お知らせ・記者発表
ジェトロ 2023年度 海外進出日系企業実態調査(ロシア編)
2023年12月06日
―ウクライナ情勢の影響が続き、「赤字」見込みは過去最高を更新―
ジェトロは2023年9月、ロシアに進出する日系企業に対し、現地での活動実態に関するアンケート調査を実施しました。調査結果の概要については下記のとおりです。
調査結果のポイント
- ウクライナ情勢の影響を受け、在ロシア日系企業の業績は2013年度の調査開始以降、最悪となる見込み。2023年の営業利益見込みを「赤字」と回答した企業の比率は54.8%と、前年から4.8ポイント増で最悪記録を更新。2024年の営業利益見通しについて、2023年に比べ「悪化」するとした企業は40.0%。「横ばい」が54.3%だった。
- 今後1~2年の事業展開について、「第三国(地域)への移転、撤退」が14.1%(前年比5.8ポイント増)で過去最大となった。「縮小」は前年比20.1ポイント減の28.2%で縮小傾向が鈍化した。「現状維持」が53.5%だった。
- ロシアで事業を展開する上での問題点として、レピュテーションリスク、現地での資産凍結の恐れ、さらなる追加制裁により製品の輸入が困難になる点が挙がった。
本調査について
- ジェトロは2023年9月13~29日、ロシアに進出する日系企業(日本側出資比率10%以上の法人。駐在員事務所、連絡事務所、現地で日本人が起業した法人は対象外)110社を対象に、アンケート調査を実施。73社より有効回答を得ました(有効回答率66.4%)。
- 1.営業利益見通し
-
- ロシアのウクライナへの軍事侵攻による事業環境の変化の在ロシア日系企業への影響は、2023年も続いている。2023年の営業利益見込みを「赤字」と回答した在ロ日系企業の割合は前年比4.8ポイント増の54.8%と昨年に引き続き過去最高を更新した(資料P.9)。ウクライナ情勢を受け「事業停止状態となっているため」といったコメントが多くみられた。
- 「黒字」と回答した企業の割合は5.4ポイント減の30.1%と過去最低を更新。
- 2023年の営業利益見込みの変化について、「悪化」を見込む企業は前年比5.7ポイント減の65.3%(資料P.10)。理由については「現地市場での販売体制縮小」が51.1%で最大となり、企業側要因が大きく影響した。次いで、「現地市場での需要減少」を挙げた企業が多かった(27.7%)(資料P.11)。
- 2024年の営業利益見通しは、「悪化」の割合が前年比17.4ポイント減の40.0%。「改善」の割合は前年比5.8ポイント減の5.7%と昨年の過去最低を更新した(資料P.13)。
- 2.今後の事業展開
-
- 今後1~2年の事業展開について、「第三国(地域)へ移転、撤退」と回答した企業は14.1%(前年比5.8ポイント増)と昨年に続き過去最高を更新した。「縮小」と回答した企業は28.2%(20.1ポイント減)、「現状維持」が53.5%(11.8ポイント増)、「拡大」が4.2%(2.5ポイント増)(資料P.15)。
- 「第三国(地域)へ移転、撤退」を選択しなかった企業61社に現在の状況を尋ねたところ、27.9%の企業が「事業継続意欲があり、仮に情勢が悪化しても残留を希望」、57.4%の企業が「すぐに撤退する計画はないが、情勢を様子見している状態」と回答した。11.5%の企業が「撤退を検討しているが、現地規制などの制約が大きく残留せざるを得ない状況」と回答した(資料P.16)。
- 今後の情勢悪化に備えた対策について、「すぐに撤退できるような態勢を整えている」(23.3%)、「安全対策や撤退時に関するマニュアルの策定」(18.3%)が多かった。「対策は特に行っていない」と回答した企業は33.3%だった(資料P.17)。
- 3.経営上の問題点
-
- 販売・営業面における問題点について、「取引先からの発注量の減少」(21.9%)が最多(資料P.25)。財務・金融・為替面では「対外送金に関わる規制」(69.9%)が最多となった(資料P.26)。「日欧米の経済制裁とロシアの対抗制裁により資本取引等が凍結されている」などのコメントがみられた。雇用・労働面では「従業員のモチベーション維持」(57.5%)が最多。次点では、「従業員の徴兵リスク」(35.6%)があがり、戦争の影響を受けていることが見受けられた(資料P.27)。
- 4.ロシアにおける事業展開上の課題
-
- 西側諸国による対ロ経済制裁およびそれに対するロシアの対抗措置の影響について、97.3%の企業が影響ありと回答。主な影響として、「日本本社におけるロシアビジネスのプライオリティ低下」(63.4%)、「現地市場での売上減少」(60.6%)が挙がった(資料P.33)。
- ロシアで事業を展開する上での問題点について、昨年に引き続き政情の不安定さや不信感といったコメントがみられた。外部環境の観点でもウクライナ情勢の先行きの不透明さ、経済制裁による事業への悪影響、ロシア事業の継続によるレピュテーションリスクなどが挙げられた(資料P.34)。
-
調査部欧州課ロシアCIS班(担当:浅元、後藤)
Tel:03-3582-1890