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「2018年度欧州進出日系企業実態調査」の結果について ―英国のEU離脱に伴う規制・法制の変更対応、日EU・EPA利用はともに社内体制整備が課題―

2018年12月11日

ジェトロは2018年9~10月、欧州に進出している日系企業に対し、経営実態に関するアンケート調査を実施しました。調査結果を以下のとおり発表します。

調査方法・実施時期 アンケート調査・2018年9月27日~10月25日
アンケート送付先 欧州進出日系企業908社(回答企業数763社、有効回答率84.0%)
質問項目 (1)営業利益見通しと進出国の景気見通し、(2)経営上の問題点、(3)英国のEU離脱への対応と現地調達、(4)今後1~2年の事業展開、(5)EPA/FTAのメリットなど

調査結果のポイント

  • 欧州進出日系企業の英国のEU離脱に関する最大の懸念は、「英国経済の不振」。
  • 英国のEU離脱後の英国の規制・法制の変更に関する在英日系企業の具体的懸念は、 「変更対応の社内体制」構築。
  • 英国がEUとの合意なくEU離脱(いわゆるノーディール)に至った場合の対応策として 最も多く挙げられたのが「在庫の確保・積み増し」。
  • 英国のEU離脱による「マイナスの影響」は、これまでの事業の影響ではアイルランド、 今後の事業への影響では英国が最大。
  • 日EU・EPAについて、「メリット大」と回答とした在英日系企業の割合が激減。
  • 日EU・EPA利用の上位課題は、「社内体制の整備」「サプライヤー/取引先との協力体制 整備」「自己証明制度の手続き」。

調査結果概要

(1)営業利益見通しと進出国の景気見通し

営業利益見通しは高水準を維持、チェコでは労働コストの上昇が利益の圧縮要因に:

  • 2018年の営業利益見通しをみると、在欧州日系企業で「黒字」と回答した企業の割合(73.9%)が前年比で初めて低下(1.1ポイント減)したが、非製造業を加えて本調査を開始した2012年以降で2番目に割合が高く、高水準を維持した。他方、欧州全体の「赤字」割合(12.8%)は、欧州景気が回復し始めた2014年(13.0%)に大きく減少し、2015年以降減少傾向にあったが増加に転じた。
    (ポイント資料1頁、図表6、7頁)
  • 在英日系企業では、英国のEU離脱(ブレグジット)交渉が不透明な中でも、「黒字」企業の割合(75.4%)が拡大(3.8ポイント増)した。理由として、値上げによる利益率改善を挙げる企業などがみられた。
    (ポイント資料1頁、図表6、7頁)
  • 2018年及び2019年の前年と比較した営業利益見込みをDI値でみると、両年ともチェコが唯一マイナスの数値を示した。進出国の景気の現状を国別にみると、チェコでは「良い」(59.1%)と「やや良い」(31.8%)を合わせて9割以上の進出企業が景気を実感しているにもかかわらず、失業率が低く、後述する「人材確保」が困難であることの結果としての「労働コストの上昇率の高さ」が利益を圧縮しているとみられる。
    (ポイント資料2頁、図表11、14、20頁)

(2)経営上の問題点

欧州全体では「人材の確保」、英国ではブレグジット交渉による政治・社会情勢が引き続き課題:

  • 経営上の問題点として、「人材の確保」(43.6%)が前年より8.1ポイント縮小したものの、前年調査に引き続き、最大の課題となった。特に、中・東欧では7割を超える企業(70.4%)が課題として挙げている。中でもチェコは90.5%の企業が課題に挙げているほか、ハンガリー(66.7%)、ルーマニア(64.3%)、ポーランド(60.0%)でも6割を超えている。これら4ヵ国では「労働コスト上昇率の高さ」についても、それぞれ90.5%、83.3%、50.0%、64.0%の企業が課題としている。
    (ポイント資料3、4頁、図表15、18、20頁)
  • 欧州全体での経営上の課題である「人材の確保」の内訳をみると、「マネージャーなどの管理職」(57.1%)の割合が最も多く、「工場ワーカー」(33.5%)、「IoT・AI等対応人材」(18.7%)が続く。中・東欧では、「工場ワーカー」(61.4%)を挙げる企業の割合が最も大きかった。なお、「IoT・AI等対応人材」について国別にみると、ドイツ(24社、28.9%)、ポーランド(5社、33.3%)で比較的、高い回答数と割合が観察された。
    (ポイント資料3頁、図表16頁)
  • 「欧州の政治・社会情勢」(37.8%)の割合は前年比11ポイント減となり、第3位に後退した。国別にみると、ブレグジット交渉が続く英国が57.1%となり、ルーマニアと並び、この割合が最も高かった。カタルーニャ情勢が小康状態にあるスペインは54.2%と3番目に高かったが、前年の調査からは28.7ポイントの大幅な減少となった。
    (ポイント資料3頁、図表15、20頁)

