ジェトロ山形作成                       最終更新日:2005年12月15日 2005.12.15 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (85) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「新しい農業ビジネス・モデル - New Agricultural Business Model」 筆者は先日、秋田で物凄いベンチャー精神を持った人に会いました。2004年9 月10日、NHKの21世紀ビジネス塾・シリーズ農業新時代でも紹介された秋田県 の「株式会社大潟村あきたこまち生産者協会(www.akitakomachi.co.jp)」 (以下、「AKPA」)涌井徹代表取締役です。 AKPA本社のある大潟村は、日本で2番目に大きい湖・八郎潟を干拓して生まれ た村です。涌井氏は1970年(21歳の時)、家族と一緒に新潟県十日町からこの 大潟村に入植しました。借金までして土地を購入、大潟村に将来をかけました。 が、翌年米の生産調整(減反)が始まり、悪戦苦闘の末、1987年AKPAを設立。 現在従業員160名、年商70億円以上。生産・加工・販売を一体とした新しい、 そして今までの農家の枠を打ち破った農業経営モデルとして全国から注目を浴 びています。 AKPAの顧客は50,000世帯、法人7,000社以上。顧客・消費者のニーズにとことん こだわり、無洗米、発芽玄米、鉄分やビタミンなどの栄養素を付加した保険機 能商品としてのお米、飲料、調味料などを次々に開発し、2年後の売り上げは 100億円を目標としています。また徹底した品質管理を行い、ISO 14001・9001 も取得済です。 筆者は涌井氏に会う前、アメリカでは農業はビジネス・産業として当然法人化 されているものという感覚を持っていました。しかし、涌井氏のお話からごく 最近までそう受け止められていなかった日本の農業の現状を初めて知りました。 日本の農業は転機を迎えているようです。確かに、日本国農林水産省 (www.maff.go.jp)と米国農林水産省(www.usda.gov)のHPを見比べると両国 の農業に対する課題と優先順位の違いがわかります。 AKPA本社では、広大な近代加工・研究開発設備のほか、大部屋式最新IT技術を 駆使した(「一度つかんだ客を失わない」、また「消費者の声に素早く対応で きる」)コールセンターも見ました。徹底した社員教育が行われており、社員 全員が見知らぬ筆者に対して明るい笑顔で挨拶してくれたのが印象的です。 Management Intelligence Technology, October 2005 (SMBC経営懇話会・三 井銀行グループ SMBCコンサルティング)で涌井氏は、「怖いのは権力者より お客さん。売ってこそお客さんが見えてくる」、また「今が一番のピンチであ り、今が一番のチャンス」と述べています。また『東北21(東北経済産業情報 2005年4月)』では、「当社(AKPA)はこれから、できるだけ多くの企業や研 究機関と組んでいこうとしています。決してすべてを自社で作るのではなくて、 得意とするものだけは自社で作って、ほかはどんどん外部とやっていけばいい と思っています。」と語っています。 涌井氏の考えで筆者が最も感銘を受けたのは、「(AKPAは)一番の米を作って いるわけではない」、「最高でないからこそ、それ以上の付加価値で勝負する」 「自分の米を最高のものだと思っていたら今やっているようなことはしなかっ た。最高でないから最高に近づく努力をする」、そして「(ビジネス)継続の カギは農業以外の情報」、「素材は秋田から、技術と情報は世界から」と強調 されていたことでした。この涌井氏の考え方は、今後世界舞台でも充分に通用 するのではないかと感じました。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com   (黒木氏はアメリカのグローバル戦略ビジネス開発会社で活躍中の人物) 2005.12.01 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (84) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「チンディア - Chindia」 10月8-14日付け英国の"The Economist(エコノミスト)"誌(www.economist. com)で、表紙に富士山の写真入りで"The sun also rises. A special issue on Japan's economic revival."(太陽を日本にたとえて)「日本 も再び立ち上がる」と題し、日本経済復興を特集しています。日本に関する明 るい中長期予報を出していますが、アメリカでも同じような見方をする情報が 目に付きます。その一例が、9月26日付けBusiness Week誌に出ていた「A Wide -Open Window in Japan (日本で広く大きく開けられた窓)」と題する記事で す。 http://www.businessweek.com/magazine/content/05_39/b3952141.htm 現在の日本の景気については色々な角度から見ると賛否両論だと思いますが、 現在日本のマスメディアで取り上げられていない分野として「チンディア - Chindia」があります。これは中国(China)、インド(India)の主に政治・ 経済分野の動きを一緒にして出来た新語で、今のところ日本語による詳細は見 つかりませんが、英語での説明は http://en.wikipedia.org/wiki/Chindia で 見ることが出来ます。 日本ではやっと、中国と並ぶインドに対する戦略が別々に取り上げられるよう になりましたが(*)、米国ではこの中国とインドを結合させた「チンディア」 は将来の重要戦略の一つになっています。 (*) インド投資・ビジネスミッション http://www.jetro.go.jp/events/others/20051110574-event インド投資セミナー 〜投資市場としてのインドの可能性〜 http://www.jetro.go.jp/events/seminar/20051129419-event 8月22-29日 Business Week誌では、著名な論説委員が「The Rise of Chindia (興隆するチンディア)」と題する記事を書いています (http://www.businessweek.com/magazine/content/05_34/b3948012.htm)。 同誌は2週に渡りチンディア特集を出しました。また、同誌では「What America Must Do To Compete with China and India (アメリカは中国とインドと競 争するために何をしなければならないか)」と題する記事でも (http://www.rediff.com/money/2005/nov/09bweek.htm)、問題の重要性を説 いています。 中国とインドを一つの単位と捉えた「チンディア」戦略の具体的内容は次号で 説明しますが、チンディアの底力となる要素は、全世界人口の三分の一を占め ること、BRICレポートで将来50年の成長率が最も大きいこと、両国は相補性を 持ち合っていること(**)などが挙げられます。 (**)一般に、中国はハードウエア、インドはソフトウエアが強く、また中国 は製造業、インドはサービス業が得意と言われています。さらに、中国は 「Physical Market」、インドは金融市場に強いとも言われています。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com   (黒木氏はアメリカのグローバル戦略ビジネス開発会社で活躍中の人物) 2005.11.01 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (83) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 徒然 - Tsurezure 約5年前、筆者は蔵王で露天風呂につかりながら、美しく舞い降りてくる雪を 見ました。あの美しい光景は生涯忘れる事が出来ません。現在住んでいる所で 「温泉」のある部屋は3階です。晴れた日は星空を見ながら、薬用入浴剤 (www.onsenkagaku.com)を入れて「日本の名湯」を楽しんでいます。時には シャワー湯を上から出しながら蒸気を充満させて雰囲気をだします。時には、 コンピューターを浴槽の外に置いて仕事をしながら入ります。そして、近くの 図書館から借りてくる色々な雑誌や本を見ています。メルマガで記載するアイ デアの多くは、ここから出てきます。 つい最近日本へ行きました。山形で、麦工房(シベール) - www.cybele.co.jp - のラスクを発見してこちらに持ち帰りました。アメリカにはこのような商品 はありません。そもそも、ラスク(Rusk)という表現が通じません。最も近い 商品だと、イタリア系の「Biscotti(ビスコティー)」がありますが、味・食 感など山形で見つけたラスクとは比べ物になりません。