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「ジェトロ世界貿易投資報告」2017年版 ‐転換期を迎えるグローバル経済‐

2017年07月31日

2017年版のジェトロ世界貿易投資報告をまとめましたので、総論編概要を以下のとおり発表します。

10のポイント:

  1. 世界貿易は3.1%減、2年連続で減少
  2. スロートレードは継続 / 堅調なサービス貿易
  3. 日本の貿易収支は6年ぶりの黒字に
  4. 日本の対外直接投資は過去最高を更新
  5. 好調が続くアジアからの対日直接投資
  6. 転換期を迎える世界の通商政策
  7. 「内向き政策」の背景と自由貿易体制構築の新たな動き
  8. 規制・規格の標準化で再評価される多国間貿易ルールの役割
  9. 電子商取引市場の将来
  10. 日本の外国人材受け入れと企業の活用

1.世界貿易は3.1%減、2年連続で減少

  • 2016年の世界貿易(商品貿易、名目輸出額ベース)は、前年比3.1%減の15兆6,201億ドル(ジェトロ推計)となり、2年連続で減少した。連続でマイナス成長を記録するのは、1981-83年以来。貿易数量(輸出ベース)は0.2%減と横ばいで、2010年以降で最も低い伸び。世界貿易額は2015年第3四半期を底に減少率が縮小傾向で、2017年通年ではプラス成長に転じる見通し。
  • 輸出入とも2年連続減少した米国と中国、資源価格の低迷を背景に減少した資源輸出国(41 新興・途上国および 7 先進国)の貿易が世界貿易額を押し下げた。一方、ドイツなど欧州諸国は比較的堅調であったほか、ベトナムの輸出入、フィリピンの輸入が高い伸びを見せた。
  • 商品別では、世界貿易額の減少の約8割が資源関連商品の減少で説明できる。多くの品目の貿易が減少する中、輸送機器やタービン、医薬品、産業用ロボット、半導体製造機器、集積回路などが増加した。

2.スロートレードは継続 / 堅調なサービス貿易

  • 貿易量の伸び率が世界のGDP成長率を下回るスロートレード現象が続く。貿易伸び率は2012年以降鈍化し、GDP成長率に対する比率は1を割り込んだ。スロートレードは新興・途上国で特に深刻である。
  • 世界全体として貿易がふるわない中、2012年以降も輸入増を記録した品目として、乗用車や通信機器、加工食品、衣類、医薬品など、消費財の堅調さが目立つ。
  • 低調な物品貿易に対し、サービス貿易は比較的好調で、景気低迷に対する耐性は物品より強い。項目別では通信・コンピュータ・情報や、業務サービスなど、地域別では新興・途上国からの輸出増が顕著である。サービス貿易の拡大は、新興・途上国の成長にも寄与するものと期待される。

3.日本の貿易収支は6年ぶりの黒字に

  • 2016年の日本の貿易は輸出が前年比3.1%増の6,446億ドル、輸入が6.4%減の6,070億ドルとなった。鉱物性燃料の赤字縮小を主因に、貿易収支は376億ドルの黒字となり、2010年以来6年ぶりに黒字を記録した。2017年上半期も96億ドルの黒字と、貿易収支は黒字基調に戻りつつある。
  • 輸出では、消費が底堅い米国(3.3%増の1,300億ドル)が自動車や建設機械などが伸び、4年連続で最大の輸出相手国となった。中国は半導体製造機器や自動車・同部品が増加したことが寄与し、4.2%増の1,139億ドルとなった。EUはドイツ(自動車)、英国(鉄道車両)などが伸び、11.2%増の734億ドルに増加した。
  • スロートレード下において世界では消費財が堅調であったが、日本では乗用車に加えて、半導体製造機器や飛行機・ヘリコプターなどの部分品など、中間財、資本財で伸びた品目も多く、強さを発揮した商品が多い。

