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貿易実務レッスン 貿易実務の仕組み・専門用語をわかりやすく解説(TTPPニューズレターで紹介したものです)

代理店契約と販売店契約について
この内容を印刷する2013年12月号
代理店契約と販売店契約について

出所: ジェトロのeラーニング講座「貿易実務オンライン講座 中国輸出ビジネス編」

海外で販売チャネル構築のため、海外企業との代理店契約や販売店契約を検討することがあるかと思います。販売店と代理店には、「代理店」、「販売代理店」、「販売店」、「特約店」などのさまざまな呼び方があり、両者を混同しないよう、契約内容の違いをよく理解しておく必要があります。

今回は、ジェトロのeラーニング講座「貿易実務オンライン講座 中国輸出ビジネス編」のテキストから抜粋し、「代理店契約」と「販売店契約」について説明します。

1.代理店契約(Agency Agreement)

代理店(Agency)は、輸出者(Principal)である商社やメーカーとの契約により、輸出者の商品を広く紹介し、販売(市場)拡大を図るものです。ただし、代理店の役割は輸入者との売買契約の当事者とはならず、輸出者のために仲介・媒介・代理をすることです。従って、代理店の活動により締結された売買契約では、この契約で生じるすべての損益や危険は輸出者と輸入者に帰属します。例えば、輸入者が支払い不能に陥り、販売代金が回収できない時は、輸出者の損失となります。
代理店にとって、業務実績に応じて得た輸出者からの手数料(Agent Commission)が収入になります。

<< 代理店契約のしくみ >>

*代理店契約とは

「輸出者(売主)」が「輸入者(買主)」に自社製品を販売する際、その取引を仲介する代理人・代理店と結ぶ契約のこと。代理店は代理で輸入者を探した役務の対価として、「手数料」により利益を上げる。

代理店契約の仕組みについて

2.販売店契約(Distributorship Agreement)

販売店は、輸出者から商品を輸入し、その商品を第三者へ販売(転売)し、その転売差益によって利益を上げます。販売店は自らの責任(損益や危険負担)で商品を販売しますが、その販売価格を自由に設定することができます。

ただし、輸出者と販売店の間で、取扱商品の制限、商品在庫の保有、補修部品やアフターサービス機能の確保、宣伝費負担等の特約条件が設けられることがあります。この種の特約条件で、期間や地域などを規定し、独占的に販売できる権利(独占権)を得た販売店を『総販売店(Sole Distributor)』または『独占販売店(ExclusiveDistributor)』と呼びます。一方、独占権を有しない販売店を『非独占的販売店(Non-Exclusive Distributor)』と呼びます。

<< 販売店契約のしくみ >>

*販売店契約とは

「輸入者(販売店)」が自らのリスクと勘定で「輸出者」から商品等を輸入し、それを特定の国・地域など限られた範囲内で、販売店自ら顧客と売買契約を締結して再販売(転売)を行う契約のこと。「転売差益」により利益を上げる。

販売店契約の仕組みについて
小額取引の外貨決済(その4)
この内容を印刷する2013年11月号
小額取引の外貨決済(その4)
〜 クレジットカードでの決済の仕組み 〜

出所: 一般財団法人 対日貿易投資交流協会(MIPRO)

本シリーズの第1回、2回、3回では、銀行や郵便局経由の外貨送金の仕組みを解説しました。今回は、クレジットカードでの決済の仕組みを解説します。

インターネットを利用してネットショップなどから仕入れを行う場合、最も一般的な決済方法として使われているのがクレジットカード。海外の見本市などで直接買い付ける場合もよく使われているようです。

1.カード決済のメリット、デメリット

クレジットカードの最大の特徴は高額の現金を持ち歩く必要がないこと、送金手数料が不要で、決済までの期間に余裕を持てることでしょう。ビジネス用と個人用のカードを使い分ければ、会計上の公私の分離に役立ち、支払い内容(利用日、支払い先、金額)を明細書やデータで管理・保存することもできます。

企業が社員用に契約するクレジットカードは法人カードと呼ばれ、中小企業向けのサービスを充実させた法人カードを発行しているカード会社もあります。法人カードを使用すると社員ごとの経費精算が不要になり、支払いも月単位にまとめられるなど、社内の経理処理の手間を軽減することができるでしょう。

反面、クレジットカードの利用には限度額が定められているほか、換算レートや取引先への入金日も、利用時点ではわかりません。カード番号や暗証番号の管理にも細心の注意が必要です。

2.カード決済の仕組み

クレジットカードの仕組みは国際ネットワークを持つ5つのカード会社(American Express、Diners Club、JCB 、Master Card、VISA)を中心に、会員にカードを発行するイシュアー(カード発行会社)と、店舗と加盟店契約を結ぶアクワイアラーによって構成されています。イシュアーやアクワイアラーは銀行や証券会社など金融関係の企業である場合が多く、American Express、Diners Club、JCBは、カード会社自らがイシュアーやアクワイアラーを兼ねている部分があります。

カード会社はアクワイアラーを通じて加盟店への決済ルートを構築する一方、イシュアーを通じて自社ブランドのカードを発行し、カードの売上げを国・地域ごとに集計して、為替処理と決済代行を行っています。日本のカード会員が海外の加盟店を利用する場合の流れは下図のようになります。

<< 日本のカード会員が海外の加盟店を利用する場合の流れ >>

日本のカード会員が海外の加盟店を利用する場合の流れ

A.B.:加盟店でカード会員がカードを利用。
C.D.:加盟店がアクワイアラーにカード利用額を集計・通知し、アクワイアラーが利用額から加盟店手数
      料を差引いた額を入金する。おおむね2週間〜1ヶ月に1回。
E.F.:アクワイアラーが加盟店の売上げを合計してカード会社へ通知し、カード会社から入金が行われる
      。
G.H.:カード会社が各国の売上げを外貨から日本円へ換算し、イシュアー別に集計して請求を出す。各
      イシュアーは、利用額をカード会社へ支払う。
I.J.:イシュアーがカード会員に利用額の請求書を送り、カード会員が支払いを行う(指定日に銀行口座か
      ら利用額が引き落とされる)。

3.換算レートと換算日時

カード利用額の日本円への換算は、各カード会社の独自ルールに沿って行われています。 適用レートは、東京の外国為替市場のレートを利用する場合や、カード会社と銀行の間で独自に取り交されたレートに為替処理コストとして、一定割合(1〜2%)をプラスしたレートを使用する場合などがあり、また換算日時は、加盟店からのデータ送信日時とする場合や、実際に事務処理センターが換算処理する日時とする場合などがあります。

カード会社が利用額を換算するまでには、各加盟店からアクワイアラーへの通知、アクワイアラーからカード会社への通知という段階を経なければならないため、一般的には換算日時は利用日と同じになりません。また、為替相場は刻々と変動しているため、相場が大きく動いている時には、利用時と請求時のレートに大きな差が生じる場合もあり、処理のタイミングによっては、同じ日に同じ加盟店で利用した場合でも、レートが異なる場合があります。

4.インターネット取引における注意点

オンラインショップからの仕入れなど、インターネットを利用した取引決済には、多くの場合クレジットカードが利用されていますが、カード番号やパスワードを盗まれ、なりすましによる不正が行われたり、詐欺的な取引に巻き込まれるケースも少なくありません。

カード番号を取引先に伝える場合には、メールは避け、電話やFAXを利用する方が安全と言われています。また、オンラインショップで個人情報やカード番号を入力する際は、そのページがセキュアチャンネル(入力した情報を暗号化して送信する機能)を使用しているか確認しましょう。Internet Explorerの場合は画面の右下に、Netscapeの場合は画面の左下に、それぞれ鍵のマークがあり、ホームページのアドレスが「https」から始まっていることが目安です。

いくつかのカード会社では、会員がカード番号以外のIDやパスワードを事前に登録し、インターネット上のカード決済の際にそれらを入力することにより、第三者によるなりすまし等を防ぐ本人認証サービスも行われています。

5.代金回収に利用するカード決済(加盟店契約)

クレジットカードは、仕入れ代金等の支払いに使うだけでなく、反対に商品を販売して顧客から代金を受取る際の決済手段としても、利用することができます。特に、インターネットを利用した商品の売買では、オンラインで決済を行うことができるため、カード決済が広く普及しており、その利用率はオンラインショッピングの7割を超えていると言われています。

販売店はカード会社と加盟店契約を結ぶことにより、顧客が海外にいる場合でも、いちいち請求書を作成したり、海外からの入金を確認するなどの手間を省くことができます。

ただし、カード加盟店になるには、取扱商品や販売実績、毎月の売上高などを基にした審査を受けなければなりません。また、以下のような点を考慮する必要があります。

1)入金までの日数 〜 代金回収に半月〜1ヶ月を要す
   売上げはカード会社ごとに設定されている締日(月1回、もしくは2回)に集計され、まとめて支払われます。そのため、販売から入金
   までに半月〜1ヶ月かかります。

2)加盟店手数料 〜 通常5%前後で、ネット販売ではより高め
   加盟店契約自体は基本的に無料ですが、カード会社から売上金が入金される際、加盟店手数料を差引かれます。手数料率はカー
   ド会社によって異なり、通常は5%前後ですが、インターネット販売ではリスクが高いため、これよりやや高めに設定されています。

3)システム導入 〜 初期のシステム導入費用負担か、毎月の使用料負担か
   カード決済システムの導入に手間や費用がかかる場合があります。決済代行サービス*を利用する場合やモールに出店する場合
   には、独自でシステムを導入する必要がない代わりに、システム使用料、サービス使用料といった形で毎月の経費がかかることに
   なります。
    *クレジットカード、電子マネーなど複数の決済サービスを契約する場合に、契約者に代わって一括して手続きなどを行うサービ
   ス。

6.利点と注意点

1)現金を持ち歩く必要がない。
2)自社で外貨を準備する必要がない。
3)購入後、実際の銀行口座からの引き落とし(支払い)までに、時間の余裕がある。
4)銀行や郵便局系の国際送金サービスと比べて、取扱い手数料が安い。
5)インターネット取引では最も簡便な決済方法である。
6)取引先への入金期日が不明。
7)換算レートが予測不能。
8)カード番号を第三者に知られ、悪用されるおそれがある。
9)利用限度額が決められている。

 

小額取引の外貨決済(その3)
この内容を印刷する2013年10月号
小額取引の外貨決済(その3)
〜 ゆうちょ銀行と国際送金取扱郵便局の送金サービス 〜

出所: 一般財団法人 対日貿易投資交流協会(MIPRO)

本シリーズの第1回、2回では、銀行経由の外貨送金の仕組みを解説しました。
今回は、日本の郵便局系の国際送金サービスを解説します。

ゆうちょ銀行全店(233店)と国際送金取扱郵便局(約7,500局)による国際送金サービスには、受取人に為替証書等を送る住所あて送金と、受取人の口座に入金する口座あて送金/口座間送金があります。送金取扱国・地域はおよそ200ありますが、国・地域によって、利用できるサービス、送金限度額、使用通貨等が異なるため、個別に確認が必要です。

1.住所あて送金 〜 海外の郵便事情を事前チェック

住所あて送金は、送金金額と送金手数料(1件につき2,500円)を日本円で支払い、郵便で為替証書等を送付する方法です。受取人は自国の郵便局等でその為替証書等と引き換えに現金を受取ることができます。(米国あてのみ、手数料2,000円、為替証書は差出人自身が送付する。)

送金日数の目安は以下のようになっていますが、相手国の郵便事情、休日等により前後するため、期日までに充分な余裕が必要です。

住所あて送金 〜 海外の郵便事情を事前チェック

出所: ゆうちょ銀行ホームページ(2012年8月現在)

2.口座あて送金/口座間送金 〜 送金・受取・仲介等の各銀行の手数料を事前チェック

どちらも受取人の銀行口座または郵便振替口座に入金する方法です。
口座あて送金では、送金金額と手数料を日本円の現金で支払い、口座間送金では、差出人のゆうちょ銀行の総合口座(または振替口座)から送金金額と手数料を払い出し、外貨に換えて受取人の口座に入金します。

BICコードやIBANコード(シリーズ第2回を参照)の記載が必要となる国・地域あての送金では、事前に受取人にコードを確認しておく必要があります。

手数料は1件につき2,500円ですが、これはゆうちょ銀行へ支払う手数料で、この他に、受取り口座へ入金する際に受取り機関(銀行)で口座登記料を請求されたり、双方の銀行を仲介する機関(銀行)で仲介手数料等が発生する場合があります。送金手続きはこれらの手数料を差し引きながら行われるため、最終的な入金金額が不足しないよう、事前に手数料を確認しておかなければなりません。

3.外貨換算レートと使用通貨

換算レート(TTS)は、米ドルは毎営業日の午前11時、その他の通貨は正午に更新されます。送金に使われる通貨は指定されており、あて先国の通貨と異なる場合は、一部の国を除き、あて先国の機関(銀行)がその国の通貨に再換算して受取人に支払います。

そのため、たとえばインドへルピー建ての支払いを行う場合に、ゆうちょ銀行の口座あて送金を利用すると、送金に使用する通貨が米ドルに指定されているため、ゆうちょ銀行の窓口でまず日本円を米ドルに換算し、送金された米ドルをインド国内の銀行がルピーに再換算して、受取口座に入金することとなります。日本円⇒米ドル⇒ルピーと、2回換算するため、為替手数料が2回かかること、受取り額が契約書通りにならない可能性があることに注意しましょう。

<< ゆうちょ銀行による海外送金サービスの一例 >>

ゆうちょ銀行による海外送金サービスの一例

出所:ゆうちょ銀行ホームページ(2012年8月現在)
注:実際の送金には、送金先の国に関する注意事項について、ゆうちょ銀行・国際送金取扱郵便局の窓口で確
     認が必要。

4.送金に必要な情報

申込みの際には、送金目的、職業を申告する必要があり、商品代金の場合は具体的な品名(衣類、玩具、など)も記入します。また、本人確認のため、窓口で公的機関発行の証明書(差出人の名前・住所・生年月日等が入ったもの)の提示が求められます。

企業として送金する場合は、窓口で手続きをする人の本人確認に加え、企業の登記事項証明書(発行後6ヶ月未満のもの)も必要です。

ゆうちょ銀行:http://www.jp-bank.japanpost.jp/

5.利点と注意点

1)カード決済や金融機関口座を利用できない取引先に対してでも、支払うことができる。
2)1回あたりの送金額に制限がある。
3)送金に使用する通貨が国・地域により限定される。
4)ゆうちょ銀行・国際送金取扱郵便局の窓口に出向く必要がある。

 

小額取引の外貨決済(その2)
この内容を印刷する2013年9月号
小額取引の外貨決済(その2)
〜 銀行の電信送金:外貨送金する際の留意点と必要書類 〜

出所: 一般財団法人 対日貿易投資交流協会(MIPRO)

第1回では、銀行経由の外貨送金の流れと各種手数料について解説しました。
今回は、銀行経由の外貨送金時の留意点と必要書類について解説します。

3.外貨送金を依頼する際の留意点

1)送金相手国・地域 〜 経済制裁対象国、紛争国には送金制限あり
送金先の国・地域が経済制裁対象国の場合は、送金することができません。また、紛争国などの場合は、情勢により対応が流動的で、送金が制限される場合があります。

