ジェトロ・トピックス ドイツ・ベルリンで「日EU・EPAセミナー」開催
2015年1月
2015年1月19日、ジェトロは、日EU経済連携協定(EPA)交渉推進を目的として、同協定の意義についての認識をドイツの政・官・経済界関係者と共有するため、同協定が中小企業の国際化に如何に貢献するかをテーマとするセミナーを、コンラート・アデナウアー財団(KAS)との共催によりドイツの首都ベルリンにおいて開催、ドイツ連邦議員・連邦政府関係者・ドイツ企業関係者など84名が参加しました。
本セミナーは、2013年4月に交渉を開始した日EU経済連携協定(EPA)について、安倍首相がドイツのメルケル首相と2014年4月に首脳会談を行った際、2015年内の大筋合意をめざすべきとの立場を示し、メルケル首相も2015年は(合意)に良い年だろうと応じるなど、日EU間の交渉が本格化する中、中小企業の国際化が日独共通の課題であるところから開催されたものです。
中根猛駐ドイツ日本国大使、ゲアハルト・ヴァーラースKAS事務次長兼欧州・国際協力部長の挨拶に続いて登壇したジェトロの長島忠之理事は、1.日独経済交流の可能性、2.アベノミクスの現状、3.日EU・EPAの意義、の3点に焦点を当てた基調講演を行いました。
冒頭、EUが関心を持っている公共調達について、ドイツ企業のブレーキシステムが北陸新幹線や東北新幹線の新型車両に活用されている事例を紹介しました。あわせて、ドイツからの観光客訪日(Visit Japan)を呼びかけました。続いて、日独経済交流について、日独間相互の投資が活発である中、ドイツ企業がアジアの成長を取り込むために日本企業のパートナーを探す動きがあること、中小企業間レベルでも日独企業が共同でイノベーションを創出し、新規市場を開拓する連携を図っていることを紹介しました。

会場風景

基調講演に立つ長島理事
アベノミクスについては、安倍政権が、経済の好循環作りや電力・農業分野での構造改革に加え、日本企業の海外展開を通じた「外へのグローバル化」と海外からの高度人材の流入や優れた企業の投資を促す「内なるグローバリゼーション」を車の両輪とする“開かれた国づくり”を進めていると説明しました。その中で、農薬分野で日本をハブにアジアでビジネスを広げているドイツ化学大手企業の例を挙げ、ドイツ企業にとってビジネス機会が生まれていると述べました。日本が世界第三位の経済大国であること、アジアのハブであることなどを挙げて、二次投資を含む対日投資を促しました。ジェトロは対日投資支援の中核機関として対日投資を行うドイツ企業を積極的に支援することも表明しました。
日EU・EPAに関しては、日本が同EPAと同時にTPPやRCEP交渉を推進していることを紹介した上で、日EU・EPAによりドイツがアジアの成長を取り込むことができる、WTOのルール作りにも貢献できるといった意義を強調するとともに、中小企業の国際化推進には、EPAでのルール作りに加え、貿易投資促進機関が連携支援することが重要であるとして、欧州各国の貿易投資促進機関と協力の覚書(MOU)締結を進めるジェトロの方針を紹介しました。
続くパネルディスカッションでは、ハウプトマン議員(ドイツ与党キリスト教民主同盟選出)が、EUは米国とのFTAだけに目を向けるのではなく、アジアとの関係、つまりは日本との関係に着目すべきとのメッセージを発信しました。またトライアー・ドイツ商工会議所副専務理事も、「モビリティやエネルギーに関連する産業が盛んな日本におけるドイツ企業ビジネス機会は大きく、景気回復や高齢化の進行といった共通の課題を抱える両国が連携を強める意義は大きい」と述べました。
この他、赤石浩一経済産業省大臣官房審議官(通商政策局担当)、戸堂康之早稲田大学教授、ハンス・ギュンター・ヒルペルト ドイツ国際政治安全保障研究所(SWP)アジア研究部長、有馬純ジェトロ・ロンドン事務所長が、パネリストとして、日EU・EPAの意義や中小企業の国際化への貢献について活発に意見を交わしました。

パネルディスカッション
日EU・EPAセミナー(「EU-Japan Free Trade Agreement, Impact on the further globalization of Small and Medium Sized Enterprises in Asia and Europe」)概要 | |
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日時 | 2015年1月19日(月曜)17時30分~19時30分 |
会場 | コンラート・アデナウアー財団アカデミー(ドイツ・ベルリン市) |
主催 | ジェトロ、コンラート・アデナウアー財団(KAS) |
次第 | |
開会挨拶 |
ゲアハルト・ヴァーラース コンラート・アデナウアー財団事務次長兼欧州・国際協力部長 中根猛 在ドイツ連邦共和国特命全権大使 |
基調講演 |
長島忠之 ジェトロ理事( 講演資料![]() |
パネルディスカッション |
赤石浩一 経済産業省大臣官房審議官(通商政策局担当) マルク・ハウプトマン ドイツ連邦議員(キリスト教民主同盟) 戸堂康之 早稲田大学教授( 資料 ![]() ハンス・ギュンター・ヒルペルト ドイツ国際政治安全保障研究所(SWP)アジア研究部長 有馬純 ジェトロ・ロンドン事務所長( 資料 ![]() フォルカー・トライアー ドイツ商工会議所副専務理事 (モデレータ) パウル・リナルツ コンラート・アデナウアー財団 アジア地域経済政策代表・日本事務所代表 |