ジェトロ山形作成                       最終更新日:2006年12月15日 2006.12.15 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (100) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 1号から99号までのまとめ・目次 - Table of Contents 2001年9月16日の第1号から5年以上経過しました。「地球と全人類を愛する」 を根底に、有限の地球を無限の地球にする可能性を秘めたアイデアを毎回取り 上げてきました。その間、世界と日本の情勢、又それを取り巻く地球自体も刻 々と変化を続けています。今回は過去を振り返り、その中で現実となったこと、 また現実となりつつある事例を思い浮かべながら全体のまとめを作成しました。 100号に至るまでお世話になった読者の方々、ジェトロの方々に厚く御礼申し 上げます。 2006年分 - http://www.jetro.go.jp/yamagata/mail/mm_vbfl06.txt 100.目次 - 2006.12.15 99.医療観光事業 - 2006.12.01 - (インドへの)メディカル・アウトソーシング 98.顎顔面補綴 - 2006.11.15 - 日本の世界平和貢献に関する提案 97.折り紙 - 2006.10.16 - 温故知新,折り紙のハイテク分野応用 96.高速電気自動車「タンゴ」- 2006.10.02 - 交通渋滞・ガソリン高騰対抗策? 95.オペラ - 2006.09.01 - 自由と独立のすばらしさ 94.米国研究公正局 - 2006.07.18 -大学研究機構の適正化・透明化「大学力」 93.JMSDF「あまぎり」「やまぎり」- 2006.07.03 -   海上自衛隊護衛艦・練習艦ボストン訪問 92.水泳 - 2006.06.01 - 肥満問題,スポーツ,水泳競技と関連技術 91.アフリカと中国 - 2006.05.15 -日本のアフリカに対する総合戦略の必要性 90.ロケット・レーシング - 2006.04.17 - ロケット製造技術の応用分野 89.中国と日本 - 2006.04.03 -   煮え立つ日中競争と中国の外交戦術・エネルギー戦略 88.ロシア - 2006.03.15 - 活気溢れるロシア社会生活の問題・   壮大なるビジネスの可能性 87.硫黄島 - 2006.02.01 - 戦争の悲惨さ、平和への叫び,   ベンチャー・ビジネスの推移と戦争 86.プリペイド電話カード - 2006.01.16 -   複雑極まりない電話サービス業界の謎とチャンス 2005年分 - http://www.jetro.go.jp//yamagata/mail/mm_vbfl05.txt 85.新しい農業ビジネス・モデル - 2005.12.15 -   今までの農家の枠を打ち破った農業経営モデル 84.チンディア - 2005.12.01 -   全世界人口の三分の一・興隆する中国・インド戦略 83.徒然 - 2005.11.01 - 友情・笑い・握手で結ばれたビジネス色々 82.英治出版と「ネクスト・マーケット」 - 2005.10.17 -   貧困層を顧客に変える次世代ビジネス戦略 81.PTC ヘルス・グループ - 2005.09.15 -   「食」を通した人的・技術的交流とビジネス展開 80.鶏ビジネス - 2005.09.01 -   鶏羽毛を使った自動車用合成素材、建築資材、各種医療機器部品など 79.中国(中華人民共和国)のシンクタンク(智庫) - 2005.07.15 -   中国外交政策における役割 78.ロシア・リニア計画 - 2005.07.01 -   全人類の平和に貢献する国家プロジェクト 77.高吸収性樹脂 - 2005.06.15 -中国のジニ係数0.403 76.日露友好心理学者 - ババーラ・シドロバ - 2005.05.16 -   日露間の複雑な政治・外交・貿易要因 75.経営管理学修士号 - 2005.04.15 - 迫られるビジネス・スクール改革 74.みみずビジネス - 2005.04.01 - テラサイクル社のエコ・ビジネス 73.肥満と節エネ - 2005.03.15 -   米国の肥満事情・体重値の変動とガソリン消費量の関係 72.利根川進教授 - 2005.02.15 -   子供を育てる環境の大切さ,大学・研究体制改革の必要性 71.チャイナ・スタディ - 2005.02.01 -   「食べ物の事を知らずして、病気を理解する事は出来ない」 70.ナノテクノロジー - 2005.01.15 -   専門分野を超えた国際的・学際的・研究チームの重要性 2004年分 - http://www.jetro.go.jp//yamagata/mail/mm_vbfl04.txt 69.バイオ・アウトソーシング - 2004.12.15 -  急成長するインドの「ゲノム・バレー」 68.ビジョナリー - 2004.12.01 -   起業家/ベンチャー・ビジネス家として求められる条件 67.食べ物アレルギー - 2004.11.15 - 自然で安全な食品を製造・販売 66.インスタント・スーパー・コンピューター - 2004.10.15 -   色々な化学モデル解析に役立つ技術 65.腐食・防食 - 2004.10.01 -   米国市場 年間2760億ドル以上と推定される腐食・防食ビジネス 64.海中紫外線撮影技術 - 2004.09.15 - ベンチャーを成功させた夫婦の強い絆 63.ベンチャー起業振興4部門モデル - 2004.09.01 -   中国・インドも導入したベンチャー起業育成方法 62.水ビジネス - 2004.08.02 -   石油よりも貴重な天然資源となった(民営化・私有化進む)淡水資源 61.鯨 - 2004.07.15 - 欧米諸国で研究経路が断たれた鯨分野での面白い可能性 60.縦型風車発電 - 2004.06.15 -   古い技術に新しい技術を吹き込んだベンチャー・ビジネス 59.トライク - 2004.06.01 -   52馬力ディーゼル・5速マニュアル・高燃費前二輪・後一輪車 58.インドネシア - 2004.05.14 -   無限のビジネス展開可能性を秘めた民主主義政権国家 57.潮海流発電技術 - 2004.04.15 -   電力・水素を同時に製造するフロリダ・ハイドロ社技術 56.競争情報専門家会議 - 2004.04.01 -   CI専門家の知識技能の向上及び相互の連絡交流 55.情報・諜報戦略 - 2004.03.15 -   日・米・中・露間での気になる動き,防御策構築の必要性 54.防災訓練技術 - 2004.03.01 -   コンピューター・シュミレーション技術を使った防災訓練 53.コーシャー食品 - 2004.02.16 -   ユダヤ教の厳しい戒律に従った「正しい」食生活ブーム? 52.米国大統領候補 - 2004.02.02 - 特異な才能を持つ個人の人間行動様式研究 51.克雪・利雪技術 - 2004.01.15 - 気象関係技術の研究・開発、   さらに技術移転の推進 2003年分 - http://www.jetro.go.jp/yamagata/mail/mm_vbfl03.txt 50.非営利ベンチャー - 2003.12.15 -   世界に通じる慈善事業やボランティア精神と活動 49.ロシア投資シンポジウム - 2003.12.01 -   ロシア市場に進出する投資効果の大きさと面白さ 48.サウナ会議 - 2003.11.17 -   アメリカの景気を支える庶民情報を収集する効果的手段 47.外国為替ビジネス - 2003.11.04 -   金融の自由化や電子商取引の一般化に伴うビジネス 46.メープル・シロップ - 2003.10.15 -   日本ではあまり生産されていないニッチな分野 45.中国人ネットワーキング - 2003.10.01 -   何も無いところからどのように起業するか? 44.シリコン・インディア - 2003.09.16 -   インドの日本工業団地特別地区設立に関するプロポーザル 43.テレ・ディスカバリー - 2003.09.01 -   「四手をはなすと云ふ事」,敵の意表を突くことで先をとる 42.インド - 2003.08.01 -   FDIに頼らない「ボトム・アップ型」インド起業育成モデル 41.ベンチャー・キャピタル会社 - 2003.07.15 - 「追いかける事の面白さ」 40.カート・キオスク・ビジネス - 2003.06.16 -   単純な発想から生まれるアイデアと商品 39.中国 - 2003.06.02 - 予測性に欠けるビジネス環境,   中国進出に伴う危機管理の重要性 38.大きなビジネス・チャンス - 2003.05.15 -   同じような情熱とプランを持った人達と接する重要性 37.インド・ロシア・中国 - 2003.05.01 -   日本はこれからどこを見たらよいか?準備は整っているか? 36.ハーバード大学起業会議 - 2003.04.15 -   「どん底」まで落ちる経験からくる強さ 35.チャイナタウン・バス - 2003.04.01 -   「大変なことを乗り越えて世界を愛して生きていきたい」 34.メザネー投融資 - 2003.03.17 -   小規模かつ低・中成長企業に対する中二階的融資援助サービス 33.インダス起業家 - 2003.03.03 -   インド系ベンチャー・ビジネスのネットワーク集団 32.ベンチャー・ネットワーキング - 2003.02.17 -   地元の人達と直接触れあうネットワーキング会議 31.ベンチャー・フォーラム - 2003.02.02 -   国際的な輪を拡げる起業家精神育成支援部門 30.連博士 - 2003.01.15 - ベンチャー事業に対する理解、   人材と雰囲気・環境の重要性 2002年分 - http://www.jetro.go.jp/yamagata/mail/mm_vbfl02.txt 29.開発途上国市場その3 - 2002.12.16 - BOP市場で成功した会社6例 28.開発途上国市場その2 - 2002.12.02 - BOP市場で成功した会社7例 27.指揮者・島田俊行 - 2002.11.15 -   自分にムチを打つ事を怠らないビジョンの提供者・CEO 26.開発途上国市場その1 - 2002.11.01 -   多くの可能性を秘めたピラミッド底辺(低開発諸国)市場 25.韓国ITビジネス - 2002.10.15 -   アメリカ市場拡大を目指す韓国政府・起業家の眼差し 24.独立心 - 2002.10.01 - 日米韓中ベンチャー・ビジネス比較と考察 23.知的所有権のリサイクル・ビジネス - 2002.09.13 -   投資回収効果と投資効果を同時に狙う 22.医学博士・マルセロ・黒田 - 2002.08.15 -   アメリカ社会で「外国人」として生き残る条件 21.ベンチャー・キャピタル業界と動向変化の概略その2 - 2002.08.01 -   創造力・決断力・倫理性 20.ベンチャー・キャピタル業界と動向変化の概略その1 - 2002.07.15 -   ベンチャー投資の投資収益率 19.知的所有権 - 2002.07.03 -   国際手続き(PCT)まで手が回らない理由と実情、他 18.