2008年3月
吉田法務事務所 代表 吉田武史

日本の薬事法における広告・表示規制

1.規制対象品目分類  2.広告規制  3.輸入品:化粧品  輸入品:健康食品
1.薬事法の規制対象品目分類
日本の薬事法の観点で、規制対象品目を分類すると、“医薬品”、“医薬部外品”、“化粧品”、“医療機器”(以下、「医薬品等」という)の4つに分類される。<薬事法第1条>では、品質・有効性・安全性を確保するためには、薬事法上必要な要件が求められ、必要に応じて規制を行うと宣言されている。つまり、これら規制対象品を流通させるには、薬事法で求められる要件を満たし、業態に応じた許認可(業の許可・製品の承認等)を取得しなければならない。

規制対象品の分類の定義は<薬事法第2条>で規定されており、取り扱い商品がどの分類に該当するかを最初に確認することが重要である。作用が緩和であるという点で類似しているのが“医薬部外品”と“化粧品”だが、商品の訴求(謳い方)によって、“医薬部外品”は<薬事法第2条第2項>で、“化粧品”は<同第3項>でそれぞれ規定されている。

なお、“医薬部外品”の区分はEUや米国にはない。日本の“医薬部外品”の中には、EUでは化粧品に該当し、米国ではコスメティックドラッグや化粧品に該当するものがある。


【参考1】商品の目的が異なる場合の訴求
2.薬事法の広告規制と罰則規定
薬事法では、広告を厳しく制限している。<薬事法第66条 誇大広告等、第67条 特定疾病用の医薬品の広告の制限、第68条 承認前の医薬品等の広告の禁止> さらに、1998年9月29日付け厚生省医薬安全局監視指導課長通知では、広告の3要件を提示し、次のいずれの要件も満たす場合、広告に該当するものと判断するとしている。

1) 顧客の誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること。
2) 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること。
3)一般人が認知できる状態であること。

広告制限は事業者のみならず、個人の方も対象としており、ブログや個人のホームページも規制の対象になる。その根拠は、薬事法が風説の流布を禁じ、情報の意義、重みが人の生命に直接影響を及ぼす可能性があることから来ている。

広告規制の違反には、罰則規定があり、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金に処せられ、またはこの両方が科せられる。

医薬部外品と化粧品の製品回収事例をみると、その多くが訴求範囲、表示範囲を超えたことに由来する。そのため、薬事法を運用する上で、広告関係の法的根拠を十分に理解する必要がある。


【参考2】製品回収手続きの際のポイント
【参考3】化粧品の効能効果の範囲
3.輸入品の取り扱い
3−1.化粧品

輸入品を取り扱う場合の留意点について、化粧品を例にみてみたい。次の5つの事項は最低限の必要事項である。

1) 相手国の薬事法に相当する法規の確認。
2) 契約に対する考え方への理解。
3) 通関時の対応とその関連法規の確認。
4) 国際的に禁止されていないこと:取扱予定品目について、取引相手国について
5) 日本以外の国との対応について。例えば、許認可の有無。
6) 成分に関する十分な確認。

これら情報を自ら入手しておかないと、不測の事態が発生した時の対応ができない恐れがある。インターネット上で公開されている場合もあるが、現地の担当者から直接入手することも必要です。輸入前に相手国の法規で照合、確認しても、輸入後は日本の薬事法が適用される。そのため、輸入品の取り扱いには、海外と日本の品目区分の違いを調査・確認した上で、日本の薬事法、関連法規、通知等で判断しなければならない。
薬事法では、『製造販売業』という許可を取得した立場の者が管理監督の義務を負うことになっており、市場責任を負うためのシステム構築が求められる。また、『製造販売の企業』では、品質の担保を行うための品質調査、現場調査等を行い、<薬事法第1条>に規定する品質、有効性、安全性の確保に努めなければならない。

【参考4】新薬事法(2005年4月1日施行)下での流通経路
【参考5】製造販売業者における三役


化粧品を新規で輸入する場合、次の手続きが必要となる。

1) 化粧品製造販売業・許可申請
2) 化粧品製造業・許可申請(他社に委託する場合は不要)
3) 試験検査のための試験検査施設との利用契約(自社検査設備がない場合)
4) 化粧品の外国製造業者・届出(外国製造業者ごとに申請):即日完了
5) 化粧品製造販売・届出(品目ごとに申請):即日完了
6) 化粧品・輸入届(品目ごとに申請):即日完了
7) 通関手続き
3−2.健康食品

健康食品は慣用語であり、関連する法律には『薬事法』、『景品表示法』、『健康増進法』、『食品衛生法』、『JAS法』などがある。食品は原則、『食品衛生法』が適用されるが、医薬品のような効能・効果を謳う(表示する)と、『薬事法』と『景品表示法』が適用される。

ただし、例外的に効能・効果表示が認められるものとして、『健康増進法』で規定する“特定保健用食品(いわゆる「栄養機能食品」)”がある。“特定保健用食品”においても、整腸作用、高血圧、糖尿病等など分野は限定される。

“特定保健用食品”のマークは厚生労働省が付与するもので、指定の試験機関による試験データの提出が求められる。一般に、このマーク取得には数億円の経費を要すといわれ、さらに、試験基準の変更があれば、試験のやり直しで新たなコストを要す。

許認可をとらずに、「食品」として効能効果表示ができない事例は次のとおり。
1)栄養補給、健康維持、美容等に関連する表現
 “栄養補給”の表現自体は医薬品的な効能効果とみなされないが、病的な栄養成分の欠乏状態を対象と
 したり、特定部位への栄養補給を目的とすることで、機能改善を暗示することはできない。
 <表示可能>働き盛りの方の栄養補給に、発育時の栄養補給に。
 <表示不可>病中病後の体力低下時の栄養補給に、目の栄養補給に。
2)疾病の治療・予防を目的とするような表現
 <表示不可>ガンに効く、痩せられる、生活習慣病の予防、便秘解消 など。
3)体の機能の一般的増強、増進を目的とする表現
 <表示不可>疲労回復、精力回復、学力向上、風邪を引きにくい体に、新陳代謝を高める、老化防止、
 細胞の活性化など。
4)疾病の治療・予防に効果の暗示的な表現
 <表示不可>名称やキャッチフレーズ、含有成分・製法・起源・由来等の表示及び説明、記事・医者や
 学者の談話、体験談の引用など。
5)身体の特定部位に効果があるというような表現
 『医薬品の範囲に関する基準』には、もっぱら医薬品として使用される成分本質(原材料)がリスト収載
 されており、このリストの成分を食品に使用することはできない。
 また、形状については、アンプル、舌下錠、スプレーに充填した液体を口腔内に噴霧し、粘膜からの吸収
 を目的とするものは、「医薬品」と判断される。ただし、カプセル、錠剤、粉末、顆粒、液体などは、「食品」と
 表示されていれば、「医薬品」とは判断されない。
 用法・用量を指定については、摂取の「目安」としての表示は可能だが、断定的に表示することはでき
 ない。
 <表示可能>栄養補助食品として1日3〜6粒を目安にお飲みください。
 <表示不可> ・1日5粒。
           ・ 症状に応じた用法・用量を定めること。
           ・ 「オブラートに包んでお飲みください」など、医薬品に固有な服用方法と同様な表現。
           ・ 過食を避けるための摂取量の上限表現。

最後に、効能効果表示の可否は行政判断によるため、これに対応するには、判例の蓄積と市民の認知度次第と言える。広告や表示が『薬事法』に抵触するか否かは、都道府県の担当課に問い合わせることをお勧めする。