世界の見本市ビジネストレンド日本能率協会、業界のエキスパートを活用して

創立80周年を迎え、展示業界を牽引し続ける一般社団法人日本能率協会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます理事の小宮太郎氏と産業振興センター第2事業グループ長の丸尾智雅氏にコロナ禍での出展者の変化と今後の取り組みなどについてお話を伺った。

一般社団法人日本能率協会
理事・産業振興センターディレクター 小宮 太郎 氏(右)
産業振興センター第2事業グループ長 丸尾 智雅 氏(左)

Q1:日本能率協会の設立と展示会との関わりについて
A1:日本能率協会は1942年に岸信介商工大臣(当時、後の第57代内閣総理大臣)のあっせんにより創立され、2022年に80周年を迎えた日本で一番古い社団法人です。創立当時は戦争中であったことから、日本の軍需産業が能率的に動けるように、Industrial Engineering(IE)という考え方をアメリカから持ってきて民間企業に広めるモノづくりのコンサルティングファームでした。戦後にGHQから戦争に加担したとして解散命令を一度受けました。しかし、日本の復興のためにはIEを使ったモノづくりが必要ということで、民間企業から存続希望の声をいただき、そこからは補助金などを一切受けずに運営しています。
展示会との関わりは、1960年にB to Bのトレードショーとしてプラントメンテナンスショーを晴海の東京国際見本市会場で開催したのがスタートで、今では年間に30本~40本の展示会を開催しています。
Q2:コロナ禍の影響は?
A2:2019年までは展示会場を如何に広く確保するか、地方や海外へ如何に展開していくか、といった右肩上がりのことしか考えていませんでした。しかし、コロナ禍で一気に止まり、100年に一度のピンチと言われています。この疾風により、これまで従来の流れでやっていた仕事、アライアンスも含めて付き合いでやっていたことを見直す機会にもなりました。ピンチの時にお互いがどのくらいWin-Winの関係を作れるかも分かったので、これをチャンスに変えるために舵を切っているところです。
Q3:出展者に変化はあったか?
A3:コロナ禍によって、リアルで開催していたFOODEX JAPAN 2020などを中止せざるを得なくなって、当協会も商談機会を提供したいとの思いからオンラインという選択肢を考えました。オンラインでできることは対応したけれども、やっぱり物足りない、リアルの価値が改めて分かったという声を1年も経つとほぼどの業界の出展者からもいただくようになりました。リアル展示会は、商談だけが目的ではなく偶然出会った人や商品から課題解決策のヒントが得られる貴重な場だというベテランバイヤーの声も届いています。展示会で出会った人に今でもお世話になっているというバイヤーもいらっしゃいます。オンラインだと、偶然の出会いがなかなかない、人と会わないと深い話ができないためリアル展示会の価値が再認識されたことが一番大きな変化だと思います。
また、2019年までは出展者の効果測定の指標として自社ブースで回収した名刺の数、展示会全体の来場者数が主流でした。近年は、商談が決まった数、進捗している商談数、成約した額などで出展効果を判断する出展者が出てきています。実際、とにかく名刺を集めていた出展者が、展示会後に営業がフォローして意義のある方の名刺だけ集めるように変わったと聞きます。リアル展示会以外に新たな営業手法は創出できていないという出展者がほとんどで、開催の価値を再認識することができましたが、一方で業界のお祭りのようにやっていた展示会は一気に予算取りが難しくなってきて、出展者の考え方が変わってきたと感じます。
Q4:オンライン展示会に対する参加者の要望や新しい取り組みは?
A4:オンライン展示会にもいろんな形があると思います。当協会は出展者の商品をどれだけ紹介できて、興味ある方にどれだけ引き合わせられるかに焦点を当てています。バーチャル空間を作ってアバターがそこに入って見るようなものや、リアル展示会にライブで情報発信を組み合わせるハイブリッド型にするものもありますが、オンライン展示会のここが良かったという話は正直聞かないですね。自社でオンラインのプライベートショーを実施するのでリアル展示会に出展しませんと回答された企業が、限界を感じてリアルの展示会に戻ってくるケースもあります。出展者も来場者もオンライン展示会に対する期待値はそれほど高まっておらず、リアル展示会の補助的な位置づけになっていくように感じます。
Q5:ウィズコロナという観点で、出展企業との取り決めに変化はあるか?
A5:当協会は国や展示会場、自治体から中止要請がない限りは展示会を開催する方針です。開催する場合に出展企業の選択でキャンセルするのであれば、規定のキャンセル料が適用されるとお伝えしています。主催者が中止を決定した場合は、翌年度の同じ展示会または1年以内に開催される当協会主催の他の展示会に出展費用を移行する、もしくは、返金希望の場合は70%をお返しすることにしています。これは新たに加わった条項です。
2020年3月にFOODEX JAPAN 2020を中止した時はこういう規定がありませんでした。急遽だったこともあって、当協会は100%返金していました。同じ対応をした他の主催者もいたと記憶しています。ですが、展示会の主催者はいろいろな準備をしていますし、業界の発展のための取り組みにも費用は掛かっています。返金を選ぶ時になぜ100%戻ってこないのかと納得いただけない出展者が多い時期もありました。最近は申し込み時に確認を受けることはありますが、なぜそうなのかと問い合わせを受けることはほぼありません。
Q6:海外の参加者の対応はどうしているのか?
A6:基本的に海外出展者は国の機関が絡んでいるパビリオンへの出展が多く、リアルで出展したい、日本に来たい、日本で商談をしたいという声が8~9割で、日本に入国できないと出展しないということになります。日本国内に代理店がある海外企業は代理店に商品を送って、代理店がブース対応をしています。当協会がオンラインの商談を設定することもありますけど、それは特別対応で、時差の影響もありメジャーになるのはなかなか難しいです。全ては日本の入国制限が緩和されるかどうかにかかっています。ドイツで2022年5月にハノーバーメッセがリアルで開催されますが、やはりリアルで行って、気付きとか偶然の出会いをきっかけに、産業を振興させる魅力は、オンラインでは代替えはできないですね。特に、当協会が主催する展示会は質感や味など五感が重要視される商品が多いので、その傾向が強いです。
大使館との繋がりは大切に続けています。2022年3月のFOODEX JAPAN 2022では、大使を呼んでテープカットを実施する予定です。できればランチレセプションも、マスクしながらでもやろうと準備をしています。2022年2月に開催した国際ホテル・レストラン・ショー 2022もそうですが、業界の方々が復活のためのファーストペンギンを待っています。実施事例を作って行くことも当協会の役割として大事だと思っています。
写真:展示会