麦工房のラスク袋に 「そのままでは食べにくくなったパンの2度のおつとめ」とありますが、この 方法、味と感覚でアメリカでも受けると思いました。 山形滞在中、体調がすぐれず、梅肉エキスを飲まされました。子供の時に母か ら無理やり飲まされた覚えがあり、着ていたシャツにこぼしながら顔をしかめ て飲みました。でも梅肉エキスの効果は抜群。調子が良くなるのを感じました。 空港で入手した梅肉エキスは創業明治43年(1910年)の佐藤ライト製薬株式会 社(www.sato-light.com)製です。この会社は社員数わずか5名ですが、その 製品は全国的に出回っています。空港で入手した製品箱には英語の説明もあり ます。佐藤ライト製薬のHPには、この梅肉エキスの作り方まで紹介されていま す。ちなみに米国で梅肉エキスは、いろいろな心臓障害、皮膚障害用また鎮痛 剤としても紹介されていて、一部の健康食品店を通して入手できます。中国で このような物はないようです。 元来筆者はコレステロールが高くなりそうな食べ物が好きなのですが、今回の 日本滞在中、食生活を変えるように警告を受けました。出来るだけ、バターと 砂糖が使ってあるものは避けるように言われましたが、自宅の温泉で読書中 「Fish-Oil Cookies (魚に含まれているオイルの入ったクッキー)」と題す る記事を見つけました。 (http://www.technologyreview.com/articles/04/09/innovation20904.asp) 魚に含まれるオメガ3フィッシュオイルは肉・野菜からは摂取できません。そ れには、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が多く含 まれています。しかし、このような栄養素・成分は、お菓子・パン・麺・パス タ他に入れると分解・破壊されてしまうのが難点です。これを解決する為の 「Nutrient Encapsulation (栄養素カプセル化)」技術が開発されています。 例として、ニュージャージー州ニューワーク市のBioDelivery Sciences International社 (www.biodeliverysciences.com)があります。また大手食品 製造会社であるKraft Foods社も同技術開発に力を入れています。同社の Nanotek research consortium (ナノテク研究コンソーシアム)は大学研究所 に研究資金を投資しています。信頼できる、ある市場予測会社のレポートによ ると、同分野の市場は2008年までに400億ドルを超えるとあります。 最後になりましたが、多くの人種と言葉が多彩な文化を形成するアメリカでは (アメリカだけに限ったことではありませんが)、「友達」を作ることの重要 性を感じます。日本では一般に「五縁による人脈づくり」と言われ、血縁、学 歴、地縁、社縁、楽縁が重要視されます。単一民族でない所では、それ以上に 最初の笑顔(と握手)から始まる「友情」がとても大切です。勿論、第一印象 で「この人は冗談が通じない」と感じても、話していく中で止めどなく面白い 部分があることがわかる人もいます。どちらかと言うと、こちらでは(男性の 場合)背広姿より、リラックスした服装の時が違和感を与えないので「友達」 を作るのには良いです。一度、ピアノで世界的に有名なスタインウエイの代表 取締役を最初「漁師」と間違えて大笑いしたことがあります。 筆者が住む家(アトリエ兼倉庫)の近所には、このような「友情」で(お客と) 結ばれた郵便局があります。そこには、一人の局員しかいません。ちなみに、 米国の郵便局では金融業務を扱っていません。米国郵便局のHP(www.usps.com) と日本郵政公社のHP (www.post.japanpost.jp)を比べると面白いことに気付 きます(興味のある方はHPをご覧ください)。この小さな郵便局で12年間務め たLarryさんが10月26日付けで退職しました。28日に西海岸へ移る為です。この 日、多くの人達が別れを惜しんでかけつけました。壁は今までの功績を称える お礼のカードで埋まっていました。写真を撮る人もいました。このような光景 は日本の郵便局で見られるのでしょうか? 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com   (黒木氏はアメリカのグローバル戦略ビジネス開発会社で活躍中の人物) 2005.10.17 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (82) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 英治出版と「ネクスト・マーケット」 - Eiji Press & 「Next Market」 先日、日本から出版されたばかりの本を受け取りました。C.K. プラハラード著 (スカイライトコンサルティング(株)訳・発行)「ネクスト・マーケット 〜 「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略」です。この本の出版プロ デューサーは、英治出版株式会社(www.eijipress.co.jp)の秋元麻希さんです。 ちなみに、同社は東京都渋谷区恵比寿南にある創立6年を迎えるベンチャー企 業です。高い経営目標と崇高な経営信念を持っているようです。 英治出版が提供するユニークなサービスの一つとして「ブックファンド」があ ります。これは、「出版することにより期待できるリターンは、金銭的価値だ けでなく、ブランディング効果やNPO活動の支援などの社会的価値もあるはず」 という理念に基づいています。この仕組みを使って、(個人出資、企業出資を 受け)これまでに29タイトルの書籍が出版されました (http://www.eijipress.co.jp/company_profile/bookfund.php)。 出資者は、個人の場合もあれば企業の場合もあります。同じようなファンド形 式で作られたものとして、上映中の映画「忍-SHINOBI」があります (http://www.shinobi-movie.com/index2.html)。 今回出版された「ネクスト・マーケット」は「世界経済における次なる成長市 場として、インド、南米、アフリカ、中国など、これまで「貧困層」(ボトム ・オブ・ザ・ピラミッド)とされてきた層に着目するもの」です。この「貧困 層」(ボトム・オブ・ザ・ピラミッド)は、「Bottom (もしくは、Base) of the Pyramid (BOP)」と言われるもので、3年前、この「ベンチャー・ビ ジネス最前線」においても取り上げました。 http://www.jetro.go.jp/jetro/offices/japan/yamagata/mail/mm_vbfl02.txt 「ベンチャー・ビジネス最前線(26)- BOP市場 その一」(2002.11.01) 「ベンチャー・ビジネス最前線(28)- BOP市場 その二」(2002.12.01) 「ベンチャー・ビジネス最前線(29)- BOP市場 その三」(2002.12.16) 「ネクスト・マーケット」の著者C.K. プラハラード氏は、「ミシガン大学ビ ジネススクール ハーベイ・C・フルハーフ記念講座教授(*)。企業戦略論の 第一人者として、多国籍企業の企業戦略と、経営者について研究を重ねていま す。」 −http://www.eijipress.co.jp/wharton/05_author/001/ (*) http://www.bus.umich.edu/FacultyBios/FacultyBio.asp?id=000161713 「ネクスト・マーケット」に関して、英治出版の秋元麻希さんは、「近年、 BRICs(**)はじめ途上国ビジネスへの関心は高まりつつありますが、本書は その具体的かつ詳細な事例と体系的な理論を示した最初の書と言えるのではな いかと思います。また、世界的に意識が広がっている貧困問題についても、解 決への有力な道筋を示した画期的な論考です」と述べています。 (**)ブラジル、ロシア、インド、中国の4か国の頭文字をとった造語。 http://dic.yahoo.co.jp/tribute/2004/05/07/1.html BOP市場は日本人にとって理解しにくい部分もあると筆者は考えますが、本書 は真剣に将来を考える人たちにとっての必読書だと思います。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com   (黒木氏はアメリカのグローバル戦略ビジネス開発会社で活躍中の人物) 2005.09.15 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (81) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「PTC ヘルス・グループ - PTC Health Group LLC」 平成7年度以降、国内の主要国立大学に開設されたベンチャ−・ビジネス・ラ ボラトリ−(VBL)の設立趣旨として、「将来の科学技術立国を先導する独創 性豊かな人材の育成の場として、また昨今の日本経済の閉塞感を打ち破るもの」 とあります。