2)所要日数 〜 入金日を事前確認
受取側の銀行に入金されるまでの日数は、同じ国へ同じ通貨を送金する場合でも銀行によって異なります。送金を依頼する前に、受取側の銀行への入金日を確認し、確実に支払期限に間に合うよう、留意する必要があります。

3)提出書類 〜 身分証明書の提示と送金目的の記載
犯罪収益移転防止法により、マネーロンダリングや違法性の疑いがある取引は禁止されているため、送金の際は送金者の身分証明書の提示が求められ、法人の場合は登記事項証明書等も必要です。また送金目的等の記載も求められます。

4.送金に必要な情報

送金を依頼する際は、おおよそ以下のような情報・書類が必要です。送金先や取扱銀行によって異なる部分がありますので、事前に確認しておきましょう。

1)受取銀行に関する情報
     銀行の名称・銀行番号
     支店名・支店番号・支店住所
     BICコード、IBANコード*2 など国際送金の際に銀行・口座を特定するためのコード
     受取口座の名義、口座番号、受取人住所

2)送金額・通貨

3)送金者に関する情報
     登記事項証明書(法人の場合)
     印鑑証明書
     送金者(代表者)および送金担当者の身分証明書(公的機関が発行したもの)
     職業、事業内容
     送金目的(商品代金支払いの場合は、商品名、原産国、船積地)
     送金資金の原資を確認できる資料

BICコード、IBANコードとは

5.銀行以外の新規参入事業者(資金移動業者)

2010年4月に施行された「資金決済に関する法律(資金決済法)」により、これまで銀行以外の事業者には認められていなかった為替取引が一部可能となりました。同法に基づき、資金移動業者として登録した事業者は、1回あたり100万円以下の為替取引が行えることとなったことから、大手の通信事業サービス会社などがインターネットを活用した海外送金サービスを始めています。

送金の仕組みは基本的に銀行のT/Tと同様で、受取人の銀行口座へ振込むタイプ以外に、海外の大手送金業者が提携する受取拠点で現金を受取るタイプなどがあり、送金手数料は比較的安価です。しかし、中継銀行や受取銀行での手数料は銀行の場合と同じ様に発生しますし、サービスが個人使用や海外への送金のみ(日本での受取りは不可)に限定されていたり、商用にも使用できるが輸入に法規制がかかる商品の代金決済には使えない、など、それぞれに制約があるため、自分の希望に合った送金が可能かどうか、事前によく確認する必要があるでしょう。

LC取引について

6.利点&注意点

1)送金額に制限がない。
2)使用通貨を自由に選択できる。(日本円の送金も可能。)
3)銀行によっては、郵便やオンラインだけで手続きが可能。
4)郵便局系の国際送金サービスやクレジッカード決済と比較し、手数料が割高である。

 

小額取引の外貨決済(その1)
この内容を印刷する2013年08月号
小額取引の外貨決済(その1)

一般財団法人 対日貿易投資交流協会(MIPRO)が、日本の小口輸入業者向けに、100万円程度までの外貨決済の仕組みと留意点を紹介する小冊子『少額取引の外貨決済』(日本語版のみ)を発行しました。
TTPPユーザー向けに、本冊子の内容を4回に分けてご紹介します。

第1回は、銀行の電信送金について、外貨送金の流れと各種手数料を解説します。
第2回は、銀行の電信送金について、外貨送金する際の留意点と必要書類を解説します。
第3回は、日本のゆうちょ銀行と国際送金取扱郵便局の送金サービスについて解説します。
第4回は、クレジットカードでの決済の仕組みを解説します。

〜 銀行の電信送金:外貨送金の流れと各種手数料 〜

出所: 一般財団法人 対日貿易投資交流協会(MIPRO)

一般の銀行を通じた輸入代金の決済には、主にL/C(信用状:Letter of Credit)取引とT/T(電信送金:TelegraphicTransfer)がありますが、少額取引の決済で多く使われているのはT/Tでしょう。

T/Tには、預金口座から出金して送金する預金タイプと、送金のつど資金を銀行に支払う振込タイプとがあります。預金タイプは入出金を一元管理することができますが、ある程度の資金を常に口座に入れておく必要があり、振込タイプは口座管理が不要で、そのつど利用するという手軽さ・便利さはありますが、入金には対応できないという特性があります。それぞれのメリット・デメリットを勘案し、用途に合わせて、選択しましょう。

1.送金の流れ

銀行を通して日本から送金する際の流れは、一般的に下図のようになります。送金者は、国内の銀行で受取口座への送金を依頼します。送金手数料は銀行によって異なり、1件あたりおおよそ2,000円〜6,000円程度です。

依頼を受けた銀行は為替取引契約をしているコルレス銀行(中継銀行)*1を通して受取銀行へ送金しますが、この時コルレス銀行、受取銀行でも取扱手数料が発生する場合があります(一般的に2,500円程度)。この手数料が送金額から自動的に差し引かれて、受取口座への入金額が不足してしまうおそれもあるため、送金者は依頼の前に、手数料の合計を確認しておかなければなりません。事前に手数料の負担について、取引先と交渉しておけば、決済時のトラブルを防ぐことができ、こちらの経費を節約できる可能性もあるでしょう。

なお、送金相手国や送金通貨があまり一般的ではない場合、中小規模の銀行では直接海外へ送金せず、手続きを日本国内の大手銀行へ委託することがあります。中継する銀行が多くなれば、手数料がかさみ、入金までの時間もかかる可能性が高いので、事前に複数の銀行の対応を調べ、自分の要望に合った銀行を選んでおくとよいでしょう。

<< 銀行を通した送金手続きの流れ >>

銀行を通した送金手続きの流れ

コルレス銀行を介した日本からのドイツ、米国への送金のイメージ

2.日本での外貨換算レートと為替手数料

T/T送金の際に銀行(ゆうちょ銀行を含む)で使用される換算レートは、日本円を外貨に換える場合、TTS(対顧客電信為替売相場)が使われます。為替相場は日々刻々と変動していますが、TTSは平日の午前〜正午頃に、東京外国為替市場の取引相場をもとに設定され、1営業日ごとに更新されます。(為替相場が大幅に変動した場合は、同一日であっても再度変更されることがあります。)

新聞やテレビで報道される相場は「仲値(TTM)」と呼ばれ、銀行間で取引する際に使われるレート、また反対に外貨を日本円に換える場合は「TTB(対顧客電信為替買相場)」が使われます。

TTMとTTS、TTBとの差額(スプレッド)は銀行が顧客から得る為替手数料で、TTSはTTM+為替手数料、TTBはTTM−為替手数料となります。一般的に、大手都市銀行で日本円/米ドルを交換する場合のスプレッドは1円、同・円/ユーロは1.5円ですが、通貨や銀行によって大きく異なるため、依頼する銀行を選ぶ際には送金手数料だけでなく、為替手数料も比較するとよいでしょう。

<< 日本円/米ドルの換算レートの例 >>

日本円/米ドルの換算レートの例

 

インコタームズ2010について(その2)
この内容を印刷する2011年03月号
インコタームズ2010について(その2)
〜 実務的な理解と実践のために 〜

有限会社プロアイズ 代表取締役  吉冨 成一

インコタームズ2010では、国際取引ルールが同2000とは違う概念でのグループ区分となり、輸送手段ごとに2グループとなりました。今回はインコタームズ規則を実務で使う視点から、改定のポイントを解説いたしたいと思います。

<ポイント 1: 最適なインコタームズとは何か?>
結論から言うと、この規則(ルール)でなければならないといったものではないのです。インコタームズは、売買当事者が交渉の上、お互いにインコタームズ規則を正しく解釈した上で、取引条件を取り決めることが最適なインコタームズなのです。

今日では、コンテナ船による物流が海上輸送の大半を占め、また航空輸送の利用も増えてきました。コンテナ物流が主流でない時代には、すべての貨物は在来船(バラ積み貨物船)を利用しておりました。当時使用されていたルールが、今回規定のBグループ(海上および内陸水路輸送のための4規則)に属すFOB、CFR、CIFです。

日本では今までの商慣習から、どのような輸送手段でも、依然としてFOB、CFR、CIFが用いられているのが実態ではないかと思われます。国境を越えた取引が今後一層活発になる状況下、「インコタームズ規則を正しく理解しておくこと」が国際ビジネス、国際取引交渉の基本と言えるかもしれません。

<ポイント 2: コンテナ輸送・航空輸送に適したインコタームズは何か?>
FOB、CFR、CIF規則での貨物引き渡しは、実際に本船に積み込まれた時点となりますが(注1)、コンテナ貨物の場合は、実際に本船に積み込まれる前、コンテナヤードで貨物を船会社に引き渡しが行なわれています。航空輸送も同様に、航空機搭載前に、空港敷地内で運送人への引き渡しが行なわれています。

 

注1:今回のインコタームズ2010改定では、FOB、CFR、CIFの引渡し時点の解釈が、従来の「本船の手すりを越える時点」から「船上に貨物を置いた時点」に変更されています。この変更は、FOB、CFR、CIF規則をコンテナ輸送・航空輸送に当てはめた場合、インコタームズを正確に解釈すると、コンテナヤード内や空港敷地内での費用負担や危険負担でトラブルになりやすいためです。コンテナ輸送・航空輸送の場合には、FCA規則を採用することをお勧めいたします。

* FOB規則の概略はこちらからPDF

* FCA規則の概略はこちらからPDF

<ポイント 3: 新設された2規則(DATとDAP)とは?>
DAT (Delivered At Terminal)、指定ターミナル渡し(注2)のこと。 到着地で指定されたコンテナヤード、航空貨物ターミナルまで貨物を運搬し、ターミナル内に搬入するまで、売主が危険負担と費用負担もする持込み渡し規則。到着地での輸入通関手続きと関税の支払いは、買主負担です。

注2: ターミナル = 埠頭や倉庫、陸上・鉄道・航空輸送ターミナルのこと

*DAT規則の概略はこちらからPDF

DAP (Delivered At Place)、到着地指定場所渡しのこと。DATとほぼ同様ですが、港湾地区ターミナルからさらに内陸地点まで貨物を運搬、売主が危険負担し、費用負担もする場合の持込み渡し規則。

*DAP規則の概略はこちらからPDF

DAT・DAP規則ともに、売主に到着地での輸入通関義務はありますが、輸入税支払の義務はありません。売主が輸入通関も行い、輸入税を支払を行う場合はDDP規則となります。

【ワンポイント】
2001年9月11日の米国同時多発テロ以降、海上輸送でも航空輸送でも、貨物の安全規制が強化されています。インコタームズでは、売主と買主の費用負担範囲、貨物の危険負担範囲だけでなく、売買当事者の行なうべき義務、特に貨物安全情報の共有についても規定しています。また、ターミナル・ハンドリング・チャージ(注3)についての解釈も明記されています。

注3: 海上運賃が売主負担の場合、当然、売主が積み地で船会社に経費支払の上、買主に請求しているにも拘わらず、到着地で船会社が買主に対して到着地ターミナル費用を二重請求するトラブルが多く、今回の改訂でその解釈が明記されています。

 

インコタームズ2010について(その1)
この内容を印刷する2011年02月号
インコタームズ2010について(その1)
〜 基本的な国際(貿易)取引ルール:インコタームズ 〜

有限会社プロアイズ 代表取締役  吉冨 成一

昨年まで使用されていたインコタームズ2000が、10年ぶりに改定され、2011年1月1日から、「インコタームズ2010」が発効されました。今回の改訂に際し、インコタームズについて、2回シリーズで解説いたしたいと思います。第1回では、インコタームズの歴史・背景と、2010年版の改正ポイントをご説明します。

<ポイント 1: インコタームズとは?>貿易取引は、言葉の異なる国同士の国際取引です。人間の常として、何事も自分に都合の良いように解釈しがちです。ましてや、異なる言語と異なる商習慣の下で、売主と買主間で契約内容の解釈について、しばしば論争や訴訟問題にもなっていました。

そこで、国際商業会議所が世界共通の貿易条件の国際基準を定めたのが、インコタームズ(注1)です。中世の時代から始まっていた貿易取引ですが、国際基準が定められたのは、1936年のことです。どこまでが輸出者の責任で、どこからが輸入者の責任なのか、売主と買主の義務について、特に、(1)費用負担の範囲、(2)貨物の危険負担の範囲を規定しています。(注2)

元々、貿易取引は海上輸送のみでしたが、時代の変化で在来船輸送からコンテナ物流へ、さらには国際複合輸送や航空輸送へと発展してきました。そのため、この国際基準も、実態に合うように幾度となく改正されてきました。

注1: インコタームズ(Incoterms : International Commercial Terms)
国際商業会議所(ICC/本部:フランス・パリ)が1936年に定めた貿易条件の解釈として、世界で最も利用されている国際貿易取引条件のこと。 (インコタームズは国際条約ではなく、国際商業会議所が取り決めた貿易ルールです)

注2: インコタームズでは、費用負担範囲、危険負担範囲を規定しているのみのため、契約の成立や契約違反に対する救済についても規定した"ウィーン売買条約"が適用され、インコタームズを補完しています。

<ポイント 2: インコタームズ2000と2010の違いは何か?>インコタームズは、英語表記の頭文字3文字で表されています。インコタームズ2000では、その頭文字(E,F,C,D)ごとにグループ分け(4グループ、13条件)されていました。

* インコタームズ2000の概略はこちらからPDF

1.Eグループ=出荷条件・・・EXW
2.Fグループ=主要輸送費買主負担条件・・・FCA、FAS、FOB
3.Cグループ=主要輸送費売主負担条件・・・CFR、CIF、CPT、CIP
4.Dグループ=持込み渡し条件・・・DAF、DES、DEQ、DDU、DDP

今回の改訂では、今までとは違う概念でグループ分けされています。EUをはじめとする域内経済圏の動きが世界的に拡がっており、グローバルな輸送への変化に対応して、インコタームズ2010では、「輸送手段ごと」に2つのグループに大別されました。

* インコタームズ2010の概略はこちらからPDF

A グループ:あらゆる輸送手段に適した(Rules for Any Mode or Modes of Transport)7規則
- EXW、FCA、CPT、CIP, DAT, DAP, DDP)

B グループ:海上および内陸水路輸送のため(Rules for Sea and Inland Waterway Transport)の4規則
- FAS, FOB, CFR, CIF)

また、インコタームズ2000の持込み渡し条件Dグループの4条件(DAF、DES、DEQ、DDU)が廃止され、新しく2規則(DATとDAP)が追加され、その結果、13条件から11規則に改定されました。なお、従来のインコタームズ2000で使用されていた「条件(Terms)」という用語は、今回の改正で、「規則(Rules)」という用語に置き換えられております。

 

輸入最適物流の構築方法(その2)
この内容を印刷する2010年11月号
輸入最適物流の構築方法 (その2)
〜 実務に即した3ステップの取り組み方と判断基準4ポイント 〜

有限会社プロアイズ 代表取締役  吉冨 成一

前回は、輸入の最適物流を構築するために、その前提となる貿易取引条件と費用負担の関係をご紹介しました。

国際物流を手配するために、物流関連会社から提示された見積書の内容がよくわからない、見積書に実費と記載された項目があり総コストがわからない等のご相談がよくあります。
今回は、輸入において、物流業者の選定・手配や最適物流構築のための取り組み方と判断基準についてご紹介します。

