ジェトロ山形作成                       最終更新日:2004年12月15日 2004.12.15 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (69) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「Bio-outsourcing (バイオ・アウトソーシング)」 ボストン北郊外のWilmington市に世界最大の実験動物ブリーダーであるチャー ルズ・リバー本社(英語: www.criver.com、日本語:www.crj.co.jp)がありま す。チャールズ・リバー社は実験動物提供の他、色々なバイオ関連サービスを 展開しています。 以前取り上げたYMCAサウナ会議メンバーの一人Rajeev K. Dhawan (ラジーブ・ ダーワン)博士 (ニックネームは「ラジ」です)が、このチャールズ・リバー 本社Diagnostic Reagents(検査試薬)部門のディレクター(責任者)です。 ラジさんはインド出身で、来年3月7〜8日にインドのHyderabad(ハイダラーバ ード)で開催されるバイオ会議「Bio Therapeutics: From Process Development to Manufacturing」(www.indiabiogroup.com)で「バイオ・アウトソーシン グ」について講演予定です。現在予定講演者の殆どは米国からで、日本からの 参加も呼びかけています。 会議が開催されるハイダラーバード市は、インドの「ゲノム・バレー」とも呼 ばれています。インドの「シリコン・バレー」と呼ばれるバンガロール市と並 んで急成長を遂げています。 (http://us.rediff.com/money/2004/nov/30spec.htmを参照ください。) このゲノム・バレー(www.genomevalley.org)には、Shapoorji Pallonji Biotech Park(www.spbiotechpark.com)、ICICI Knowledge Park(www. iciciknowledgepark.com)、Biotechnology Incubation Centre、 Agri-Business Incubator of ICRISAT等のリサーチ・パークがあり、Andhra Pradesh政府が進めるバイオ政策の中核を占め、既に100社以上のバイオ関連会 社が入っています。 ラジさんによるとインドにおけるベンチャー系バイオ分野の成長は著しく、そ の例としてBiocon India (www.chemnet.com/show/biocon) が挙げられます。 ちなみにBiocon India社のCEOはKiran Majumdar-Shawさん、バンガロール生ま れでオーストラリア・バララット大学で教育を受けた現在50歳の女性起業家で す。Biocon India社の企業価値は現在11億ドル。Kiranさんはその40%を所有し ており、インドで最もお金持ちの女性になったことで有名です。 米国バイオ・製薬会社にとってインドにおけるバイオ・アウトソーシングの魅 力は、時差を利用してクライアントに対して効果的なビジネス展開が出来るこ とだとラジさんは述べています。米国において科学者の10人に1人はインド系と 言われており、またインドがアメリカに次ぎ世界で2番目に英語を話す人口が多 いことも、インドとのビジネス展開をさらに進める要因になっています。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2004.12.01 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (68) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「Visionary (ビジョナリー)」 「起業家/ベンチャー・ビジネス家」として求められる条件は何か。 「Visionary (ビジョナリー)」であること、とよく言われます。小学館プロ グレッシブ英和中辞典によると、「Visionary (ビジョナリー) = 1. 幻影を 見る人, 神秘家; 空想家, 夢想家 2. 洞察力のある人」とあります。掘り下げ た意味は、実際ビジョナリーと言われるようになった人それぞれによって違っ てくると思います。 ボストン郊外Dedham市にあるSignet Laboratories(www.signetlabs.com)で Vice President, Sales and Marketing(営業・マーケティング担当副社長) を務めるPaul Fluckiger(ポール・フルッキガー)氏も、百戦錬磨を乗り越え てきたビジョナリーの一人であると思います。フルッキガー氏によるビジョナ リーの定義には「common sense = 常識, 良識」と「tenacity = 固持, 固執; がんこさ; 記憶力の強さ; 粘り」を持つ事が含まれます。さらに「multi- dimensional = 多次元」であること、「成功要因に基づいて自分を成功要素に 当てはめる事」も重要であると強調されます。 フルッキガー氏は英国生まれのカナダ人(英国国籍も保持)で、情報を元にし たビジネス・インテリジェンス・ツール開発を手がけたベンチャー起業家の草 分け的存在です。様々なデータ管理技術を得意分野とするComputer Corporation of America(www.cca-int.com)で長年経験を積んだ後、データ ウエアハウス用データ抽出技術を開発したCarleton Corporation(その後、 オラクルが買収)を再建し、さらに非常に斬新で奇抜なSCM(原材料の調達から 製造、流通、販売までの一連の流れを管理するシステム)・CRM(顧客関係管 理システム)応用技術分野でのベンチャーを多数仕掛け、(情報技術がらみの) バイオ分野でも見事Signet Laboratoriesを軌道に乗せる事に成功しました。 フルッキガー氏の動向は、過去7年間、仕事上や個人的な関係を通して様々な 側面から観察してきましたが、過去に手がけた(また現在手がけている)事業 は全て、人と人を結ぶ知識と行動様式を決定する情報を元に、最低4〜5年先を 見越して展開しています。中にはタイミングを逃して大きなビジネス・チャン スを逃した場面もありましたが、その時のフルッキガー氏の洞察力は確実に将 来を見越したものでした。 しかし、フルッキガー氏の洞察力は決して新しいものだけを追い求める中から 生まれるのではありません。むしろ、現存する様々な状態・要素を冷静かつ多 次元的に観察して、その中からそれぞれが持っている価値を10倍にも20倍にも 高める組み合わせを見つける手法を取っています。 「海外では来年1月に実用化ラッシュが到来する」(NIKKEI COMPUTER 2004. 10.4)と報道されたRFID(Radio Frequency ID)についても、フルッキガー 氏は4年前に状況を正確に予測し、大手Logistics(ロジスティック)会社と話 を進めていました。この分野に関する記事としてマサチューセッツ工科大学 (MIT)オートIDラボ リサーチ・アフィリエイト・稲葉達也氏による「米大統 領選と偽造薬,そして無線ICタグの関係」(2004/09/21) - http://itpro.nikkeibp.co.jp/rfid/ - があります。 フルッキガー氏は現在、過去に手がけてきた分野と全く関係のない分野のベン チャーに取り組んでいます。しかし分野は違っても、根底にあるものは人と人 を結ぶ知識と行動様式をビジネス化したものであることに変わりはありません。 日本の新聞で「XXラッシュが到来する」と報道されるようになるのは4〜5年先 でしょうか。楽しみです。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2004.11.15 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (67) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「Food (Gluten) Allergy - 食べ物 (グルテン) アレルギー」 米国でもつい最近の現象ですが、グルテンの入っていないメニューを提供する レストランが出来てきました。グルテンとは、小麦粉を水でこねた時に出来る 粘着力のある蛋白質です。 ニューヨーク郊外のWestchester Celiac Sprue Support Groupが支援するデー タベース(http://www.glutenfreerestaurants.org/)によると、そのような メニューのあるレストランは米国東北部で20ヶ所、東西部で3ヶ所あることが わかります。 ボストンでは、カンボジア・フランス料理レストラン「The Elephant Walk (エレファント・ウオーク)」のメニューの一部として紹介されています。 