ベンチャー・ビジネスの歴史 - 2002.06.17 -   恐怖感に対抗する為の最新技術開発への意欲と意識 17.契約 - 2002.06.03 - 契約書で交わすことの出来ない深い信頼・友情関係 16.譲渡条項その2 - 2002.05.15 -   譲渡契約上の問題の場合と実施権許諾契約の問題としてとらえる場合 15.譲渡条項その1 - 2002.05.01 -   技術移転に関して「国」レベルで考えるべき具体的な考慮と対策 14.偏見 - 2002.04.15 - 「思いこみ」は大きなチャンスを逃す結果となること 13.ベンチャー教育 - 2002.04.01 - グローバル、マクロ的な視点を養う姿勢 12.米国会社設立その2 - 2002.03.15 - 虎穴に入らずんば虎子を得ず 11.米国会社設立その1 - 2002.03.01 - 地域の特性を考え上手く利用すること 10.絶え間なく動く水 - 2002.02.15 -   生きるか死ぬかの必要に迫られた状態で生まれるビジネス 09.デンタル・ビジネス - 2002.01 -   ニッチ・マーケットを突いて、ゼロから始めたベンチャー・ビジネス 08.美味しいランチと音楽 - 2002.01.11 -   巨大プロジェクトを成功させる不思議な秘訣 2001年分- http://www.jetro.go.jp/yamagata/mail/mm_vbfl01.txt 07.ベンチャーとスポーツ - 2001.12.17 -   ベンチャー精神とアメリカ的スポーツマン・武道精神の関係 06.一般公開データベース - 2001.12.03 -   アメリカ建国からの民主主義思想の影響,膨大な無料情報 05.テロ防止対策技術開発 - 2001.11.15 -   U.S. Broad Agency Announcement(米国一般調達通知書) 04.図書館 - 2001.11.01 - 「三種の神器」の一つ,情報収集能力,   効果的方法と手段 03.銀行 - 2001.10.15 - ユニークなお金と顧客の接点・設定のやり方 02.ベンチャー精神 - 2001.10.01 -   「他人が作った足跡の中に自分の足を踏み入れたくない」 01.テロ - 2001.09.16 - 犠牲になった方々の冥福を祈って 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com 2006.12.01 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (99) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 医療観光事業 - Medical Tourism 米国保健福祉省は、米国内の医療費(高騰)また健康保険非所有者(増加)等を示 す統計を出しています(1)。 米国保険情報協会は、医療事故・医療過誤保険 (Medical Malpractice)が消費者のポケットに与える影響を述べています(2)。 2006.05.21付けTIME雑誌によると、「the U.S. will be spending $1 of every $5 of its GDP on health care by 2015(アメリカは2015年までに、GDPの5 ドルにつき1ドルを健康管理のために使うことになるだろう)」とあります。 また、米国労働人口の約1/4は健康保険を持っていないことも指摘しています (3)。 米国の医療技術・施設は世界最高峰と考える人が多くいますが、実際適切な医 療行為を受ける為に米国ほど複雑で高価な所はないと多くの市民は感じていま す。医療行為に限らず処方箋薬に関しても、全く同じものにも関わらず隣カナ ダでは何分の一かで購入可能です。WALMART(ウォルマート)では「$4 Generic Drug Program」を発表・実施していますが、これに含まれる処方箋薬は限られ ており、また有効期間は30日です(4)。さらに、米国内の医療費の約80%は実際 の医療行為から離れた事務行為に消費されていることをThe Health Rangerと 呼ばれるMike Adams(5)氏は指摘しています(6)。 このような背景の中、近年脚光を浴びているのが医療観光事業(Medical Tourism)です(7)。これは様々な社会・経済的要因と言語・文化的要素をマッ チさせた画期的なビジネス・モデルです。メディカル・アウトソーシングとも 呼ばれており、現在アジア地域ではマレーシア、フィリピン、タイ、インド、 シンガポールが主です。これらの地域には先進国で教育と訓練を受けてUター ンした医療チームと最新の設備を整えた病院が(インドのデリー空港周辺を含 め)軒並み建設されています。 一例として、2006.10.19付のABC NEWS NIGHTLINE(8)で、インドの PlanetHospital(9)でHip Resurfacing Surgery(股関節/膝関節置換術手術) を受けた60歳のアメリカ人女性Dodie Gilmoreさんを取材していました。この 手術は、Gilmoreさんの雇用者が提供する健康保険ではカバーできない医療行 為なので、米国内で治療を受けた場合は(自腹で)$28,000 - $40,000を払うこ とになります。ところが、PlanetHospitalでは$7,000弱で同じ手術を、その分 野で世界最高峰の技術を持った医師(Dr. S.K.S. Marya)により受けられるの です。手術で使われたパーツはチタン製でした。設備も最新のクリーン・ルー ムで、宿泊設備は高級ホテル並みです。ここのサービスを受ける手続きも非常 に簡単で、ホームページで色々な質問に答え、航空券手配から病院の手続きま で全て可能です。また、手術後のフォローも(米国帰国後)支障なく出来る体 制を整えています。 インドの政府・民間医療サービス機関によると、「medical tourism could bring between $1 billion and $2 billion US into the country by 2012. The reports estimate that medical tourism to India is growing by 30 per cent a year. (2012年までに医療観光事業によってインドにもたらされ る金額は10億ドルから20億ドルになるだろう。このレポートでは、インドの医 療観光事業が1年で約30パーセントの成長を遂げていると報告している。)」 とあります(10)。日本も様々な形でこのような医療観光事業に参加することが 可能ではないかと考えます。 (1) http://meps.ahrq.gov/mepsweb/ (2) http://www.iii.org/media/hottopics/insurance/medicalmal/ (3) http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,1196429,00.html (4) http://www.walmart.com/catalog/catalog.gsp?cat=546834 (5) http://www.healthranger.org/ (6) http://www.newstarget.com/007097.html (7) http://en.wikipedia.org/wiki/Medical_tourism (8) http://www.abcnews.go.com/Nightline/story?id=2587670&page=1 (9) http://www.planethospital.com (10) http://www.cbc.ca/news/background/healthcare/medicaltourism.html 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com 2006.11.15 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (98) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 顎顔面補綴 - Maxillofacial Prosthetics 米国のメジャー放送局では、毎日イラク(他)戦争における米軍の死傷者を報 道しています。米国国防省は、これに関する正確な統計を毎日発表しています (注1)。慶應義塾大学・経済学部・延近研究会共同研究「イラク戦争を考える」 のHPで同内容を含む情報を日本語で見ることが出来ます(注2)。米軍の死傷者、 有志連合軍の死者、イラク戦争における民間人の死者、アフガニスタン戦争に おける米軍・多国籍軍の死傷者などの統計を見ると心が痛みます。 米国国防省によると、2006年11月7日発表「イラクの自由」作戦(Operation Iraqi Freedom)における米国側の死者数は、戦闘・非戦闘を含み合計2,834人。 負傷者は軽症・重傷者を含み21,572人。そして、米国を含む有志連合軍(18カ 国)の死者数は3,075人。この数字には戦争の犠牲となった一般民間人は含ま れていません。さらに、これはイラク紛争に限った統計で、現在世界各地で起 こっている殺戮・戦争を入れると想像を絶する数の人達が命を亡くし、負傷し 血を流していることが推測できます。 The History Guy: New and Recent Conflicts of the World (世界の新しい 近年の紛争)によると(注3)、現在メジャーな戦争は20箇所以上 (注4)、マイ ナーな戦争は30箇所以上(注5)でくりひろげられています。これらの紛争に関 する情報は、FLASHPOINTS: Guide to World Conflicts - 世界紛争ガイド(注6) やPeace Reporter: Ongoing wars - 平和レポーター(注7)などからも(溜息を つきながら)学ぶことが出来ます。 これらの戦争で一体何人の戦士・民間人(特に、女性・子供たち)が負傷して 苦しんでいるのか詳しいデータを集めることは難しいですが、本年10月4日発 表のアメリカ口腔外科・上顎顔面外科医学会(注8)レポートによると、「They have also been indispensable in the Iraq and Afghanistan conflicts, where 18-23% of war injuries are maxillofacial injuries. (イラク・ア フガン紛争において、18-23%の負傷は顎顔面部分である)」とあります(注9)。 このような負傷を受けた人が、どのような顔になるかは下記リンクの画像をク リック拡大して見てください。 http://www.cmf.hyperguides.com/default.asp?page=/tutorials/adult/will_trauma/overview.asp&rID= 実は筆者が指導する剣道教室に、上のように顔の一部を無くした人達の顔を修 復するユニークな顎顔面補綴技術を持った女性Mさんがいます。13年前に日本 からアメリカ西海岸へ来て画期的な顎顔面補綴技術を習得し、近い将来有志と 共にその技術を平和活動に活かしたいと熱意を燃やしています。 