1. 最適物流構築のための取り組み方3ステップ 輸入者のニーズにあった最も効率的な物流形態を見極め、最適物流を構築するためには、予め次の3つの事項を調べ、比較検討できる材料を収集、整理することをお勧めします。

◆ ステップ 1: コンプライアンス調査と関税率調査
まず、輸入取引での法規制の調査=コンプライアンスの観点から調査することから始めます。
日本の輸入取引は、『外為法』で管理され、原則自由です。ただし、輸入ないし輸入販売で事前の許可・承認が必要とされる商品や、環境保護の国際協定(注1)に抵触する商品があるので、事前に調べておく必要があります。

注1:輸入に関連する国際協定の一例
・絶滅の恐れのある野生動物・植物の国際取引に関するワシントン条約
・オゾン層保護を目的としたフロン・ハロンなどの特定物質を規制する目的のウイーン条約
・有害廃棄物の国際取引に関するバーゼル条約

同時に、輸入コストを明確にするために、輸入する商品がいくらの関税がかかるのかも調べておく必要があります。貨物を輸入する場合、税関長に輸入申告をした上で、許可を受ける手続き(通関手続き)が必要となります。その申告書には、世界共通の商品コードとしてHSコードを明記しなければなりません。すべての商品が成分ごと、または用途ごとに細かく分類されており、輸入関税率が設定されています。サンプル輸入でも関税はかかりますので、関税率を調査しておくことが重要となります。

◆ ステップ 2: 最適物流の構築と選定の作業
輸入契約の取引条件、特に売主と買主の費用負担範囲を理解しておきます。このことは、物流の委託業者に見積りを依頼する際に、自分が負担すべき物流範囲がどこからどこまでなのか、見積りの範囲と条件を提示することに関係してきます。さらに、すべてのコストを数値化することは、最適物流の構築と選定のために大事な判断材料となります。

為替レートや国際運賃など変動要因のある項目については、現時点で想定できる条件で、総輸入コストを数値化しておくことで、どのような物流が最適か判断することができます。例えば、為替レートを現時点の実勢レートより5%アップで試算、見積書に検査費用「実費」と記載されている場合は検査をする場合の想定値で試算する等、全ての経費項目を数値化して、トータルコストがわかるようにしておくことが重要です。

※ワンポイント: 総輸入コストを試算しておくことで、輸入時に必要資金がいくら必要になるかも知ることができます。輸入物流費の支払いは、貨物引渡しと同時に行うのが一般的ですので、資金繰りの上でも大事です。

◆ ステップ3: 委託先に必要情報を早めに提供
輸出者から貨物の出荷連絡を受けたら、通関手続きに必要とされる書類(注2)の提供を必ず依頼してください。国際宅配便や航空貨物の場合、輸送時間が短時間のため、貨物と一緒に書類が届きますが、現地で輸出通関した段階で、輸出者から必要書類を入手していれば、輸入通関手続きが迅速にできます。

注2: 輸出者から必要書類
・ 商業送り状 (Commercial Invoice)
・ 梱包明細書 (Packing List)
・ 船荷証券 (BL, AWB)
・ 保険証券 (Insurance Policy)
・ その他、原産地証明書などの貿易証明書類

さらに、輸入商品のカタログ情報や前回輸入通関時の書類一式があればこれらを参考資料として、またステップ 1で準備した事前許可・承認等の取得情報についても、物流・通関委託先に提示・提供すれば、通関手続きの迅速化につながります。このような情報がない場合、貨物検査の対象になる確率が高く、その検査費用の経費アップだけでなく、通関許可が下りるまでの時間が長引くことになります。また、関税率アップの要因にもなります。

2. 最適物流構築のための判断基準4ポイント
輸出業者、輸入業者のどちらが物流の手配やそのコスト負担をするかを確認した上で、最適物流を構築するために判断すべき事項として、次の4つのポイントが挙げられます。 なお、取引条件については、前回の「インコタームズの概略」をご参照ください。

◆ ポイント 1: 輸入契約の取引条件を確認すること
それぞれの取引条件ごとに、売主と買主の費用負担範囲が決められています。EXW条件とFOB条件の場合は、輸入者がすべての物流手配をすることになります。一方、CFR条件の場合は、輸出者が物流手配をしますので、輸入者が輸入通関以降の手配をすればよいことになります。

◆ ポイント 2: どれだけ急ぐか時間軸を考えておくこと
一般に、緊急を要しない場合は海上輸送でよいのですが、納期を急ぐ場合は、時間的な制約から、一般の航空貨物輸送でなく、国際宅配便の利用を検討することもあると思います。 さらに、超緊急の場合には、"ハンドキャリー"専門の業者の利用も検討しなければならないかもしれません。

◆ ポイント 3: 輸入する貨物の重量と大きさを把握しておくこと
国際輸送では、実際の重量か容積重量(注3)か、いずれか大きい方が運賃計算上の重量となります。航空輸送でも、海上輸送でも、運べるスペースは一定なので、嵩張って軽い商品と小型で重い商品との不公平感を無くすために、梱包の縦x横x高さの容積を計算して、容積重量と実重量との比較で、運賃が計算されます。

注3: 輸送運賃の積算方法
容積重量1キロは6,000立方センチですので、1メーター四方の箱の場合、100×100×100÷6,000 = 167キロとなります。実重量が167キロ以下の場合、この容積重量で運賃計算がされます。

◆ ポイント 4: 輸送する貨物の種類を確認しておくこと
危険物に分類されている貨物(注4)の場合、輸送中の安全を確保するため、指定の梱包と危険物申告書の提出が求められます。引き受けできる輸送会社も路線ごとに限定されており、事前調査が必要です。

注4: 危険品に分類される貨物例
エアゾールなどの引火性ガス貨物、アルコール・ガソリンなどの引火性液体貨物、マッチ・ナフタリンなどの可燃性貨物、酸化ナトリウムなどの自然発火性貨物、火薬類貨物、殺虫剤など毒物貨物、次亜塩素酸カルシウムなどの酸化性貨物、ホルマリン・ドライアイスなどのその他危険品貨物、磁石などの磁性貨物、放射性同位元素(放射性貨物)

最適物流を構築するために、見積りを依頼する際には、依頼者のニーズを明確にしておくことが大事です。具体的には、どのような貨物を、どこからどこへ、いつまでに届けたいかを整理しておきます。また、どのような大きさ・重量の貨物であるかの情報も必要です。その上で、物流業者にどのような輸送形態が最適かを相談することをお勧めします。

 

輸入最適物流の構築方法(その1)
この内容を印刷する2010年10月号
輸入最適物流の構築方法(その1)
〜 取引条件を理解しておきましょう 〜

有限会社プロアイズ 代表取締役  吉冨 成一

物流構築とは、A地点からB地点に、いかに早くに、安全に、しかも経済的に運べるかの方法を作ることです。輸送距離、輸送する貨物の重量・大きさなどにより、様々な物流形態が考えられます。しかし、これが最適といえる特定の物流形態はありません。

最も効率のよい物流形態を選択するのは、貨物を運ぶ輸入者自身です。ニーズにあった最も効率のよい物流形態を見極めることが"最適物流"を構築する目的です。

輸入の最適物流を構築する前提として、輸入契約の取引条件、特に、売主と買主の物流関係の費用負担範囲を理解しておくことが大事です。

今回は、取引条件ごとに売主と買主の費用負担範囲をご説明します。

国によって異なる法制度や商慣習があり、国際間で統一された商法はありません。貿易取引では、物流の面で、どこまでが輸出者の責任で、どこからが輸入者の責任かを明確にしておかないとトラブルの原因となります。そこで、国際商業会議所が世界共通の貿易条件として定めたのが、インコタームズ(注1)です。

注1:
インコタームズ(Incoterms:International Commercial Terms。国際貿易取引条件または交易条件) 国際商業会議所(ICC=International Chamber of Commerce)が1936年に定めた貿易条件の解釈に関する国際基準のこと。 元々、貿易取引は海上輸送のみでしたが、時代の変化で在来船輸送からコンテナ物流へ、さらには国際複合輸送や航空輸送へと発展してきました。そのため、この国際基準も実態に合うように幾度となく改正され、"Incoterms 2000"が最新版ですが、2011年1月より発効するのが"Incoterms 2010"です。

インコタームズが規定している貿易条件には13種類もあり、ここでは、日本でよく採用されている工場渡し、本船渡し、運賃・保険料込み、輸入国への持込み渡しの4種類についてご説明します。

インコタームズの概略は、こちらからPDF

1.EXW条件 (工場渡し)
ExWorksの場合、工場出荷時点で売主は貨物を引き渡しますので、輸出地の出荷工場から輸入地(日本。英文では省略)までの全区間、買主が費用を負担しています。買主(輸入者)は、輸出地での費用、国際運賃、輸入経費等を負担しなければなりません。

輸出地での費用には、貨物ピックアップ料、ターミナル料、輸出申告料、輸出梱包費等があります。国際運賃には、基本運賃、燃料割増料、為替調整割増料、セキュリティー割増料等があります。輸入地(日本。英語文では省略)に貨物(商品)が到着後の輸入経費には、輸入通関料、貨物検査料、ターミナル料、配達運賃等に加え、輸入関税と輸入消費税もかかります。

この条件は、買主にとって工場出荷以降、すべての物流を構築しなければなりません。特に、輸出地での手配は遠隔地のため大変なので、国際ネットワークをもった物流業者に相談することが肝要です。

2. FOB条件 (Free on Board:本船渡し)
FOBの場合、輸出貨物が本船の船側手摺を通過した時点(=本船に積み込まれた時点)で、輸出者の引渡し義務が完了します。この場合、輸出地費用は売主が負担し、国際運賃と輸入経費は買主負担になります。

ワンポイント:
米国では、港湾に面した場所からではなく、内陸の輸出地点から輸出するケースがほとんどです。インコタームス規定のFOB条件では、本船積込みまでのすべての費用を売主が負担しますが、 米国では内陸地点の"指定業者渡し"の解釈が行われています。つまり、空港や港湾で掛かるターミナル料などが輸入者に請求されるケースもよくあります。米国と取引される場合には、取引条件を再確認することをお勧めします。

3.CFR条件 (Cost and Freight:運賃込み) ・CIF条件 (Cost, Insurance and Freight:運賃・保険料込み)
日本到着までの全ての費用(輸出地費用、国際運賃)を売主が負担する場合で、貨物保険を付けない場合がCFR条件であり、保険込みの場合がCIF条件となります。

これらの条件は、買主にとって、物流構築をする手間が無く、便利に思われがちです。しかし、売主に丸投げするのと同じで、日本到着まで輸出地費用、国際運賃が妥当なレベルであるかどうかの検証をする必要があります。買主として、EXW条件と同様の物流構築を検討し、売主から提示される価格と比較することをお勧めします。

貨物保険についても注意が必要です。CIF条件では、売主が保険手配もしてくれるので手間が省けますが、当然、外国の保険会社との契約となります。日本の代理店がどこか調べておくことをお勧めします。代理店が無い場合もあり、保険クレーム処理に時間が掛かることがあります。できれば、輸入者自身で日本の保険会社と契約をするCFR条件をお勧めします。

4.DDP条件 (Delivered Duty Paid:関税込み輸入国持込み渡し)、DDU条件 (Delivered Duty Unpaid:関税抜き輸入国持込み渡し)
余り一般的な取引条件ではありませんが、買主側の現地指定場所への持込渡しの場合がこのケースとなります。輸出地費用、国際運賃、輸入経費等のすべての物流経費が売主負担であり、輸入消費税等の内国税も含め、輸入関税が支払済みか否かでDDP, DDUに分かれます。 この場合、買主は物流構築をする必要は無いことになります。


取引条件は、売主、買主の交渉で取り決められます。 初めて輸入取引される方にとっては、売主に物流構築を一任するCFR条件かCIF条件で始め、慣れてきた段階で、自分で全ての物流構築をするEXW条件に切り替えるのも一案かと思います。

 

輸出ビジネスにおけるクレーム回避とウィーン売買条約(その1)
この内容を印刷する2009年06月号
輸出ビジネスにおけるクレーム回避とウィーン売買条約(その1)
〜契約書の仲裁条項の留意点〜

株式会社パシフィック物産 国際取引コンサルタント 長光 正明

私は岡山を拠点に、地元企業向けに国際取引に関わるノウハウ指導や相談対応を行っています。先月号(2009年3月)のワンポイント・レッスンで、対中ビジネスのクレーム対策が紹介されていましたが、私はクレーム対応の観点で、国際条約や準拠法(各国の国内法)、契約書の仲裁条項等の留意点を解説したいと思います。

まず、私が関わった過去の事例を紹介します。日本メーカーと韓国バイヤー間の売買交渉中に、日本側がクレーム回避のために、準拠法と仲裁条項を規定した契約書(案)を作成、提出しました。その後、韓国側から次の代替提案(英文参照)が届きました。

<韓国側からの代替提案>
【Governing Law】
This Agreement shall be governed by and construed in accordance with the laws of Singapore, without reference to its conflicts of laws or its choice of law rules.

【Arbitration】
All disputes, controversies or differences which may arise between the parties hereto, out of or in relation to this Agreement, which cannot be settled amicably by the parties hereto without undue delay, shall be finally settled byarbitration at Osaka in Japan or at Seoul in Korea in accordance with the Japan-Korea Trade Arbitration Agreement of October 23, 1973. The award renderedby arbitrator(s) shall be final and binding upon both parties. The parties shall waive their right to any form of appeal, review or recourse to any state court or other judicial authority.