普通のメニューと比べると割高のようですが、グルテンを受け付けないセリ アック病を持つ人にとっては安心して食事を楽しめるところに間違いありま せん。 http://www.elephantwalk.com/BOSTON/Menus/bosceliacmenu.htm 昨日(11/8)行った近所の健康食品スーパー(www.wildoats.com)にも同様の 商品がありました。まずベーカリー部門には、普通の自然食パンやケーキの隣 (場所的には非常に狭いスペース)に、グルテンの入っていない米粉で作った パン - White Rice Loaf (白食パン)、Brown Rice Loaf (玄米パン)、 Tapioca Loaf(タピオカパン)がありました。いずれも16oz.(454g)$4.39で、 製造元はEner-G Foods, Inc.(Seattle, Washington)- www.ener-g.com - 。 また、グルテンの入っていないクッキーとブラウニーも置いてあり、製造元は Frankly Natural Bakers (San Diego, California) - www.franklynatural. com -です。この2社はこれらの製品のほかに自然で安全な食品を製造・販売 しているようです。 さらに冷凍部門には、グルテンの入っていないRice Pecan Bread(米ピーカン パン)、Rice Almond Bread (米アーモンドパン)、Raisin Pecan Bread (レーズンピーカンパン)(製造元はFood For Life Baking Company (Corona, California) - www.food-for-life.com -)など。 そして、自分でパンを焼く人達用には米粉(White Rice Flour)が680gで$2.99 - Bob's Red Mill社 (Milwaukie, Oregon) - www.bobsredmill.com。それか ら量り売りの有機玄米粉(454gで$1.99)などもありました。ただし、以上の ような商品はまだまだ一般的ではなく、専門店に行かなければ手に入らないの が現状です。 米国にはThe Food Allergy & Anaphylaxis Network (食べ物アレルギーと過 敏症ネットワーク) - http://www.foodallergy.org/ - があり、この分野の 様々な情報が入手できます。日本では食品産業センター(www.shokusan.or.jp) が中心となり、講演会・ワークショップなどが開催されています。今月18日に は、ILSI Japan国際協力委員会と食品安全研究部会およびアレルギー分科会の 共催で、「食物アレルギー」ワークショップが開催されるようです。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2004.10.15 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (66) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「腐食・防食 - Corrosion」に関する追加情報 「Instant Supercomputer(インスタント・スーパーコンピューター)」 前号で、塩素が腐食を促す原因をユニークな解析モデルを使い原子レベルで解 明しようとしている化学者、リーゴス教授のことを取り上げました。そして、 リーゴス教授の研究を可能にするには「DFT++というプログラムを使い (http://dft.physics.cornell.edu)、スーパーコンピューターかそれに匹敵 するクラスターで解析する必要があります。」と述べましたが、この解析に必 要なシステムは、実際製作しようと思えば半日でできる"FlashMob" (http://www.flashmobcomputing.org/)のようなインスタント・スーパーコン ピューターです。ちなみに、最初のFlashMobと呼ばれるシステムは昨年春、サ ンフランシスコ大学 Patrick Miller(パトリック・ミラー)教授の指導により 同大学体育館で組み立てられましたが、完成まで一日もかかりませんでした。 通常スーパーコンピューターと言えば、CrayとかIBMのBlue Geneのようなシス テムを頭に浮かべますが(ちなみにスーパーコンピューターに関する最新情報 はhttp://www.top500.org/で見ることができます)、それらに(匹敵するとは 言えなくとも)対抗するものとして、(ある程度の知識があれば)誰でも作れ るLinux clusters (リナックス・クラスターズ)とPC grid(PC グリッド) と呼ばれるシステムがあります。これらは必要となる解析の種類により適・不 適がありますが、後者の2つのシステムは新しいニッチビジネス・チャンスを 生む可能性を秘めていると思います。 色々な化学モデル解析に役立つコンピューター技術については、CHEMICAL & ENGINEERING NEWS (www.cen-online.org) - 化学工学ニュース誌 - 9月27日 号に興味深い記事が出ています。その中に、24台のラップトップ・コンピュー ターをケーブルとEthernetスイッチで連結させたインスタント・スーパーコン ピューターの記事がありました。本年8月フィラデルフィアで開催されたACS (American Chemical Society - 米国化学学会)会議の会場でデモとして試験 稼動させたこのコンピューターは、炭疽伝染に関わる有毒なEF蛋白質の水中に おける相互作用究明にわずか40分で成功したそうです。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2004.10.01 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (65) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「腐食・防食 - Corrosion」 周期表を見ると、下記三つの元素は兄弟姉妹関係である事がわかります。 フッ素 http://www.ceres.dti.ne.jp/~itocha/elements/F.html 塩素 http://www.ceres.dti.ne.jp/~itocha/elements/Cl.html 臭素 http://www.ceres.dti.ne.jp/~itocha/elements/Br.html しかし、なぜか塩素が腐食を促す大敵なのです。この原因を、ユニークな解析 モデルを使い原子レベルで解明しようとしている化学者に、なんと毎朝泳いで いる近所のYMCAプールで会いました。Merrimack College(メリマック・カレッ ジ)のAngeliki Rigos(アンジェリキ・リーゴス)教授です。ギリシャ出身で 三児の母でもあります。最初に出会ったのは数年前でしたが、化学者だと知っ たのは最近です。 リーゴス教授の研究は、MIT(マサチューセッツ工科大学)ユーリック腐食研 究室のウエブサイトでも紹介されています。プロジェクトの名前は、 "Ab Initio Computation of Properties of Cr(III)O"です。 http://dmse.mit.edu/UhligLab/publications.html#2 米国連邦道路庁(FHWA)調査によると、米国における腐食・防食ビジネス市場 は1年に2760億ドル以上と推定されています。下記のURLへ行くと、分野別推定 額を見る事が出来ます。 http://www.corrosioncost.com/home.html 日本では腐食防食協会(http://www.jcorr.or.jp/)等が中心となって様々な データを収集していますが、現在リーゴス教授が研究している内容と類似した 論文は他に見当たりません。この研究を可能にする為には、既にCornell University(コーネル大学)を通して一般使用が可能になっているDFT++という プログラムを使い(http://dft.physics.cornell.edu)、スーパーコンピュー タかそれに匹敵するクラスターで解析する必要があります。 リーゴス教授の研究成果は、単に(原子レベルでの)塩素による腐食原因の解 明だけではなく、現在使われている触媒技術、燃料電池・太陽電池技術開発に も役立つとリーゴス教授は述べています。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2004.09.15 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (64) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「NightSea (ナイト・シー)社 - 海中紫外線撮影技術」 今回は、夫婦の強い絆がベンチャーを成功させるのに大きく役立った例を挙げ ます。