顎顔面補綴とは、腫瘍、外傷、炎症、先天奇形、各種(スポーツ、交通などの) 事故、さらに戦争・テロなどの傷害により、顎顔面領域を著しく実質欠損を生 じた人達に対し、欠損している部分を審美的・機能的に修復する治療方法・技 術です。日本においてこの分野は、応用可能な高度技術を持ちながら(多国の 統計と比較して)市場規模が小さいこともあり、脚光を浴びている分野ではあ りません。京都大学医学部付属病院・歯科口腔外科によると、「顎顔面領域の 悪性腫瘍および他の疾患の治療成績が向上するに伴い、術後の顎顔面欠損を後 遺する患者が増加しています。」とあります(注10)。アメリカを含め皮膚癌患 者の多い国などでは確立された分野となっています。 Mさんによると、人間は顔の半分が付いてなくても生きていけるそうです。 ですが、顔の一部がない人に対する世間の反応は想像を絶するものがあります (特に鼻の部分が無いと人間の顔は異様に感じるものだそうです)。それが例 えどんなに優秀な人材でも、顔の一部がない人に対する社会における差別は激 しく、例えば銀行の窓口業務などに従事することは考えられません。 Mさんは、「顎顔面補綴には(美容的)形成外科技術、機能面を含めた歯科口腔 外科技術、麻酔技術などの専門的処置が含まれるが、一番難しいことは顔の一 部をなくした人に再び鏡を持って自分の顔を見る勇気を与えること」だと言い ます。その為には、顔の一部をなくした人との細かい対話と信頼関係が大切に なるそうです。Mさんは、顔の一部をなくす前の写真や、残っている顔部分の形 ・色艶に合わせて、特殊なシリコンを使い損失した顔部分を作ります。その作 業に必要な道具は、義歯作製が出来る所なら全て入手出来るそうです。後は、 作る人の患者に対する愛情とアーチストとしての感覚だそうです。ボストンの M病院に上級研究員として勤務する日本人F医師は、「顎顔面補綴には、精神的 打撃(トラウマ)処置が含まれてくるが、これは顔面の一部を失ったことによ る心理的トラウマに対する、精神的サポート・介入である」と述べています。 ボストンのM病院に研修医として勤める日本人Y医師は、問題と課題を次のよう に指摘しています。顔の認知という観点から、顔は人それぞれ千差万別ですが、 その千差万別の顔に対する人間の認知機能というものは非常に優れており、ち ょっとした違いにも脳は敏感に反応します。それと顔の傷は隠せないこともあ り、他の体の傷とは違った非常に繊細なケアが必要になります。また、顔には、 目・鼻・口・皮膚個々の感覚器としての機能(見る、聞く、嗅ぐ、味わう、触 れる)だけでなく、表情という顔全体としての機能(基本的には表情筋といっ て顔にある筋肉の緊張・弛緩によって表情が変わるわけですが、当然筋肉だけ で表情を作っているわけではありません)もあります。顔の形を再生するだけ でなく、機能をも再生するとなると大変な作業となります。そして何より大事 なのは、「人の心に訴える何か」、「傷を負った本人の心」であると述べてい ます。 日本は今、様々な形で世界平和へ貢献する必要があります。戦争・紛争で顔を なくした人達にMさんが考えるような救いの手を差し伸べてはどうでしょうか? (注1) OPERATION IRAQI FREEDOM (OIF) U.S. CASUALTY STATUS http://www.defenselink.mil/news/casualty.pdf (注2) イラク戦争における米軍および有志連合軍の死傷者 http://www.econ.keio.ac.jp/staff/nobu/iraq/casualty.htm (注3) http://www.historyguy.com/new_and_recent_conflicts.html (注4) http://www.historyguy.com/new_and_recent_conflicts.html#newandrecentcurrent (注5) http://www.historyguy.com/new_and_recent_conflicts.html#newandrecentcurrentminor (注6) http://www.flashpoints.info/FlashPoints_home.html (注7) http://www.peacereporter.net/default_canali.php?idc=48&template=19 (注8) American Association of Oral and Maxillofacial Surgeons (www.aaoms.org) (注9) http://www.medicalnewstoday.com/medicalnews.php?newsid=53335 (注10) http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~oral_surg/prosthRes.html 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com 2006.10.16 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (97) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 折り紙 - Origami 最近日本では大人の折り紙がブームになっていると聞きました。地方の書店で も、大人向け「折り紙本コーナー」が設けられていることも知りました。 先月8-10日、カリフォルニア州パサディナ市にあるカリフォルニア工科大学で 国際折り紙学会(注1)が開かれました。カリフォルニア工科大学(注2)はアメリ カ西海岸のMITと言われる名門で、この会議では折り紙を科学的・数学的立場 から考察して応用分野を発見する為の討議が分野別に行われました。 折り紙(千代紙)は説明するまでも無く、日本伝統工芸の一つです。国外でも 非常に盛んで、筆者の住むマサチューセッツ州アンドーバー市の近くには、 ORIGAMIDO(折り紙道)と呼ばれる折り紙専門店があります(注3)。またMIT(マ サチューセッツ工科大学)にはEric Demaine教授が指導する高度な科学技術を 駆使した折り紙クラブがあります(注4)。 さて、最近折り紙のノウハウが様々な科学・技術分野に応用されていることが 話題になっています。この分野はComputational Origami(計算折り紙)と呼 ばれ、例えば車のエアバッグ、宇宙空間で使われる天体望遠鏡の巨大なレンズ 部分、医療分野ではAngioplastyアンギオプラスティー(風船治療)に使われ る風船部分のデザインに役立っています。 これらのデザインを可能にするソフトウエアの一つに、Robert Land博士が開 発した「TreeMaker」があります(注5)。基本アルゴリズムは円領域分子法とユ ニバーサル分子法です。「TreeMakerでは、紙の使用効率を表すのに、単純な 数値を使っています。展開図の形を変えれば、この数値もリアルタイムで変化 して、使用効率が良くなったのか悪くなったのかが一目でわかるようになって います。」と羽鳥公士郎氏は述べています。 ちなみに、日本では日本折り紙協会(注6)があり様々な教育・啓蒙活動を続け ています。現在経済産業大臣が指定する「伝統的工芸品」は全国に207品目あ ります(注7)。これらの中で(折り紙のように)他分野で応用可能な技術を発 掘出来ないかと筆者は考えます。 (注1) The Fourth International Conference on Origami in Science, Mathematics, and Education (4OSME), September 8-10, 2006, California Institute of Technology Pasadena, California, USA. (注2) http://www.caltech.edu/ (注3) http://www.origamido.com (注4) http://web.mit.edu/origamit/index.shtml (注5) http://www.langorigami.com/science/treemaker/treemaker5.php4 (注6) http://www.origami-noa.com/ (注7) http://www.kougei.or.jp/crafts/about.html 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com 2006.10.02 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (96) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 高速電気自動車「タンゴ」- Tango by Commuter Cars Corporation 最近米国ではガソリンの値段が急に下がりました。ボストン周辺でも、レギュ ラー1ガロン(3.785L)で2ドル20セント前後です。二週間前は1ガロン3ドル以上 でした。これから寒くなる季節を迎え、暖房用のオイル価格も全国的に下がっ てきましたので一般消費者は嬉しい限りです。 このベンチャー・ビジネス最前線を通して今まで何回かこちらでのガソリン 価格(1ガロン当たり)を報じてきました。 2005.09.01 - ベンチャー・ビジネス最前線 (80) 2.6ドル以上 2005.03.15 - ベンチャー・ビジネス最前線 (73) 1.83-2.26ドル 2004.06.01 - ベンチャー・ビジネス最前線 (59) 2.064-2.253ドル 2004.04.15 - ベンチャー・ビジネス最前線 (57) 1.710-1.905ドル 2003.04.01 - ベンチャー・ビジネス最前線 (35) 1.70-1.80ドル 米国の一部では1ガロン2ドルを下回った所も出てきて、今後の動きが気になり ます。そして日本への里帰り便から、航空運賃の他に取られる「燃料費」が早 くなくなる事を期待していますが、実際は10月からこの部分が値上がりするこ とをボストン現地の旅行代理店から聞きました。 筆者は燃料費が高騰する2004年初夏(06.01)、ベンチャー・ビジネス最前線(59) で「超低燃費・前二輪駆動型三輪自動車(トライク)」について述べました。 これはER70と呼ばれ、前二輪、後一輪、涙滴型ファイバーグラス製の車体で、 小型52馬力ディーゼル・エンジン、5速マニュアル搭載、1ガロンで70マイル (1リットルで29キロ)の燃費です。 今回はCommuter Cars Corporation(注1)製、Tango(タンゴ)と呼ばれる、超狭 幅、0-60 mph(0から96km/h)を4秒で走る、最高時速150mph(240km/h) の2人乗 り電気自動車を紹介します。 この自動車が開発されたきっかけは、交通渋滞問題が深刻なカリフォルニア州 (他)の高速道路です。通勤者は大抵車一台に一人です。殆どの車は幅が広いた め高速道路の1レーンにつき車1台占領することになります。ですが、このTango ですと幅が39インチ(99.06cm)しかない為、道路1レーンにつき2台並んで走る ことが可能になります。