≪参考:和文・要約≫
【準拠法について】この合意は、シンガポール法に基づき法的な闘争や解釈をするものとします。

【仲裁について】
両者間で発生した論争や相違が解決できない場合、1973年10月23日付けの日韓商事仲裁協定に基づき、日本・大阪または韓国・ソウルでの仲裁により、最終決着するものとします。仲裁者によって提示された仲裁判断は、両者にとって最終的かつ拘束力のあるものとします。当事者は他の裁判所や司法機関への上告、再審、償還請求等の権利を放棄するものとします。

日本側からは、準拠法は日本法、仲裁機関は(社)日本商事仲裁協会を提示しましたが、韓国側からはシンガポール法と日韓商事仲裁協定を提示してきました。

これは、韓国側として、準拠法を取引相手国の日本法を嫌い、かつ自国の韓国法も交渉に時間がかかると考え、シンガポール法にしたものと思います。さらに、仲裁も日本商事仲裁協会を嫌い、また韓国商事仲裁審議会ともしないで、公平を図るため日韓商事仲裁協定によるとしたものと思います。なお、仲裁規定の最後にある「The parties shallwaive their right to any form of appeal, review or recourse to any state courtor other judicial authority.」は、裁定結果に不満を持つ当事者が、裁判所等への訴えを防ぐためのものです。

この韓国側の提案に合意した場合、準拠法は「国際私法(抵触法)のルール」に関わりなく、シンガポールの実体法(CISG*や商法や民法など)および手続法(民事訴訟法、仲裁法など)に準拠することに合意したことになります、また、仲裁合意は日韓商事仲裁協定によるとしているが、仲裁地をいずれにするか取り決めていないため、日本側が申立てる場合は、仲裁の手続きは韓国の韓国商事仲裁審議会の商事仲裁規則に従って、仲裁地は韓国・ソウルになります。他方、韓国側が申立てる場合は、日本の日本商事仲裁協会の商事仲裁規則に従って、仲裁地は日本・大阪になります。さらに、仲裁廷では仲裁人は両者が合意した準拠法のシンガポールの実体法で審理し、判断されることになります。

契約における「準拠法」の取り決めは、その準拠国の仲裁法が適用されることとなり、仲裁契約や仲裁手続きの準拠法決定の手続きが省かれ、当事者が合意した準拠法に準拠することができます。この事例の場合、準拠法が第三国法(シンガポール法)であるため、仲裁廷において第三国法(シンガポール法)を調べなければならず、当事者の国でするよりも、費用が余計にかかります。

*注: ウィーン売買条約(CISG:Vienna Sales Convention)
正式名称は国際物品売買契約に関する国連条約(United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods)。

日本では2009年8月1日よりCISGが発効され、準拠法を規定しなくても、CISGが適用されるので、準拠法条項を設けなくてもよいのではないかという議論がありますが、これは誤りです。CISGが規定(関与)していない事項もあるからです。CISGが規定する事項と規定しない事項を整理してみますと、以下のようになります。

1.CISGが規定(関与)する事項
(1)売買契約の成立
(2)売主と買主の権利と義務
(3)危険移転の時期
(4)契約違反に対する救済

2.CISGが規定(関与)しない事項
(1)契約又は慣習の有効性(契約の有効性とは、当事者の権利能力、錯誤、虚偽表示、   詐欺、脅迫等によって、契約が有効か否かを争う場合など)
(2)契約が売買物品の所有権に及ぼす効果
(3)その他CISGが関与しない事項(紛争解決の方法等、さらにCISGが不適用とする、船   舶の売買、消費者への売買、委託加工など)

準拠法の規定は、CISGがカバーしない事項を補完します。ここに、準拠法規定の意義があるのです。契約書の作成の必要性は言うまでもなく、準拠法および仲裁の規定は国際売買取引では常に配慮すべきポイントです。クレーム回避はこの点の考慮の有無が鍵となります。

対中輸出ビジネスの留意点
この内容を印刷する2009年03月号
対中輸出ビジネスの留意点
〜慎重な検討と準備を要する通関手続き、代金回収、契約書作成〜

才特国際株式会社 代表取締役社長 城島 由佳

私は2003年来、日中間のビジネス(貿易・企業設立等)を専門にお手伝いしている関係で、両国間を頻繁に往来しています。そこで、近年の中国ビジネス環境を踏まえ、外国企業、特に日本企業にとって留意すべき事柄をご紹介したいと思います。

1.中国ビジネス環境近年、中国政府は国内企業と外国企業の垣根をなくし、自由競争の市場を構築しようと外国企業に対する規制を緩和してきています。他方、中国市場でも、デジタルカメラ、家電、化粧品等の消費財では日本製品に人気があります。環境や省エネ分野の技術・製品では、日本とドイツに関心が高いです。

ビジネスパートナーとしての中国企業をみてみると、まず外資系企業は対応が迅速で、信頼性がありますが、中国での客層・市場は限られるように思います。但し、中国本土の中国人が香港で容易に会社を設立できることから、これら企業と他の外資系企業とは区別すべきでしょう。

市場の9割を占めるとみられる民営の中小企業の多くは貿易権を持たず、直接貿易取引ができません。そのため、トラブル回避のため、貿易権を有しているか否かを必ず確認すべきでしょう。貿易権の有無は、営業許可書で貿易業を確認するか、外貨口座番号を照会することで、確認できます。貿易権がない場合、貿易権を有する貿易会社を介しての取引となります。

国営企業では、50万元以上の設備を調達する場合は入札となります。国営企業との人脈作りや意見交換のため、欧米企業は欧米への視察旅行に招待しています。こうした事前の活動が入札に反映されるように思います。

2.対中輸出の留意点対中輸出ビジネスにおいて、通関手続きと代金回収についての留意点をご紹介します。

(1)通関手続き
(1)-1 原産地証明書の提出
中国の関税には、一般税率と最恵国待遇税率とがあります。日本からの輸入品は最恵国待遇税率が適用されます。この優遇関税率の適用を受けるには、輸入通関時に原産地証明書を提出する必要があります。この証明書の提出の遅れで、港に14日以上留め置かれると延滞金が発生します。

(1)-2 HSコードの確認
中国の関税率表は世界共通の「Harmonized Commodity Description and Coding System」に準じています。HSコードの中分類6桁は世界共通ですが、税率の認定は税関窓口の担当官が行います。また、輸出入制度の変更(通達)は税関掲示板に張り出されることから、こうした制度変更の情報の入手やスムーズな通関手続きを行うためにも、税関窓口に頻繁に通うことをお勧めします。

なお、税関での情報収集や問合せには、言葉の問題解消や人脈形成の観点から、通関業務について一定の知識がある中国人スタッフの活用をお勧めします。

1)-3 出荷の確認
船積みなしで船荷証券が出ることもありますので、必ず自分自身が現地で調査、確認することをお勧めします。その際、次の事項に十分注意してください。A.税関向けの説明書類の準備船積み前に、税関への説明資料として仕様書、取扱説明書、操作マニュアル等を準備することです。これら資料は、税関がCIF価格のチェック際の資料となり、スムーズな通関手続きを行うためです。
B.輸出梱包のパッキングリスト解体して梱包する場合、梱包ごとに全部品の明細をパッキングリストに漏れなく記載することです。パッキングリストの記載漏れは、貨物受け入れ検査に支障が生じます。

(1)-4 輸入関税の計算方法
関税はCIF価格をベースとしています。FOBベースの輸入の場合、税関が独自に加算し、課税額を決定しています。前述しましたが、関税率の認定は税関窓口が行うので、必ず事前確認することをお勧めします。

なお、中国国内で販売する、しないに関わらず、輸入品は増値税(仕入税*1)の対象となり、CIF価格に関税を加算した額に課税され、増値税は17%(08年12月現在)です。

また、特定商品14項目(*2)は消費税の対象となり、項目により異なる税率が設定されています。

*1 増値税には仕入税と売上税とがあり、中国国内での仕入れ、販売に課税されるもので、基本的に税務局によって徴収されます。輸入品は仕入税の対象となり、税関によって徴収されます。輸出品は売上税の対象外です。
*2 特定商品14項目とは、煙草、酒・アルコール類、化粧品、貴金属アクセサリー類・真珠・宝石、爆竹・花火、ガソリン、自動車タイヤ、オートバイ、小型自動車、ゴルフボール・用具類、高級時計、ヨット、木製割り箸、ソリッドウッド床板。

2)代金回収
(2)-1 分割払い
中国での決済方法は一般に、契約時1/3、出荷時1/3、入荷時1/3の3分割払いです。L/Cの欄には、これらのことが記載されていますので、注意が必要です。一括支払いを求める場合、中国側との交渉、合意が必要です。私の経験では、中国側はいろいろな理由をつけてくるため、かなり上手に対応しても、10%の代金は回収できないと思った方がよいでしょう。
また、外貨管理規制の強化(匯発[2008]56 号通達)により、大型プラント設備を除き前払い限度額は原則、輸入企業の直近12ヵ月の外貨支払い実績額の10%以内と規定されています。そのため、契約どおりの支払いができない事例も発生しています。

(2)-2 貿易権のない会社の海外送金
貿易権のない会社は外貨口座を持てないことから、代金支払いは、貿易権を有する中国企業を通して、海外送金することになります。

(2)-3 外貨を持ってない企業の海外送金
輸入代金支払いための外貨交換には、税関と銀行による貨物通関の認定を受ける必要があります。なお、契約書に前払い条項があれば、貨物通関の認定がなくとも、前金の外貨交換は可能です。

3.対中ビジネスの留意点
(1)中国輸出規制の事前確認
中国の輸出規制も頻繁に変更されています。委託加工等による中国からの輸出品については、事前に輸出規制に抵触するか否かを確認する必要があります。規制に抵触した場合、処分するにもコストが掛かります。制度変更に関わる諸手続きの変更は前述のとおり、税関掲示板を常時チェックすることが重要です。

(2)契約書の言語
中国語と日本語には、微妙なニュアンスの違いがあります。例えば、契約書作成に当たっては、両方の言語で契約内容を徹底的に照合することが重要です。あるいは、公平を期すため、英語による契約書作成も得策だと思います。大型機械の取引では、英文契約書を採用することが多いです。

(3)銀行の選択
中国では、これまで中国銀行、中国工商銀行、中国農業銀行、中国建設銀行を“国有四大銀行”あるいは“四大商業銀行”と呼んできました。中国郵政儲蓄銀行の登場で、中国の金融業界は“五大商業銀行体制”となりました。取引には、これら五大銀行のL/Cを使うのが一般的です。日本側からL/C発行の銀行を指定することも得策だと思います。

(4)契約交渉は慌てず、焦らず、根気よく
どんな場合でも慌てず、焦らず、根気よく、契約交渉することが重要です。

(5)ウィーン売買条約による影響
日本では、2009年8月1日によりウィーン売買条約(*3)が発効されます。同条約の第3部第39条で、商品の保証期間を2年と定めています。契約書に保証期間の明記がなければ、自動的に2年保証となります。そのため、日本でこれまで一般的な国際売買契約で適用されていたクレーム提起ができる期間は、商品の引渡しから1年間が2年間に変更されます。

中国の場合、操作説明書をよく読まないこともあり、操作ミスによる破損がありえます。また、2年近く使用した上で、故意的にクレームを提起する問題も増えると予想されます。売り主は十分注意する必要があります。

*3 ウィーン売買条約の概要(ジェトロ貿易・投資相談Q&Aより)

資源貿易に必要な基礎知識
この内容を印刷する2008年10月号
資源貿易に必要な基礎知識
〜取引の流れと略語を正確に理解していますか?〜

有限会社フォーカス・ビジネスプロデュース 代表取締役 大石達也

TTPPニューズレター2008年9月号で、TTPPを介したリサイクル原料や金属原料などの資源取引において、トラブルが多く発生しているとのこと。資源取引のトラブルに巻き込まれず、不要なリスクを回避するために、資源貿易の一般的な取引の流れと、その際に使われる主な略語をご紹介します。

金属・鉱物資源、食糧資源などの国際取引の特徴として、次の3点が挙げられます。第一に、金額が大きいこと。例えば、ターム契約(数カ月間などの一定期間、継続する長期契約)では、数千万から数億円の規模になることもしばしばあります。第ニに、専門ブローカーやエージェントなどが介在する場合が多いこと。第三に、ボリュームが大きいため、FOB契約の際は専用船のスペースを傭船することがあります。

資源取引は従来、専門業者による売買が一般的でした。近年、需要増大、規制緩和、インフラの整備、インターネットの普及等により、より多くの貿易従事者が資源取引にアクセスできる環境が整いつつあります。その機会が増えるのと合わせ、資源貿易の初心者につけこむ詐欺など、リスクも増大しているのが現状です。

従って、売り手・買い手の双方で、リスクを軽減するために、一般的なコンテナ・ベースでの取引と比較して、より慎重な手続きが求められます。別の見方をすれば、資源貿易の複雑な手続きに慣れているかどうかによって、売り手は買い手の信頼性をスクリーニングすることにも繋がっています。では、資源取引の流れの一例をご紹介します。

【ターム契約における取引の流れの一例】
(1)買主:LOIおよびBCLを送付する。
(2)売主:FCOを送付する。
(3)買主:FCOにサインし、売主に返送する。
(4)売主:契約書ドラフトを買主に送付する。
(5)買主:契約書ドラフトにサインし、売主に返送する。
(6)買主:売り主に対して、POPを要求する。
(7)買主:SBLCまたはBGを開設する。
(8)売主:PBを設定する。
(9)売主:契約条件に従い、船積み出荷する。(買主の出荷立会いを認める場合も有り)
(10)買主:契約条件に従い、代金を送金する。

初心者にとって最も分かりにくいのが、LOI、BCL、FCO等の略語です。次に、それぞれの略語についてご説明します。

【略語の説明】
1)LOI = Letter of Intent
買い主が商品購入の意思を表明するレターで、明記される内容は商品名、商品仕様・原産国、数量、購入契約の期限、希望価格、取引条件(FOB、CFR、CIFなど)、出荷希望日、支払方法、LOIの有効期限など。
一方、売り主側から、買い主の支払能力を調べるために、銀行名、口座番号などの開示、および“Soft Probe”を行うことの了解を求められる場合があります。“Soft Probe”とは、売り主の取引銀行を通じて、買い主の取引銀行にコンタクトし、買い主の支払能力を簡易調査する手続きを言います。

2)BCL=Bank Comfort Letter (Bank Capability Letter)
買い主の取引銀行が売り主に宛てて発行するレターで、該当する取引について、買い主が十分な支払能力を有することを証明する内容になっています。売り主からBCLを求められる時期は、LOIの段階や本契約締結時など、いくつかのケースがあります。

3)FCO=Firm Corporate Offer (Full Corporate Offer)
売り主が提示する取引の内容詳細および最終価格等の正式なオファーです。買い主はこれらの条件に承諾する場合、署名し、売り主に返送します。その後、売り主から本契約のドラフト(案)が送られてきます。取引によっては、FCOのプロセスを経ずに、直接本契約の締結交渉に入る場合があります。

4)POP=Proof of Product
売り主が買い主の支払能力を重視するのと同様に、買い主にとっては、売り主が本当にその商品を所有しているのか、あるいは売買する権利を持っているのかが重要なポイントになります。商品の所有権、売買権利の確証を得るための証拠書類をPOPと言います。
具体的には、公的機関の発行する輸出ライセンス、倉荷証券(Warehouse Receipt)、独立第三者認証機関による検品結果証明書などがあります。ただし、これらの証拠書類が本物かどうかの見極めも必須です。
また、このプロセスをより確実に行うために、売買双方の取引銀行を経由して、POF(=Proof of Funds/買い手の支払能力を証明する証拠書類)とPOPを取り交わす方法もあります。

5)BG=Bank Guarantee、SBLC=Stand By Letter of Credit、PB=Performance Bond
・BGは、その名のとおり銀行保証で、買い主の売り主に対する債務の支払いを銀行が保証します。
・SBLCは、通常のL/C(Letter of Credit)とは異なり、船積書類の添付条件のない特殊な信用状(クリーン信用状の一種)で、信用状の形式で発行される銀行保証と考えられます。
・買い主の債務不履行に際しては、BG、SBLCともに、発行銀行が売り主に対して支払いを保証します。
・PBは、「契約履行保証」と訳されます。売り主が買い主に対して契約通り輸出を履行することを担保するために、輸出価格の一定率(例えば2%)を、契約不履行時に買い主に対して支払うことを保証するものです。これにより、売り主による契約不履行が発生した際、買い主はそれまでに要した費用を補填することができます。具体的には、BGやSLBCといった形で、売り主から買い主に設定されます。

