「2016年度 米国・カナダ進出日系企業実態調査」の結果について

-米国進出日系企業は地産地消を促進、NAFTA相手国との取引は限定的-

2016年12月06日

ジェトロは、2016年9月15日から10月28日まで、米国およびカナダに進出している日系企業に対し、経営実態に関するアンケート調査を実施しました。その結果を以下の通り発表します。
※米国は製造業のみ、カナダは製造業および非製造業を対象としています。

調査方法・実施時期: アンケート調査・2016年9月15日~10月28日
アンケート送付先: 米国進出日系企業(製造業のみ)1,027社(回答企業数706社、有効回答率68.7%)
カナダ進出日系企業(製造業および非製造業)189社(回答企業数143社、有効回答率75.7%)
質問項目: (1)企業業績、(2)今後の事業展開の方向性、(3)変化するビジネス環境への対応等

米国進出日系企業実態調査の結果のポイント

  • 営業黒字を見込む企業は8割弱(77.5%)で、5年連続で7割超を記録。
  • 米国内からの調達、販売がそれぞれ57.2%、81.5%と過半。在米日系企業の27.2%がNAFTAを利用しているが、NAFTAパートナー国(カナダ、メキシコ)からの調達、同国向け販売の割合はそれぞれ2.7%、8.5%と限定的。
  • 為替変動により半数強がマイナスの影響、原油価格の影響は分かれる。
  • 今後2~3年で市場拡大を期待する産業分野として「IT・クラウド・モバイル」(51.5%)が初めて首位を獲得。米国のIoT技術の進展などへの企業の関心を反映。

カナダ進出日系企業実態調査の結果のポイント

  • 営業黒字を見込む企業は72.3%で、5年連続で7割超を記録。
  • カナダ国内からの調達、販売がそれぞれ42.5%、67.1%。在カナダ日系企業の41.3%がNAFTAを利用しており、NAFTAパートナー国(米国、メキシコ)からの調達、同国向けの販売の割合はそれぞれ27.9%、14.2%だった。