ボストン郊外アンド−バ市にあるPhysical Sciences Inc.(フィジカル・ サイエンス社) - www.psicorp.com - でPrincipal Research Scientistを務 める、紫外線の魅力にとりつかれたDr. Charles Mazel(マゼル博士)です。 このことは、ボストン・グローブ・マガジン9月5日号でマゼル博士の潜水服姿 の写真入りで取り上げられました。 http://www.boston.com/news/globe/magazine/articles/2004/09/05/deep_sea_visionary/ マゼル博士はマサチューセッツ工科大学在学中(この頃は“蛍光色的ヒッピー 時代”でもありました)、紫外線を使って海中で写真を撮ることを思いつきま した。今まで誰も思いつかなかった事でした。紫外線を使う事により、これま で見る事の出来なかった蛍光性を持った生物が幻想的色彩を帯びて確認出来る ようになりました。誰もいない冷たい大西洋の海で20年以上も孤独と戦い、数 限りない失敗を繰り返した結果、http://www.nightsea.com/ (マゼル博士が フィジカル・サイエンス社の子会社として設立した「ナイト・シー社」)で見 られるような画像撮影が可能になりました。 マゼル博士の努力を全面的に支えたのは、特殊児童教育者である奥さまのエイ ドリアンさんでした。マゼル博士は最初、センサー技術を開発する会社に勤務 していましたが、1986年に会社を辞めて自分の夢を追求する決心をしました。 ホンジュラスのロアタン島で実験に取り組んだ時も無職でした。そして、最初 の子供が生まれた時はボストン大学で海洋生物学博士号を取得中でした。「海 中生物にはなぜ蛍光性をおびたものがいるか。」 この答え(*)を求める為 の夫婦二人三脚の生活だったようです。 現在ナイト・シー社の製品は、日本(独立行政法人海洋研究開発機構)も含め て18ヶ国、60の研究所で使用されています。マゼル博士が追求した技術(と、 ノウハウ)は、破壊の続く地球環境を保護するのに大きく役立つでしょう。ま た、応用分野技術開発にも期待が持てそうです。 (*)2004年1月2日号サイエンス・SCIENCE(www.science.org)誌、 「Fluorescent Enhancement of Signaling in a Mantis Shrimp」に答えがあ ります。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2004.09.01 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (63) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「"THE FOUR-SECTOR MODEL" (ベンチャー起業振興4部門モデル)」 米国の主なVC(ベンチャー・キャピタル)企業、VC業界団体である The National Venture Capital Association(以下、「NVCA」- www.nvca.org) が出した「VENTURE IMPACT 2004: VENTURE CAPITAL BENEFITS TO THE U.S. ECONOMY (ベンチャー・キャピタルが米国経済に与える影響)」報告書の中に は、1999年から2002年のGDPに占めるVC率国・地域別順位で日本が最下位に記 されています(下記参照)。 <GDPに占めるVC率の国・地域別順位(1999〜2002年)> 1.イスラエル、2.米国、3.カナダ、4.スウェーデン、5.英国、6.韓国、 7.オランダ、8.フィンランド、9.フランス、10.アイルランド、11.ベルギー、 12.EU、13.デンマーク、14.ノルウェー、15.ドイツ、16.スイス、 17.ニュージーランド、18.オーストラリア、19.イタリア、20.スペイン、 21.ギリシャ、22.ポルトガル、23.オーストリア、24.日本 ベンチャー・起業活動を支援モニターする有力な機関、ユーイング・マリオン・ カウフマン財団(The Ewing Marion Kauffman Foundation - www.kauffman. org)理事長Carl F. Schramm氏著「Building Entrepreneurial Economics(起 業経済の樹立)」(FOREIGN AFFAIRS, July/August 2004)によると、長期化 する日本経済の低迷は上述の状況に起因する部分もあるのではないかと指摘し ています。また、逆に上記統計には出ていない中国、インドなどは、"THE FOUR-SECTOR MODEL" (起業振興4部門モデル)を導入する事により、真剣に将 来の起業ベンチャー戦略に役立てようとしていることをCarl F. Schramm氏は 強調しています(http://www.kauffman.org/pages/424.cfm)。 "THE FOUR-SECTOR MODEL"(起業振興4部門モデル)とは、基本的には(1)High -impact entrepreneurs(大きな影響を与える可能性を秘めた起業家)、 (2)Mature firms (既に確立したビジネスと製品・商品を持っている安定し た企業)、(3)Government (研究開発資金を与える政府機関)、 (4)Universities (人的・技術的資源を起業部門に移転可能な大学機関)間 で連携を保ちながらベンチャー起業を育成する方法です。 例の一つとして、日本では在職中に斬新で奇抜なアイデアを思いついたとして も、そのアイデアを(定年後または在職中に)社外で試す(実験する)場所が 非常に限られていると思います。このような時に、色々な装置を完備した実験 施設があり、更にその成果を既存するビジネスまた新しいビジネスに活かせる システムがあるとしたらこれは社会全体に貢献できる良いモデルとなると考え ます。 このモデルがアメリカ以外でどの程度成功したかを示す数字は現在ありません が、これからのベンチャー起業政策の一部として考えてみる必要があると思い ます。 ちなみに2004年4月27日付発表されたNVCAの報告書によると、2004年第1四半期、 初期段階のベンチャーに投入されたVCは僅か17%(米国)とあります (2002年 同期 18%)。また、VCが投入された企業の77%は設立から最低3年は経過してい るともありました。どのベンチャー起業育成モデルを使用しても、資金繰りに はかなりの覚悟とアイデアが要求されるようです。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2004.08.02 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (62) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「Boston Social Forum(ボストン・ソーシャル・フォーラム) - 「BSF」 」 民主党大会開催(7月26日から29日の間)でお祭り気分になっているボストン ですが、7月23日から25日の3日間、マサチューセッツ州立大学ボストン校では Boston Social Forum(以下「BSF」 - www.bostonsocialforum.org)が開かれ ました。BSFは、Coalition(連合)、Alliance(同盟)、Congress(大会)、 Conference(連盟)とも違った、一種の新しい社会Movement(運動)で、アメ リカでは初めての試みです。この運動は2001年1月ブラジルのサンパウロでの World Social Forum(ワールド・ソーシャル・フォーラム)がきっかけになっ ています。 延べ5,500人が参加したBSFは、約30分野、600以上のプログラムに 分かれ、科学、技術、政治、経済、ビジネス、環境等、地球と人類の将来を脅 かす色々な問題を学ぶ良い機会でした。混沌とした環境の中から人類生存の為 の(何らかの)解決策を見出して行こうとするのが究極目的です(日本からは 平和運動に携わる人達が来ていました)。 ベンチャー・ビジネスと関連するトピックの一つとして「水道事業(そして石 油よりも貴重な天然資源となった淡水資源)の民営化・私有化」がありました。 日本では「市民フォーラム2001」から翻訳物として出版されている「Blue Gold - 独占される水資源(直訳すると「水色の金」です)」の著者、モード・バ ーロウ(カナダの市民団体の連合組織であるカナダ人評議会 共同議長)さん による講演と意見交換が目を引きました。