【最も大切な留意点】
取引の流れには、上記の他にも様々なバリエーションが考えられます。また、技術用語など、その業界(資源)に特有な専門用語も使われます。従って、資源取引で最も大切なポイントは、まずはその商品について十分理解しており、売り主から提示される取引の各プロセスを完全に理解し、取引の裏に潜むリスクについても確実に把握することができるかどうかです。もし、困難な場合には、敢えてこのような取引には携わらないようにするか、あるいは専門家(専門商社など)に任せることをお勧めします。

以上、資源取引で必要とされる基礎知識の一部をご紹介しました。実際の取引では、個々の業界、取引に特有な流れ、用語の解釈について、必ずご自身で確認し、ご自身の責任において取引を行ってください。

国際輸送における梱包材規制とその対応策
この内容を印刷する2008年08月号
国際輸送における梱包材規制とその対応策
〜現地の規制事情の調査と、梱包条件の取り決めが大事〜

有限会社プロアイズ 代表取締役  吉冨 成一

輸入貨物の非加工木製梱包材(*注1)から有害なマツクイムシなどの病害虫が侵入する恐れがあります。海外の病害虫から、自国の農業や自然環境などを保護するため、世界各国は国際植物保護条約(IPPC)(*注2)を採択しています。

*注1 非加工木製梱包材
貨物の木箱梱包、パレットなどの輸送用具、ダンネージ材が対象。ダンネージ材は、コンテナ内で貨物が移動しないように固定するため、衝撃吸収材、支柱、補強に用いる木製材料資材のこと。他方、人工合成または加熱、加圧等の加工を施した合板、木製材料、プラスターボード、繊維板などは対象外。

*注2 国際植物保護条約会議(International Plant Protect Convention:IPPC)
国連食糧農業機関(FAO)は、IPPCで採択した非加工木製梱包材に対する検疫措置について、植物衛生措置に関する国際基準ISPM NO.15(国際貿易における木製梱包材規制のための国際的基準ガイドライン)を規定。(ISPM=International Standard for Phytosanitary Measuresの略)

国際植物保護条約では、国際輸送に使用される梱包材に対し、消毒基準を設け、消毒処理済みマークの表示方法等を規定しています。特に、病害虫が潜みやすいとされる針葉樹製梱包材については、熱処理または臭化メチルくん蒸処理を行い、処理済み証明書を輸入時に提出することを義務付けています。

EU、米国、豪州、中国、韓国など多くの国で、この植物検疫規制が実施されています。規制実施の各国詳細は、下記サイトを参照願います。

社団法人日本荷主協会 「各国ISPM No.15関連情報

ご参考までに、輸出の場合と輸入の場合で、よくあるトラブル事例を紹介します。

【事例1】植物検疫規制国へ消毒処理されていない材木を使用した梱包での輸出輸出先現地での通関に非常に手間取るだけでなく、場合によっては、輸入禁止措置などの規制により、日本にそのまま返送されることもあります。

<対応策>
輸出商品の梱包がカートン入りのため、この規制には該当しないと思いがちですが、複数カートンを積載する輸送用具に使用されるパレット、スキッドなども、植物検疫規制の対象となりますので注意が必要です。特に、生産工場で輸出梱包まで完了する場合、輸出先の現地規制事情について、十分調査しておくことをお薦めします。

【事例2】消毒処理済み表示マークのない木製梱包材での輸入
日本も、木製梱包材について植物検疫の国際基準No.15を採択しているため、消毒処理の要件を満たしていない場合は、輸入者は輸入検疫を受け、廃棄・くん蒸処理などの消毒命令に従う義務があります。輸入検疫を受けないと輸入通関はできません。

輸入検疫で病害虫が発見され、廃棄・消毒命令に違反した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる場合もあります。

<対応策>
輸入契約を締結する際に、契約梱包条件として、規制対象外の合板使用を依頼するなど輸出相手先と事前に取り決めておくことをお薦めします。

【参考】
  農林水産省・植物防疫所 「木材こん包材の輸出入」

社団法人全国植物検疫協会

中国での加工貿易(その3)
この内容を印刷する2008年05月号
中国での加工貿易(その3)
〜外資系企業の経営難〜

才特国際株式会社 代表取締役社長 城島 由佳

「加工貿易禁止類商品目録」統合(2007年第17号公告)の記者会見時(2007年4月10日)、中国商務部によれば、「今後、マクロ調整政策、産業政策、環境保護の観点から、関連部門と連携し、加工貿易の商品分類管理制度を完成させ、マクロ経済動向とHSコードの調整に基づき、毎年年初に“加工貿易禁止商品目録”を更新する」と述べています。

日本企業は香港や台湾の企業よりもハイテク技術を持ち、高付加価値商品を生産することができます。中国政府も今後、省エネ、省資源、環境保護に配慮した、高度で最新の技術を有する企業に対しては、優遇策を継続し、急速な産業構造の転換を図ろうとしています。

1.外資企業にみる経営難や倒産
加工貿易の抑制策で最も影響を受けているのは、珠江デルタにある香港や台湾の企業です。中でも、化学繊維製品やプラスチック製品などの労働集約型産業が多いです。

2007年7月17日に香港政府の諮問機関である大珠江デルタ商務委員会は「内地加工貿易政策が香港に与える影響」という研究報告の中で、珠江デルタに投資した5万7,500社の香港企業のうち、1万社以上が現在、操業停止や規模を縮小していると指摘しています。

深センの台商会長黄明智氏によれば、深センにある台資企業4,000社は現在、急激な変化に対応できず、約3割の企業は今後1、2年間で、倒産やその他の地域への移転を余儀なくされるとみています。

日本企業でも紙製品、電気製品、自動車部品、電子部品、化学繊維などの加工製造業が影響を受けています。特に、中小企業の現地法人では、コスト増による利益の縮小で、経営が難しくなる可能性も生じています。

中国の加工貿易に従事している従業員数は3,000万〜4,000万人で、中国第2次産業の就業者数の20%を占め、関連企業も含めると5,000万〜6,000万人とみられます。企業の倒産や移転には、従業員の解雇が大きな問題になりつつあります。これを防ぐため、2008年1月に新しい労働契約法が施行され、従業員の解雇に厳しい制限が設けられました。

2.加工貿易企業の対応
加工貿易企業の対応策として、次の措置があげられます。
1)委託企業と共にコストを分担し、輸出による損失を調整する。
2)資産管理方式の改善、物流管理方式によって、コストを抑える。
3)新製品の開発や自社ブランドの確立などによって、製品の付加価値を高める。
4)中国国内の安い代替部品を使う。
5)東部地区から中西部地区、あるいはベトナムなどの低コスト地域に移転する。

中国での加工貿易(その2)
この内容を印刷する2008年04月号
中国での加工貿易(その2)
〜加工貿易抑制策の企業への影響〜

才特国際株式会社 代表取締役社長 城島 由佳

中国で加工貿易を行う際、制限類に指定された商品の場合、輸入原材料・部品に対する輸入関税とその増値税を徴収しない代わりに、管轄税関に対して、荷受人が保証金の積立て(納付)を求められることがあります。企業の資金繰りを軽減するため、この保証金の納付に代わり、税関指定の中国銀行支店が加工貿易企業の信用を基に、保証金の担保者となり、“銀行保証金台帳”を発行します。税関は輸入原材料・部品とその輸出製品を照合し、総合的に管理をする制度が『銀行保証金台帳制度』です。

加工貿易抑制策で、この『銀行保証金台帳制度』の便益措置が変更されました。今回はこの変更制度とその影響を解説します。

1.保証金の徴収強化
『銀行保証金台帳制度』では、税関による企業分類ランク(*1)や産業分類等により、実際の関税・増値税額相当の担保金を輸入申告毎に税関に納付するか、あるいは帳簿上で処理にするかが異なります。この制度における「空転」とは、銀行保証金台帳制度を利用し、保証金が徴収されません。一方、「実転」とは、銀行保証金台帳制度を利用するが、保証金が徴収されます。

(*1)税関による企業分類ランクはこちらPDF (PDFファイル)

「加工貿易制限類商品目録」の公布(2007年7月)により、加工貿易の経験があり、行政処分を受けていないA類、B類の企業に対しも、制限類商品の加工貿易は「実転」の対象となり、保証金が徴収されることになりました。抑制策が講じられるまでは、優良なA類企業には「空転」が適用され、保証金無しで加工することができました。

この保証金の計算方法には、次の3種類があります。
1)輸入制限類: 保証金=(輸入関税+輸入増値税)×A類、B類企業50%:C類企業100%
2)輸出制限類: 保証金=保税輸入原材料・部品登録総額×(制限類商品輸出登録額÷加工貿易輸出商品登録総額)×総合税率(22%)×A類、B類企業50%:C類企業100%
3)輸出入制限類: 輸入制限類と同様の計算方法。

2.中西部地区への企業移転を狙う
制限対象品目を大幅に増やしたことにより、加工貿易企業の多くが保証金を支払うことになりました。これを見越して、税関総署は商務部などの関連部門とともに、『銀行保証金台帳制度』の改正(*2)を行いました。

改正後、東部地区では、保証金納付が不要であったA類企業も、B類企業と同様、保証金50%を納付することになりました。輸出制限類商品の保証金は保税輸入材料全般に課される輸入税額に見合う金額となるため、企業の資金立替負担は輸入制限類商品よりも大きくなります。

他方、中西部地区では、A類とB類の企業に対し“銀行保証金台帳”の「空転」管理が継続されることになりました。これにより、B類企業もA類企業と同様、保証金の納付が免除されます。この優遇策により、東部地区から移転してくる企業も増えています。

(*2)改正『銀行保証金台帳制度』の詳細はこちら (PDFファイル)

中国での加工貿易(その1)
この内容を印刷する2008年03月号
中国での加工貿易(その1)
〜加工貿易の奨励策から抑制策への大転換〜

才特国際株式会社 代表取締役社長 城島 由佳

中国は、加工貿易の奨励策を背景に、加工貿易輸出入総額は1981年の25億米ドルから2007年には9860億米ドルに増加しました。その額は2007年の中国対外貿易輸出入総額の45.4%を占め、中国経済を支える重要な柱となっています。

しかし、近年、中国政府はこうした政策を見直し、2003年から加工貿易禁止類対象を増やし始め、さらに2005年12月、2006年11月、2007年4月と12月と、4回に渡り「加工貿易禁止類商品目録」公布し、大幅に禁止類を増やしました。さらに、2007年7月23日「加工貿易制限類商品目録」を公布し、新たに制限類対象1853品目(HSコード10桁)を追加し加工貿易の抑制を強化しています。

私は日本企業向けに中国ビジネスを支援させていただいておりますが、中国加工貿易の政策転換の背景、加工貿易抑制策の企業への影響、加工貿易への対応策を、3回に分けて解説させていただきます。

1.進料加工と来料加工
海外から中国に加工生産を委託する場合、“進料加工”と“来料加工”の2つのタイプがあります。“進料加工”は、原材料や部品等を有償で輸入し、その代金を外貨で対外支払いをします。加工した製品ないし半製品を国外に輸出あるいは中国国内に転廠*し、その輸出代金を受領します。“来料加工”は原材料や部品等を無償で輸入(発注者からの提供)し、加工生産品の全てを発注者向けに輸出します。

*転廠(深加工結転)とは、加工貿易保税貨物を加工後に、他の保税貨物の工場に移動して、さらに加工を施し、最終的に中国国外へ輸出するという方式を指しています。

2.加工貿易の禁止品目と制限品目
加工貿易の規制品目は“禁止類”、“制限類”、“許可類”の3つに区分され、輸入禁止(制限)、輸出禁止(制限)、輸出入禁止(制限)に分けられています。
“禁止類”は国際条約で禁止されているものや、高エネルギー消費、高汚染の商品などが対象となっています。“制限類”は内外価格差が大きく、かつ税関が監督管理しにくい輸入原材料商品に加え、一部高エネルギー消費、高汚染の商品も追加されています。なお、“禁止類”、“制限類”以外の全ての品目は“許可類”となりますが、許可の認定取得は不要です。

◆近年に発表された加工貿易“禁止類”、“制限類”の商品目録

公布年月 | 公布内容 |                     品目数
-------------------------------------------------------------------
2005年12月 「加工貿易禁止類商品目録」公布(2005年第105号公告)
2006年11月 「加工貿易禁止類商品目録」追加(2006年第82号公告) 804品目
2007年4月 「加工貿易禁止類商品目録」統合(2007年第17号公告) 1140品目
2007年12月 「加工貿易禁止類商品目録」追加(2007年第110号公告) 589品目
2007年7月 「加工貿易制限類商品目録」追加(2007年第44号公告) 1853品目
出所:中華人民共和国商務部

注1.2005年12月と2006年11月の公布されたものは、2007年4月公布されたものに追加品目と共に統合されました。
注2.中国語版のため、文字化けしている場合があります。また、日本語版はありませんが、HSコードで商品の照合ができます。

3.加工貿易抑制策の背景
加工貿易抑制策の背景には、次の5つの要因が考えられます。

1)貿易黒字を縮小させるため
ここ数年、中国の貿易黒字(2007年過去最高2622億米ドル)が激増し、人民元の切り上げ、インフレへの圧力が強まり、中国経済に対し、悪い影響を及ぼす問題が生じてきました。この貿易黒字を縮小させるため、加工貿易の抑制策を強化するほか、輸出に係る増値税の還付率引き下げなどが施行されています。

2)加工貿易のグレードアップ
中国の加工貿易企業の構造を適正化するために、付加価値の低い商品や、加工技術レベルの低い商品を生産する企業を抑制し、加工貿易をグレードアップさせ、企業の社会的責任を強化させるとともに、企業の従業員の最低賃金、社会保険、生産設備等の各方面での改善も狙っています。

3)地域間の経済格差を無くす
改革開放後、中国の沿海地域(東部地区*1)は地理的有利性を生かし、目覚しい経済発展を遂げてきました。加工貿易では、同地域がかなりのウェイトを占めています。一方、内陸地域(中西部地区*2)は経済発展が遅く、加工貿易でのウェイトは2%弱に止まります。このような地域間の経済格差は無くすことが、中国政府の最重要課題となっており、加工貿易を内陸地に移転させる政策が取られています。

*1 東部地区:北京市、天津市、上海市、遼寧省、河北省、山東省、江蘇省、浙江省、福建省、広東省の10省(直轄市)によって構成されています。
*2 中西部地区:東部以外の22の省、自治区、直轄市を指します。

4)環境保全
著しい経済発展を遂げた中国は、大気汚染、環境破壊が大きな社会問題になっています。今まで容認されてきたエネルギー大量消費型、環境汚染型、資源使用型の企業に対し、「加工貿易禁止商品目録」を通して、厳しい制限を設けようとしています。

5)主導権を外資企業から中国企業に
加工貿易はこれまで外国企業(外商投資企業)主導で行われ、主要な市場や販売ルートも外資が掌握していました。中国企業の参入のチャンスを増やすため、中国企業における技術のレベルアップや企業の発展を改善することが、この抑制策の重要な目的にもなっています。

貿易コンプライアンスのポイントと実務的対応(その3)
この内容を印刷する2007年10月号
貿易コンプライアンスのポイントと実務的対応(その3)
〜コンプライアンス管理を適切に実施できる輸出管理体制が必須〜