(3)英国のEU離脱と現地調達

金融・保険分野を中心に一部企業が統括機能を一部移転、懸念される英国経済の不振:

  • 英国のEU離脱によるこれまでの事業への影響は、「マイナスの影響」が16.1%となり、前年調査結果より2ポイント上昇した。特に、「マイナスの影響」を挙げた在アイルランド日系企業の割合が38.1%と、前年の13.0%から25.1ポイント上昇した。EU加盟国の中では、在アイルランド日系企業の英国からの平均調達率が15.3%と特に高く、英国・アイルランド間で一定のサプライチェーンが構築されていることが背景にある。一方、「マイナスの影響」を挙げた在英日系企業の割合は25.3%で、前年の26.2%からほぼ横ばいだった。
    (ポイント資料5、6頁、図表24、32頁)
  • 今後の事業への影響をみると、在英日系企業の59.8%が「マイナスの影響」(前年の46.9%から12.9ポイント上昇)を挙げた。理由をみると「関税」「通関手続き」「英国の欧州本社・物流ハブの再検討」などが挙がっており、影響が出るのはむしろこれからだと言える。
    (ポイント資料5頁、図表25頁)
  • 日系企業が抱える懸念については、在英日系企業では、上位3項目は「英国経済の不振」(71.3%、前年比1.9ポイント増)、「英国の規制・法制の変更」(58.0%、3.9ポイント増)」、「ポンド安の進行」(54.1%、2.0ポイント増)で、前年と変わらなかったが、回答割合が微増した。在英を除く在EU日系企業では、「英国経済の不振」(46.1%、1.0ポイント減)、「EU(英国を除く)拠点から英国への輸出」(38.0%、5.9ポイント増)、「英国の規制・法制の変更」(34.5%、1.7ポイント減)が上位3項目だった。双方の最大の懸念は「英国経済の不振」となっている。
    (ポイント資料7頁、図表26頁)
  • 英国の規制・法制の変更に関する具体的な懸念は、欧州全体では「EU規則との一貫性」(欧州全体:77.3%、在英日系企業:74.3%、在英を除く在EU日系企業:79.9%)が最大だが、在英日系企業では、「変更対応の社内体制」(77.1%)の割合の方が高かった。また、懸念分野としては「関税」(在英日系企業:68.2%、在英を除く在EU日系企業:75.3%)が最上位で、特に製造業で、この割合(86.4%、82.9%)が高い。続いて「非関税障壁」(41.2%、46.8%)、「基準・認証」(30.6%、31.2%)を懸念する企業の割合も高かった。また、在英日系企業では、「個人データ保護(EU規則との一貫性)」(41.2%)の割合が「基準・認証」より高く、ブレグジット後の懸念事項となっている。
    (ポイント資料7、8頁、図表26、27頁)
  • 英国のEU離脱に備え、移転・撤退等を実施した/決定した拠点の機能について、「統括」(61.0%、25社)機能が最大で、「販売」(29.3%、12社)、「生産」(14.6%、6社)」の各機能が続いた。また、「統括」機能の直し内容の8割は「一部移転(84.0%、21社)」だった。移転先として、「統括」では金融/保険を中心にドイツ(8社)、ルクセンブルク(7社)、オランダ(4社)、「販売」ではドイツ(4社)、「生産」ではポーランド、オランダ、フィリピンが挙がった。
    (ポイント資料9頁、図表29頁)
  • 英国がEUとの合意なくEU離脱に至った場合の対応策(コンティジェンシー・プラン)の策定状況について、「策定済み」「策定中」の回答割合は在英日系企業、在英を除く在EU日系企業とで大きな差はないが、「策定予定」を合わせると在英日系企業は26.8%となり、在英を除く在EU日系企業の12.8%を大きく上回る。「策定済み」「策定中」「策定予定」と回答した企業の対応策として、最も多く挙げられたのが物流・税関の混乱等を想定した「在庫の確保・積み増し」(20社)だった。
    (ポイント資料9頁、図表30頁)