水資源に対する意識は日本でも高ま っており、3年前にNHKスペシャルで放映された番組「ウォーター・ビジネス」 では、世界中で急速に進む水の商品化が様々な問題を引き起こしていることを 取り上げていました。また、国際基督教大学 吉野輝夫教授のHPからは、水に 関する様々な情報が得られます。 http://subsite.icu.ac.jp/people/yoshino/BlueGold2.html 世界的に拡大する水事業の民営化は、WTOも絡み米国でも各地で予想以上に影 響を及ぼしています。(www.waterallies.org)同時に、地元住民への影響や 環境社会問題を過小評価して(米国各地の小規模スプリング・ウオーター会 社を買い取っている)大手食品会社と提携した日本企業(大手製薬会社)が 名指しで批判を受けていました。 水道法の改正により水道事業の民間委託が拡大し、水事業の民営化、世界貿易 化に拍車をかけています。長期的展望に立ち、幅広く、慎重にビジネス・プラ ンを練る必要があると思います。 「世界の淡水資源:地球には14億立法キロメートルもの水が存在しますが、そ のうち97.5%は海水で淡水は全体の2.5%に過ぎません。その淡水についても約7 割が氷河や永久氷雪となっており、湖や河川の水の量は全体のわずか0.3%です。 陸上に降る雨や雪がこのわずかな淡水の源となっていますが、これに対して雨 の分布は世界中で均一ではありません。」 http://www.eorc.jaxa.jp/GPM/contents/water/fresh_j.htm このような事実を認識して将来を考える必要があります。 黒木嗣也・くろき つぐなり - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2004.07.15 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (61) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「鯨 - Whale」 アメリカでは1950年代に西海岸サンディエゴ沖で始まったホエールウオッチン グは、現在年間10億ドル以上(この数字には賛否両論がありますが)の産業に 発展しています(http://www.fact-index.com/w/wh/whale_watching.html)。 日本でも現在、太平洋を回遊する鯨を観察するホエールウオッチング・ビジネ スが盛んになっているようです。その中に高知県土佐市宇佐町*があります (http://www3.inforyoma.or.jp/usa/)。 高知県土佐市宇佐町と言えば、1841年に(ジョン)万次郎が出漁したところで す。日本で教育を受けた人達は、アメリカで暮らし働いた最初の日本人、日本 開国に貢献したジョン万次郎氏のことをある程度知っていると思いますが、ア メリカでは全く知られていません。黒船で有名なペリー提督の事もアメリカの 中学・高校で使われる歴史教科書では重要視されていません。日本はアメリカ 帝国主義拡大の一部として扱われているからです。 日本では「日米交流150周年(1854年3月、横浜村(現在の横浜市)で日米和親 条約締結)」を祝って色々なイベントが開かれています(www.usjapan150.org /event/index.htm)。米国でもごく一部の日本人団体が中心となり(米国政府 が資金を出してお祝いしている所はありません)、各種教育文化紹介活動を行 っています。 その一つが、マサチューセッツ州ニューベッドフォード市にあるNew Bedford Whaling Museum - 鯨博物館 (www.whalingmuseum.org)での「ジョン万次郎 特別展」です。これは岡山県出身の鯨文化研究家、現ニューベッドフォード捕 鯨博物館ケンダル研究所学芸員の櫻井敬人氏が企画し、多くの団体(トヨタ自 動車、全日空、東芝、住友商事、丸紅など)からの支援を受けて可能になりま した。ボストン日本協会創立100周年記念企画との協力事業です。 この捕鯨博物館に収められている資料の一つに、金庫室の中に山のように積ま れた捕鯨船航海日誌があります。捕鯨産業が盛んだった頃、世界の海を駆け回 ったアメリカの捕鯨船には莫大な保険がかけられていました。その為、航海日 誌が義務付けられました。手書きの航海日誌には、いつ、どこで、どの種類の 鯨を何頭見つけたか等、克明に記録されています。 地球の温暖化が進むと同時に鯨の回遊経路も海流に沿って変化したことが考え られます。また、例えば海底3.2キロまで潜ると言われるマッコウ鯨の生態な ど、鯨に関するデータは未知の世界です。医学分野では、長寿で知られる亀の 血液を使っての遺伝子工学研究も行われています (http://www.agelessanimals.org/)。 アメリカでは1971年に捕鯨活動を終えています。マッコウ鯨の脳油は、1970年 代まで非常に貴重な物としてNASA(米国航空宇宙局)でも使われていたと言わ れています。現在、鯨の生態学的研究を行っているのは日本とノルウエーだけ となり、(アメリカでは)鯨と人がかかわるビジネスとしてはこのホエールウ オッチングが唯一となっています。欧米諸国で研究経路が断たれた鯨分野で何 か面白い研究が出来ないものかと考えています。 *鯨博物館学芸員 櫻井敬人氏に指摘されて気づいたことですが、ジョン万次郎 が1841年出漁した所は宇佐町。「宇佐」をローマ字で書くと「USA」となります。 これは、アメリカ合衆国の略称「USA = United States of America」と偶然一 致します。 黒木嗣也(くろき つぐなり) - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2004.06.15 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (60) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「縦型風車発電技術」 古い技術に新しい技術を吹き込んだベンチャー・ビジネスとして縦型風車発電 技術があります。この技術は、1150年頃に初めてフランスで開発されたようで すが、米国エネルギー省、風力・水力発電の歴史研究によると1700年代中頃、 フランスの軍事技術工学者 Bernard Forest de Belidor氏が書いた四巻に及ぶ 専門技術書によって確立されました。 http://www.eere.energy.gov/windandhydro/hydro_history.html 現在、縦型風車発電装置技術の代表的な製造メーカーとして、フィンランドの Oy Windside Production Ltd.(www.windside.com)とカナダのWindaus Energy Inc.(http://windausenergy.com)が挙げられます。この2社によるデザイン には(非常に)共通性がありますが、詳しいデータを調べると相違性にも気が 付きます。基本的に縦型風車は、一般に使用されている横軸型風車と比較して、 風向きに影響されず、平均して2倍の発電能力があるようです。 日本では、千葉大学工学部都市環境システム学部、佐藤研究室作製「風車の技 術と歴史」が参考になります。 http://www.eureka.tu.chiba-u.ac.jp/main.html http://www.eureka.tu.chiba-u.ac.jp/windmill/ また、環境エネルギー政策研究所(www.isep.or.jp/link.html)並びに風力発 電ネットワーク(www.tronc.co.jp)でも貴重な情報が得られます。 ちなみに、フィンランドのOy Windside Production Ltd.社技術を芸術的にア ピールした縦型風車が福岡県糟屋郡宇美町ゆりが丘にあります。これは、株式 会社環境デザイン機構(www.kankyo-dk.com/index.html)とソフィアエンジニ アリング株式会社(www.sophia-eng.com/top/top.htm)が共同で作製したもの です。 今後ハイテク縦型風車発電装置は、道路分野でもセンサー技術と共に幅広く応 用可能と考えられます。 黒木嗣也(くろき つぐなり) - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2004.06.01 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (59) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「超低燃費・前二輪駆動型三輪自動車(トライク)」 4月15日号(57)でEnergy Information Administration(米国エネルギー情報 局)- www.eia.doe.gov - による4月12日付のガソリン価格に触れましたが、1 ヶ月以上経過した5月24日現在、ボストン地域の1ガロン(約3.8リットル)当 たりレギュラーは$1.710から$2.064に、プレミアム(ハイオク)は$1.905から $2.253に高騰しました。 