現在国内には約40のVBLがあり、様々な研究・商品開発に取り組 んでいますが、成功例は少なく、国外まで影響を与えた例は今までありません。 山形大学にもベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(www.vbl.yamagata-u.ac. jp)があり、産学官連携で様々なプロジェクトに取り組んでいます。その中の 某社で開発された技術にヒントを得て、9月8日、米国においてPTC Health Group LLC(PTC ヘルス・グループ)が設立されました。この新しい会社は、 アメリカで国レベルの問題となっている偏食による肥満問題などに取り組むこ とを使命に掲げています。 米国大統領府と保険福祉省が維持管理する - www.healthierus.gov - のHPで は「Obesity is epidemic in the United States. (肥満は米国内に蔓延する 病気である)」と言われています。さらにホワイトハウスには、フィットネス を専門の課題とするオフィスまであります(www.whitehouse.gov/infocus/ fitness)。ちなみに、日本首相官邸のHPで「肥満」をキーワードに検索しても 何も出てきません。 筆者は今年3月15日付け「ベンチャー・ビジネス最前線(73)」で、「肥満と 節エネ」を取り上げましたが、肥満はエネルギー消費問題とも直接関係してき ます。さらに、高騰を続ける医療費問題にも大きく影響します。肥満の患者を 抱える病院で働く医療関係者の業務はまさに肉体労働です。PTC ヘルス・グル ープの今後の活躍でこのような問題が少しでも解決されることの意義は非常に 大きいです。 PTC ヘルス・グループは、グローバルな見地で、中国を含めたアジア諸国、イ ンド、アフリカ、中南米、ヨーロッパ諸国に対しても「食」を通した人的・技 術的交流とビジネス展開を考えています。PTC ヘルス・グループ創立メンバー の一人にはバリッド・テクノロジー・グループ社(www.validtechnology.com) 主要メンバーのDr. Jinning Liu (劉金寧・材料工学博士:中国人女性)が選 ばれました。今後の動きが期待されます。 今回同社設立のきっかけとなった元の技術は、1930年代ドイツで発明されまし た。最初の応用分野は第2次世界大戦中(主に、英国・フランスによって)作 られた「Mosquito Bombers (蚊のように軽い爆撃機)」でした (http://www.tbp.org/pages/Publications/BENTFeatures/Monahan.pdf)。 この技術がPTC ヘルス・グループを通して人類の生活を豊かにする分野に応用 されることを心から願っています。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com   (黒木氏はアメリカのグローバル戦略ビジネス開発会社で活躍中の人物) 2005.09.01 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (80) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「鶏ビジネス - Poultry Business」 米国におけるガソリン価格が、レギュラーでなんと1ガロン(約3.8リットル) 平均$2.6(約300円。8月22日付www.gaspricewatch.com)になりました。最も 高い所はカリフォルニア州のロング・ビーチ市で$3.49、安い所はワイオミン グ州エバンストン町で$2.14でした。これは、原油の需要・供給の崩れが原因 ではなく、テロの恐れによるものであることが一般に報道されています。 8月16日、米3大テレビネットワークの一つABC放送(アメリカ放送会社)では、 鶏油を車に入れて走る人も出てきたと報道していました。実際には七面鳥・豚 などの動物油、ほぼタダ同然の再利用植物性(大豆)油をディーゼル・エンジ ン用燃料と混ぜているドライバーもいるそうです。 8月17日、アトランタ州のWXIAテレビ局によると、フロイド郡のスクール・バ スは鶏油をディーゼルに混ぜて走っていることを報道、これは単に燃料費を節 約するだけでなく環境にも良いことを指摘しています。そして、同州にある空 軍基地、また電力会社で使われる作業車においても同種のバイオ燃料が利用さ れているそうです。 Rocky Mountain Institute - www.rmi.org - (ロッキー・マウンテン研究所) 創立者の一人 Amory B. Loving氏は、SCIENTIFIC AMERICAN - www.sciam.com - (サイエンティフィック・アメリカン)9月号の中で、「自動車の全体重量を 減らすことによって燃費を大幅に向上させることが出来る。が、問題は安全性 と快適性を失わない車両の軽量化対策である」ことを指摘しています。これに は、軽くて頑丈な(通常、石油を原料とする)高度なポリマー材、カーボン・ ファイバー材などが要求されます。 FeatherFiber(フェザーファイバー)社(Nixa, MO)代表取締役のDavid Emery (デイビッド・エメリー)氏は上記のような車のパーツを、鶏羽毛を使って製 造する技術を完成しました。同社技術は、米国農務省農業研究部(www.ars. usda.gov)*が所有する特許を基に、25年以上の食料加工技術の経験を持つエ メリー氏が実験と改良を加えて作り上げました。同特許の技術供与は、アメリ カ大手鶏肉会社Tyson(www.tyson.com) と製薬会社のMaxim Pharmaceuticals (www.maxim.com)も受けましたが、両者とも技術完成には至りませんでした。 エメリー氏はイギリスで生まれカナダに移住、アメリカへはこのプロジェクト を立ち上げる為に来ました。タイム誌2004年10月11日号によると、フェザーフ ァイバー社の技術は自動車用合成素材、シロアリに強い建築資材、各種医療機 器部品、紙幣材にも使えます。 http://www.time.com/tim/covers/1101041011/nextagency.html ちなみに、肉鶏・採卵鶏から産出される羽毛は、日本で年間5-9万トンと言わ れています(食総研特許情報No.k-323-1)。「その一部が(現在問題となって いる)フェザーミールとして鶏・豚用飼料に還元されているばかりで、大部分 は、廃棄物として埋め立てられている。」とあります(米国では毎年およそ 230万トン出ます)。 さらに、デラウエア州立大学のリチャード・ウール教授は、フェザーファイバ ー社で製作されたペーパータオルに似たケラチン質のマットを何層にも重ねて (そしてこれに大豆原料の樹脂を注入して)コンピューターの回路基盤を製造 する技術の開発を進めています。この計画には、米インテル社(www.intel.com) も専門知識を提供し、またアメリカ農務省からも50万ドルの助成金が出ること が決まっています(8月23日確認)。このプロジェクトは、鶏の羽根から炭素 繊維を作ることが目的で、「窒素を加えて羽根繊維を熱すると素材は20倍も硬 度を増し(体積は80%減少)、中は空洞で軽いまま、より強固な合成物を作る ことが可能だ。」と述べています。 http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20050224305.html フェザーファイバー社は現在アメリカ国内でフル・スケールの製造工場を建設 する為の戦略パートナーを探しています。全米で50-60の工場建設が可能であ り、また日本では2-3の工場建設が考えられるそうです。日本国内では、大阪 の某社が既に(製品が完成した場合の)販売権を獲得していますが、エメリー 氏は出来ればどこかとジョイント・ベンチャーの形で製造施設を築きたいと述 べています。 最後になりましたが、米国農務省農業研究部の技術移転部門の最高責任者によ ると、フェザーファイバー社が使用している技術は、米国農務省農業研究部の 特許が基なので、フェザーファイバー社以外に米国農務省農業研究部と優秀な 技術を持った企業もしくは外国政府(例えば、日本の国もしくは県レベルの農 林水産家畜関係機関)間での共同研究開発が可能です。従って、日本でこのよ うな技術を開発・普及させたい場合は、国・県の担当部署、地元の化学・化成 関係会社、養鶏関係会社団体が(例えば第3セクター形式で)一丸となって、 米国農務省農業研究部からの技術移転・共同開発を行うことが可能であると考 えられます。 *同研究部開発技術の中に、鶏汚物を利用して工業汚水から金属を取り除く技 術もあります。その他、日本の国土・市場にマッチした(現在アメリカでは利 用されていない)技術・ノウハウを多く保持しています。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2005.07.15 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (79) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「中国(中華人民共和国)のシンクタンク(智庫) - Chinese Think Tanks」 複雑化する日中関係であまり述べられていない戦略の一つに、(日本企業・団 体が講じる)中国のシンクタンクとの連携体制があげられます。 