4.日本の対外直接投資は過去最高を更新

  • 2016年の日本の対外直接投資は、前年比24.3%増の1,696億ドル(国際収支ベース、ネット、フロー)であった。同じ基準で比較可能な1996年以降では、これまでのピークの2013年(1,556億ドル)を上回って過去最高を更新した。主要国・地域別では、EU向けが前年の約2倍に拡大したが、主に英国への投資増によるものである。米国は全体の3割を占め、7年連続で最大の投資先国となっている。
  • ジェトロのアンケート調査によると、日本企業が国内外に有する販売や生産などの拠点・機能を再編する際には、中国にある拠点・機能をASEANへ移管するパターンが増加傾向にあり、日本企業のASEANシフトが続いている。
  • 2016年度の日本企業の海外売上高比率は56.5%と高水準が続いている。地域別では、近年、米州の売上高比率が上昇を続けており、26.3%と売上高全体の約4分の1を占めた。

5.好調が続くアジアからの対日直接投資

  • 2016年の対日直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は349億ドルと、2015年(56億ドル)の約6倍の規模となり、比較可能な96年以降で最大の投資額となった。地域別では、欧州が医薬品や自動車部品分野でのM&Aなどにより大幅に増加した。
  • 2016年末の対日直接投資残高は27兆8,404億円となり、GDPに対する比率は5.2%と初めて5%台となった。対日投資直接残高に占めるアジアの構成比は18.0%に拡大し、主要な投資元としての存在感を増している。
  • 近年、アジア企業による海外企業買収の増加が著しい。世界のクロスボーダーM&A総額に占める東アジア(中国、韓国、台湾、香港、ASEANの合計)の構成比は、2000年の2.3%から2016年に13.6%まで拡大した。なかでも中国による海外企業の買収額は16年に過去最高の1,204億ドルに達した。

6.転換期を迎える世界の通商政策

  • 世界金融危機以後に導入された貿易制限的措置が累積し続けている。WTOによれば、2008年10月~2016年10月にG20諸国で導入され実施中の措置1,263件に対し、撤廃された措置は408件にとどまっている。
  • 米新政権は貿易赤字を深刻視しており、2017年3月には赤字の要因などを調査するよう指示する大統領令が発布された。とりわけ対中赤字は米国の貿易赤字の半分近くを占める。米国は今後も、貿易救済措置や通商法の執行強化を通じて、貿易相手国に対する赤字是正を求めていく可能性が高い。
  • 超国家的な統合を推進し、拡大を続けてきたEUは、英国との離脱交渉、統合のあり方に対する加盟国間のスタンスの相違、移民・難民問題など数多くの困難な課題に直面している。ドイツ、フランスを中心とする西側諸国の意向を反映し、今後のEUの諸政策は、経済通貨同盟や外交協力など分野ごとに、加盟国の能力と意欲に応じて統合のスピードと深度に差を許容する「多速度的統合」へと軌道修正を図りつつある。

7.「内向き政策」の背景と自由貿易体制構築の新たな動き

  • 英国のEU離脱選択、米新政権によるTPP離脱、NAFTA再交渉、移民政策強化など、一部欧米諸国でグローバル化に逆行する内向き政策への支持が拡大している。背景には、所得・雇用の格差拡大があるといわれるが、格差拡大の主要因はグローバル化ではなく技術進歩であるというのが一般的見方。
  • グローバル化の流れから取り残される層の発生が指摘される中、WTOを通じた包摂的な多国間貿易ルール形成の意義と効果が再認識されている。ここ数年WTOでは着実に成果と前進がみられる。
  • 中でも2017年2月、WTO貿易円滑化協定が発効した。協定に基づく貿易手続きの簡素化や透明性の向上が実現すれば、中小企業も含めたすべての当事者の貿易への参入を後押しすると期待される。