一部の米国経済状況報告書(4月15日付「ジェトロ・ワールド・レポート」を 含む)によると、「現在までのところ個人消費への悪影響は顕在化していない 」とありましたが、庶民レベルで申し上げますと、この事態は車(による旅行 計画)、光熱費、建設資材(PCV)、さらには食品分野でも大きく跳ね返って くるのではないかと懸念します。また大統領選、最近の金利上昇も伴い、異常 事態と言ってもおかしくないと思います。 このような中、小型52馬力ディーゼル・エンジン、5速マニュアル搭載の手作 りトライク(前二輪、後一輪)で、毎日高速道路を70 M/H(時速112 km)以上 で通勤する紳士と出会いました。ペンシルベニア州に住むEugene Wright(ユ ージン・ライト)氏です。彼はこのトライクで70 MPG(29 km/l)を上回る実 質走行平均燃費(走行距離は2年半で2万マイル(3.2万キロ)超)を証明して います。この車は「WR70」(ライト氏の名前から「WR」、燃費70 M/Gから「70 」)と名付けられ、2003年8月号「Motorcycle Cruiser Magazine」と2004年6 月号「Popular Mechanics」でも写真入りで取り上げられました。また、ペン シルベニア州地方紙「Republican & Herald」では昨年8月19日にトップ・スト ーリーとして取り上げられました。 ファイバーグラス製の車体は涙滴型の斬 新的なデザインで、車内には至れり尽せりの装置が取り付けられています。法 律的には「車」ではなく「バイク」扱いとなるため、車検・保険も安くなりま す。普通トライクは2輪のバイクを改造して3輪にしたものという印象があり ますが、ER70は違う代物です。 デザインが完成するまでに約5年、現在特許申請中です。そして出来ればメー カーを通して商品化、大量生産して世界的なオイル問題に貢献したいそうです。 ちなみに、米国環境庁によるトヨタ・プリウスの(非現実的な)平均走行燃費 は23.38 km/l、もっと現実的で正確な米国消費者連合組合レポート(www. consumerreports.org)による実質走行平均燃費は18.71 km/lですので、WR70 がいかに超低燃費であるかがわかります。 1960年代にアメリカで販売されたThe Roustabout Co.製TRIVAN(トライク・バ ン)のような車は現在も一部ヨーロッパと中国で走っているようですが、WR70 が持つ、日常の通勤・通学に使えるような実用性とファッション性には欠けて いるように思います。また、WR70は前二輪駆動車である為、雪道にも強いよう です。 黒木嗣也(くろき つぐなり) - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2004.05.14 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (58) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「Indonesia:Dr. Sri Hartini Soemantri (インドネシアのスリ・ハティーニ・ソーマントリ女医)」 2002年のバリ島爆弾テロ事件、2003年のマリオットホテル爆弾事件などで政情 が不安定なインドネシア・ジャカルタで、アメリカと日本を繋いで大事業を始 めようとしているソーマントリ女医に会いました。 産婦人科医師としては、1987年インドネシアで初めての試験管ベイビーを可能 にしたメディカル・チームの一員として活躍。Rumah Sakit Pondok Indah(ル マ・サキット・ポンドック・インダ)病院に勤務するかたわら、2002年にご主 人と一緒に医薬品製造を中心とするP.T. Thala Medika (ピー・ティー・タラ ・メディカ)社を設立。年間20%の成長率を示すインドネシア医薬品業界での シェアを獲得するため、アメリカと(特に)日本の協力体制の強化を図るなど、 目下色々な戦略構想を練っています。 ソーマントリ女医が一番関心を持つ分野は、年間約1億5000万ドルと推定される インドネシアの医薬品分野市場の中でも20%(上の数字と偶然同じですが)の シェアを占める、ホルモン関係の医薬品製造です。(現在このホルモン医薬品 分野は殆ど輸入に頼っているそうです。)ソーマントリ女医は、インドネシア 国内に限らず開発途上国全般、そしてロシア・東欧を含めてグローバルにビジ ネス展開可能な分野であると考えています。 さらにソーマントリ女医は、自身がPresident & CEOを務めるピー・ティー・ タラ・メディカ社を基点に、教育・情報・金融・食料・エネルギー・不動産分 野でもインドネシアに貢献する為のアイデアを実現させようと、一人息子が大 学で勉強するアメリカ国内でも男顔負けの活躍振りです。一方で、会合後には ホテル・ロビーにあったグランド・ピアノで美しいクラシック音楽を弾かれる など音楽家としての才能も持ち合わせていて、教養の深さを感じさせられまし た。「その驚くべきエネルギーはどこから来ているのか」の問いに、即座に返 ってきた答えは「自然と神」。精神的にも充実した人柄が見えました。 ソーマントリ女医は、インドネシアでのビジネス開発の可能性は無限だと述べ ています。インドネシア政府は民主主義政権安定に向けて様々な政策を始めま した。同時に32の地方政府は独自のルートで、ユニークな資源を活用させよう としています。「個別対応型」とも呼べるビジネス・アプローチ形式が成功の 鍵だと言われました。 ソーマントリ女医は10年前から日本とのビジネス展開を考えていたそうです。 今後の活躍が期待されます。 黒木嗣也(くろき つぐなり) - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2004.04.15 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (57) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「潮海流発電技術 - Florida Hydro Power and Light Company(フロリダ・ハイドロ電気株式会社) /Gulf Stream Energy Corporation(ガルフ海流エネルギー株式会社)」 Energy Information Administration(米国エネルギー情報局)- www.eia.doe. gov - によると、4月12日現在、1ガロン(約3.8リットル)当たりのガソリン 代は、ボストンで$1.710(レギュラー)/$1.905(プリミアム)、デンバーで $1.877(レギュラー)/ $1.975(プリミアム)、サンフランシスコでは$2.176 (レギュラー)/$2.381(プリミアム)です。4月13日付けNIKKEI NETには「 米ガソリン価格、3週連続で最高値更新」- http://www.nikkei.co.jp/news/ main/20040413AT2M1300B13042004.html - という記事が掲載されています。 有力な自動車雑誌Motor Trend(モーター・トレンド)が、2004年のベスト車 としてハイブリッドのToyota Prius(トヨタ・プリウス)を選んだ訳がしみじ みと伝わります。 http://www.motortrend.com/roadtests/alternative/112_031120_coy/ ところで、月刊Popular Mechanics(ポピュラー・メカニックス)誌5月号で、 リング状・リニア磁気浮上式・オープンタービン技術を応用した非常に画期的 な潮海流発電技術に関する記事が出ていました。これは、発明者である元海上 警備隊員(パイロット)・Herbert L. Williams(ハーバート・ウイリアムズ) 氏を筆頭に、フロリダ・ハイドロ電気株式会社(www.floridahydro.com)とガ ルフ海流エネルギー株式会社が開発したもので、環境に優しく無公害で水素を 発生する装置としても同時に利用できます。 当装置はコンポジット材料で作られており、海底に浮き輪のように取り付け、 海流に合わせて動きます。現在作られているシステムは、直径約3メートル、 30RPMで22 kwを発電可能です。米国海軍もこの技術に強い関心を示しており、 3月9日付けプレス・リリースによると「成功すれば、歴史上初めて石油発電よ り安価で環境汚染のない発電技術になる」と述べています。また、同システム は米国エネルギー省目標値$2.00/kg以下で水素を生産することも出来ると報告 されています。 http://www.floridahydro.com/Press%20Release.htm フロリダ・ハイドロ社、法務・環境担当の弁護士Michael Hoover(マイケル・ フーバー)氏によると、同技術はこれまでに米国内35の投資家から支援を受け ています。