The National Council for Eurasian and Easat European Research (www. nceeer.org)の発行するジャーナルの一つに「Problems of Post-Communism (共産主義後の問題)」があります。この2002年3・4月号に「The Role of Think Tanks in Chinese Foreign Policy - 中国外交政策におけるシンクタン クの役割」(He Li 著)と題する論文が出ていました。中国におけるシンクタ ンク発達の経緯、力関係、構造説明から始まり、中国で重要性を増す同業界に ついて詳しく述べられています。その中に、メジャーなシンクタンクとして下 記団体が挙げられています。 【シンクタンクの名前,設立年,所属団体,所在地,スタッフ人数】 ・Center for American Studies,1985,Fudan University (復旦大学),上海, 20名 - 米国研究 ・Center for European Studies,1996,Remin University (中国人民大学), 北京,5名 - ヨーロッパ研究 ・Center for Japanese Studeis,1990,Fudan University,上海,10名 - 日本研究 ・China Institute for International Strategic Studies (CIISS),1979, MND,北京,100名 - 軍事関係問題研究 ・China Institute for International Studies,1956,MFA,北京,100名 - 国際関係研究 ・China Institute for Contemporary International Relations,1965,MSS, 北京,340名 - 現代国際関係研究 ・Institute of American Studies,1980,CASS,北京,51名 - 米国研究 ・Institute of Asia-Pacific Studies,1988,CASS,北京,61名 - アジア環 太平洋研究 ・Institute of East European, Russian, and Central Asian Studies,1964, CASS,北京,139名 - ヨーロッパ、ロシア、中央アジア研究 ・Institute of European Studies,1981,CASS,北京,46名 - ヨーロッパ研究 ・Institute of International Studies,1997,Qinghua University (清華大学),北京,10名 - 国際関係研究 ・Institute of Japanese Studies,1981,CASS,北京,49名 - 日本研究 ・Institute of Latin American Studies,1961,CASS,北京,67名 - ラテン アメリカ研究 ・Institute of West Asian and African Studies,1961,CASS,北京,66名 - 西アジア・アフリカ研究 ・Institute of World Economics and Politics,1964,CASS,北京,138名 - 世界経済・政治研究 ・Shanghai Institute for International Studies,1960, Shanghai Municipality (上海市),上海,106名 - 国際関係研究 MND: Ministry of Defense - 国防省 MFA: Ministry of Foreign Affairs - 外務省 MSS: Ministry of State Security - 国家安全省 CASS: Chinese Academy of Social Sciences - 社会科学学会 上記団体の情報は同論文p.36に記載されています。日本では、上記を含むシン クタンクからの情報を加工(再加工)して売られている情報が使われています が、このようなシンクタンクと積極的な関係を直接樹立してビジネス開発に役 立てている企業は少ないと思います。中国側は、日本国内の中枢部分にまで入 りこんだ情報収集をしています。日本でもこのようなスペシャリストを養成す る必要があるように思えます。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2005.07.01 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (78) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「ロシア・リニア計画」 - Maglev Project in Russia 去る6月22日、元ソニー株式会社常務取締役、現同社顧問の郡山史郎氏主催に よる第5回C−21ビジネスサロンにおいて、2010年までにロシア共和国 極東 ウラジオストック市とハバロフスク市間720キロを新しい超電導リニア技術を 使い約10時間で結ぶ計画を、米国マサチューセッツ州のバリッド・テクノロジ ー・グループ- Valid Technology Group -(www.validtechnology.com)*が発 表しました。 *日本語版は下記URLからご覧いただけます。 http://www.validtechnology.com/images/ValidTechnologyGroup-Japanese.pdf この計画の基本となる部分は(1)「超電導リニアの父」と呼ばれる京谷好泰氏 (元日本国有鉄道副技師長)が1987年3月までに開発した反発式超電導磁石技術、 (2) 1990-1993年の米国連邦政府(国防省・エネルギー省・運輸省)召喚に よる第2次マグレブ(リニア)計画で日本から米国へ移転された(1)の技術、 (3) 過去10年間(1)・(2)の技術を基に発展させ米国で検討を繰り返した 技術です。 当計画は上記の京谷好泰(Yoshihiro Kyotani)氏、元米国運輸省鉄道局リニ ア技術担当・チーフサイエンティストのジョン・ハーディング(John Harding) 氏、そしてロシア・中国の専門家などを含むグローバルなチームが中心となっ て進められており、最終目的は上記2都市間における建設にとどまらず、将来 日本からヨーロッパまでを陸路で結ぶこと、また、同技術を広く他分野に応用 し全人類の平和に貢献することにあります。さらに技術立国日本にとって当計 画は、これからのグローバル戦略の確立に役立つと考えられます。 会場には日露友好協会(www.nichiro.org)常任理事 中村忠敬氏も参加し、こ のような計画が極東地域経済開発に及ぼす影響を指摘、日露間にとどまらず日 米・日中・日朝・日韓関係に貢献出来る可能性を秘めていることも示唆し、単 なる夢ではないことを強調しました。さらに中村氏は、「ウラジオストックと ハバロフスク間はほぼ一直線の距離であるが、交通手段の発達が遅れている。 雪・雨・氷に影響されず非接触浮上で高速走行可能なリニアは非常に適してい る」とも語っています。また、ロシア東欧ファンドを管理するフランス系ソシ エテ ジェネラル アセット マネジメント(www.sgam.co.jp)公的資金担当部長 の藤崎宏和氏は、ロシア極東においてエネルギー・情報分野のビジネス開発に つながるリニア開発は多面的可能性を秘めていることを指摘しました。 本計画の特徴は、1980年代後半までに確立された「確証済み」リニア技術 (1. 反発式・連続配置型超電導磁石と冷却装置、2. U-字型高架ガイドウエイ ・水平浮上コイル・側面推進案内コイル・リニア同期モータ)が土台となって いることであり、現在山梨で実験が継続されているリニアそしてドイツで開発 されたトランスラピッドと比べると、建設費、運営費、速度、安全性、信頼性、 維持の容易性の面で有利なシステムとなります。また、本計画で利用される技 術は他分野への応用が可能で、社会・文化・経済的効果だけではなく、建設・ エネルギー・製造・ハイテク分野雇用拡大に繋がることが期待されます。 会場では、「なぜ極東ロシアにリニアか」という質問も出ました。色々な理由 があげられますがポイントを述べると、現在のモスクワ地域と対抗する極東ロ シア地域の構図があります。これは、極東ロシア地域に住んでいる人達の文化 ・心理・歴史的構造の違いから来ており、この地域開発に貢献可能なハイブリ ッド(日・米・露)技術に期待がかけられています。ロシア極東地域の高度な 科学技術力はあまり知られていませんが、このような大型インフラ技術プロジ ェクトを成功させる為の人的資源も極東には豊富にあります。 当計画にはあるロシア政府団体も非常に興味を示しており、また米国において もハイテク企業を中心とする大手投資家グループが日本の動きに注目していま す。さらに、タンザニア−ザンビア鉄道計画に携わった中国関係者も関心を示 しています。