(カリフォルニア州に限り1レーンに横2台並んで走行 することが許されています。) また駐車する時は、道路に対して並行ではなく 直角に置くことも可能です。 簡単なスペックですが、Tangoの長さは8フィート5インチ(2m56cm)、高さ60イン チ(152cm)、地面からの車底までの間は4インチ(10.16cm)、重さは3,057 lbs (1トン386kg)です。詳細はCommuter Cars CorporationのHPに出ています。部 品は色々な会社で作られ既に使用・証明されているもので、後輪にはYokohama 製の米国運輸省認可・レーシング用タイヤ(プロトタイプ・モデルのみ)、ブレ ーキにはAcura Integra用(プロトタイプ・モデルのみ)が使用されています。 行動範囲は、現在の段階でLead-Acid電池だとすると40-80マイル(64-128km)、 NiMH電池では60-160マイル(96-256km)です。 全高が高く、幅が狭いので安定性に疑問がありますが、副社長・Byan Woodbury (ブライアン・ウッドベリー)氏によると、全車体重量の約2/3は車床下にあり、 これだけでもMazada Miyata1台分の重さになるので安定性は充分確保出来ると 述べています。同社HP上でこの点を証明する映画も掲載しています。ちなみに、 有名な男優George Clooney (ジョージ・クルーニー)氏が愛用するTangoは下記 のリンク(注2)で見ることができます。さらに前後・左右からの衝突に対する安 全性を強化する為に、TangoはSCCA とNHRAの基準を上回る対策を施しています。 例えば車内を囲むケージの作り方はレーシング・カー仕様と同じ、また各ドア には4本のビームが入れられていること等です。 特許に関しては、米国(注3)の他、オーストラリア(注4)、中国(注5)、メキシコ (注6)で取得済み。日本、ヨーロッパ、ブラジル、カナダ、インド、韓国でも現 在知財保護申請中です。 現在この車は、ハイパーフォーマンス・カーとして108,000ドルで売られてい ますが、5,000万 ドルの投資を受けることができれば、10,000台を1台 約18,000ドルで製造・販売することが出来るようになるそうです。 (注1) http://www.commutercars.com - 社長・Rick Woodbury (リック・ウッド ベリー)氏 (注2) http://www.electrifyingtimes.com/ClooneyTango.html (注3) U.S. Patent No. 6,328,121, titled "Ultra-Narrow Automobile Stabilized with Ballast," issued on December 11, 2001. (注4) Australia (#760818 on 5/2/03) (注5) China (#ZL 00 8 08305.3 on 10/12/05) (注6) Mexico (#229137 on 7/13/05) 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com   (黒木氏はアメリカのグローバル戦略ビジネス開発会社で活躍中の人物) 2006.09.01 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (95) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ オペラ - Opera 去る5月28日・8月25日、マサチューセッツ州ブルックライン市にあるセント・ ポール教会でソプラノ・オペラ歌手である佐藤美保さん主催・出演のコンサー トがありました。5月には娘Sarahさんのピアノ伴奏でシューベルト、モーツァ ルト、8月にはラフマニノフの2曲、ベルディのアイーダのアリアと二重唱で聴 衆を魅了しました(注1)。佐藤さんの素晴らしい歌声に音楽を超えた感動を覚え ました。 驚いたことに、佐藤さんは同市に居を構えるURBAN REALTY GROUP(不動産会社) の代表取締役でもあります(注2)。現在不動産ビジネスはバブルがはじけた状 態になりつつあります。その中で佐藤さんの会社は発展を遂げ、最近は事務所 の人員拡大など目覚しい動きを見せています。成功の要因に興味を持ち、色々 お話を伺いました。また、佐藤さんのことはボストンの日本語情報誌「ボスト ンかわら版」(8月号)で「苦悩を突き抜け歓喜に至れ!」と題して取り上げ られました。 佐藤さんが1989年にボストンへ来たきっかけは、世界的に有名なボストン大学 芸術学部のオペラ・インスティチュート(注3)です。佐藤さんはそこで研鑽を 積むと同時にボストンで出会った同じ芸術家と結婚、二児の母となりました。 が不幸なことに様々な問題を抱えた夫は家族を残し自殺。途方にくれた佐藤さ んは社会福祉・生活保護を拒否して、自活の道を開くため大手不動産会社に勤 務。3年前に独立して現在の会社を立ち上げました。 佐藤さんの原動力は二児の他に、「自由と独立のすばらしさ」を実感・体験し たことにあると思います。また、武道で言う「山を見て木を見る」風のビジネ ス・センスにあると思います。これらの事は芸術に直接影響する要因として考 えられます。会社では、様々な人種のスタッフを抱え、複雑な問題に取り組み、 同時に雑用も怠らず、顧客に対するサービスにも気を配る。このような中で、 常に「自分を守ること」を忘れない。佐藤さんは「総合的思考能力」の必要性 を強調しました。 佐藤さんは、佐藤さん自身が過去に経験したような苦悩に直面する女性たちを 救う為の機関にも常時協力しています。米国と比べ女性の地位向上・子供の保 護が遅れる日本で、慈善事業としてまたビジネスとして展開可能な分野がある と筆者は考えます。今後の展開が期待されます。 (注1) ピアニスト・ロンジー音楽学校前学長のVictor Rosenbaunm氏、ボストン ・グローブ誌で「今年の音楽家」として選ばれたバリトン・オペラ歌手のRobert Honeysucker氏、バイオリニストのYuko Okadaさん、ピアニストのYoko Schwarz さんも出演しました。 (注2) http://www.UrbanRealtyGroup.net (注3) http://www.bu.edu/cfa/music/degrees/opera_institute/ 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com   (黒木氏はアメリカのグローバル戦略ビジネス開発会社で活躍中の人物) 2006.07.18 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (94) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 米国研究公正局 - Office of Research Integrity 最近、早稲田大学理工学部・松本和子教授の研究費不正受給・研究費不正流用 問題に関する記事が多数出ています。これは、日本で最近流行語となっている コーポレートガバナンス【corporate governance】(注1)や「内部統制」の 「適正化」・「透明化」に伴う現象の一つであると筆者はとらえます。私企業 IT分野ではその為の経営資源管理(ERP - Enterprise Resource Planning)ソリ ューションやビジネス インテリジェンス(BI -Business Intelligence)ツール が開発され広く活用されています。 「内部統制のチェックリスト」(注2)によると、「これは、なにも日本が特別 に倫理観が無くて不祥事が多いのではなく、欧米でも同様で、法廷会計 (Forensic Accounting)および不正検査士(Fraud examiner)という領域が あり経済上の犯罪を専門にしているくらいである。犯罪が絶えないのは、 「かね」を取り扱う会計にまつわることなのである。日本の場合は初歩的な不 正が多い特徴を持っている。なぜならば、内部統制制度に無関心(innocent) であり整備されてこなかったため、不正が簡単にできるからである。」とあり ます。 日本国内では、科学者による不正行為を防止するため、日本学術会議(注3)が 科学者の行動規範に関する検討委員会(注4)などを設けて対策に取り組んでい ます。日本学術会議は「科学におけるミスコンダクトの現状と対策 (平成17年 7月21日)」(注5)・「科学における不正行為とその防止について(平成16年3月 発行)」(注6)などを通して啓蒙活動を行っていますが、研究費不正行為分野は まだ広く知られていません。 米国では、メイヨ・クリニック(ミネソタ州)、エール大学(コネティカット 州)、コーネル大学(ニューヨーク州)などのアメリカの名門臨床/教育/研究 機関・大学が、連邦機関であるNIH - National Institutes of Health (国立 衛生研究所)からの研究費助成金不正受給および不正使用に関して連邦政府か ら告訴され、多額の和解金支払いに至っています。 メイヨ・クリニック(注7)では、米国国立衛生研究所およびその他の政府機関 から数百件を超える研究助成金を受給しています。それぞれの助成金は特定の 研究プロジェクトの費用をまかなうためのものであるにもかかわらず、メイヨ ・クリニックでは資金不足となっている他の助成金の経費に充当、あるいは研 究部門とは関係のない大学内部経費への不正流用を行っていた模様です。米国 司法省の調査によると、経費が複数の助成金の間で不正に転用されていただけ でなく、連邦法に沿って、経費の請求が連邦政府になされているかを監視する ことができる会計システムが導入されていないことが明らかになりました。 (この他に起訴例は数多くあり、それらの幾つかをマクロ・ミクロの観点から 分析することにより貴重な教訓が学べると思います。) 米国においては、1980年代に設置されたOffice of Research Integrity(ORI) ・米国研究公正局(注8)が中心となり、該当するCode of Federal Regulations (CFR)・アメリカ合衆国現行規則集(注9)に準じて研究内容と資金面両方からの 監査支援を行っています。ORIの対応策として、「ORIの権限は研究の公正さを 守る責任と不正行為についての告発や疑義をかけられた研究の調査、PHSから 研究資金を受けている全ての研究機関に対して疑いのある事件の受付・告発す べきかどうかを決める照会調査・公式調査・確認調査結果の報告義務付け」な どが含まれています(注10)。 ORIのDirectorを務めるChris B. Pascal(クリス・B・パスカル)弁護士(注11) によると、「ORIでは科学者の不正行為を見破るためのツール(注12)も紹介し ている。」と述べています。これは高度技術を要する画期的なものですが、研 究費不正受給・研究費不正流用に直接関係するものではありません。(莫大な 研究資金を扱う)某大手ヘルスケア団体・財務部門の担当者は、IT技術を駆使 した不正検出ツールはまだ応用範囲が限られていて、今後改良の余地が大いに あることを指摘しています。そして将来、このような技術の高度化により現況 が透明化し、様々な問題が発覚することを懸念しています。