海軍のほかに米国国土安全保障省も関心を示していますが、日本の ような、世界で最も流れが速いといわれる黒潮(また、対馬暖流、津軽暖流、 宗谷暖流、親潮など)に囲まれた島国に対しても技術移転したいと述べていま す。 日本では、調べた限りこのようなシステムの大型実験はまだないようです。そ の理由の一つは、上で述べた海流は比較的陸地から離れているところを流れて いることが挙げられます。またフロリダ・ハイドロ社の場合、電力のほかに水 素も製造する能力を持っていますが、それを陸地に運ぶ方法等がこれからの課 題となります。 しかしこのようなシステムが実現すれば、現在依存しているオイルの削減、こ れから期待される水素動力装置などへの波及効果が望めると考えます。また、 現在日本国内一般に定義されている潮力・水力発電へも応用可能だと思います。 黒木嗣也(くろき つぐなり) - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2004.04.01 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (56) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「サウナ会議・近況」と「競争情報専門家協会・会議」 - "Sauna Meeting" and "SCIP (Society of Competitive Intelligence   Professionals) Meeting" (1)サウナ会議・近況 ジェトロ山形メルマガ2003年11月17日号「ベンチャー・ビジネス最前線(48)」 では「井戸端会議」ならぬ「サウナ会議」について書きました。最近この「サ ウナ会議」で、面白いものを発見しました。ロシアのセント・ピーターズバー グ大学で鉄道電気工学(信号系統)を教え、定年退職後、二人の息子家族がい るアメリカに移住した高齢の紳士が、普段見かけない物で体を洗ったりゴシゴ シ拭いたりしていました。一緒にいた数人のサウナ仲間も興味を持ち、シャワ ーを終わりサウナ室で聞いてみました。なんと、魚を捕る網を大きめの正方形 に切り取ったものでした。数年前の心臓手術後、医師からそれを使い体を摩擦 して血行を良くするように言われて実行しているのだそうです。ただこれは、 網の種類によって摩擦係数が異なるので色々と試すと良いそうです。「魚網・ 健康法(?)」がそのうち出てくるかもしれないと愉快に思いました。この時、 1980年コロラド州で武人デザイン(www.bujindesign.com)という会社を作ら れた合気道家の池田氏を思い出しました。池田氏は米軍パラシュート材料を加 工した剣道防具袋、竹刀入れ袋などを考案、製造・販売されたのです。自分も 10年以上前に購入したものを今でも使っています。 (2)SCIP(Society of Competitive Intelligence Professionals    - 競争情報専門家協会 - 略称名「スキップ」)会議 (www.scip.org) 先週ボストンでスキップ会議が開催されました。これは、「CI〔Competitive Intelligence(競争情報)〕専門家の知識技能の向上及び相互の連絡交流を促 進するとともに、最高倫理の基に、プロフェッショナルなCI専門家の養成を 目指して、1986年、アメリカ・バージニア州アレキサンドリアに本部を置いて 設立された、会員数7,000名超、参加国は世界50ヶ国に及ぶ大規模な非営利団 体」です。会員の半数以上が何らかの形で米国CIA(中央情報局)との関係を 持ち、日本にもスキップ代表団体・SCIP JAPAN - www.scip-j.or.jp - があり ます(日本の関係者がCIAと関わっているかはわかりません)。 SCIP JAPANのHPによると、「現在日本には、CI専門家と呼べる人はごく僅か であり、CIの概念、その効力もほとんど知られていないのが現状です。そこ でかねてより情報専門家からの待望であったSCIP JAPANが、平成13年4月に、 元警視総監の前田健治を代表として設立、平成14年4月にNPO法人の認証を受け、 我が国ではSCIP唯一の非営利団体として、正式に発足いたしました。」とあり ます。 ボストンでのスキップ会議には1,100名以上が参加、日本からの参加者は非常 に数少ないのが現状でした。また、現在日本が主導権を持った活動(当協会役 員、出版物等)は殆ど見られませんでした。逆に、日本隣国から参加したメン バーによる活発な動きが目立ちました。そして、この会議で何人かの中国情報 専門家と直接対談して明らかになったことは、中国による日本企業に対する 「諜報活動」は近年ますます盛んになっていることでした。これは、知的所有 権保護政策を(現実的に)あまり支持しない中国にとって、日本を追い越す為 の重要な手段となっているようです。 「サウナ会議」のように和気あいあいと色々な情報を交換できるような場が出 来ることが世界平和につながる良い道だと思いますが、現実的には「スキップ 会議」で取り上げられるような熾烈な競争に勝ち残ることも共存の道のようで す。ただ日本には「和」を協調する文化があります。単に「スキップ」のよう な団体がやっていることをコピーするのではなく、例えば「Competitive Intelligence(競争情報)」のかわりに「Cooperative Intelligence(協力情 報)」(現在、所々で使われている意味とは違います)のようなアプローチを 取り、日本独自の戦法を考えていかなければならないのではと思いました。 最後になりましたが、英語の「Intelligence(インテリジェンス)」には単な る「情報」という意味だけではなく、「秘密情報も含む有益情報」という意味 で実際は使われることを記しておきます。聞こえの良い言葉を並べて済まされ る分野ではないのです。 黒木嗣也(くろき つぐなり) - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2004.03.15 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (55) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「情報戦略 - Intelligence Warfare」 3年前から、日・米・中・露間で非常に気になる動きがあります。特に下記で 学んだ情報(*)は、ジェトロが支援している日本企業の動きとも関連する状 況だと思い、今回の記事を書き始めました。 ジェトロは日本国外で、各書籍・報告書等を通して「情報収集・諜報集団」と しての位置付けを獲得しています(http://www.fas.org/irp/world/japan/ index.html)。平和国日本にとってこのような「格付け」はいささか語弊を生 じ迷惑なものかもしれません。事実ジェトロの場合、「諜報」と言っても国内 外の経済・貿易・産業情報を違法な手段を使わず入手・分析して、様々なビジ ネス開発に役立たせていると思います。 例えば、ジェトロ山形が中心となり、過去に「山形・神戸機械輸出商談会」を 数年間開催して山形の機械製品及び部品の海外マーケットを拡大したこと、「 山形インポートバザール」を成功させたこと、海外姉妹都市との経済交流を深 めたこと、山形市内に「山形インランド・デポ」を設置したこと、「山形県国 際交流協会」を設立したこと、ジェトロ山形内に「輸入展示場」を設置したこ と等は、日本国外でジェトロのことを論じる人達には知られていない、「諜報 活動」以外の、地元に定着・密着して可能になった素晴らしい活動だと思いま す。 最近ジェトロでは、中国に関する問い合わせがアメリカに関する問い合わせを 抜いて第1位になったと聞きました。同時に日本はロシアに対する2003年の投 資額で第6位になりました。隣国との貿易活動増加を目指す日本の現状・体制 と、隣国が日本に対して国家レベルの長期戦略に基づき行っている様々な情報 収集諜報活動の動きを比較考慮すると、日本企業による早急なセーフ・ガード (防御策)の構築と、長期的視野に立つ(特に地元の人との関係・繋がりを重 視した)「Human Intelligence(人が中心の情報収集)」協力活動強化を促し たいと思います。 セーフ・ガード構築に関しては特にデジタル文書化された物の保護管理、人的 情報収集分野では地域に根ざした活動を長く続けている人の有効活用が重要に なります。特に近年IT化の促進によるIT技術への過剰依存現象が起きている中 (特に製造関係分野)、これを弱点と見て中国政府は情報収集・諜報活動を始 めています。又、ロシアもこれに対抗する手段をFSB(元KGB)を通して講じて います。 