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2005.06.15 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (77) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「高吸収性樹脂 - SAP(Super Absorbent Polymer)」 某化学製品商社(中国・アメリカ)によると、中国でのSAP(Super Absorbent Polymer) - 高吸収性樹脂 - が不足しています。このSAPは、元々「アメリカ で開発されました。成分は主にポリアクリル酸塩で、白や淡い黄色の粉末で無 臭です。その吸収力は粉末そのものの重さの約50〜100倍のおしっこ(等)を 吸収し、さらに一度吸収した水分を外から圧したりしても、ほとんど戻さない という特徴もあり、現在の紙オムツの快適性能は、これなしでは語れないほど の重要なものです(http://www.happy-mama.com/29_feat/040528/03.html)。」 同主成分を基にするSAPは女性用製品分野でも欠かす事が出来なくなっています。 さらに、農業分野でも応用されています。 グローバルインフォメーション社による「市場調査報告書:高吸水性樹脂:市 場戦略と将来予測」の中に、現在の主なSAP製造会社として21社挙げられてい ます。各社とも価格競争の激化・国内需要の鈍化に伴い様々な戦略を繰り広げ ています。経済発展に伴い紙おむつを使う地域がアジアを中心に拡大している ことを狙った戦略のようですが、このSAPは非生分解性であるため、環境には 悪影響を及ぼします。日本の場合、使用済み紙オムツは生ごみと一緒に回収す ると聞きましたが、その後どうなるのか考えると疑問です。 中国の場合、全人口約13億人の約2割が女性用を含むSAP製品を購入する能力が あると推定されています。しかもそれらの人口の殆どは大都市に集中していま すので、ごみ処理・環境問題悪化に拍車をかけるのではと考えられます。 九州大学農学部附属遺伝子資源開発研究センター・原敏夫助教授が、納豆のネ バネバから合成する納豆樹脂の開発とその利用に取り組んでいます (http://www.kyushu-u.ac.jp/magazine/kyudai-koho/No.2/kenkyu-2.htm)。 原敏夫助教授が開発した納豆樹脂は、100%天然素材からなる生分解性、吸水性 及び可塑性を特徴とするきわめて新規性の高いエコマテリアルです。現在、 「食べられる容器」の試作にも成功しているそうです。また、この納豆樹脂は 水を吸収すると、膨潤して透明なハイドロゲルになります。保水能力は抜群ら しく、納豆のネバネバたった1グラムで5リットルの水を蓄えることができま す。市販の紙オムツや生理用品の5倍の吸水力があるとのことです。 社会における所得分配の不平等さを測る指標としてジニ係数(Gini coefficient)が使われますが、世界銀行が2003年に発表した世界開発レポート (http://www.jiten.com/dicmi/docs/w/12509.htm)によると、中国のジニ係数 は0.403。これは世界的に認知されている危険レベル0.4より高くなり、 Merrimack College政治経済学He Li (李和)教授は、この数字が今後ますます 高くなることを警告しています。『中国経済時報』には呉忠民著“「貧富格差 の現状合理説」を正す”が掲載されています (http://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/030506kaikaku.htm)。 SAP分野に限らず中国に進出する日本企業の活躍は凄まじいと思います。が、 中国には日本では考えられないような社会問題が蓄積・悪化しています。会社 利益を追及すると同時に、現地社会の問題を一緒になって考えながら企業戦略 を立てていくことが大切だと思います。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2005.05.16 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (76) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「日露友好心理学者 - ババーラ・シドロバ - Varvara Sidorova 」 5月9日はロシア唯一の政治的祝日。対ドイツ戦勝60周年記念日です。テレビで は米国ブッシュ大統領がモスクワを訪れ記念式典に参加した様子が報道されま した。小泉首相の画像も出ました。私の住むAndover市では、米国に移住した (旧ソビエト)ロシアの人達が集まって、戦死した先祖や親戚、友人の霊を (ウオッカを飲みながら)弔っていました。 来る8月は日露戦争終結100周年です。国立公文書館・アジア歴史資料センター (Japan Center for Asian Historical Records)のHPに日露戦争特別展 - 公文書に見る日露戦争 - が掲載されています (http://www.jacar.go.jp/frame1.htm)。米国ではwww.portsmouthpeacetreaty. comでポーツマス講和条約等に関する説明またイベント案内を行っています。 グローバル化の進む中、日露関係は北方領土問題を抱えながら新局面を迎えて います。日本国・外務省は日露関係を下記HPで報告しています。また、ジェト ロはロシア・CIS情報を定期的に発行しています。 最近の日露関係 (平成16年11月) http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/russia/kankei.html 日露関係に関する意識調査 (平成13年2月) http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/russia/chosa01/ 複雑な政治・外交・貿易要因が今後の日露関係を左右していくと思いますが、 ロシア人と日本人を心理学レベルで分析・理解して日露関係に貢献しようとし ているパイオニア的女性がいます。モスクワのMoscow City University of Psychology and Pedagogy (www.mgppu.ru)で博士号を取得しながら、 International Professional Laboratory of Expressive Art-Therapy (www. exat-edu.ru)等で芸術療法の指導をするVarvara Sidorova(ババーラ・シド ロバ)さんです。 シドロバさんは、ロシアの有名な発達心理学者・L.S. Vygotsky (1896-1934) ヴィゴツキー博士が唱えた「近接発達領域」(zone of proximal development) の考え方に基づく認知発達理論を基礎に、ピクトグラムを使った新しい手法で ロシア人と日本人の深層心理にあるものを歴史・文化・言語面から研究するこ とにより、相互理解の為の鍵(現実的解決方法)を探しています。著者もシド ロバさんの訪米中にこの研究に使われているテストを受け、非常に画期的な手 法であると思いました。この手法では、試験を受ける人から描かれるピクトグ ラムに、人間感情の根底を表現する言葉(例えば、「楽しいお祝い事」・「開 発」・「病気」・「温かい風」・「公平」・「家族」・「裕福」等)が使われ ていました。テストを受けた後、シドロバさんから心の奥の奥まで見られた気 がしました。ちなみに同研究手法は他の異文化間考察にも有効です。 シドロバさんの父親は霊気治療師で、子供の時から日本文化に興味を持ち、三 味線を勉強して"Wa-on"(和音) - www.pae.desertmusic.ru - という日本古典 音楽アンサンブルで演奏活動を続けています。2001年8月には日本文化研究の為 に訪日。京都で仏教の研究をしながら沢井忠夫氏の師弟から三味線を学びまし た。また、シドロバさんの芸術治療カリキュラムの一部として墨絵、陶器、面 作りなども指導しています。最近では舞踊、剣道も始めたそうです。 シドロバさんにお願いして、モスクワの学生達に日露関係に関する簡単な(普 通の)意識調査をしてもらいました。それによると、日本の文化(特に最近の アニメ・音楽)はロシアの若者で流行していますが、歴史・政治的なことには 関心が薄いようです。例えば日露戦争のことを知っている学生は皆無でした。 一方、第2次世界大戦にはほとんどの学生が関心を持っていました。 ロシア情報ステーション(www.russigator.ru/index.html)によると、昨年10 月、ロシアで初めてサハリン州トマリノ市に日系の市長が誕生しました。ニシ ヤマ・ソウキチ新トマリノ市長は1945年、サハリンで農業を営む日本人の両親 の間に生まれ、ユジノサハリンスク教育大学を卒業後は地理の教師として働き ました。ペレストロイカ後にビジネスを始め、ジリノフスキー氏を党首とする 自由民主党に入党しました。ニシヤマ・ソウキチ氏は自由民主党所属なので、 北方領土返還には反対しているそうです。 日本生存の為には、日露友好関係は必須条件だと思います。今のうちにシドロ バさんが提案している手法を各界で用いながら、長い歴史・文化の壁を乗り越 えるべきだと考えます。