米国進出日系企業実態調査の結果

(1)営業利益見込み: 黒字を見込む企業は8割弱(77.5%)と高水準を維持
  • 米国進出日系企業の営業利益は、16年は回答企業の77.5%が黒字を見込む。前年の81.4%より微減となったものの、好調さは維持している。営業黒字を見込む企業は、2012年度調査以来、5年連続で7割を超えた。輸送用機器部品や一般機械分野で黒字比率が高く、これらの分野の企業が多く所在する中西部は8割の黒字比率を維持する。【資料-3頁】
  • 景況感(前期と比較した営業利益の「改善」-「悪化」)は前年から9.8ポイント悪化した。2016年の営業利益見込みが「改善する」と回答した割合は前年から6.5ポイント減少し、「悪化する」との回答は3.3ポイント増加した。【資料-4頁】
  • 今後1~2年の事業拡大を視野に入れる回答企業は53.4%と、前年から3.3ポイント減少した。拡大する機能として、販売、生産(高付加価値品)が主に挙がった。業種別では、化学品・石油製品、食品・農水産加工などにおいて「拡大」と回答した割合が高い。【資料-5頁】
  • 現地従業員数については、過去1年間と今後の予定について「増加」と回答した企業数が4割強を維持し、日本人駐在員は総じて「横ばい」との回答になった。【資料-6頁】
(2)調達、生産、販売: 米国での地産地消を強化する方向
  • 原材料・部品の調達については、米国内からの調達比率は57.2%となった(現地日系企業18.6%、地場企業36.5%、その他外資企業2.1%)。次いで、日本(27.3%)からの比率が高かった。今後調達を拡大する先としては、米国地場企業(145社)、米国日系企業(89社)が高く、日本からの調達を縮小すると回答した企業の割合は26.0%となり、前年より6.7ポイント増えた。【資料-7頁】
  • 米国向け製品の生産地について、国別の割合をみると、米国は70.0%と前年と同水準だった。今後米国向けの生産を拡大する国にとしては米国が170社で最も多く、メキシコが68社と続いた。一方、日本での生産を縮小すると回答した企業の割合は25.8%で、前年より1.2ポイント増えた。【資料-8頁】
  • 製品の販売先は81.5%が米国向け、NAFTA市場向けが9割を占めた。今後、販売を拡大する先としては、米国が303社、次いでメキシコが189社となった。輸送用機器部品、化学品/石油製品などの業種を中心にメキシコへの販路拡大を目指す声が聞かれた。【資料-9頁】
(3)FTA利用: 米国進出日系企業の約3割がNAFTAを利用
  • 全回答企業のうち輸出入いずれかでNAFTAを利用している企業は27.2%となった【資料-10頁】。このうち、輸出入無し/無回答企業を除いて集計すると、メキシコやカナダへの輸出にNAFTAを利用している企業は5割前後を占め、輸入では6割強の企業が利用している。また、日米間のFTAが実現した場合、輸出入での活用への期待も大きかった。【資料-11頁】
(4)コスト上昇/販売抑制要因: 賃金の上昇や労働者の確保、価格競争の激化などが引き続いて課題
  • 経営上の課題(コスト上昇要因)については、「賃金(給与・賞与)の上昇」、「労働者の確保」、「医療保険の負担増」が上位3項目として挙がった。賃金上昇(65.7%)は前年(64.1%)に続き筆頭要因となっている。回答企業からは、米国の景気回復に伴い、労働者の流動性や賃金上昇圧力が高まっているとの意見が聞かれる。【資料-13頁】
  • 経営上の課題(販売抑制要因)については、「価格競争の激化」「有力な競合製品の存在」が例年同様、上位に挙がった。【資料-14頁】
(5)為替/原油価格の変動の影響: 為替変動により半数強がマイナスの影響、原油価格の影響は分かれる
  • 円高米ドル安傾向が続いた2016年10月までの為替変動は53.2%の回答企業において「マイナスの影響があった」結果となった。具体的な影響として、「原材料価格の上昇」や「為替差損」を挙げる企業が多い。ただし、貿易取引に米ドルを用いる企業は9割に達し、米国内で調達を行う割合が高いことから、「影響はない」企業は3割を占めた。【資料-15頁】
  • 2016年の原油価格変動の影響については、「マイナス」(23.8%)が「プラス」(20.8%)を上回り、「プラス」の回答は、約半数を占めた前年から半減した。原油価格は2016年も低水準で推移しているが、前年に比べ上昇していることから、同じ業種の企業でもプラス、マイナス両方の影響がでている。【資料-16頁】
(6)新政権の政策に対する関心: 「外交」、「通商」への関心が上位、約6割の企業が選択
  • 新政権の政策に対する関心分野として、外交(455社)、通商(416社)、税制(360社)が上位3項目として挙がった。外交政策への関心を国・地域別にみると、日本(378社)、中国(200社)、メキシコ(169社)が上位に並んだ。半数以上の企業が、ビジネスへの直接の影響が大きい対日外交への関心を示した。【資料-17頁】
  • 通商分野の関心内容としては、TPP(298社)への関心が高く、NAFTA(109社)、アンチ・ダンピング(AD)税、相殺関税(104社)が続いた。インフラストラクチャーに関心を示した企業は165社で、「港湾」(73社)、「鉄道」(64社)、「高速道路」(48社)が上位を占めた。【資料-18頁】
(7)市場拡大を期待する産業、地域: IT・クラウド・モバイルが最多、約8割の企業が南部に注目
  • 今後2~3年で市場拡大を期待する産業分野として、最も多くの企業がIT・クラウド・モバイル(51.5%)を選択した。医療(46.9%)、環境(43.2%)は順位を下げたものの、前年に続き高い関心を集めた。そのほか、ロボティクス・メカトロニクス(17.1%)、ナノテクノロジー(5.5%)が順位をそれぞれ上げた。【資料-19頁】
  • 市場拡大を見込む地域では、約8割の企業が南部に注目している。州別では、テキサス(273社)、カリフォルニア(175社)、ジョージア(88社)の上位3州は同じだった。そのほかミシガンは前年の7位から5位に、イリノイは12位から6位にそれぞれ順位を上げた。【資料-20頁】