http://leav-www.army.mil/fmso/fmsopubs/issues/china_electric/china_ electric.htm http://www.fas.org/irp/world/russia/fsb/ 同時に、巧妙かつ組織的な人海戦術で技術・産業情報をあらゆる手段を用いて 収集していることが判明しています。この方法は米国が1970・80年代、日本に 対して用いた戦術と似ていることに気付きました。 インターネット検索エンジン(日本語版)で、「リスク管理」をキーワードと して出てくる項目の中に上記で述べたような内容のものはあまり出てきません。 認識がまだ非常に低いことを示しているようです。国内・海外で地元に密着し てビジネスと直結した情報収集を続けるジェトロの活躍に期待せざるを得ませ ん。 (*)関連する参考資料 "FROM CHINA WITH LOVE (中国から愛を込めて)" - 平成16年1月15日午後9 時から、PBS(アメリカのNHK版)WGBH(ボストン放送局)で放映:(これはス トリーミング・ビデオとしてインターネット上で見ることができます。) - 以前ジェームス・ボンド出演スパイ映画で「ロシアから愛を込めて」をなぞっ て製作された事実に基づく番組です。 http://www.pbs.org/wgbh/pages/frontline/shows/spy "Virtual Defense(バーチャル・インターネット防衛戦略)" by James Adams (ジェームス・アダムス)著, Foreign Affairs, MAY/JUNE(5・6月号)2001: http://www.foreignaffairs.org/20010501faessay4771/james-adams/virtual- defense.html "A CONVENIENT SPY - WEN HO LEE and Politics of Nuclear Espionage (便 利なスパイ - 中国人・李氏と核兵器スパイ政略)" by Dan Stober (ダン・ ストーバー) and Ian Hoffman(イアン・ホフマン)著 日本語では、(情報)スパイ防止に関して、わかりやすくしかも詳細が読める サイトとして下記のURLがあります。 http://akademeia.info/main/lecture2/tokubetu_industrial_spy.htm 黒木嗣也(くろき つぐなり) - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2004.03.01 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (54) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「防災訓練技術」 世界中で起きるテロによる攻撃事件を頻繁に聞いていると、火事・地震・風水 ・原子力などの災害以外に、どこでどのように起きるかわからないテロによる 災害に対しても備えることの重要性を感じます。しかしながら、内閣府防災担 当ホームページ - www.bousai.go.jp - に掲載されている「わが国の防災対策 」にはまだその分野は取り上げられていません。国際協力分野にも取り上げら れていないようです。ちなみに米国では、ブッシュ政権下で作られた Department of Homeland Security(米国国土安全保障省)- www.dhs.gov - が 担当しています。そして様々な関連技術の研究開発を可能にする為の予算・法 案 - www.dhs.gov/dhspublic/theme_home5.jsp - を次から次に出しています。 ニューハンプシャー州ベッドフォード市にある Harmless Hazards Training (無害危険訓練)社 - www.harmlesshazards.com - は非常に危険な災害状況 下での訓練(の一部)を、危険を冒す事無く訓練可能にする技術を開発しまし た。この技術はJ. F. Ebersole社長が米国フロリダ州オーランド市にある海軍 航空部隊訓練システム部門からのサポートを得て開発したコンピューター・シ ュミレーション技術(米国特許6,500,008※)を基にしています。三次元リア ルタイム画像処理技術と状況別データベースを各救出作業に使われる道具と連 動させたもので、現場にいるような場面を再現することにより対処法を学べる システムとなっています。最初のシステムは火災救出訓練用に開発されました が、応用分野として飛行機、船、ビル・駅内で起きる可能性のある化学・細菌 兵器防災訓練にも対応できる柔軟性を持っています。このシステムの一部は、 米国国防省機関の一部で既に採用されています。 ※This invention was made with Government support under Contract Number N-61339-98-C-0036 awarded by the Naval Air Warfare Center Training Systems Division of Orlando, Fla. The Government has certain rights in the invention. 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)では、2004年度予算の成立を前提とし て、2004年度のソフトウェア開発関連事業の公募を開始したと聞きました。現 在著者が知る限りでは、テロによる防災訓練を目的としたソフト開発を手がけ ている日本企業は少ないのではないでしょうか。盲点の一つと考えます。 黒木嗣也(くろき つぐなり) - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2004.02.16 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (53) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「コーシャー(Kosher)」 Entrepreneur Magazine(月刊誌・「起業家」)2004年2月号、Nichole Torres 氏著「Is That Kosher? Here's a food niche you may not have considered. (えっ、それコーシャー?考えたことも無かったニッチの食べ物。)」と題す る記事によると、コーシャーの食べ物市場は、2002年の66億5000万ドルから 2005年には95億ドルに拡大することが予測されます。 コーシャー(Kosher = "fit" or "proper")とは、ユダヤ教の厳しい戒律に従 った「正しい」食生活の決まりを指します。身近なコーシャー製品として、日 本でも人気ある「ベーグル(ドーナツ状のパン)」があります。コーシャーに 従うと、肉類(豚肉と一部の鶏肉禁止)は出来るだけ血抜きをして、屠殺後48 時間以内に売られた物を食べなければいけない、特定部位の血管は取り除くこ と、何らかの病気で死んだ動物の肉は絶対禁止、魚類は基本的には何でも食べ て良いが貝類はだめ、料理する時は牛肉(の場合)と牛乳を混ぜてはだめ等、 他にも色々とあらゆる食べ物に関して決まりがあります。 Torres氏記事によると、最近ニューヨーク市でIntegrated Marketing & Communications(IMC)社 - www.imcimpact.com(社長Menachem Lubinsky氏) 主催のコーシャー食品だけを扱ったトレード・ショーでは、アジア・スパニッ シュ系の食品、冷凍食品、漬物、飲料水、調味料などのコーシャー製品が展示 されました。中には、ペット用コーシャー製品もあったそうです。食べ物関連 で色々と騒がれる日本・アジアでも「コーシャー」ブームが間もなく到来する のではないでしょうか。 Torres氏の記事で例として挙げられたのは以下の3社です。 健康コーシャー・クッキー製造販売: Baker's Breakfast Cookie, Inc. in Bellingham, Wahishingon (米国西海岸ワシントン州) - 創始者の女性Erin Baker-Geschwillさんは1995年に会社を設立し、2003年にコーシャーとしての 認定を獲得しました。コーシャー認定機関は色々あるそうですが、認定基準は 非常に厳しかったそうです。www.bbcookies.com コーシャー・パン、日常食料品、サンドイッチ用ハム、他製造販売: Lang's Premium Kosher Bakery, Deli and Foods, in San Diego (米国西海岸サンデ ィエゴ市) - 元々食料品関係の仕事に家族で従事していましたが、2001年に 会社を設立。インターネット販売も含めた昨年の年商は100万ドルを超えまし た。www.kosherbread.com コーシャー・ペット食料品製造販売: KosherPets Inc. in Fort Lauderdale, Florida (米国フロリダ州) - 夫婦で会社設立。