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2005.04.15 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (75) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「経営管理学修士号 - M.B.A.」 U.S. NEWS & WORLD REPORT 4月11日号(p.50-52, 67) - www.usnews.com - に米国内ビジネス・スクールの動向と課題、またトップ50校ランク付けが出ま した。その一部(トップ10)として下記の大学が挙げられています。 1. Harvard University - ハーバード大 2. Stanford University - スタンフォード大 2. University of Pennsylvania (Wharton) - ウォートン・スクール 4. MIT (Sloan) - スローン・スクール 4. Northwestern University - ノースウエスタン大 6. Dartmouth College (Tuck) - タック・スクール 6. University of California-Berkeley - カリフォルニア大バークレー校 8. University of Chicago - シカゴ大 9. Columbia University - コロンビア大 10. University of Michigan-Ann Arbor (Ross) - ミシガン大 ちなみにハーバード大学MBAプログラムの年間授業料は400万円弱です。 この記事で、殆どのビジネス・スクールは理論・数値的分析能力開発を重視す る結果、"Soft Skills (ソフト・スキルズ)"と呼ばれる実践的指導が欠如し ている事が指摘されています。ソフト・スキルズには、指導力、チームワーク、 コミュニケーション、枠外思考能力などが含まれます。また、カナダ・モント リオールのマクギル大学経営学部(www.mcgill.ca/management)ミンツバーグ 教授は、「現在ビジネス・スクールは、間違った人材を間違った方法で間違っ た方向に導いている」と述べている、とも出ています。 シカゴにあるDePaul University's Kellstadt Graduate School of Business (www.kellstadt.depaul.edu)では、「Management at the Movies(映画を使 った管理学講座)」のような非常に変わった内容の指導方法があることが報じ られています。例えば ・The Godfather (ゴッドファーザー) - organizational design - (組織デザイン論の教材として) ・Tora! Tora! Tora! (トラ、トラ、トラ) - strategic planning - (戦略計画論の教材として) ・Whale Rider (クジラの島の少女) - leadership and gender issues - (指導論・平等と差異論の教材として) 等が使われています。 BusinessWeek 4月18日号(Editorials, p.112) - www.businessweek.com - においても、"Soft People Skills (ソフト・ピープル・スキルズ)" と "Cross-Cultural teamwork (文化の壁を越えたチームワーク能力)"欠如が指 摘されていると同時に、多くのビジネス・スクールが、近年のビジネス界の急 激なグローバル化(東西・南北アウトソーシングの波、ブロードバンド普及、 消費者力増大等)に伴う変化に乗り遅れていることも指摘されています。 これらの米国式ビジネス・スクールに対する警告は、実務者間では初耳ではあ りません。「ビジネス・スクール出身者は頭でっかちで役に立たない。扱うの が難しい」等、よく聞きます。自分の経験からも、戦略思考能力と意思疎通能 力に欠けた人達によく出くわします。ネットワークを主目的としてビジネス・ スクールに行く人も多くいます。が、近年の(異常な程の)授業料値上げや志 願者低下で、ビジネス・スクールは改革を迫られる時期に来たのではないかと 思います。日本もこの傾向にどう対処するかを考え始めた方が良いと思います。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2005.04.01 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (74) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「みみずビジネス - Earthworm Business」 最初アメリカに着た当時、薬箱の中に富山の「みみず一風散」という解熱・鎮 痛剤があったのを覚えています(*)。 今でもこの薬を入手したいと思うことが よくありますが、さすがにボストンでは見つかりません。「みみず一風散」は そもそも漢方薬ですので、インターネットで「みみず- 薬 (英語)」をキー ワードに使って検索すると色々学ぶことが出来ます。チャイナ・タウンへ行け ば見つかるのでしょうが、未だそこまで踏み込んではいません。 しかしながら同じ「漢方薬」と言っても、製法によって色々差が生じるようで す。そこに独特のノウハウが活かされるのでしょう。ここに目をつけたインド 人起業家がいます。例の「サウナ会議」の常連です。日本で「富山のくすり」 のように何百年もの期間を経て精錬された「漢方薬」類をインド、アフリカの 医療に役立てないかと投げかけてきました。 そこで「みみず一風散」を例に取り、みみずの世界(**)を見渡したところ、 ニュージャージー州プリンストン市にみみずを使ったエコ・ビジネスで脚光を 浴びているTerraCycle(テラサイクル)社 - www.terracycle.net - を見つけ ました。 テラサイクル社は、カナダ出身の現在22歳、Tom Szaky(トム・スザキー)氏が 19歳の時に創立した会社です。会社設立当時スザキー氏は名門プリンストン大 学の2年生でしたが、(両親の反対を押しきり)学校を辞めてベンチャーを始 めました。米国特許取得中の独自技術を開発。赤みみず(Eisenia fotida)を コーヒーの残りかす、ビール・ホップス、紙のスラッジ等(生ごみ)を混ぜた コンポストに入れて「Earth Plant Fuel(アース・プラント燃料)」と呼ばれ るコンポスト・ティー(ジュースのような液体状)を製造し、学生・子供達が集 めてくる使用済みプラスチック・リサイクル・ボトルに入れて発売しています。 これは、既に市販されている「Miracle-Gro (ミラクル・グロー)」 - www.miraclegro.com - と対抗する製品です。 テラサイクル社の製品は現在カナダのWalmart(254店)で販売されています。 また、米国内のWalmart(3,500店)でも取扱いが検討されています。 トム・スザキー氏とは3月28日に電話で話す機会がありました。スザキー氏は 「学校に戻る気は無い。今年の目標は年商を$2-3Mに伸ばすこと。テラサイク ル社の製品を作る為に用いるみみずを、別目的に使うことは現在のところ考え ていない。」とのことでした。筆者は、テラサイクル社に限らずコンポストの 一部として使われるみみずを使って「みみず一風散」を作り、インド、アフリ カで販売出来ないものかと考えました。薬用に使われるみみず成分の研究もか なり進んでいます。ターゲット市場を絞れば、成功ファクターはマーケティン グとブランディングではないかと考えます。このほかにも、日本で培われた漢 方薬をBOP市場(***)でパッケージ化して販売することも可能と考えられます。 (*) http://www.chuokai-toyama.or.jp/seiyaku/ (**) http://journeytoforever.org/jp/compost_worm.html (***) BOP市場に関しては「ベンチャー・ビジネス最前線」26号(2002.11.01)、 28号(2002.12.02)、 29号(2002.12.16)を参照ください。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2005.03.15 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (73) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「肥満と節エネ - Obesity and Airlines Energy Consumption」 3月10日、The Global Business Alliance of New England (www.gbane.org) による11th Annual International Networking Evening & Business Forum が ありました。