前回の「リスト規制」に続き、今回は「キャッチオール規制」の実務対応について説明します。

(1) 「キャッチオール規制」 の判断方法
2001年米国での9.11テロ以降、国際的な協調体制のもと再発防止策が講じられてきました。日本でも輸出貿易管理令及び外国為替令が改正され、大量破壊兵器などの開発を助長しないように、「キャッチオール規制」が2002年4月から導入されました。食料品・木材等ごく一部の商品を除くほとんどの商品が対象となっており、「全てを捉える」ための規制です。(注1)

注1: キャッチオール規制対象品目(経済産業省)

前回ご説明した「リスト規制」に該当しない場合には、「キャッチオール規制」の判断作業に進みます。用途と需要者を確認し、輸出貨物・技術が大量破壊兵器などの開発に用いられるか、またはその懸念があるか否かを判断する輸出管理規制です。

次のいずれかに該当すると判断される場合には、経済産業大臣への輸出許可申請ないし役務取引許可が必要となります。
1)日本から輸出され、あるいは、提供される貨物・技術が最終的に大量破壊兵器等の   開発等に使用されることを輸出者ないし提供者が知っている。
2)日本から輸出され、あるいは、提供される貨物・技術を受け取る人や、最終的に使   用する人が大量破壊兵器等の開発等を行ったあるいは行うことを輸出者ないし提供   者が知っている場合であって、かつ輸出され、あるいは、提供される貨物・技術が   それらの用途に使われる懸念が払拭できない。

これをチェックするには、次の手順で確認します。
1)輸出管理令別表1の16項に指定されたHS番号に該当するかどうか、
2)輸出先の国が、輸出管理令別表3に指定された以外の地域かどうか、
3)輸出貨物の用途は大量破壊兵器等の開発等かどうか、
4)輸出先企業が規制対象の外国ユーザーリストに該当していないかどうか、核兵器の   開発を行ったあるいは行うことが判明しているかどうか、
5)輸出貨物が大量破壊兵器等の開発等に用いられる懸念がないことが明らかかどうか   (注2)

注2: キャッチオール規制:「おそれがない」ことが「明らかなとき」を判断するためのガイドライン(経済産業省)
輸出者等において、輸出しようとする商品がキャッチオール規制の対象となるかを確認すべき事項を紹介。このページ末尾には、社内審査用の『用途需要者明らかガイドラインチェックリスト』PDF版がある。

実際のビジネス現場では、用途と需要者の確認をしてから契約をしているケースは少ないように思われます。輸出企業として、少なくとも、規制対象国への転売禁止の契約条件を明記するなど、最低限のコンプライアンス管理をすべきだと思います。

(2)貿易コンプライアンス対策事例
輸出当事者として考えておくべき、コンプライアンス対策事例を列挙します。
【対策1】契約締結時点で考慮すべきこと
経済産業省に申請する案件全てが許可になるわけではなく、この点を輸出リスクとして考慮しておくことが重要です。安全保障貿易管理は、国家の安全と平和に大きく係わるものであり、安全保障上の懸念は安全保障環境の変化に応じて変化するため、前回許可された際と同じ条件で今回も許可されるという保証はありません。

【対策2】法令違反のリスク
輸出許可を取得する必要があったにもかかわらず、無許可で輸出を行った場合、行為者個人に対する刑事罰(罰金、懲役)、法人企業に対しての刑事罰(罰金)及び行政制裁(貨物輸出・技術提供の禁止)が課せられる場合もあります。また、企業イメージの低下や世間一般からの非難を招き、企業自身の社会的信用も傷つきます。

これまでの3回シリーズだけでは、輸出管理規制に対応する実務を十分説明することはできませんでしたが、外為法違反を起こさないよう、輸出者には必要最低限の輸出管理、少なくとも貿易コンプライアンスを正しく認識することが重要なことをご理解いただけたら幸いです。

(有限会社プロアイズ 代表取締役 吉冨 成一)

貿易コンプライアンスのポイントと実務的対応(その2)
この内容を印刷する2007年09月号
貿易コンプライアンスのポイントと実務的対応(その2)
〜適切な判断が難しい「リスト規制」の商品特定〜  

前回は、輸出当事者の適切な判断が貿易コンプライアンス(輸出入法規制遵守)の基本となることをご説明しました。今回は、輸出許可手続きが必要とされる「リスト規制」に該当するか否かを判断する方法についてご説明します。

【輸出貿易コンプライアンス管理・フローチャート】PDF

「リスト規制」対象商品は、『輸出貿易管理令別表第1』に記載されています。15項に分類された商品カテゴリーを特定し、さらに細分化された商品品目のどの項番に該当するかを判断します。

しかし、細分化された商品品目から、輸出商品がいずれの項番に該当するかを的確に特定するには、専門知識を必要とします。特定すべき商品品目が単一である場合は判断が比較的容易ですが、多くの商品は複数のカテゴリー・商品品目にまたがっています。商品名称からは想像もつかないようなカテゴリー、商品品目が対象となる場合があるので適切な項番を判断するのが難しいのです。

そこで、輸出管理が必要かどうかのガイドラインを示している『輸出統計品目表』の“輸出規制情報”を利用し、該当すると思われる項番を『項目別対比表』に沿って判断する方法があります。

【輸出統計品目表サンプル】PDF 出所:日本関税協会

【輸出令別表第1と関係省令関連表サンプル】 出所:安全保障貿易情報センター

(1)『輸出統計品目表』の“輸出規制情報”税関に輸出申告する時、輸出管理や通関統計などのデータにするため、すべての貨物はHS番号(注1)に振り分けられます。輸出者から委託された通関士は「輸出統計品目表」(日本関税協会発行)に則り、HS番号の付番作業をします。

「輸出統計品目表」には、HS番号ごとに“輸出規制情報”として、対象となりうる項番が記載されています。“輸出規制情報”は通関士や税関当局が蓄積したデータを基に作成されていますので、初期判断の基準とすることができるのです。ただし、この規制情報はあくまでも参考情報であり、輸出者自身が法令規定を精査の上、判断しなければなりません。

【注1】HS(Harmonized Commodity Description and Coding System)番号
商品品目を成分ごと、用途ごとに分類した世界基準コードで貿易統計品目番号のこと。

(2)項目別対比表『項目別対比表』(安全保障貿易情報センター発行)は、『輸出貿易管理令別表第1』の1項から15項までの項番を網羅した判断資料で、“パラメータシート”とも称します。

輸出規制情報に記載されている対象項番に該当する『項目別対比表』を精査し、「該当」と判断した場合、経済産業省に『項目別対比表』を添付の上対し、輸出許可申請(注2)を行います。(その際、輸出許可申請を行う貨物・役務の内容によっては、項目別対比表等の添付を求められることがあります。)経済産業大臣から承認された「輸出許可書」を受領後、税関宛に輸出申告をします。

「非該当」、「対象外」と判断した場合、経済産業省への輸出許可申請は不要ですが、「非該当証明書」を作成、いつでも判断根拠を開示できるようにしておくことも、輸出当事者としての責務です。

なお、自社で製造していない購入品の場合、製造業者に対し該非判断情報の提供を求めるのが一般的です。この場合、輸出当事者は、製造業者発行の判断情報の内容をよく理解した上で、輸出者として最終判断すべきです。

【非該当証明書サンプル】 PDF出所:経済産業省

【輸出許可申請書サンプル】PDF 出所:経済産業省

【輸出申告書】PDF出所:財務省税関様式 C-5010

判断がつかない場合、輸出貨物のカタログなど貨物の特性や仕様を示す書類やHS番号等を準備し、経済産業省安全保障貿易審査課、または各地域経済産業局に相談することができますが、相談内容が明確にできる資料(輸出貨物のカタログ・技術的仕様、HS番号等の判断材料)を準備する必要があります。但し、あくまでも該非判定は輸出者が行うものであることに留意が必要です。

自分で輸出する貨物がどのHS番号に該当するのか、またどのような特性を有しているのか等を的確に把握し、輸出許可申請の判断ロジックのキーにすることが、適切な輸出管理につながることをご理解いただけたと思います。

【注2】輸出許可申請窓口
輸出許可の申請窓口は貨物や仕向地により異なりますので、次の『安全保障貿易管理』ホームページでご確認ください。

(有限会社プロアイズ 代表取締役 吉冨 成一)

貿易コンプライアンスのポイントと実務的対応(その1)
この内容を印刷する2007年08月号
貿易コンプライアンスのポイントと実務的対応(その1)
〜貿易コンプライアンスの管理責任は、輸出当事者の責務〜 

輸出手続きを税関で行いますが、輸出取引に一定の法的規制があることをご存知でしょうか。

一部の貨物・技術の輸出については、経済産業省で事前に許可・承認を得た上で、税関で輸出審査が行われています。許可が必要な場合には、輸出企業として、貿易コンプライアンス(注1)の重要性を正しく認識の上、輸出許可を取得する必要があります。不正輸出が意図的でないにしても、企業の輸出管理体制の在り方が問われることもあります。

大手企業であれば、社内に輸出管理室等の貿易コンプライアンス専門の部署を設置して対応しています。それでも、国際的な安全保障貿易に抵触した不正輸出を理由に、大手企業が『外国為替および外国貿易管理法(外為法)』違反で摘発される事件が相次いで生じています。専門部署の設置が困難な中小企業では、対応に苦慮しているケースが多く、通関業者任せのケースも多いと思われます。

正しく理解し、対応することが困難な貿易コンプライアンスのうち、輸出の安全保障管理制度を焦点に、最低限理解しておくべきポイントと実務対応、また、考えておくべきリスク対策について、3回シリーズでご紹介したいと思います。

(注1)貿易コンプライアンス
コンプライアンス(Compliance)=「規則や要求に従うこと、(規則などの)順守、(規則などに対する)服従、準拠、従順、整合性」の意味。対象範囲が非常に広い言葉です。貿易業界では輸出入法規制を遵守するという意味で、“貿易(トレード)コンプライアンス”と限定した言い方をします。

【ポイント1】「リスト規制」と「キャッチオール規制」について
日本の輸出入取引は原則自由ですが、全くの自由ではありません。外為法では、「国際的な平和と安全の維持を妨げるものとして、特定の貨物・技術を輸出しようとする者は経済産業大臣の許可を受けなければならない」と規定しています。
安全保障上の観点から、『リスト規制』(輸出貿易管理令・別表第1の1-15項)と『キャッチオール規制』(同・別表第1の16項)により輸出管理が行われています。『リスト規制』では、輸出許可手続きを必要とする品目を提示し、対象となる貨物・技術が仕様に応じて定められています。また、『キャッチオール規制』は「大量破兵器等の開発等」に“転用されるおそれのある汎用品”の輸出を規制するもので『リスト規制』の補完的作用を担っており、食料品や木材等を除くほとんど全ての貨物・技術を対象とし、輸出者自身がその用途・輸出先国・輸出先企業を確認した上で許可が必要かどうか判断するものです。輸出される商品の用途が、間接的にでも軍需用途に転用できると判断される場合には、経済産業省の輸出許可が必要となります。

【ポイント2】輸出管理の判断責任は、輸出者自身
一般に、税関への輸出申告を通関業者に代行委託をしていますが、その際の輸出法規制遵守は、輸出当事者の責務です。輸出者自身が貿易コンプライアンスの自主管理で適切に判断しなければなりません。法的規制の認識不足から、委託業者に丸投げしたり、勝手に判断したりしないことが重要です。認識不足による外為法違反には、次のケースがあります。
・法令を知らなかった。
・自社製品は、高度な技術を用いた貨物ではないので、許可が不要と思った。
・当該貨物について知識がないメーカーや委託通関業者に該非判定を依頼し、間違った判定結果を鵜呑みにしてしまった。
・海外にある自社子会社への輸出は許可が不要と思った。

※次のURLから、輸出管理の仕組みがわかります。

安全保障のための輸出管理とは<PDF版>(METI貿易管理部 2004年1月)

安全保障貿易管理ホームページ

(有限会社プロアイズ 代表取締役 吉冨 成一)

国際取引の契約締結前に検討すべき契約条項
この内容を印刷する2007年05月号
国際取引の契約締結前に検討すべき契約条項
〜最大のリスク回避策はビジネス当事者自身によるリスク想定から〜

慎重に検討したつもりでも、売買契約がさまざまな理由で契約不履行となり、損害賠償請求や契約解除のトラブルになることがあります。その場合、当事者間で紛争解決をどのような手段で、どこで解決するかを争うことになりますが、契約締結時に最悪の事態を想定して、契約条件として取り決めておくことが大事になります。

国際取引の場合、どこの国の法律が適用されるかにより、損害賠償の算定額が異なるなど、予期しない損害賠償リスクを伴うからです。

契約締結段階で、十分に検討した商流構築をしておくことが最大のリスク管理となります。また、ビジネスを最もよく理解し、訴訟対応やリスク対策といったリスクを予測できるのは契約当事者であり、契約法務の専門家ではありません。

今回は、契約締結時に必ず検討しておくべき契約条項のうち、リスク比率が比較的高い不可抗力条項、紛争解決条項(仲裁条項、準拠法条項)をご紹介し、予測されるリスク事例と対応策をご説明します。

【事例1】不可抗力を理由に契約不履行となるケース
不可抗力の事由が具体的に契約書に明記されていないため、契約不履行となっても不可抗力を理由に免責を主張され、紛争となるケースがよくあります。

<対応策>
契約当事者である売主、買主いずれも契約条件どおりに義務を遂行できない場合、被害を受けた側から契約違反として、損害賠償や契約解除の請求を受けることになります。

いずれの契約当事者も商習慣上一般的に求められる注意義務を尽くしても、義務を果たせないような止むを得ない事情を“不可抗力”と規定し、契約義務を軽減または免除するのが一般原則です。どのような場合を“不可抗力”と認めるか、またその場合の免責条件を明確にしておく必要がありますが、法律上必ずしも明確にはなっていません。

そのため、契約当事者間でできるだけ具体的に“不可抗力”の事由を取り決めておくことが必要となります。カントリーリスクや契約相手先などを考慮した上で、考えられる“不可抗力”条項を盛り込むことで、リスク回避につながります。

一般的には、台風、地震などの天変地異、戦争・ストライキや政府命令等に起因した船積遅延・不着や引渡不能など契約不履行について、売主が責任を負わない旨の規定をします。同時に、不可抗力が継続する間、売主の船積履行を猶予するとの規定や、不可抗力が長期間にわたる場合、契約を終了できると規定しておきます。

【事例2】契約履行に誤解や疑義が起き、紛争となるケース
契約当事者は、契約に定められた自己の義務を誠実に履行することになりますが、当事者間で契約条件の解釈で誤解や疑義が生じ、紛争に発展するケースがよくあります。

<対応策>
損害賠償請求や契約解除などのトラブルが発生した場合を想定して、紛争解決をどのような手段で、どこで解決するかを取り決めておくことが必須となります。解決手段としては、裁判または仲裁が考えられますが、国際条約により、仲裁判断を多くの国で執行できること、短期間で解決できること等利点の多い仲裁を、国際契約の紛争処理方法として選択するケースが一般的であり、仲裁条項が利用されています。