効果的なForensic Accounting (法廷会計)ツールの利用、Grant Administration System (助成金 管理システム)、Research Grant Transaction System(助成金運用業務システ ム)といったデータベースと分析機能を備えたアプリケーションツールの導入、 全体的な内部監査体制の充実などがキーポイントになりそうです。現在このよ うなツールは、運用のみではなく、内部監査の際にも活用されています。ただ、 内部監査官は助成金の監査のみをしているわけではないため、ルーティンの監 査というには至っていないのが実情です。従って、何らかの問題が提起された 助成金に対してのみ、詳細な監査が行われているようです。 上記の具体的な使用例・成功例などは、ORIが3カ月に一度発行するニューズ レターにも紹介されています。また、これには関係分野の最新情報、世界各地 からの事例、定期的に行われる会議の案内も掲載しています。ちなみに、次の ORI会議は7/24-25、「Mentoring and Supervision for the Responsible Conduct of Research」と題してSt. Louis, MOで開かれます(注13)。また同ニ ューズレター6月号によると、韓国が去る3月、ORIの文献「Introduction to the Responsible Conduct of Research」2万部を韓国国内研究者に配布した とのことです。 今後、日本の関係者がORIの情報・人材などを積極的に活用し、マクロとミク ロの両レベルで大学研究機構の適正化・透明化に役立てることが可能だと筆 者は考えます。そうすることにより(国立大学法人化が進む中)真の「大学力」 (注14)も養われるのではないでしょうか。 (注1) http://dictionary.goo.ne.jp/search/%A4%B3055584043511514100/jn/5/topic/ (注2) http://www.hi-ho.ne.jp/yokoyama-a/naibutousei.htm (注3) http://www.scj.go.jp/ (注4) http://www.scj.go.jp/ja/info/iinkai/kodo/index.html (注5) http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-19-t1031-8.pdf (注6) http://www.scj.go.jp/ja/print/pdf/taigai_reef.pdf (注7) http://www.mayoclinic.org http://www.sakuralifesave.com/hospital/mayo_2.html  (日本語) (注8) http://ori.dhhs.gov/ (注9) http://www.gpoaccess.gov/cfr/index.html (注10)上記(注5)23-24ページ、表1.外国のミスコンダクト対応策 (注11)http://www.aaas.org/spp/sfrl/projects/misconduct/pbios.htm (注12)http://ori.dhhs.gov/tools/data_imaging.shtml - Tools - Forensic Tools - Forensic Tools for Quick Examination of Scientific Images http://ori.dhhs.gov/tools/droplets.shtml - Tools - Data Imaging - "Forensic Droplets" for the quick examination of scientific images. http://ori.dhhs.gov/tools/actions.shtml - "Forensic Actions" for the quick examination of scientific images. (注13) http://epi.wustl.edu/epi/msrcr.htm (注14) 早稲田総研(http://www.w-ri.jp)保原万美さんが創られた言葉です。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com   (黒木氏はアメリカのグローバル戦略ビジネス開発会社で活躍中の人物) 2006.07.03 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (93) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ JMSDF 「あまぎり」・「やまぎり」 - Amagiri and Yamagiri 6月23日(金)から26日(月)まで、海上自衛隊練習艦隊の護衛艦「あまぎり」 と練習艦「やまぎり」がボストンを訪問しました。チャールズタウン海軍工廠 内にあり、世界最古の戦闘艦とされる米国船コンスティテューション号(注1) の近くにある第4番埠頭に停泊しました。 午後から雨が降り続いた23日夜は、「やまぎり」船上で地元の人達・関係者を 招いたレセプション。ここでは制服を着た海上自衛隊女性幹部実習生の姿が目 立ちました。24日には、「あまぎり」一般公開、剣道デモンストレーション及 び交流稽古(於メドフォード高校ジム)、そして海上自衛隊ブラスバンドコン サート(於ファニュエルホール内グレートホール)が行われました。25日は、 海上自衛隊ブラスバンドがフェンウェイ球場のレッドソックスゲームで米国国 歌を演奏する予定でしたが、雨で中止となりました。 この行事の開催前に、筆者は米国海軍の様々な活動を支援する非営利法人NAVY LEAGUE of the United States (注2)の某氏から「あまぎり」のことを知って いるかと聞かれました。 「1943年1月、第二次世界大戦さなかのアメリカ軍はニューギニア方面におけ る同海域の完全制圧を狙い作戦を展開していた。(ジョン F.)ケネディー中尉 を艦長とする魚雷艇PT109は、1943年8月のある日、真夜中のソロモン諸島沖ブ ランケット海峡で日本の駆逐艦「天霧(あまぎり)」の攻撃を受け撃沈された。」 (注3)とあります。 筆者が言うまでも無く、ジョン F. ケネディーはマサチューセッツ州ブルック ライン市(ボストンの一部)生まれで、最も人気の高かった米国大統領の一人 です(注4)。今回海上自衛隊練習艦が停泊したすぐ近くには、アメリカ合衆国が 国として正式にジョン F. ケネディーを記念する図書館・博物館もあります (注5)。「あまぎり」に関する歴史的背景を、今回のイベントに参加した日本 人は殆ど知らなかったようです。 24日12:30-14:30、宮崎県延岡市と姉妹都市関係を結んでいる、ボストン郊外 のメッドフォード市にあるメッドフォード高校体育館で開かれた剣道デモンス トレーション及び交流稽古には、「やまぎり」江嶋正・一曹(剣道六段)を含 む計12名の海上自衛隊員が参加しました。筆者はここで12年以上剣道の指導 (ボランティア活動)を続けていますが、同剣道教室のボランティア指導員、 生徒、観衆(老若男女計150名)との意義ある交流が行われました。当日は非 常に蒸し暑く、皆汗を滝のように流していましたが、多くの楽しい思い出が残 るイベントとなりました。剣道形の披露、海上自衛隊独特の練習、また団体戦 も行われ非常に盛り上がりました。結果は引き分けでした。四カ月前に交通事 故で坐骨複雑骨折を負った同剣道教室のアメリカ人指導員(元ライトウエイト 級ボクシングチャンピオン)には海上自衛隊練習艦剣道チームから特別の激励 プレゼントが贈られ、皆感動していました。筆者が指導しているメッドフォー ドの剣道グループには防具七組他が贈られました。 剣道交流会場の中心には大きな米国国旗が掲げられていました。日頃滅多に交 流することのない日本国・海上自衛隊の隊員が何カ月もかけてはるばるボスト ンまで来て、武道を通して地元の人達と心温まる交流を持ってくれたことに感 謝します。またこのイベントの成功は、在ボストン日本国総領事館スタッフ一 同のご尽力あってこそと敬意を表します。 今回はベンチャー・ビジネスとは違った分野の話になりましたので、終わりに 一つ関係する情報を提供します。マサチューセッツの南隣Rhode Island(ロー ドアイランド)州の黒船祭りでも有名なNewport(ニューポート)市に米国海 軍技術研究所の一つがあります。The Naval Underwater Warfare Center(注6) - 略称「NUWC」- と呼ばれるところで、潜水艦を含めた海中戦略・戦術技術の 研究開発が主です。が、そこには民間に移転可能なユニークな技術もあります。 例えば人工雪を効果的に作る技術です。米国特許庁から2004年9月28日 「Efficient snowmaking with polymer drag reduction」と題する特許を取得 しています(注7)。これを含めてNUWCは600以上のライセンシング可能な特許技 術を所有しています。さらにNUWCはCRADA(注8)適応機関として外部研究機関と の共同研究なども盛んです。今後日米間でこのような技術交流を行うことも友 好・親善につながるのではないかと考えます。 (注1) http://www.ussconstitution.navy.mil/ (注2) http://www.navyleague.org/ (注3) http://www.heatwave-toys.com/datafiles/legend/jfk-01.shtml (注4) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BBF%E3%83%BB%E3%82%B1%E3%83%8D%E3%83%87%E3%82%A3 (注5) The John F. Kennedy Presidential Library and Museum http://www.jfklibrary.org/ (英語メインページ) http://www.jfklibrary.org/NR/rdonlyres/B45E8446-A84D-4415-9806-F099079A0576/22321/JPJFK1.pdf (日本語ブローシュア) (注6) http://www.npt.nuwc.navy.mil/ (注7) United States Patent 6,797,191 (注8)CRADA=Cooperative Research and Development Agreement (米国連邦政 府と民間との共同研究形式)で、このCRADA契約を結ぶと企業は共同発明によっ て得られた特許発明を独占的にライセンス供与されます。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com   (黒木氏はアメリカのグローバル戦略ビジネス開発会社で活躍中の人物) 2006.06.01 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (92) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「水泳 - Swimming」 筆者の住むマサチューセッツ州アンドーバー(Andover)町の隣にツークスベ リー(Tewksbury)という町があります。