これは、「ベンチャー・ビジネス最前線(32)」で述べた "Massachusetts Export Center (マサチューセッツ輸出センター) - www. mass.gov/export - とGlobal Business Alliance of New England(ニューイ ングランド地域グローバル・ビジネス振興推進団体) - www.gbane.org - に よるネットワーキング行事"の恒例年次総会です。The British American Business Council of New England, Inc. (www.babcne.org) - ニューイン グランド英米ビジネス協議会 - のUrszula Wojciechowskaさんが主催者です。 同会議で原油価格・米国ガソリン価格が米国経済に及ぼす影響が何度も指摘さ れました。「ベンチャー・ビジネス最前線(57)」で、「(2004年)4月12日 現在、1ガロン(約3.8リットル)当たりのガソリン代は、ボストンで$1.710 (レギュラー)/$1.905(プリミアム)、デンバーで$1.877(レギュラー)/ $1.975(プリミアム)、サンフランシスコでは$2.176(レギュラー)/$2.381 (プリミアム)です。」と述べましたが、今年の高騰は昨年を既に上回ってい ます。 米国の地域・町ごとのガソリン価格をリアルタイムで調べられる「GasPrice Watch.com」(www.gaspricewatch.com/usgas_index.asp)によると、3月12日 10:45現在1ガロン(3.8リットル)あたりカリフォルニア州Bridgeport市で $3.01(最高値)、ワイオミング州Rock Springs市で$1.72(最低値)、米国内 平均が$2.09となります。また、米国連邦政府が紹介しているwww.fueleconomy. govからリンクできるwww.bostongasprices.comによると、ボストン周辺で最も 高いところで$2.26、安いところで$1.83となっています。このサイトにはガソ リン・スタンドの名前と住所も掲載されています。 3月12日付けPopular Science誌に、FAA(米国連邦航空局)によって改正された 米男子成人平均体重値の変動とガソリン消費量に関する記事が出ていました。 題:「Obesity Weighs Heavily on Airlines: The Federal Aviation Administration has finally revised its 66-year-old assumptions about U.S. passenger weight.」 http://www.popsci.com/popsci/aviation/article/0,20967,1021095,00.html 8.5 ポンド( 4kg)= 1991年から2000年の間の米男子成人平均体重増加値。 170 ポンド(77kg)= 1938年から2003年まで使われていた米男子成人平均体重 想定値。 184 ポンド(83kg)= 2004年、FAA(米国連邦航空局)によって改正された 米男子成人平均体重値。 148億ガロン = 2000年の国内航空旅行で消費されたガソリン量。 3億5,000万ガロン = 1991年当時の米男子成人平均体重が保たれていた場合、 2000年の国内航空旅行で節約できたガソリン量。 380万トン = 3億5,000万ガロンのジェット燃料を消費することによって発生す る二酸化炭素量。 2億7,500万ドル = 2000年の3億5,000万ガロンのジェット燃料費。 2,350万ガロン = 米国内線乗客にHardee'sの2/3-pound Thickburgers (*) (300グラムの肉を使ったハンバーガー)を機内食として出した場合に必要と なる2000年のジェット燃料量。 (*) http://www.cspinet.org/nah/12_03/rsvfp.htm 米国の肥満事情は日本では想像を絶する世界です。1999年と2000年の統計によ ると、米国の20歳以上の成人の30%が肥満といわれています。また、64%が標準 体重値を上回っています(**)。オール2階建ての巨大飛行機“空飛ぶホテル” と呼ばれるエアバス380(国際線の標準仕様では555席)が2006年に就航予定で す。乗客となる一人ひとりも世界のエネルギー資源節約に貢献したいものです。 ちなみに日本では、「日本肥満学会」(wwwsoc.nii.ac.jp/jasso)があり、肥 満に関する問題の究明及び解決のための研究発表、情報交換を行っています。 (**) http://www.cdc.gov/nccdphp/dnpa/obesity/faq.htm 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2005.02.17 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (72) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「利根川進教授 - Prof. Susumu Tonegawa 」 1987年、日本で初めてノーベル医学生理学賞を単独受賞され、1994年からマサ チューセッツ工科大学・学習記憶研究センター長を務められている利根川進教 授からいろいろお話を伺いました(02-09-2005)。 このインタビューの前に、知り合いの子ども達から利根川教授に対する質問が 寄せられました。 Q:「子供の頃は何になりたかったですか?」 A:色々な伝記を読んだ。その 中で一番強い印象を受けたのは野口英世だった。将来、野口英世のような学者 ・医者になりたいと思った。 Q:「いつから遺伝子っていうものの研究をしようと思ったのですか?その研 究をしようと思ったのはどうしてですか?」 A:最初は化学を専攻していた。 カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学した時に分子生物学を知り、遺伝子 分野に興味を持つようになった。 Q:「研究は飽きませんか?」 A:研究には次から次に新しいことが出てくる ので飽きない。 Q:「今はどういう研究をしていますか?」 A:脳の機能・記憶の現象の研究 をしている。 Q:「将来の夢は何ですか?」 A:今勤めている学習と記憶研究センター・脳 科学研究センターを世界一の研究所にすること。 以下は筆者からの質問。 Q:「どのような環境で育ちましたか?」 A:富山と愛媛の田舎、自由な環境 だった。兄は現在カナダの大学で物理学を教え、妹は専業主婦、弟はシカゴの 商社に勤めている。 Q:「子供の教育方針は何ですか?」 A:特別に無いが、兄弟(息子二人と娘 一人)仲は良い。脳の発生文化はまだ科学的にはわかっていない。試行錯誤で やっているが、親がハッピーであることが大切ではないかと思う。脳は5〜6歳 までに決まるので子供を育てる環境が大切だ。人間は常にイミテーション(真 似)をやっている。子供は親を見て育つ。子供は色々な興味・生き方・使命感 を親から学び取っている。だから、意欲を持った人間が周りにいると非常に良 い。家庭での会話が大切になってくる。性格要因も遺伝子で決まるので、与え られた枠の中でどれだけ能力を発達・発展させるかの問題になる。親がどのく らいの時間子供と付き合えるかが要になる。最近は子供を作る資格の無い親が 多すぎる。 Q:「毎日心がけていることはありますか?」 A:特にこれといって無い。 食生活も普通にしている(と、ここで「普通」と言われたが、奥様はプロ級の コックであると筆者は聞いている)。 Q:「宗教は何かおもちですか?」 A:証明出来ないので信じない。 Q:「大学以外で現在何かベンチャーされていますか?」 A:昨年マサチュー セッツ州ケンブリッジ市に設立されたバイオテク会社Galenea (www.galenea.com)の創立者の一人である。この会社が有する技術はMITとロ ックフェラー大学で開発されたものがベースになっている。日本の大手製薬会 社もパートナーになっている。 Q:「成功する秘訣は何ですか?」 A:(研究は)失敗ばかりであるが、最終 的に出来るかどうかが問題だ。うまくいかなくてもめげず、肝っ玉を据え楽観 的になること。 Q:「日本に対する提言はありますか?」 A:大学・研究体制の改革が必要だ。 中学・高校の先生もせめてMA(修士号)が必要ではなかろうか。子供の能力は 筆記試験だけでは測れない。Leadership(指導力)とChallenge(挑戦)能力を 養い、Risk Taker(失敗を恐れない人)になるように子供を育てるべきだ。同 時に、多種多様な価値観に対応できる訓練も必要だ。このような能力は現在の 入学試験制度では把握できない。木は見えても森が見えない子供・学生が多く なっている。この辺の考慮が日本の将来に影響する。さらに日本で多くの官僚 は文系であり、科学・技術に関する知識に乏しい。もっと色々勉強すべきだ。 Q:「最後に何か?」 A:日本には「生意気」という表現を使って押さえつけ る人がいる。この心理がわからない。また、自分は誰かを「叱る」ということ も出来ない。自分はそもそも物覚えが良い方ではない。自分が周りの人より上 とか下とか思わない。常に正当性で押すことにしている。