契約当事者が日本国籍の場合、日本の仲裁機関である国際商事仲裁協会を指定した仲裁条項で、契約先と交渉することをお勧めします。いずれの当事者も自国での仲裁を主張し、仲裁地の合意ができない場合には、両当事国の仲裁機関を利用するといった折衷案で取り決めを行います。

【事例3】 契約当事者それぞれに有利な準拠法を主張し、紛争となるケース
契約当事者それぞれが自国の法律を準拠法としておく方が便利で無難なため、お互いに折り合いが付かなくなり、契約締結に時間が掛かるケースがよくあります。

<対応策>
国際間の商取引契約の成立、契約から生じる当事者の権利義務を統一的に解釈、履行する世界共通に適用される法律または統一的な商習慣は、存在していません。このため、契約当事者いずれかの国内法を契約の解釈・運用基準に適用するか準拠法を取り決めることになりますが、お互い自国法を主張することになります。

国際契約を締結する場合、適用する法例を準拠法として決定し、これと矛盾しない契約条項を作成することが肝要です。準拠法に関する規定がない場合には、仲裁地の国際法によって、いずれの国の準拠法となるか決定されることになります。

国際的商取引の紛争解決ルールを定めた「ウィーン売買条約」(注)を当事者の合意として適用することもありますが、日本はまだ非加盟国です。(日本政府は、2008年に加盟手続きを進める予定)

(注)ウィーン売買条約国連国際物品売買条約を略して、『ウィーン売買条約』といわれる。詳しくは、ジェトロ 『制度・規格・手続き情報』 の解説をご覧下さい。

*7月開講の ジェトロ貿易実務オンライン講座 「英文契約編」では、「国際売買契約」、「販売店・代理店契約書」など英文契約書の基本が学べます。

(有限会社プロアイズ 代表取締役 吉冨 成一)

輸出時に要求される書類とその対応策
この内容を印刷する2006年12月号
輸出時に要求される書類とその対応策
〜輸出取引内容により、コンプライアンス(法令順守)に基づいた対応が大事〜

輸出者が、輸入者との契約内容に基づいて輸出通関申告を行い、船積み終了後に、1)商業送り状(インボイス=Commercial Invoice)、2)梱包明細書(パッキングリスト=Packing List)、3)船荷証券(B/LまたはAWB、注1)、4)保険証券(Insurance Policy)などの書類を輸入者へ提示することは、一般的によくご存知だと思います。
しかし、輸出通関申告時に委託通関業者から書類不備と指摘され、慌てられたこともあるかと思います。
今回は、輸出通関申告時または輸入者から、その他書類を要求される代表事例をご紹介し、簡単にその背景と対応策をご説明します。

(注1) 船荷証券 (B/LまたはAWB)
船荷証券(B/L=Bill of Lading)は、船会社が運送する貨物を船積地点で受取ったことの証明と、指定目的地までの運送・正当な所有者へ貨物を引渡すことを約束した有価証券のこと。
航空貨物の場合には、航空貨物運送送状(AWB=Air Way Bill)がB/Lの代用として発行されますが、有価証券ではなく、貨物の受取証にすぎません。このため、荷為替手形として使用する場合には、銀行への担保手続きが必要となります。

事例1: 輸出許可・承認申請書
輸出通関を委託した通関士から、輸出許可・承認申請書の提示を求められた。

対応策:
世界の貿易取引は、「原則自由」です。しかし、国際平和や経済秩序維持のために、最小限の管理をすることが認められています。日本の貿易もこの考え方に基づき、「外国為替および外国貿易管理法(外為法)」で特定商品や特定地域への輸出には、事前の許可・承認申請が求められています。
外為法の運用は、経済産業省、税関(財務省)の政省令により、HS関税コード番号(注2)ごとに、内外情勢の変化に応じた運用が行われています。外為法による輸出規制は、「輸出貿易管理令(輸出令)」に規定されており、戦略物資として特定された商品の輸出には、事前の輸出承認申請が必要となります。また、キャッチオール規制(注3)や別表第2掲載の特定貨物、別表第2の2の特定地域など、輸出承認が必要なものもありますので、事前の許認可申請調査を慎重に行うことが必要となります。

(注2) HS関税コード番号
日本は、国家間貿易についての世界的なルールを扱う唯一の国際機関である世界貿易機関(WTO)の加盟国であり、輸出入されるすべての商品は、WTOで定めた統計品目番号(HS関税コード)に則り、財務省関税局で、輸出入されるすべての商品の関税と輸出入統計データの管理が行われています。世界で135カ国以上の国がWTOに加盟しており、それぞれにWTOで定めた統計品目番号に則り、輸入関税の管理が行われています。

(注3) キャッチオール規制
輸出管理制度が整備されている世界25カ国以外に輸出されるほとんどすべての商品を対象に、大量破壊兵器に利用される恐れがないことを事前に申請し、許可・承認が必要となります。

事例2: 危険物申告書(Shipper’s Declaration for Dangerous Goods)
危険品と認識していなかったが、航空会社から受託保留となり、危険物申告書の提出を求められた。

対応策:
一般的に危険物と言われる引火性、可燃性貨物以外にも放射性貨物なども含め、危険物を航空機に搭載することは禁じられています。国連および国際原子力機関が定めた航空輸送細則に準じた航空法(国土交通省令)の条件を満たした場合に限り、航空貨物として輸送することができます。
そのため、輸送中の安全を確保するため、輸出インボイス以外に、国際航空運送協会(IATA)が定めた危険物申告書の提出を求められます。輸送する商品の危険度に準じて、梱包容器やラベルなどの輸送手段が取り決められており、詳細を危険物申告書に記載し、運送会社の事前認可を得ることが必須となります。航空機による危険物の輸送は、搭乗者が生命の危険にさらされる可能性が高く、危険物を輸出しようとする者は、出発国・経由国・着地国が定めるすべての法令を遵守しなければならない点を理解することが必須となります。海上輸送の場合も同様の輸送細則があります。

事例3: 原産地証明書 (Certificate Of Origin)
輸入者から一般的な船積書類以外に、原産地証明書を要請された。

対応策:
世界各国の輸入関税は、世界全体の貿易振興を目的とし、開発途上国への優遇税制の制度があるため、輸入貨物が製造された原産国により異なる場合があります。貨物の原産地を証明するために、商工会議所に商業インボイスとともに原産地証明書の申請をします。商工会議所で証明された原産地証明書に、輸入国の大使館で査証を受けるように要請してくる輸出相手国もありますので、要注意です。

最近、 AFTA(=ASEAN自由貿易圏=Asean Free Trade Areaの略)など、世界各地で自由貿易圏が形成されており、域内での関税を撤廃、または引き下げるため、貨物の原産国を特定し、証明する必要があります。

厳正かつ中立な立場の商工会議所が発行する原産地証明などの証明書類は、真正・公明なものとして、世界の商取引を円滑に貿易振興に貢献しています。そのため、提出書類の記載内容が真実かつ正確であることの誓約、営業実態の届出など申請された証明内容が把握できる申請者に対してのみの証明書交付となります。

(有限会社プロアイズ 代表取締役 吉冨 成一)

貨物海上保険トラブルとその回避策(その2)
この内容を印刷する2006年05月号
貨物海上保険トラブルとその回避策(その2)
〜貨物海上保険の役割と免責を理解しておくことが大事〜

前回では、貨物海上保険の保険開始時期が貿易取引条件の解釈を基本としていることをご紹介しました。今回は、運送約款や保険約款と免責事項に関連したトラブル事例と考え方をご説明します。

長期間にわたる輸送や運送が完了するまでには、複数の専門業者(運送フォワーダー、キャリアー、通関業者など)に業務を委託することから、海外取引にはリスクがつきものです。運送人(船会社や航空会社)には、貨物を目的地まで安全に輸送し、引渡す義務と損害賠償責任があります。そのため、「なぜ貨物海上保険をつける必要があるのか?」との疑問もあろうかと思いますが、運送人の責任限度と貨物保険の役割について十分認識しておくことが大事です。また、貨物海上保険契約を掛ければ、どのような場合でも、保険で補償されると思い込みがちですが、意外と思われる免責事項がありますので、十分注意する必要があります。

【事例1】運送約款による運送人の免責事項と責任限度額
貨物運送を委託された運送人(船会社や航空会社)には、貨物を目的地まで安全に輸送し、引渡す義務と損害賠償責任があるので、貨物保険を付けなかった。しかし、事故が発生し、運送委託先にクレームしたが、一部分しか求償されなかったケース。これは、運送約款により、全ての損害について、運送人が賠償責任を負っているわけではないからです。

<回避策>
運送約款では、運送人の免責条項・責任限度額を細かく規定しています。具体的には、輸送引き受け貨物の積込み・取扱い・運送・保管・荷揚げなどにおいて、運送人の過失(商業過失)による貨物損害は、運送人が賠償責任を負いますが、賠償責任の限度額以上は免責とされています。その限度額は海上輸送の場合 666.67SDR(*1)または総重量×2SDR /kgのいずれか、航空輸送の場合17SDR /kgとなっています。また、火災・天災・不可抗力・戦争危険など運送人の過失によらない貨物損害は運送契約上、運送人の免責と認められています。

貨物海上保険契約は運送約款に係りなく、荷主が貨物損害の補償を受けられるようにするものです。貨物海上保険契約を掛けると、荷主は運送人と直接クレーム交渉することなく、保険会社が運送人に求償を行います。荷主の利便性だけでなく、運送人への注意義務を喚起し、国際輸送の安全性を当事者全員で改善し、荷主の損害率を低下させることにもなります。こうした認識から、貨物保険の必要性が理解できると思います。

*1 SDR(Special Drawing Rights:特別引出権)
SDRは、IMF(国際通貨基金)の発表する国際金融統計を基礎に、IMF加盟国の主要通貨である米ドル、ユーロ、日本円および英ポンドの4大通貨レートの一定期間の加重平均によって、その価値が決定されます。日本では、一定期間において使用するSDRの邦貨換算額を算出することとしており、1988年度以降、財務大臣告示により、2年度毎に改訂しています。(2004年1月告示、160円/SDR)

【事例2】全危険担保条件付き貨物海上保険
海上輸送で生じる可能性のある全ての危険を補填する条件(All Risk Clause)(*2)で、貨物海上保険を契約したので、全ての事故について保険求償ができると思っていたが、到着貨物の梱包ダメージをクレームしたものの、保険会社からクレーム請求を拒否されたケース。貨物海上保険では、損害が補償されない免責がありますので、事前に確認をしておくことが必要です。

<回避策>
貨物海上保険によって、貨物の損害が問題なくカバーされるか否かは、どのような保険条件で契約しているか、また損害の種類(原因)が保険でカバーされる条件なのかに拠ります。

梱包が壊れてしまう事故は、日常茶飯事のように発生しますが、事故原因調査で「梱包の不完全による損害事故」と特定された場合、この損害は免責となり、クレーム対象になりません。例えば、中古容器を使用した場合や冷凍貨物をドライコンテナで輸送した場合などです。

輸出者との契約交渉段階で、輸出梱包をどのような梱包にするか十分詰めておく必要があります。しかし、どのような梱包が不完全とみなされるか判断できない場合が多いので、輸出者と梱包条件を取り決める前に、保険会社に相談することをお奨めします。

その他にも、次のような免責事項がありますので、要注意です。
・船舶、航空機のスケジュール遅れによる損害
・輸送期間中の品質劣化など貨物固有の瑕疵または性質による損害
(食品などの腐り、金属製品の錆など)
・輸送期間中に発生した重量または容積の自然消耗(目減り)による損害
(粉体貨物の飛散ロス、水分蒸発など)

*2 All Risk Clause (全危険担保条件付き)貨物海上保険
保険期間中、船舶の沈没・火災、航海中の海水濡れ、積込み・荷降ろし中の事故など、外部的な原因によって生じる貨物運送上のあらゆる偶発的な事故による損害を補填する保険条件。

(有限会社プロアイズ 代表取締役 吉冨 成一)

貨物海上保険トラブルとその回避策(その1)
この内容を印刷する2006年04月号
貨物海上保険トラブルとその回避策(その1)
〜貨物海上保険のしくみと貿易取引条件についての認識が大事〜

貿易取引の場合、貨物運送中に事故が発生し損害が生じることを想定し、貨物海上保険契約を掛けます。海上保険の仕組みを十分認識していないために、トラブルになるケースがよくあります。貨物海上保険に関連するアドバイスを2回に分けてご紹介します。その第1回は、売買契約の貿易取引条件下で、保険が適用されないトラブルの事例とその回避策をご紹介します。

貿易取引は異なる国の間で物(貨物)と紙(書類)が移動しますが、輸出者と輸入者の責任範囲が明確でないと、トラブルの原因になります。また、輸出者、輸入者のどちらが輸送中のリスクを負担するか、あるいはどちらが貨物海上保険や国際輸送を手配するかなど、貿易取引条件ごとに国際規則が定められています。

この国際規則に従って、輸出地から輸入地にまでの全輸送過程の中で、海上でのリスク対策として貨物海上保険を掛けることになります。その際、個々の貨物の性質や輸送実態に応じた保険条件にするには、海上保険の仕組みを十分に認識しておくことが大事になります。

【事例1】 輸出地で船積み前に起きた事故
FOB条件(*1)またはCFR(C&F) (*2)条件で輸入する場合、輸入者自身が貨物海上保険契約を掛けたが、事故の発生原因が輸出地で船積み前に起こったと認定され、保険会社からの保険求償が受けられなかったケース。これは、輸出地倉庫から本船積み込みまでは貨物保険の対象外となっていたためです。

<回避策>
国際商業会議所の規定する貿易取引条件(INCOTERMS)(*3)では、FOBまたはCFRでの輸入の場合、本船に積み込まれた時点で、リスク負担が輸入者に移転することになります。すなわち、保険契約上、保険開始は輸出地倉庫からではなく、本船積み込み時点以降となります。

海上保険は、自動車保険や火災保険のような“期間建て”契約ではなく、「輸出地の倉庫から輸入地の倉庫まで」の海上輸送/航空輸送、陸上輸送の間に起こりうる損害を補償する“航海建て”契約です。しかし、保険開始時期は、INCOTERMSで規定するリスク負担の移転時期に準じています。

輸出地倉庫から本船積み込みまでの間の保険を掛けているかどうか、売買契約交渉の中で、輸出者に確認し、保険対象外の場合は、輸入者が付保する貨物海上保険契約に追加して、FOB ATTACHMENT特約保険を手配することで保険対象期間の欠落をなくすことをお奨めいたします。

◆「インコタームズと危険負担の移転」チャートはこちらからご覧ください。

*1 FOB(Free On Board)
本船積込み渡し条件のことで、貨物が本船舷側の欄干を通過した時に、危険負担が移転する。

*2 CFR(Cost and Freight:C&F)
輸入港までの運賃込み条件のことで、C&Fとも表示される。危険負担の移転はFOBと同じ。

*3 INCOTERMS(International Commercial Terms/International Rules forInterpretation of Commercial Terms:国際貿易取引条件または交易条件)
国際商業会議所(International Chamber of Commerce: ICC)が貿易取引当事者間の責任範囲と費用負担範囲を定めた国際的な解釈。貿易取引で日常的に使う英語では、INCOTERMSというよりも、Trade Terms(貿易条件)と表現することの方が多いので注意しましょう。