肥満のペット犬に米・人参 ・ニンニクなどを混ぜた手作りの食べ物を作ったのがきっかけでした。今では 近所のペット犬・猫もこのコーシャー食品で減量に成功して健康になったそう です。www.kosherpets.com 黒木嗣也(くろき つぐなり) - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2004.02.02 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (52) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「米国大統領候補」 筆者が米国で特に面白いと感じることの一つは、想像を絶するような突拍子も ない考えを持った人に出会うことです。 先日、マサチューセッツ州北の(現在、民主党候補が熱戦を繰り広げている) ニュー・ハンプシャー州で放映されるテレビ・ニュース(www.TheWMURChannel. com)で、ニュー・ハンプシャー州立大学の社会学教授John E. Tucker(ジョン ・タッカー)氏が元ホームレス(住所不定無職)のLothar Patten(ローサー・ パッテン)氏を主人公にドキュメンタリー映画 - タイトルは「The Nice Man Cometh.(ナイス・マンが来ますよ。)」- を作成していることを知りました。 早速、タッカー教授に電話でお話を伺いました。 タッカー教授は、何とその元ホームレス・パッテン氏が近い将来米国大統領に なるかもしれない民主党候補者全てと(何も予告無しで)ラリー(選挙支援活 動)で直接会って各候補者と握手しながら会話する場面をフィルムに収めてい るのです。目的は、各大統領候補者と元ホームレス・パッテン氏間の言動・行 動様式を研究することです。パッテン氏は各大統領候補者と会話するたびに、 元ホームレスであることを明確にして、各候補者が持つ「ホームレス」対策も 含め色々な質問を投げかけています。 日本で、ホームレスの誰かが、総理大臣候補に挙げられている政治家の人達と、 面と向かって握手をしながら会話する光景を思い浮かべることが出来るでしょ うか。又そのような事が起きたとしても、どこかの大学教授がそれをフィルム に収めてドキュメンタリー化することが出来るでしょうか。日本では、そもそ もホームレスの人が一個人としての意見を主張する為、総理大臣候補のような 人に接近出来るでしょうか。 パッテン氏が各大統領候補者と会って会話したときの感想の一部は昨年夏、ニ ュー・ハンプシャー州ポーツマス市Seacoast Newspaper(シー・コースト新聞) で取り上げられました。それによると、ある候補者はパッテン氏を見かけで判 断せず誠実・真面目に質問に応答し、またある候補者はそうではなかったこと が報じられていました。各大統領候補者との会話場面が目に浮かぶ感じがしま した。 ちなみに、この映画を作成しているタッカー教授は約1年前、当時ホームレス のパッテン氏に町のコーヒー・ショップで偶然出会いました。パッテン氏は元 ・米国陸軍兵。結婚して子供もいましたが離婚、背中を負傷し身体障害者とな り、ホームレスになりました。ドイツ語も流暢で、キリスト教に基づいた隣人 愛を日頃実行。ゴルフも好きで、誰とでも平等に会話できる才能を持っている そうです。ホームレス当時は、他のホームレスの人達を助けて、その為に少な い財産を全て失ったこともあるそうです。タッカー教授とパッテン氏は初めて 出会った時から交友が生まれ、今回の映画作成案を思いつきました。このプロ ジェクトを通してタッカー教授とパッテン氏は、「この地球上、皆が平和に暮 らさなければならない。」事を訴えようとしています。 タッカー教授は、共和党大統領候補者(ジョージ・ブッシュ氏)に対しても同 じような接近を計画しています。筆者は、このような特異な才能を持つ個人の 人間行動様式を研究することも、ベンチャー・ビジネス戦略に大きく役立つと 考えます。警戒の厳しい中、超トップ・レベルの人達と次から次に至近距離の コンタクトを持てる人が何人いるでしょうか?しかも、その各場面をマスコミ が取り上げるように持っていける人が、、、。これは、一つの「技術」と言っ ても過言ではないと思います。 黒木嗣也(くろき つぐなり) - Edward Kuroki - kuroki@validtechnology.com バリッド・テクノロジー・グループ 代表 - http://www.validtechnology.com          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物) 2004.01.15 ■○■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○■ ベンチャー・ビジネス最前線 - Venture Business Front Line - (51) ■┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「克雪・利雪技術」 ボストンは、記録破りの大寒波に覆われています。1月10日(土)は海辺のロ ーガン空港でも摂氏零下19度でした。その夜、フットボールのパトリオット・ チームが出場するゲームがありました。勿論、外です。その時は零下20度以下 でした。選手達はさることながら、観客はその凍りつくような外気の中、大声 で応援していました。 山形県産業総合サイト(www.yamagatanosangyo.net)で、2月12日から14日に かけて「ゆきみらい2004 in 米沢」が開催されることを知りました。色々な克 雪・利雪技術の現状や課題が討議されるようです。筆者も実は何年か前に、大 雪の降る渓谷で大事故を起こし一命を失いかけたことがあります。積雪状態が つかめないまま無理に運転していたからです。このような事故はどこでも雪国 ではあることですが、積雪(もしくは、雪の降らないところでは降雨)情報を 正確に把握することは空、海、陸、あらゆる交通機関において必要になります。 米国連邦政府の一部で、気象関係技術の研究・開発さらに技術移転を推進する UCAR(The University Corporation for Atmospheric Research)が昨年10月8 日発表した広報によると(www.ucar.edu/communications/newsreleases/2003/ hotplate.html)、NCAR(National Center for Atmospheric Research - www. ncar.ucar.edu)のRoy Rasmussen氏とDRI(Desert Research Institute - www .dri.edu)のJohn Hallett氏は、リアルタイムで積雪・降雨量を計測して瞬時 にオンラインで報告分析を可能にする計測器「Hotplate - ホットプレート( 登録商標)」(米国特許番号: 5,744,711)を開発しました。 これは、円盤状シリンダーを加熱させ、中に入ってくる雪もしくは雨を蒸発さ せ、その時生じる電気信号変化データを特殊なセンサーで捉えて積雪量・降雨 量を測ります。UCARで技術移転を担当するWayne Moore氏によると、この技術 にはMoving Parts (動く部品)が含まれず、現在使われている技術と比べる とハンディー(小規模)で維持も容易であるので、例えば空港の滑走路に沿っ てこの計測器を一定距離に設置して積雪・降雨量をリアルタイムで計測するこ とが可能だそうです。また、このようなデータは環境汚染につながる航空機の 解凍液とその作業を最小化することにも役立つという事です。 「ホットプレート」技術は、UCARから独占製造権を受けたマサチューセッツ州 Turners Falls市 Yankee Environmental Systems社(www.yesinc.com)が作っ ています。そして、UCARの資金援助を受けて設立されたPeak Weather Resources社 (www.peakweather.com) とWSDM Technologies LLC社 (今週開 かれる米国気象協会 - www.ametsoc.org - 年次会議で発表されます) も含め て世界的に市場開発を進めるようです。 「ホットプレート」技術は画期的な製品になる可能性を含んでいると思います。 ただ、現在まだ克服されなければならない技術的課題もあり、民間ベースで使 えるようになるまでには1〜2年はかかるかもしれません。しかし、国際協力の 可能性を考えれば研究開発・市場開発を含めてもっと早く使用可能になるので はと筆者は考えます。   バリッド・テクノロジー・グループ http://www.validtechnology.com    代表 黒木嗣也 Edward Kuroki          (黒木氏はアメリカのベンチャー企業で活躍中の人物)