そこの公立高校Tewksbury Memorial High School(注1)で美術を教えるDaniel J. Rogacki(ダニエル・J・ローギ ャッキー)先生はUnited States Masters Swimming - 米国マスターズ水泳協 会(注2)主催の各種水泳競技で数々のトップ成績を収めています(注3) (注4)。日本では社団法人日本マスターズ水泳協会(注5)が年齢別水泳競技 を定期的に行っています。ローギャッキー先生は、1998年モロッコのカサブラ ンカで開催された世界マスターズ大会では50歳以上クラスで世界記録も樹立し ました(注6)。同時に49カ国から参加した2,350人の競技者の中、金メダルを 1個、銀メダルを4個獲得しました。 ローギャッキー先生は忙しい教師としての仕事の合間に(筆者が毎日通う)ア ンドーバーYMCA(注7)で水泳の指導もしています。「必要は発明の母」と言 われますが、ローギャッキー先生は水泳競技者・指導者としての知識と経験を 基に実際の水泳競技と選手育成に役立つ(「Pace Master」と呼ばれる)装置 を発明・開発しました。現在米国特許庁で審査中です(注8)。2008年開催予 定の北京オリンピック(注9)の水泳施設でも利用可能な装置で、様々なプー ル施設で活用出来ます。現存するプールの数に関する正確な統計はありません が、USA Swimming協会(注10)のMick Nelson氏によると米国だけで約270,000 の各種in-the-ground poolがあるそうです。USA Swimming協会クラブ認定プー ルだけでも2,800あるとのことです。 社団法人日本マスターズ水泳協会HPによると、競技水泳人口は増加しています。 これは、「スポーツ化」した剣道人口の減少と対比できます。深刻な肥満問題 を抱える米国では、学校の自動飲料販売機から砂糖が大量に入ったものを取り 除く動きがあります。同時に、子供たちに運動の大切さを教える活動が盛んに なりました。事実、YMCAで水泳を習う子供たちの数が増えています。「Pace Master」は今後その市場性を発揮してくると思います。 最後になりましたが、米国には各学校の先生達を生徒と父兄が評価採点するサ イトがあります(注11)。これによると、ローギャッキー先生は非常に高い評 価を受けています。筆者も10年前にこの先生からスプリングボード・ダイビン グを習いました。(笑) (注1) http:www.mec.edu/tewksbury/TMHS/index.html (注2) http:www.usms.org/ (注3) Individual All American Listings for Daniel J Rogacki(5) http://www.usms.org/comp/aa/indaa.php?SwimmerID=033XF (注4) USMS Top Ten Swims by Daniel J Rogacki (273) - Below are all recorded individual top ten achievements for Daniel J Rogacki since 1993 - http:www.usms.org/comp/tt/toptenind.php?SwimmerID=033XF (注5) http:www.masters-swim.or.jp/ (注6) http:www.eagletribune.com/news/stories/19980701/SP_001.htm (注7) http:www.mvymca.org/ (注8) http://appft1.uspto.gov/netacgi/nph-Parser?Sect1=PTO2&Sect2=HITOFF&p=1&u=%2Fnetahtml%2FPTO%2Fsearch-bool.html&r=1&f=G&l=50&co1=AND&d=PG01&s1=%22daniel+j+rogacki%22&OS="daniel+j+rogacki"&RS="daniel+j+rogacki" (注9) http://en.beijing2008.com/ (注10) http://www.usaswimming.org (注11) http:www.ratemyteachers.com/schools/massachusetts/tewksbury/tewksbury_memorial_high_school/dan__rogacki 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com   (黒木氏はアメリカのグローバル戦略ビジネス開発会社で活躍中の人物) 2006.05.15 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (91) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「アフリカと中国 - Africa and China」 ジェトロのHPでアフリカに関する専門家を募集する案内が出ています(注1)。 開発途上国向け専門家募集のご案内(東アフリカ) 2006年5月8日 開発途上国向け専門家募集のご案内(アフリカ) 2006年4月27日 これは本年秋に北京で開催予定の「首脳レベルでの中国・アフリカ・サミット」 に対する動きの一つであると筆者は考えます。このサミットに関しては中国人 民日報社の昨年からの報道により色々と分析が可能です。ただ、これらの報道 は読者が選ぶ言語によって内容が明らかに相違する部分が出てきます。画像・ バナーの使い方、さらに検索エンジンで見られる内容も、言語によって印象が 変わります。比較すると面白いです。 日本語(注2)、中国語(注3)、英語(注4)、ロシア語(注5) 早稲田大学国際教養学術院・片岡貞治氏によると、「中国のアフリカ会議は、 日本のTICADプロセスを多分に意識していることは明白である。」と述べてい ます。さらに、「しかしながら、アフリカに対する日本のこうした実績や取り 組みは、日本の一般国民には広く知られていない。TICADと書かれても正しく 読めない人の方が多い(ティカッドと発音する)。一般の日本にとってアフリ カはまだまだ遠い存在である。地理的に遠いばかりでなく、心理的にも遠い存 在なのである。」(注6)と指摘しています。ちなみに、TICADとは東京アフリ カ開発会議のことです。 アフリカ一般に関する情報源の一つとして社団法人アフリカ協会(注7)があ り、当協会主催で2006年3月31日(金)〜4月2日(日)の3日間、横浜の赤レ ンガで「アフリカンフェスティバルよこはま2006」が開催されました。 中国がアフリカに強い関心を示す理由は明らかです。経済とエネルギーです。 BBC(注8)は中国のアフリカ戦略について、「China's growing focus on Africa」(注9)で報道しています。和訳は下記リンク(注10)で読むことが できます。 この中で注目すべきは、「同地域において中国が資金を提供した、700社と見 積もられるベンチャー企業の多くが、エネルギーおよび自然資源分野、つまり 石油ガス開発、銅、コバルト、石炭、金採掘に関わっている」ことです。また インドも中国のアフリカ政策を意識して、アフリカに対する政策を着々と進め ていることです。この状況は(筆者の見解ですが)アメリカの「China-India (チンディア)」政策とも関係してくると思います。 また、AFPC: American Foreign Policy Council (米国外交評議会)発行レポー ト「China's Africa Strategy (中国アフリカ戦略) by Joshua Eisenman and Joshua Kurlantzick、May 2006, pp. 219-224」(注11)で中国は、言語・文 化を含む"soft power(ソフト・パワー)"をアフリカ諸国で浸透させる計画を 述べています。これには、中国で中国語を学ぶ学生の3分の1以上がアフリカ からであること。また、中国のアフリカ主要大学における「儒教研究所」設立 計画についても述べられています。 最後に、筆者の住むボストンでも、アフリカに対する関心が高まっていること を指摘します。本年4月27日付けボストン・グローブ誌では「China seeks "strategic partnership" with Africa(中国はアフリカと戦略パートナーシッ プを求める)」と題する記事が報道されました。ハーバード大学のビジネス・ スクールには「Africa Business Club」(注12)があり毎年初春会議を開催し ています。 日本のアフリカに対するGrand Strategy (総合戦略)の必要性を筆者は強く 感じます。 (注1) www.jetro.go.jp/news/ (注2) http://j.people.com.cn/ (注3) http://www.people.com.cn/ (注4) http://english.people.com.cn/ (注5) http://russian.people.com.cn/ (注6) www.asahi.com/ad/clients/waseda/opinion/opinion185.html (注7) www.africasociety.or.jp/ (注8) www.bbc.co.uk/ (注9) http://news.bbc.co.uk/2/hi/africa/4619956.stm (注10) http://blog.goo.ne.jp/kitaryunosuke/e/dbf1cf150d79b915b3d4d1e2d99cfabd (注11) http://www.afpc.org/china-africa.shtml (注12) http://www.hbsafricaconference.org/2006/ 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com   (黒木氏はアメリカのグローバル戦略ビジネス開発会社で活躍中の人物) 2006.04.17 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (90) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「ロケット飛行機レーシング - Rocket Racing」 山形駅西口霞城セントラル(www.kajocentral.com)に、「秋水」(山形で生 まれたロケット飛行機)の模型があります。「第2次世界大戦末期、秋水はド イツのメッサーシュミットのMe163ロケット戦闘機の資料をもとに製造されま した。(中略)秋風は試験飛行の段階で終戦を迎えていますが、終戦までに5 機が完成しており、そのうちの1機が当時の日本飛行機株式会社山形工場(現 在の県立山形西高等学校付近にありました。)で開発・製造されました。」と あります。実物は、「全幅9.5m 全長6.05m 全高2.70m 自重1,505kg 全備重量 3,900kg 最大速度時速900km 上昇力10,000mまで3分30秒で上昇」とあります。 