(4)今後1~2年の事業展開

ブレグジット交渉が続く中、製品の高付加価値化やブランド力強化を模索する在英日系企業も:

  • 英国のEU離脱に向けた動向は、在英日系企業の今後1~2年の事業展開の意欲にまだ大きく影響していない。しかし、製造業では、在英、在英を除く在EU日系企業ともに「現状維持」の割合(58.7%、41.3%)がそれぞれ4.4ポイント、2.9ポイント増加し、様子見傾向。
    (ポイント資料10頁、図表34、35頁)
  • 在英日系企業では今後1~2年の事業展開を「拡大」と回答した企業に対し、具体的に拡大する機能を聞いたところ、「販売」(46社、前年比19社減)機能が最多で、「生産(高付加価値)」(17社)、「研究開発」(11社)が続いた。また、在英日系企業の製品・サービスの高付加価値化や差別化の取り組みとして、「自社ブランドの強化」(52.2%)や「技術者の人材育成強化、増員など」(30.2%)の回答割合が在英企業の中では高く、英国のEU離脱を控え、ブランド力や品質、技術で差別化を図る製品に軸足を移そうとする姿勢も読み取れる。
    (ポイント資料11頁、図表39頁)

(5)EPA/FTAのメリットと課題

日EU・EPAの利用にあたっての課題は社内体制やサプライヤー/取引先との協力体制の整備:

  • 2019年早期の発効が期待される日EU・EPAについて、「メリット大」とする回答割合(42.0%)が、前年より12.3ポイント減少した。利用の検討が進み、「影響なし(25.3%)」「わからない(30.9%)」の割合が前年よりそれぞれ6.0ポイント、5.6ポイント増加したことも影響しているとみられる。在英を除く在EU企業では、「メリット大」の割合が48.1%となり、前年の割合に近づく。在英日系企業では、この割合が前年比20ポイント減の25.1%へ激減しており、英国のEU離脱により、同メリットを享受できなくなると考える企業が増えたためとみられる。
    (ポイント資料12頁、図表45頁)
  • 日EU・EPAの利用にあたっての課題として、「社内体制の整備」(47.4%)、「サプライヤー/取引先との協力体制整備(原産地証明書に必要な書類の整備等)」(43.1%)、「自己証明制度の手続き」(34.6%)が上位に挙がった。2018年7月の署名以降に合意内容の詳細が明らかになり、発効が近づくにつれて、課題が現実的な問題になりつつある。
    (ポイント資料12頁、図表47頁)
  • EUが現在、署名に向けて手続きを進めているベトナムとのFTAについて、ベトナムからの輸入時に「利用する予定」「利用を検討中」とする回答がそれぞれ39.5%(15社)、34.2%(13社)あり、欧州進出企業の期待が高まっている。
    (ポイント資料12頁、図表50頁)
  • EUが現在交渉中、あるいは英国単独も含めて将来的に交渉の可能性があるFTA/EPAのうち、「メリット大」の割合が大きいのは、「EU米国間の貿易協定」(14.2%)、「EUタイFTA」(13.9%)、「EU・ASEAN・FTA」(13.6%)で、欧州進出日系企業からみて、「日英EPA」(12.2%)や「英国のTPP11参加」(7.7%)の割合はより低い結果となった。なお、英国のTPP11(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)参加について、「メリット大」と回答した理由にメンバー国であるベトナムで製造する製品が多いことを理由に挙げた企業がみられた。
    (ポイント資料13頁、図表51頁)

ジェトロ欧州ロシアCIS課 (担当:田中、福井、出沼)
Tel:03-3582-5569
E-mail:ORD@jetro.go.jp