【事例2】 輸出地で航空機搭載前の空港内で起こった事故
FOB条件で航空輸送で輸入した時、輸入者が貨物海上保険契約をしていたが、事故の発生原因が輸出地の航空機搭載前の空港内で起こったと認定され、保険会社からの保険求償が受けられなかったケース。

<回避策>
INCOTERMSが規定するFOB条件は、海上輸送を想定し、貨物が本船欄干を通過した時点でリスク負担が輸出者から輸入者に移転するとしています。FOB条件で航空輸送の場合は航空機に搭載された時点で、リスク負担が移転されるという解釈となります。このため、輸出地空港内での事故は保険の対象になりません。

航空貨物の場合、空港内にあるキャリア倉庫で荷受け後、航空機に搭載されるまでは、キャリアの管理下で貨物が取り扱われ、搭載まで1日近くの時間を要することもあります。この間は輸出者や委託フォワーダーの管理外であり、この間のダメージリスクもありうるのです。航空輸送を想定したFCA条件(*4)とすることをお奨めいたします。

*4 FCA(Free Carrier)
運送人渡し条件のことで、輸出地の指定場所で買主が指定した運送人に貨物を引渡した時に、リスク負担も買主に移転。航空輸送の場合や、海上コンテナでのCY(Container Yard:海上コンテナを搬入して蔵置・受渡をする施設)またはCFS(Container Freight Station:コンテナ単位でない小口貨物をコンテナ混載するための蔵置・受渡する施設)経由取引に使う取引条件。

(有限会社プロアイズ 代表取締役 吉冨 成一)

中国向け貨物の輸送リスクとその回避策
この内容を印刷する2006年01月号
中国向け貨物の輸送リスクとその回避策
〜現地物流事情を十分に認識した物流設計をすることが大事〜

先月号で国際輸送事故の回避策をご紹介しました。今回は、最近多発している中国向け貨物輸送リスクについて、日本の大手海上火災保険会社が、そのケーススタディーと貨物ダメージの回避策を提案していますので、そのいくつかをご紹介します。

中国向け貨物でダメージ事故が多いものとして、コンテナヤード(*1)、陸上輸送中、輸入通関時などがあげられます。

【事例1】:コンテナヤードでの貨物ダメージ
上海港への寄航本船が激増しているため、全てのコンテナ船の荷役作業がコンテナ専用岸壁の外高橋岸壁(Waigaoqio)で行われてはいません。特に、日本や韓国からのアジア近海航路の中小型船が寄港する、揚子江河口に位置する張華浜岸壁(Zhonghuabang)、軍工路岸壁(Jungongru)、宝山岸壁(Baoshan)にはコンテナ専用岸壁が少ないため、在来船(*2)用岸壁でコンテナ荷役を行うケースが多くなっています。

在来船用岸壁には、コンテナ荷役用の専用クレーンがなく、1点吊りの一般クレーンで荷役することになります。この場合、コンテナを吊り上げると大きな揺れが生じ、コンテナ内貨物が移動してダメージを受けることがあります。

*1 コンテナヤード
コンテナの本船への積み込み、荷卸しする場所、海上輸送と陸上輸送との接点の役割をする施設のこと。

*2 在来船(Conventional Ship)
穀物、石炭、鉱石などのバラ積み貨物やコンテナ単位以上の大型機械など、特定の単一貨物を効率的に輸送するのに適した船型と荷役装置を持つ貨物船のこと。

<回避策>
到着地での岸壁接岸は、現地港湾局の判断であり、委託している船会社にその権限はありません。つまり、荷主がコンテナ専用岸壁での荷役を指定することは、不可能なのです。

在来船用岸壁での一般クレーンによるコンテナ荷役の際、揺れによる貨物への加重負担を予め考慮し、コンテナ内積み付けの強化、梱包改善などの対策を講じることが必要となります。特に、機械設備などの偏加重を伴う貨物は十分な注意が必要です。

【事例2】: 陸上輸送中での貨物ダメージ
上海港に隣接したコンテナヤードが混雑し、通関時間が掛かるため、内陸のコンテナヤードまで保税輸送し、ここで輸入通関を申告するケースが多くなっています。

この場合、荷卸されたコンテナは、コンテナ専用シャーシーを利用するのではなく、トレーラーに乗せて運搬されています。コンテナを固定するツイストロックが破損・変形・錆損などで、ロックが機能しない古いトレーラーが多いため、輸送中にコンテナが落下する事故や横転事故が報告されています。また、タイヤが磨耗しているトレーラーも多く、タイヤがパンクし、積載貨物が大破した事故も報告されています。

<回避策>
運送会社を選定する場合、事前に十分な打合せの上、管理能力の有無を検討、確認することをお勧めします。

中国の道路事情は日本よりも悪いとのイメージが強いですが、特定の高速道路においてはむしろ中国の方が輸送中の揺れは少ないとの実験結果もあります。ただし、一般道路では依然として交通マナーが悪く、急ブレーキを掛ける頻度が高く、当然積載貨物への影響もあります。事故に巻き込まれるリスクも圧倒的に高くなっています。この観点からも、ドライバー教育が徹底している運送会社を選択する必要もあります。

【事例3】: 輸入通関時での貨物ダメージ
輸入通関する場合には、約1割の貨物が税関検査となります。上海の税関検査場は十分なスペースがなく、検査を屋外で実施することが多くなっています。検査待ちの間に、コンテナ内から搬出された貨物が屋外に仮置きされたまま、突然の降雨で貨物が濡れるリスクも高まっています。

<回避策>
検査となっても、コンテナから貨物全量が出されないような対策が必要となります。具体的には、コンテナドア内側に中国語で貨物明細を掲示しておくことをお奨めします。

また、貨物のハンドリング作業が全般的に粗雑なため、コンテナからの搬出作業中や検査場内でのハンドリング中に、貨物にダメージを受けるケースが多発しており、十分な強度をもった梱包用具を使用するとともに、貨物荷受人に現場立会いを依頼することも有効な対策となるでしょう。

(有限会社プロアイズ 代表取締役 吉冨 成一)

国際輸送中の事故とその回避策
この内容を印刷する2005年12月号
国際輸送中の事故とその回避策

海上輸送でも航空輸送でも、輸送途上に貨物の紛失、ダメージを受けることは日常茶飯事です。ちょっとしたことで未然に防ぐこともできますので、物流のリスク管理を十分に認識しておくことが重要です。貨物事故の削減は企業としての信頼性向上、輸送品質の向上に結びつく経営課題でもあります。以下、国際貨物輸送時の事故の事例とその回避策をご紹介します。

【事例1】 海上コンテナの損失事故
海上コンテナに貨物を積み込み、本船積みされれば、自動的に貨物が目的地に配達されると思われるでしょうが、意外と思われる事故があります。例えば、コンテナ船が航海途上で遭遇する荒天による事故−台風や低気圧などの悪条件の時には、10メートルを超えるような高波の中を航海する時もあります。このような時に起こるのが、“ウオーターハンマー”と呼ばれる事故です。高潮のような波の力で、コンテナごと流されたり、あるいはコンテナの外壁が障子を破いたようになり、積載貨物が流されたりすることがあります。

回避策:
 コンテナ船には、コンテナを搭載するスペースとして、船倉内(アンダーデッキ)と甲板上(オンデッキ)とがあります。どちらも支払う海上運賃は同じですので、船会社と運賃契約をする際に、必ず「アンダーデッキ」と指定することをお奨めします。荒天遭遇で被害を蒙るのは、オンデッキの貨物だけです。

【事例2】 航空貨物での濡れ事故
短時間で輸送ができる国際航空貨物への輸送需要は高まるばかりですが、目的地に到着してから実際の貨物引渡しまでの時間はかなり掛かります。航空機到着後、早くて2時間程度、一般的には5、6時間が掛かります。当然、倉庫内保管されますが、屋外移動中の濡れ事故にあうケースも皆無ではありません。

回避策:
 カートン梱包の場合、少量でもパレット積みでシュリンク梱包(*1)にすることをお奨めします。特に、アジア向けの場合、一時的に多量に雨が降るスコールの時期には有効です。シュリンク梱包でカートンの濡れを防止することができます。

*1 シュリンク梱包
パレットにカートンを積みつけ、周りをサランラップのようなポリエチレン素材の包装材で梱包した状態のこと。輸送中に貨物がずれたり崩れたりすることの防止と、雨天荷役での濡れ防止に効果があります。

【事例3】 経由地での貨物事故
航空輸送でも海上輸送でも、コスト削減のため、直行便ではなく経由便を利用する場合がよくあります。また、どうしても経由便しか利用できない仕向け地もあります。経由地が多くなればなるほど、その都度積み下ろし荷役を伴いますので、荷役機器による貨物損傷事故や、貨物確認の遅れによる予定便への再登載遅延といった事故が発生しています。

回避策:
 物流のリスク管理として、直行便のある仕向け地へは経由便を利用しないことが、結局はコスト削減にもつながることを十分に認識されると良いでしょう。

ハンドリングの回数が増えることで、貨物ダメージ事故が発生すれば、リプレース品の再発送などのクレーム処理が必要となります。また、経由地での貨物紛失や再登載遅延などの納期遅れが生じた場合も、クレーム処理に多大な時間・労力・コストが掛かります。 どうしても経由便を使わなければならない場合には、中継地の現地調査をお奨めします。コンテナ輸送の場合、寄港コンテナバースにガントリークレーン(*2)が設置されているかどうかを確認することも大事です。

中国華南地区への中継地点となっている香港港では、岸壁側コンテナヤードのスペースが狭いため、海上側に艀を着けて荷卸作業をする場合がよくあります。コンテナ専用の荷役道具を使わないため、コンテナの傾斜や片吊りによる貨物破損、落下破損の事故が報告されています。偏加重を伴う貨物(機械設備、重量物など)では特にリスクが高いです。

さらに、荷卸時に、サーベイヤー(第3者検査機関)(*3)の立会いを依頼することも有効な回避策になります。サーベイヤーによる荷役立会・荷役指導の結果、荷役ダメージを大幅に改善させた例が多々あります。

*2 ガントリークレーン
コンテナ船には積み下ろしクレーンが装備されておらず、岸壁側に設置されたコンテナ専用の積み下ろしクレーン(ガントリークレーン)で荷役を行う。コンテナ天井部分の四隅にクレーンフックが固定されており、コンテナを平行移動できるクレーン、片吊りとならないようにする荷役機械。

*3 サーベイヤー(第3者検査機関)
第3者検査機関として、海事鑑定業(クレーム原因調査などを担当)や国際流通貨物関連の検定業(貨物数量検定、梱包状況調査などを担当)などがあり、日本では日本海事検定協会が有名。貨物海上保険会社がクレーム判定でよく利用しているので、この種の保険会社にサーベイヤーを紹介してもらうと良いでしょう。

(有限会社プロアイズ 代表取締役 吉冨 成一)

よくあるクレームとその回避策
この内容を印刷する2005年10月号
よくあるクレームとその回避策
〜売買当事者の責任・免責範囲を細かく、明確に〜

輸出入取引にはクレームは付きもので、起こるべくして発生した、あるいは自らクレームのリスクを招いたケースが多々あります。概して、日本の業者は、契約時に価格と納期だけ取り決め、その他条件を明確にしないで契約してしまうケースが多く見られます。輸出入取引の契約に際しては、売買当事者の責任範囲と免責範囲について細かく取り決めておくとともに、最悪を想定した場合のクレーム解決方法も合意しておくことが大事です。

クレームが発生した場合の対応として、まず輸入者は遅滞なく輸出者にクレーム内容を必要書類添付の上、クレームの権利を保留するために、文書で通知します。その上で、売買当事者間で解決方法について話し合うことになります。当事者間の取引履歴にもよりますが、今後の取引を考慮してクレーム請求を放棄することもありますが、むしろ円満解決できないことの方が多いです。そのため、契約時に第三者による調停・仲裁などの解決方法についても取り決めておくことが、早期解決につながります。

具体的に、クレームとその回避策の事例をご紹介しましょう。頻繁に発生するクレームは、1)品質不良に関するクレーム、2)数量不足・貨物受け渡しに関するクレーム、3)マーケットクレームの3つに大別されるでしょう。

【事例1】 品質不良に関するクレーム
輸入に際して多発するクレームとして、貨物が品質不良である場合や事前サンプルと品質が相違している場合などがあります。特に、日本との取引が初めての業者の場合、日本側の品質基準が理解できず、自分たちの尺度で判断し、出荷してしまうことが起こりやすいです。

これを回避するには、輸入取引を開始する前に、相手側に品質要件を十分に理解してもらうことが大事で、製造時の品質管理や出荷検品の管理方法などの話し合いや、輸出者の責任範囲の明確化がポイントです。併せて、クレームが発生した場合の対応で、さらには円満解決できない場合を想定し、契約書にはクレーム条項と仲裁条項を明記しておくことも必要です。

【事例2】 数量不足・貨物受け渡しに関するクレーム
貿易慣習で契約数量の5%は許容範囲内とする考え方もあり、数量不足は特に注意すべきです。もし、許容できる増減幅を設定する取引の場合、契約段階でその数値を明確にしておく必要があります。輸出の場合、インボイス数量との差異を理由に、着荷不足のクレームを受けるケースも多発しています。これを回避するには、輸出者自らが輸出時の検数・検量を行うことが必要でしょう。

また、輸入貨物受け渡し時点によく発生するクレームとして、ダメージクレームがあります。海外メーカーが必ずしも貿易取引に慣れているわけではありません。国際輸送に耐えられる梱包で出荷することの重要性を認識せず、国内出荷と同じような梱包で出荷し、輸送過程でのダメージになるケースもあります。

これを回避するには、梱包方法について輸出者に事前確認しておくことが大事です。梱包状態不良に起因するダメージは、輸入者が貨物保険を付保しているFOB(*1)契約・CFR(*2)契約の場合、不完全包装ということで保険対象にならない場合があるので、注意が必要です。

*1 FOB(Free on Board)
売り手が契約期日内に買い手の指定する船舶に荷積みし、貨物が本船の船側手摺を通過した時点で売り手の引渡し義務が履行したことを意味する貿易条件。売り手が本船積込費用までを負担する。

*2 CFR(Cost and Freight、C&Fともいう )
売り手は本船を手配し、貨物を本船甲板上に積み込みするが、海上保険の手配する義務はない。貨物の危険負担はFOBと同じで、本船の船側手摺を通過した時点で、売り手から買い手に移行する。なお、“CIF(Cost Insurance and Freight)”とは、海上運賃と海上保険を加算した価格をいう。

【事例3】 マーケットクレーム
輸出者の小さなミスを契約不履行という理由でクレームになり、値引きを要求されるケースがあります。船舶や航空機のスケジュール遅延は輸出者に直接の責任ではありませんが、納期遅延を理由に値引きを要求されたケースもあります。このようなリスク回避策として、契約時に売買当事者の責任範囲と免責範囲を明確にしておくことが必須となります。

(有限会社プロアイズ 代表取締役 吉冨 成一)

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