カナダ進出日系企業実態調査の結果

(1)営業利益見込み: 黒字比率は微減したものの7割強を維持、景況感は悪化、資源価格下落の影響も
  • カナダ進出日系企業の営業利益は、16年は回答企業の72.3%が黒字を見込む。前年の76.0%よりもやや減少したものの、2012年度調査から5年にわたり7割台の黒字比率を維持している。為替や原油価格の変動などの影響を受けながらも、景気自体が悪化しているとの見方は少ない。【資料-22頁】
  • 景況感は前年から5.2ポイント悪化した。営業利益が前年比で「改善」するとの回答割合は41.1%となり、前年から5.8ポイント減少した。また、営業利益が「悪化」するとの回答も0.6ポイント減少した。一方、「横ばい」を見込む企業は6.3ポイント増えた。【資料-23頁】
  • 今後1~2年の事業の拡大を視野に入れる回答企業は40.8%と、前年から0.7ポイント減少した。業種別でみると製造業は前年から2.2ポイント増加したが、非製造業は4.8ポイント減少した。【資料-24頁】
(2)調達、販売: 現地調達は現状維持する一方、米国からの調達が増加、販売先は8割強がNAFTA域内
  • 原材料・部品の調達については、カナダ国内からの調達比率が42.5%(現地日系企業9.0%、地場企業31.4%、その他外資企業2.1%)となり、前年よりも0.5ポイント減少した。米国からの調達率は26.6%で前年から2.3ポイント増加した。メキシコからの調達率は1.3%だった。【資料-26頁】
  • 製品の販売先は67.1%がカナダ、13.5%が米国、0.7%がメキシコ向けという分布となり、NAFTA向けが8割以上を占めた。【資料-27頁】
(3)FTA利用: カナダ進出日系企業の4割超がNAFTAを利用
  • 全回答企業のうち米国またはメキシコとの輸出入においてNAFTAを利用する企業は、41.3%となった【資料-28頁】。このうち、輸出入無し/無回答企業を除いて集計すると利用企業は65%を超え、前年の割合を上回った。16年10月に署名されたEUとの包括的経済貿易協定(CETA)や日本とのFTAへの期待を示す企業も多い。【資料-29頁】
  • 経営上の課題(コスト上昇要因)については、「カナダドル/米ドル為替リスク」(65.7%)が筆頭に挙がり、「賃金(給与・賞与)の上昇」(46.4%)が続いた。【資料-31頁】
  • 円・米ドルに対するカナダドル安の傾向が続いた2016年10月までの為替変動の具体的な影響として、プラス、マイナスと回答した企業の割合は同水準となった。部品などの輸入割合が高い販売会社においてマイナスの影響が見込まれるとの回答が多かった。【資料-32頁】
  • 2016年の原油価格変動の影響については、「マイナス」の影響を見込む企業の割合は39.6%となり、「プラス」の回答は前年から21.2ポイント減少した。【資料-33頁】
  • 米国新政権の政策に対する関心分野としては、外交、通商、移民が上位3項目に挙がった。「外交」については、日本、カナダ、中国が上位を占めた。米新政権がカナダに影響を及ぼすような施策を実行することにより、在カナダ日系企業のビジネスが滞ることを懸念する声などが聞かれた。【資料-34頁】
  • 今後2~3年で市場が拡大すると見込む産業分野は、前年に引き続き「環境」、「医療」、「健康」、「IT・クラウド、モバイル」の順に関心が高かった。【資料-35頁】

ジェトロ米州課(担当:秋山、中溝、藪)
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