当時この設計図はドイツから日本へ潜水艦で運ばれる途中に破壊されたため、 日本へ届いたのは(別便空輸で運ばれた)ごくわずかな資料であったにも関わ らず、当時の技術者(異例の陸海軍共同体制も含めて)は一年以内で試作に成 功しました。「秋水」模型の説明の終わりにも「このように、当時から山形県 には優れた技術力が根付いており、それは現在も受け継がれています。」とあ ります。 今現在、ロケット製造技術に関しては継続されたものが見当たりませんが、関 係する分野では、山形酸素株式会社(www.sunene.co.jp)が特定非営利活動法 人・日本モデルロケット協会(www.ja-r.net)の支援・協力を行っているよう です。アメリカですと全国規模のNational Association of Rocketry (www. nar.org)、そして地域別にも、例えばマサチューセッツ東部ではCentral Mass Space Modeling Society (www.cmass.org)などがあり、スポーツとし て盛んにモデル・ロケット製作と打ち上げを楽しんでいます。近所のYMCA (www.mvymca.org)でも子供向けにモデル・ロケット指導教室を開いています。 実は、当時の「秋水」技術を今活かせるチャンスがあります。二年前民間によ る有人宇宙飛行を競う目的で始まったAnsari X Prize (アンサリ・エックス プライズ)財団代表のピーター・ディアマンディス会長(Dr. Peter H. Diamandis, MD)と、グローバルなベンチャー・コンサルティング会社BlueCar Partners, LLC(www.bluecarpartners.com)代表のGranger B. Whitelaw氏が、 NASCARのコンセプトに基づいたRocket Racing League(ロケット飛行機レーシ ング・リーグ)を航空宇宙娯楽事業として始めました。Rocket Racing, Inc.が このリーグを所有管理しています(www.rocketracingleague.com)。ちなみに、 NASCAR(ナスカー)とはNational Association for Stock Car Auto Racingの 略で、アメリカでは最大の自動車競技です。フットボールと並んで非常に熱狂 するスポーツですが、レースの度にアメリカ国歌斉唱に合わせて空軍機が頭上 を飛び、またレース開始前にレーサーも観客もキリスト教のお祈りを一緒にす るのが印象的です。 現在このロケット飛行機レース計画はアメリカを中心に進んでいます(注1)。 そこで使われるロケットの性能(注2)を見ると(30mm機関砲×2を武装した) 「秋水」とあまり差が無いことに気付きます。最新の材料・航空技術を使えば 「スーパー秋水」と呼ばれる新しいロケット飛行機が出来、ロケット飛行機レ ーシング・リーグにも参加出来るのではないかと著者は考えます。 (注1) 現在ロケット・レーシング・リーグとアライアンスを結んでいる所は 以下の会社・団体です。 The X PRIZE Foundation (www.xprize.org) Reno Air Racing Association (www.airrace.org) PixelPlay (www.pixelplay.com) Mumbo Jumbo (www.mumbojumbo.com) SimiGon (www.simigon.com) XCOR Aerospace (www.xcor.com) Velocity Aircraft (www.velocityaircraft.com) (注2)例として液体酸素と灯油を燃料とするXCOR EZ-Rocketを挙げます。 http://www.answers.com/main/ntquery?method=4&dsid=2222&dekey=XCOR+EZ-Rocket&curtab=2222_1&linktext=XCOR%20EZ-Rocket 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com   (黒木氏はアメリカのグローバル戦略ビジネス開発会社で活躍中の人物) 2006.04.03 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (89) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「中国と日本 - China and Japan」 3月21日にハーバード大学のウェザーヘッド国際問題研究所の日米関係セミナー で、『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(1979)の著者として有名な日本・中 国問題専門家のエズラ・ヴォーゲル氏(注1) と同大学政治学部客員教授カー ル・カイザー氏(注2) を迎えて「ヨーロッパと日本の戦争罪責感と戦後の和 解過程」に関する討議がありました。経済的な相互依存が進む日中間ですが、 近年、政治的・外交的距離は広がっていることがここでも指摘されました。そ してこの状況が将来及ぼす影響について問題提起されました。 ヴォーゲル氏が指摘した中で3点気になることがありました。1点目は、戦後 日本は中国で、(草の根的に)戦争罪責感を中国国民に表明するための様々な 努力を重ねたが、これらの活動が一般には知られていないこと。2点目は、中 国・国家政府の一部として存在するMinistry of Propaganda(宣伝省)の果た す役割と日本に対する活動です。このような国家機関は日本とかアメリカのよ うな民主国家では当然考えられません 。(民間レベルでもSina Corp、Netease. com Inc、 Sohu.com Incはオンライン嘆願[申請]書を使って日本が国連の安 全保障理事国に認められることを阻止する活動を続けています。そしてその結 果を国連に提出しています。)3点目は、近い将来日本が(台湾のように)中国 の外交戦略に飲まれてしまう可能性があるということでした。これらの状況は、 現在中国に進出している、またこれから進出を考える日本企業の戦略にも大き く影響すると思います。 米外交問題評議会(CFR)のジャーナル「FOREIGN AFFAIRS」3月/4月号には、 ジョンズ・ホプキンズ大学、ライシャワー・センターで所長を務めるKent E. Calder氏の「China and Japan's Simmering Rivalry (煮え立つ日中競争)」 と題する論文が掲載されました (注3)。 この中で、歴史的背景が深く関わ る現在の日中間摩擦を緩和させるには、(数々の例を考慮して)米国を含めた 多国的開発・共存体制が有利ではないかとの指摘がありました。さらに、(日 本と比較して目標・目的意識の高い)中国の外交戦術が今後両国のエネルギー 戦略を左右する可能性が高いことを示唆しました。ちなみに中国はインドとロ シアの外相会議を昨年6月ウラジオストックで持ちました。日本と直接関係する 内容を多く含んでいましたが、日本の出席はありませんでした。「日本の出遅 れ病」と言えます。 日本がアジアの中でさらに孤立を深めることを多くの政治経済学者が警告して います。新しい「大和魂」を見つける時ではないでしょうか。 (注1) http://www.law.harvard.edu/academics/graduate/hcia/panelist_bio_110.php (注2) http://ksgfaculty.harvard.edu/karl_kaiser (注3) http://www.sais-jhu.edu/insider/pdf/2006_articles/calder_fa_030106.pdf 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com   (黒木氏はアメリカのグローバル戦略ビジネス開発会社で活躍中の人物) 2006.03.15 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (88) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「徒然 その2 - ロシア - Russia」 先月、記録破りの大寒波に見舞われるロシアへ行ってきました。滞在中は連日 氷点下20度まで下がり、ボストンから持っていった防寒用具は不適格・不十分 でした。到着後、この時期に限ってシベリア一部がモスクワより暖かくなって いたことを知りました。モスクワ現地人でも、あのような寒さは滅多に経験出 来ないそうです。 滞在先はモスクワ北東部の郊外 - ソビエト時代に建設されたごく普通の典型 的なアパート・ビル (注1)- で、到着したモスクワ(シェレメティエヴォ) 空港 から約一時間のところ、高速ではない環状線道路を使いました。韓国車、 日本車がやたらと目に付き、フィアット、プジョーも多かったです。排気ガス 公害は深刻だと思いました。「ロシアのガソリンスタンド」と題する面白いサ イトがあります。http://www.rosianotomo.com/yomoyama/gs/gs.htm (注1)このようなアパート・ビルは、国から各個人所有方式に変わり、色々な 問題が生じています。ロシア大都市のインフラは老朽化が進み、特に水質は非 常に悪いです。蛇口から出る水はまず飲めません。調理に使う水も、ボトル水 か濾過された水を使わないとお腹を壊します。飲料水に限らず、ロシアの淡水 事情は非常に厳しいです。逆にこれは良いビジネスチャンスにつながると思い ます。 今回のロシア行きに際し、仕事道具の他に剣道具一式も持っていきました。地 元ロシア剣士と稽古をしました。そのうち一人はロシア大手レストラン経営の 会社(www.rostikgroup.ru)に勤めるロシア剣道チャンピオンでした。これがき っかけでおもしろいビジネスアイデアも見つかりました。 到着当日から、家庭的なロシア料理とウオッカの接待を受けました。ウオッカ の飲み方は一気に飲み干すロシア式。ボルシチ、ピロシキ、杏と色々なナッツ の入った鶏肉チャーハン、イカ入りクリーム・ソースをたっぷりとかけたマッ シュポテト。日本にあるのとほぼ同じ干し柿(でも大き目)。非常にヨーロッ パ的なチョコレートケーキ等、寒さに負けないために食べ物でした。モスクワ には日本食レストランが多くあり、モスクワ(シェレメティエヴォ)空港内に も寿司バーがありました。中で働いている人たちの多くは、日本人と顔そっく りのキルギスタン人でした。(注2) (注2) 筆者は違法で働くキルギスタン人と間違われて二度もロシア国家警察 から(大理石とシャンデリアの輝く地下鉄駅近くで)身分証明書の提示を求め られました。駅には必ずお金を求める貧しい人達(青年・老人も含めて)がい ました。 ロシアのスープは種類が豊富です。キノコを使ったものが多く、これに欠かせ ないのがちょっと酸味のあるロシア風ブラウン・ブレッド。これは和牛で作る シチューと良く合うと思いました。最近、無添加材料にこだわるスープ専門店 (例:Soup Stock Tokyo (スープストック東京)- www.soup-stock-tokyo.com - が人気を呼んでいます。このような店で、日本独自技術と素材を組み合わせ てロシア風に紹介するのも面白いと思います。 