写真:展示会


Q7:2022年の予測は?
A7:2022年はいずれ、リアルの展示会に戻ってくると思います。ワクチン接種が進んで、治療薬も出来ると思うので。リアルでやる方が多くなると思います。ただ、それがいつなのか分かりません。夏なのか、冬なのか。冬はまたウィルスがまん延する時期なので、2023年の春なのかもしれません。 この1年2年で本当に国が開いた時に海外からの出展が急激に戻ることを期待しています。アウトバンドも反動で大きな波がくるとみています。その準備もしなければいけないと思っています。
Q8:人材育成はどうしているのか?
A8:専門的な経験を有する業界に特化した40代50代の人材獲得などをやっています。当協会では、担当者が企画からパンフレットやWEBの制作、出展営業、来場動員まで一気通貫でやるので、プロジェクトアサイン型でエキスパートを獲得しています。例えば、TECHNO-FRONTIERは半導体のB to Bの営業経験者の方が業界に明るく適任ですが、そういう人材は当協会内部では育成できないですね。FOODEXは「食」の展示会で身近な商材ですが、INCHEMメンテナンス・レジリエンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますなどは大学新卒ではちょっと難しいと思います。
Q9:今後、どのような分野に広げていくお考えか?
A9:2022年10月にHRX2022外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますという人事教育または人事総務向けの展示会を新たに立ち上げます。当協会の事業の柱は3つ、一つ目が教育研修事業、二つ目がISOの審査登録、三つ目がB to Bの展示会です。また、当協会には人事教育部門評議員会があり、企業の生の課題を共有し、事業に反映するために議論する場を持っています。B to Bの展示会を長年主催している実績を掛け合わせてHR × transformationという意味でHRXと名付けました。
2022年は国際ホテル・レストラン・ショーが50周年を迎えました。宿泊・外食関係者からは今も、モノづくりの現場改善から始まった団体がなぜ50年前からサービス産業の展示会を開催しているのかと驚きとお褒めの言葉をいただくことがありますが、その点は我々の先達に感謝ですね。国際ホテル・レストラン・ショーを知らない人はほとんどいないと思いますし、誇りに思います。 2025年に大阪万博がありますし、それまでにはコロナ禍も終息して、インバウンドも戻ってくることへの期待は非常に大きいです。2022年7月にホテル・レストラン・ショー & FOODEX JAPAN in 関西 2022を開催します。さらに力を入れていきたいと考えています。
(市場開拓・展示事業部 主査 皆川 幸夫)

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