナルの商品を企画し、販路を広げる。
映像説明: さまざまな色やデザインの服などが掛かるラックの前で、紺色のジャケットを着た男性がインタビューに答える。
テロップ: 森下メリヤス工場 森下 展行(もりした のぶゆき) 社長
森下社長: まあ今ね、市場見て分かるとおり、低価格なものと、えー、付加価値のあるね、デザイナーズブランドと、二極化してるんですよね。 まあ、感性のあるものとかちょっと難しいものとか、そういったものを開発してですね、あのー、生き残っていくというか。
ナレーション: その取り組みは世界でも評価を受けている。
映像説明: 広いホールの写真。高い天井から英語で「R HALL 5」と書かれた案内表示が吊るされている。 背丈ほどのパーテーションで区切ったブース。生地のサンプルが吊るされたラックの前で、森下社長と2人の男女が映っている写真。(画像提供 森下メリヤス工場)
テロップ: 2017年2月 フランス 「プルミエール・ヴィジョン」に出展
テロップ: 売り上げ4分の1は海外
ナレーション: 海外の展示会や営業にも積極的に出向き、現在、売り上げの4分の1は海外との取り引きだ。
映像説明: 工場の中で数人のバイヤーたちに囲まれている森下社長。通訳の女性を介して話をする。 ときおりバイヤーたちの反応を見ながら森下社長が説明を続ける。
森下社長: 機械を入れ替えて… 紡績の技術と、えー、編みの技術で、えー、新しいものを常に作り出していく。 世界のアパレルの皆様に使っていただける。 オリジナル性のあるものを作ってくのが、あのー、使命かなと思います。
映像説明: 松の木や赤く染まったもみじの奥に、天守がのぞく。 屋内。ドアの近くにある、「欧米向けテキスタイル輸出展示商談会」と書かれた電光案内看板。 天井から下がるシャンデリアやライトに照らされた広いホール。テーブルと椅子が用意され、さまざまな生地の掛かったラックがあちこちに置かれている。 サンプル生地の置かれたテーブルを前に、妙中(たえなか)社長が笑顔で立っている。 ラックに掛かったエコファーのサンプルの並びを整える岡田社長。
テロップ: 和歌山市
テロップ: 2018年12月7日 欧米向けテキスタイル輸出展示商談会 主催:ジェトロ 和歌山県
ナレーション: 和歌山市内。 視察した企業を含む10社が参加する商談会が開かれた。 はたして、バイヤーたちの反応は…。
映像説明: グレーのボタンダウンシャツを着た山下社長が、ブロンドの女性バイヤーに名刺を渡している。 ブロンドの女性バイヤーが、ラックに掛かった色とりどりのファーを真剣な表情で1枚1枚見定めていく。
テロップ: 米国のファッションブランド 3.1 フィリップ リム
ナレーション: 機能性ファー、ヤマシタパイルのブースには…。 ニューヨーク発、洗練されたデザインが得意なブランドのバイヤー。
映像説明: 質問を投げかけるブロンドのバイヤー。山下社長とチェック柄のシャツを着た若い男性が応対する。バイヤーの手には宇宙服の画像が載った商品説明のチラシ。
3.1 フィリップ リムの女性バイヤー・英語: これは何ですか?
チェック柄のシャツを着た若い男性: アウトラスト。
山下社長: NASAの宇宙服(で使われている)。
映像説明: ブロンドのバイヤーが大きく目を見開いてうなずく。
ナレーション: 興味をひいたようだ。
映像説明: 山下社長がグレーのふわふわとした生地のサンプルをテーブルに出すと、ブロンドの女性が手に取る。
山下社長: これがアウトラスト。その綿を使って作ったファーです。
映像説明: 自分のノートにメモを取りながら感想をつぶやくブロンドのバイヤー。 黄色い用紙に記入をしていく。
3.1 フィリップ リムの女性バイヤー・英語: Very interesting…Coolナレーション: オリジナルの機能性ファー。サンプル手配が決まった。
映像説明: 別のブース。笑顔の森下社長が、緑のレースのブラウスを着て、アップスタイルの外国人女性と名刺交換をする。和やかに言葉を交わすと、アップスタイルの女性がラックに掛かった生地に手を伸ばす。 ベージュ色(いろ)の生地を手にとる女性。森下社長が英語で説明をする。
ナレーション: こちらは、ユニークなニット素材を得意とする森下メリヤス。
森下社長・英語: 森下です。
アップスタイルの女性・英語: そうよね。
森下社長・英語: ご存じで。
ナレーション: なんと、バイヤーとは顔見知り。 オリエンタル調のシックなデザインが特徴のブランド。 フランスの展示会で知り合ったという。
テロップ: フランスのファッションブランド イザベル マラン
映像説明: 室内。たくさんの服や生地の掛かったラックの前で椅子に座り、森下社長がインタビューに答える。
森下社長: あの… 以前ちょっと宿題をもらって…。
映像説明: 商談会場のホール。イザベル マランの女性バイヤーが、ラックに掛かった黒の生地を触りながら話す。生地は薄く、隣のベージュ色(いろ)の生地が透けている。笑顔で会話を続ける森下社長とイザベル マランの女性バイヤー。 イザベル マランの女性バイヤーがラックから生地のサンプルを取り出しながら、英語で森下社長と会話している。
ナレーション: 彼女から受けたリクエストは…。
イザベル マランの女性バイヤー・英語: シースルーね。
ナレーション: ブランドイメージに合う、透け感のあるオリジナルニット。 反応は上々。 現地に足を運び、関係を築くことでニーズを把握。 オリジナルの企画提案をすることで、世界の高い要求に応えていた。
映像説明: 大型機械が置かれた作業場。身振りを交えて話す日本人男性のそばで、バイヤーたちが稼働する機械を見つめている。
ナレーション: 今回、世界のバイヤーたちは、日本のテキスタイルを高く評価していた。
映像説明: 商談会場のなかで、サイディングの壁を背にインタビューに答えるブロンドの女性バイヤー。
テロップ: 米国のファッションブランド 3.1 フィリップ リム
3.1 フィリップ リムの女性バイヤー・英語: 日本の生地は品質が高く、技術力もある。 とてもイノベーティブだと思う。
映像説明: 白のエコファーをなでるように触る緑のジャケットを着た男性バイヤー。 商談会場のなかで、白いタイルの壁を背に視察の感想を語る。
テロップ: 米国のファッションブランド ジェイソン ウー
ナレーション: オバマ元大統領のミシェル夫人が着用したことでも知られるジェイソン・ウーのバイヤーも…。
ジェイソン ウーの男性バイヤー・英語: 日本の生地にはイタリアや中国、世界のどの国とも異なった仕上がりがある。 優れた加工の方法や機能性を備えた素材のアイデア、着心地や見た目の良さを追求していて期待している。
スタジオの宮瀬キャスター: 和歌山の繊維産業(さんぎょう)は、その技術力を背景に、世界のトレンドを的確に捉えて新たなチャンスを掴んでいました。 こうした発想は、ほかの産業にも活かせるところがあるかもしれません。
映像説明: 宮瀬キャスターがお辞儀をする。
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次回の番組
11月14日(予定)
テーマ:水素革命Ⅲ 世界がわかる! オーストラリアで見た最前線
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