ロシアの伝統的な蜂蜜酒 - メドヴハ - はウオッカよりもずっと歴史が古く、 アルコール度はビール(注3)程度にのですがすぐ酔ってしまいます。蜂蜜酒は 日本でも製造・販売されているようですが、ロシア風の蜂蜜酒はまだ作られて ないようです。ちなみに、アメリカでは蜂蜜は各種アレルギーの治療薬として も使われます。が、この為には現地で取れた蜂蜜を現地の人が利用しないと効 果ありません。日本ではそのような使い方をしているのでしょうか?  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%9C%82%E8%9C%9C%E9%85%92 (注3) ロシアのビールは一般的に美味しいです。「バルティカ」と呼ばれるも のが良く目に付きました。アメリカのビールと比べると「こく」と味わいがあ ります。日本ではあまり見かけませんが、恵比寿ガーデンプレイスで売ってい るようです。 モスクワ市民の交通機関として使われているのは、(天井と窓ガラスに氷の張 った)バスの他にタクシーがありますが、これにはライセンスを持った普通の タクシー、10人乗りのバンを使ったローカルタクシー、それから(ライセンス の無い交渉により運賃を決める)プライベート・カーです。日本でも場所によ ってバンを使った相乗りタクシーが登場してもおかしくないと思いました。省 エネと環境保護に良いのではないでしょうか。 今回モスクワで一番困ったことは、旅行用小切手(米ドル)を換金出来る銀行 が非常に少なかったことです。どこの銀行へ行ってもいつも利用する人でいっ ぱいなのにも関わらず、なぜか小切手を換金するのは大変でした。やっと見つ けた所でも換金するまで一時間半もかかりました。次回は現金を持っていくほ うが良いことを知りました。 山形市のラーメン消費量は日本一であるとの色々な情報がありますが、モスク ワでロシアの素材を活かした日本風のラーメン店が流行るのではないかと思い ます。色々現地の人に聞いてみましたが、麺もかなり上質なものが出来るよう です。値段的には、モスクワ市内の日本食レストランでラーメン一杯は300ルー ブル(1260.47949 円: 3月9日レート)位で売られています。これは非常に高 価です。これをせめて200ルーブル(840.319662 円)位まで下げれば、モスク ワ一般庶民でも食べられるようになります。 リニアモーター駆動装置(「リニアモーターカー」ではありません)マーケッ トも地形の変化に富んだロシア市場には向いているようです。ロシア国立交通 技術研究所ではそのような装置(物流移動用)も開発されていますが、商業化 するための資金とある技術に欠けています。日本からのパートナーを求めてい ます。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com   (黒木氏はアメリカのグローバル戦略ビジネス開発会社で活躍中の人物) 2006.02.01 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (87) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「硫黄島 - Iwo Jima」 昨年末、日本から一冊の本が送られてきました。津本陽(*)著「名をこそ惜 しめ 硫黄島 魂の記録」(株式会社 文芸春秋)です。初出「オール読物」 2004年2月号〜2005年4月号をまとめたものです。 (*)http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B4%A5%E6%9C%AC%E9%99%BD 津本陽氏がこの本を執筆するに当たり、元海軍上等兵曹で第27航戦司令部にお られた(硫黄島協会事務局長)金井啓氏(**)がご尽力されました。金井氏は 80歳を越されています。最近まで明治神宮内至誠館道場などで剣道の指導をさ れていました。実は筆者も10代後半にこの金井先生から剣道の指導を受けまし た。(**)http://www.worldtimes.co.jp/col/every/ev030331.html 昨年日本で「男たちの大和」と題する映画が公開されました(www.yamato- movie.jp)。正確なデータに基づいた戦争映画(***)というよりは、一種の 人生ドラマのような印象を受けます。本当の意味での戦争の悲惨さ、平和への 叫びが伝わったのか疑問を感じます。また、そのような事自体日本国内(特に 青少年間)で問題意識化されているのでしょうか? (***)http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%A6%E4%BA%89%E6%98%A0%E7%94%BB 米国ベンチャー・ビジネスの推移は戦争と密接に関係しています。コラムニス トとして有名なNorman Solomon氏(www.normansolomon.com)は、下記のリン クで元米国国務長官コリン・パウエルとベンチャー・キャピタル会社との深い 関係などについて述べています。 http://www.commondreams.org/views05/0715-13.htm 米国と日本の大きな違いの一つは、米国は常に何らかの戦争・武力抗争を続け ていることです。これは米国にとって一つのグローバル戦略で、日本ではこの ようなことは考えられません。 米国社会を視覚的に捉えて最近気付くことは、米国国旗の数が増えたことです。 米国国旗売り上げに関する具体的な数字は入手できませんでしたが、例えば筆 者の近くにある郵便局では、全ての取り扱い窓口にアメリカ国旗が飾ってあり ます。そしてこれを異常と感じる人は一人もいません。子供達に聞いても、そ れが普通だと思っています。逆に、日本へ行ったアメリカの子供達から、どう して日本ではあまり国旗を見かけないのかと聞かれました。 米国の学校では小学校に入るころから、「アメリカ合衆国の主権のシンボルで ある星条旗に対して、全ての米国市民は敬意を払わなくてはなりません」とい う理由で、星条旗に対する「忠誠の誓い」を暗記させられます。これは米国上 下院合同決議で決まった連邦国旗法 (Federal Flag Code, PUBLIC LAW 94 - 344)によります。http://www.bcpl.net/~etowner/flagcode.html さらに日本では、日章旗・君が代を法制化する国旗国歌法案はつい最近(1999 年 8月 9日)参議院で可決・成立されましたが、米国では1949年8月3日(トル ーマン大統領の時)に毎年6月14日を「National Flag Day (国旗の日)」と して議会で可決・成立しました。NPOとしてwww.usflag.orgもあります。 日本ではまだ国旗・国歌を「国家主義」・「軍国主義」の象徴とする傾向があ るようですが、ますます競争を増すグローバル市場では、このような傾向を深 めるアメリカ・中国・インド・ロシアを相手に戦っていかねばならないのです。 この事実をどう捉えて、どう対処すべきか個人レベルでも考える必要があると 思います。「名をこそ惜しめ 硫黄島 魂の記録」を読みながら、その答えを 色々考えさせられました 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com   (黒木氏はアメリカのグローバル戦略ビジネス開発会社で活躍中の人物) 2006.01.16 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (86) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「プリペイド電話カード - Pre-paid Phone Card」 著者が日本へ行く度に閉口するのは日本国内の通信費・電話代です。固定式電 話、携帯電話、IP電話サービスと色々種類は豊富になりましたが、それらの利 用方法と金額のことになると、どれを使うと一番良いのか専門家に聞いても埒 があきません。 日本国内でのプリペイド電話サービス(フォンカードを除き)は携帯電話が主 ですが、米国では固定式電話、携帯電話また公衆電話からも利用できる非常に 便利で安価なプリペイド電話サービスが多種あります。 筆者が頻繁に使用するのは、MCI社(www.mci.com)がCOSTCO(www.costco.com) のような卸売り業者を通して出している料金追加可能なカードと、RNK Telecom 社(www.rnktel.com)が出している使い捨てのカードです。前者はトール・フ リー番号を使って、どこからでも全米1分2.9セント(3円強)でかけられます。 後者はローカル・アクセス番号を使って、米国全土は勿論のこと、世界44カ国 に1分1セント(1円強)でかけられます。後者の場合、トール・フリー番号 を通してもかけられますが、僅かの手数料を取られます。また、両方とも公衆 電話からかける場合は手数料が取られます。 こちら米国の固定電話は(加入する時の契約内容によって異なりますが)、同 じ市外局番とその周辺の市外局番内なら、何分・何時間接続しても基本料金に 含まれます。日本国内だと、市内通話でも3分で10円くらい取られるのでし ょうか。それに日本国内で普通の固定電話からIP式の電話また携帯電話にかけ る場合、またはその逆の場合、とても高くなったり安かったりまちまちで、非 常にわかりにくいと思います。通話明細がほしい時も手数料無料の米国と違い、 日本は手続きが必要でさらに有料になるなど複雑です。 例えば筆者が加入しているVerizon社(www.verizon.com)を通す固定式電話番 号サービスの場合、「978」が居住する地域の局番になります。無制限接続サー ビス、伝言サービス、電話転送サービス、3者会談サービス、受信電話番号認 識サービスなどを含む最低基本料金は税込み(全額の約2割)で1カ月約5,000 円です。無制限接続サービスは周辺7つの町が含まれます。「978」の市外局番 でつながるマサチューセッツ内市町村はまだ他にもあります。「978」以外に マサチューセッツ州内では「617」・「508」・「413」などの市外局番があり ます。契約内容・基本料金によって、これらの市外局番に電話をかける場合、 例えば時間を気にせず無制限にPCを最寄りのISP接続番号につなぎインターネ ットなどを使えます。僅かの追加料金で北米全域を含む市外局番に無制限でか けられるサービスもあります。 これと同じように携帯電話も契約内容・基本料金によって、固定電話と同様の サービスが得られます。固定電話と異なる点は、種類によって有料と無料(基 本料金に含まれている場合)の時間帯があることです。日本では電話をかけた 人が料金を支払うようですが、こちらでは「Air Time」料金というものがあり、 電話を受けたほうもその時間に対して料金を支払う場合があります。 従って、固定式電話の基本料金に含まれる局番、携帯電話で無料時間帯を上手 く使うと、米国全土、日本を含む44カ国に1分間1セントで電話がかけられる ことになります。面積が米国の約1/25の日本で、1分間1円の通話料でどこから でもかけられるサービスが出来ないものでしょうか?IP回線を使って経済的・ 技術的には可能だと思います。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com   (黒木氏はアメリカのグローバル戦略ビジネス開発会社で活躍中の人物)