8.規制・規格の標準化で再評価される多国間貿易ルールの役割

  • 技術の高度化とともに今日、国際標準を獲得して財・サービスの国際展開を有利に進めるための戦略的な取り組みが、国・地域の政策レベル、また企業ベースでも盛んになっている。
  • WTO体制下で国際規格の影響力が強まってきたが、国際規格の対象が、「モノ」から「サービス」そして「システム」へと広がる中、標準化機関間の棲み分けが困難になっているといった国際規格の課題や、民間の独自規格の増加といった国際標準化の今日的傾向が浮き彫りになってきた。
  • WTO加盟国が強制規格の立案などの際にWTO事務局に行うTBT通報は制度発足以降2万8,000件以上、2012年以降はほぼ年2,000件以上に達し、規制・規格の透明性向上に寄与している。WTO・TBT委員会では、加盟国から指摘された「特定の貿易上の懸念(STC)」措置の検討を通じて、貿易紛争を未然に回避してきた。

9.電子商取引市場の将来

  1. 市場と企業
    • UNCTADは、2015年の世界の企業対消費者取引(B2C)における電子商取引(EC)額を2.9兆ドルと推計する。中国は既に米国を抜き、世界最大の市場となったとみられる。インドも、2016年から2020年までの年平均伸び率は約40%と、中国を上回る成長ペースが見込まれる。
    • ジェトロのアンケート調査によると、回答した日本企業の24.4%がECを利用して販売をしたことがあり、そのうち約半数(47.2%)が海外販売を行う。現在の販売先国・地域では北東アジアと欧米諸国が多い一方で、今後はASEAN諸国への期待が高い。日本企業の事例をみると、ECの活用で従来と異なる販売先へのアプローチが可能となったことがわかる。
    • ECの活用においては、決済や物流などを課題に挙げる企業が多い。決済においては、代金引換やクレジットカード決済が主流である国・地域が多いが、これらインフラが未整備の途上国では代替となる決済システムの構築が、ビジネスの成長を左右する。配送については、質の高い物流企業の有無に加え、税関の業務効率なども、EC事業者が消費者に商品を届ける際の課題となる。世界では、こうしたEC活用上の課題について、先進的な取り組みを行う企業もみられる。
  2. 規制と国際ルール形成
    • EC市場が世界的に拡大する一方、ビジネスの障壁となり得る規制も存在する。データ・ローカリゼーションも含めたデータ関連規制は、とりわけ2000年代後半以降インターネットユーザーの増大に伴い増え続けた。
    • ECに関するルール策定は様々な国際機関で試みられてきた。EC市場拡大に伴うルール形成の機運高まりを受け、 WTOでは2016 年7 月に、電子商取引特別会合でECルールの策定に向けた議論が始まった。
    • FTAでも2000年代以降ECの取り扱いが増えてきた。世界で電子商取引章を持つ約60のFTAの多くは、米国あるいはそのFTA相手国による協定であり、米国型の電子商取引章が広く普及している。

10.日本の外国人材受け入れと企業の活用

  • 日本企業が輸出や海外進出などの海外ビジネスを展開する上で、人材の確保が最大の課題となっている。国内では企業活動を支える働き手世代の減少が著しく、総人口に占める生産年齢人口比率を他の主要先進国と比較すると、日本の減少ペースが顕著な様子が明らかになる。
  • 国内で就労する外国人は2016年に108万3,769人と、初めて100万人を超えた。このうち日本企業の海外ビジネス展開を支える高度人材が主に分類されるのが「専門的・技術的分野」(約20万人)である。
  • ジェトロのアンケート調査で外国人材活用のメリットを尋ねたところ、取締役や管理職に外国人材を登用するケースでは「販路の拡大」を挙げる割合が最多となった。外国人社員の雇用で海外の多様な価値観を経営に取り込める意義は大きい。日本企業の外国人材活用が進むのに伴い、今後は技術革新に関連する「新たな商品開発に貢献」や「課題解決能力の向上」への評価も高まっていくと考えられる。

ジェトロ国際経済課 (担当:米山、安田、明日山)
Tel:03-3582-5177