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2005.02.01 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (71) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Dr. T. Colin Campbell - T・コリン・キャンプベル博士 - THE CHINA STUDY - チャイナ・スタディ 筆者が毎日「サウナ会議」に行くYMCAの受付には、いつも笑顔を絶やさない プロ級のラテン・ダンサー(兼近くの大学生)Lauren Shelfhaudt(ローレン) さんがいます。栄養学に詳しい彼女が、最近アメリカで流行っているダイエッ ト方法について教えてくれました。 Atkins' Diet (アトキンス・ダイエット):アメリカではほとんど誰でも聞 いた事のあるダイエット方法。高蛋白・低炭水化物・低繊維。短期的に減量す るには効果的なダイエット方法ですが、ぶどう糖値低下、心臓病、ある種の癌 の原因となっています(http://atkins.com)。 South Beach Diet (サウスビーチダイエット):アトキンス・ダイエットを 少し健康的にしたもの。最初の過程はアトキンス・ダイエットと変わりないが、 後の過程で果物・穀物類を摂取する方法(www.southbeachdiet.com)。 Zone Diet (ゾーンダイエット):プロ運動選手用・超高蛋白ダイエット方法。 炭水化物40%、脂肪30%、そして蛋白質30%の構成 (www.drsears.com/drsearspages/)。 この他に、Vegetarian Diet (ベジタリアンダイエット) - www.jpvs.org/p1 /link.html、Macrobiotics (マクロビオティックス)等は日本でも長く定着 しています。 アジア型食生活を続けると健康で長生きできるという研究結果が色々なダイエ ット方法に取り入れられていますが、そうした研究の多くがコーネル大学の栄 養生物学者、T・コリン・キャンプベル(T. Colin Campbell)博士やChinese Institute of Nutrition and Food Hygiene(北京)のチェン・ジュンシ(Dr. Chen Junshi)博士が、中国本土の地方に住む6,500人と台湾人10,500人を調べ た膨大な研究が基になっているということは意外と知られていない事実です (http://www.earth- pure.com/ush/diet/diet_f002.html)。 キャンプベル博士の膨大な研究結果は、「THE CHINA STUDY - チャイナ・スタ ディ」と題する(非常に新しい)本で発表されました。日本語版はまだ出てい ませんが、近く翻訳されるようです(www.thechinastudy.com)。 この本を開いて最初に気付いた事は、医学の父と呼ばれるヒポクラテスの言葉 が引用されていることでした。 "He who does not know food, how can he understand the diseases of man?" (食べ物の事を知らずして、病気を理解する事は出来ない) キャンプベル博士は1月21日にボストン郊外で、出版された著書に基づいて 「健康・医学・社会における栄養の役割に関する間違った認識と理解」と題す る講演をされました。非常におもしろいことは、キャンプベル博士は酪農場を 経営する家庭に生まれ育ったにもかかわらず、動物性タンパク質が癌(および その他の病気)を引き起こす大きな原因となっていることを証明された事です。 またそれらの原因に遺伝子はあまり関係が無いことを強調されました。 キャンプベル博士の研究成果に反して、1月17日付けNews Week Magazineで 「栄養と遺伝子の関係」に関するハーバード大学医学部の研究レポートが出ま した(www.msnbc.msn.com/id/6804082/site/newsweek/)。この報告書によると、 食べ物・遺伝子・病気の原因には密接な関係があるようです。Nutritional Genomics(栄養素ゲノム)分野はまだ新しく、これから色々な研究が進む事を 示唆しています。 キャンプベル博士はMIT時代、日本でも騒がれているダイオキシンを発見した ことでも知られており、ご子息T. Nelson Campbell氏と共にBioSignia社 (www.biosignia.com)を設立されました。 なお、T. Nelson Campbell氏は現在、同BioSignia社・会長です。BioSignia社 は1996年設立、Durham, NC に本社があり、CRO*と製薬会社に役立つユニーク な医療関連IT技術を持ち、中国においてもオペレーションを開始しています。 そして現在IPOの準備を進めており、戦略投資家並びにアジア市場を展開する 為のビジネス・パートナーを探しています。 *CRO(Contract Research Organization):医療品の臨床開発に関する開発業 務受託機関。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2005.01.14 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (70) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「Nanotechnology (ナノテクノロジー)」 昨年12月13−15日、カリフォルニア州サンフランシスコでIEEE International Electron Devices Meeting (IEDM) - 電気電子学会による国際電子部品会議 - が開かれました(www.his.com/~iedm/)。半導体、ナノテクノロジーを含む 42分野で最新技術と将来の動向が討議されました (www.his.com/~iedm/techprogram/index.html)。 この会議に筆者は参加しませんでしたが、友人のC博士(マサチューセッツ州 にある某軍事システム技術開発社勤務)が夫人(長野県出身の日本人)を伴っ て参加しました(このようなことは日本では滅多にないと思いますが、米国で は夫婦同伴は珍しくありません)。C博士はMIT出身、コーネル大学で電気工学 博士号を取得。専門分野は半導体技術で、10年前に松下電工で2年間勤務した こともあります。 C博士はIEEE電気電子学会に提出される論文審査官の一人。日本の科学者・技 術者から送られてくる論文に関しては、いつも内容と同時に表現手法について 手厳しい評価をされます。今回のIEEE会議においては「多くの日本人を見かけ たがナノテクノロジー分野部会ではあまりにも静かすぎた。何か質問する訳で もなく、意見を交換することもなく、ただ聞き手にまわっていた」と話してい ました。 ナノテクノロジーについては、現在日本でも各分野でその応用が検討されてい ます。ナノテクノロジー総合支援プロジェクトセンター(www.nanonet.go.jp/ japanese)、ナノテクノロジービジネス推進協議会(www.nbci.jp)、日経ナ ノテクノロジー(http://nano.nikkeibp.co.jp)などのサイトを見るとその動 きが推測できます。C博士は「日本の戦略がまだ見えない」と指摘されました。 「一般的にナノテクノロジーはまだ未知の世界である、、」と前置きし、「米 国では大統領自らが積極的に音頭を取っているが、最も先に製品化される分野 はBiology(生物)関係、その他の分野はまだどこの国も模索中ではなかろう か」と述べています。昨年12月、科学雑誌「Nature」で発表された「Plastic eye mimics octopus vision(タコの目を真似るナノテク・プラスチックの目)」 と題する記事に関しては、「充分民間・軍事用に応用できる可能性がある」と C博士は示唆しています(www.nature.com/news/2004/041206/full/041206-5. html)。 C博士が推奨するナノテクノロジー戦略は、(規模は小さくても)研究開発過 程を国際的・学際的・多次元チームで行う事です。C博士は、「研究内容が細 かくなる程、専門分野を越えた科学・技術者間での情報交換と協力が必要にな る」と強調しています。現在近所でプラチナに替わる合金属製造プロジェクト が動いていますが、「このようなこともナノレベルまで掘り下げるとかなり安 定した製品が開発可能であると考えられる」と述べています。 2003年10月3日付「CHINA Daily」、中国科学技術省からの情報ですが、中国の ナノテクノロジー関連特許件数は米国、日本に次いで世界第3位になりました (もうそろそろ追い抜かれている頃ではないでしょうか)。中国はアメリカと 同じようにトップレベルでの戦略に基づき研究開発を進めており、研究開発費 は過去3年間で急激に増加しています。4〜5年以内に経済力も日本を抜いて世界 第2位になる可能性があります。日本が遅れをとる状態が充分考えられます。 1980年代後半の「超電導ブーム」のような形で終らない事を願っています。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物)