世界の見本市・展示会情報(J-messe)
世界の見本市ビジネストレンドフランス見本市産業 ―2021年9月から大型国際見本市を再開
フランスは2021年8月9日、バーやレストランなどに入る際に「衛生パス」いわゆるワクチンパスの提示を義務とする運用を開始した。フランス見本市協会日本事務所 代表 井田 絵里佳 氏、マーケティング部長 古鎌 雅弘 氏、広報部長 松田 由希子 氏にフランスを中心に見本市産業の現状と今後の見通しなどについて伺った。
フランス見本市協会日本事務所
代表 井田 絵里佳 氏
マーケティング部長
古鎌 雅弘 氏
広報部長
松田 由希子 氏
- Q1:コロナ禍以降のフランスの状況は?
- A1:フランスは2020年3月17日に1度目のロックダウン(外出制限)が始まったが、新型コロナウィルス感染者数の累計が100人に迫った2月下旬から3月の見本市の開催延期がバタバタと発表された。はじめはロックダウンも1ヶ月程度とみられていたので、5月に延期したり、せいぜい9月に延期する程度であった。しかし、その後の新規感染者数や死亡者数の急拡大で、6月までの見本市全てが延期や中止となった。
- 5月にパリの大型イベント会場の管理会社VIPARISがSAFE Vという衛生基準を作成して、7月からイベントを再開したものの、夏休みの時期と重なって新規感染者数は再び増加し、9月23日にイベントの人数制限が5,000人から1,000人へと強化された。見本市はビジネス目的であるとして9月から再開されたが、主催者によってフィジカル、リアルでやったところと、バーチャルになったところと形式は様々であった。我々が関わった眼鏡・光学機器展SILMO Paris 2020は、10月頭にパリ・ノール見本市会場で開催する予定であったが、地方都市を回るロードショー形式に変更された。パリ、ボルドー、レンヌまでは巡回できたものの、4カ所目のリヨンは感染者数が基準値を超えたために中止となった。10月30日からの2度目のロックダウン以降、国際見本市と呼ばれる産業見本市は開催されていない。
- 2021年に入り、エマニュエル・マクロン大統領が4月29日に段階的規制緩和のスケジュールを発表し、6月9日からPCR検査結果やワクチン接種を証明する「衛生パス」の提示を条件に、5,000人を上限として、見本市、展示会、文化・スポーツ施設の受け入れを再開することになった。9月開催のMAISON & OBJET PARIS 2021が今年最初の大型国際見本市ではないか。
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- Q2:フランス見本市協会の仕事の内容は?
- A2:フランス見本市協会は見本市の主催者ではなく、フランスの見本市を広報する団体である。フランス・パリに本部があり、日本をはじめ約50カ国に事務所がある。見本市の主催者から委託されて出展者誘致やバイヤー誘致、セミナーのプレゼンター発掘などを行っている。有名なところでは航空・宇宙産業機械展PARIS AIR SHOW、ニッチなところでは複合材料展JEC WORLD、あと建設機械・資材展INTERMAT PARISなどがある。2000年頃からフランスの見本市主催者もグローバル化を目指して、世界各国のパートナーと組んでよりグローカルな、グローバルかつローカルな見本市を開催するようになった。総合食品・飲料展SIALはフランスのほかカナダ、中国、インド、インドネシア、UAEそして2022年3月にアメリカで開催されるが、上海のSIAL CHINAが本家のSIAL PARIを凌ぐ大きな見本市になっている。こうした見本市の広報を年間10本~15本くらい承っている。
- Q3:コロナ禍での見本市の勧誘に対する日本企業の反応は?
- A3:毎年参加しているお客様やヨーロッパでの売り上げが高いお客様から参加したいという声を多くいただいている。ただ、日本はフランスを水際対策強化措置対象国に指定しているので、見本市に参加してフランスから帰国後3日間の強制隔離と11日間の自主隔離を受けることが必要で、かつ隔離期間中は公共交通機関を使えないことが障害となっている。ワクチン接種を2回受け、どうにかして参加する方法を探されている積極的な企業もいる。
- 日本のお客様は基本的にギリギリまで待って出展できるかどうかを判断されている。日々変動するコロナの状況を踏まえ、何れの見本市も主催者やローカルの協力会社がギリギリのタイミングで延期や中止を決定するので、10月以降の見本市がどうなるか何とも言えない。ずっと待ちの状態になっている。
- Q4:オンラインとリアルを組み合わせたハイブリットの動向は?
- A4:フランスは人と交わることを大切にする国民性なので、バーチャルをあまり選ばない。やろうとしても失敗したり、計画を立てても実現しなかったりと結果的にやらない傾向にある。また、商品によってはバーチャルでは対応が難しいものもある。例えば、食品は試飲・試食しないとダメだし、メガネは単価が数万円になるので、カタログをみて選ぶということができない。試着、フィッティングを非常に重んじる業界なので、バーチャルよりもリアルの展示会を好む傾向にある。環境機器展POLLUTEC Lyon 2021は2021年10月にリアルをメインに行い、デジタルを補完とするハイブリッドという形で開催予定である。また、複合材料展JEC WORLDは2020年から2年連続で延期となった穴埋めとして、JEC Composites Connect 21というオンラインイベントを2021年6月に開催した。購買はかなり制約が多いため、カンファレンスやネットワーキングが主体となった。政府が「衛生パス」を導入して移動制限を緩和して経済をどんどん回していくことに方針を変えた。ロックダウンが何年も続くならともかく、無理してバーチャルで開催する必要がなくなったというのが現状ではないか。
- Q5:見本市の開催中止や延期による開催周期への影響は?
- A5:我々が委託されている見本市のなかでは、偶数年に開催していた環境機器展POLLUTEC Lyon 2020が2021年10月に延期となり、その次は2022年に戻すのかと思ったら、会期的に無理ということで、これからは奇数年に開催することになった。また、コロナ禍前に決定されていたが、奇数年に開催していた農業機械展SIMA Parisはイタリアの農業・園芸用機械展EIMA Internationalと会期が近いということで、2022年から偶数年開催に変更する例もある。これ以外に開催周期が変更になった見本市は聞かない。フランスの見本市の主催者はお客様の商品開発のサイクル、競合するイタリアやドイツの見本市の会期を常に見ており、基本的には元の開催周期に戻っていくのではないか。
- Q6:来年、再来年についてどう予測しているか?
- A6:今後の予測についてまとめたレポートはまだ発表されていない。フランスは、国民の大部分が2回のワクチン接種が終わって、メインの指標である重症者数が抑制されていれば、どんどん国を開いて普通のビジネスに戻していこうというのが政府の基本方針である。ヨーロッパ以外の国からの動員、特に来場者は難しいのではないかとみている。見本市の開催はリアル+セーフティーネットとしてのハイブリットという形で進めていくと思う。
- (市場開拓・展示事業部 主査 皆川 幸夫)
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