世界の見本市ビジネストレンド

危機をチャンスに!−ドイツ見本市ビジネス好調の要因は『多国籍・多様性』

ルース・ニコライ氏/ナターシャ・ビンゲス氏
ドイツ産業展示・見本市委員会(AUMA)

広報担当
ルース・ニコライ氏

グローバル・マーケット東アジア担当
ナターシャ・ビンゲス氏

2012年の欧州経済は、欧州債務危機の影響で厳しい状況にあり、ドイツ経済も企業の投資活動が伸び悩むなど、前年に比べ低調であった。しかし、見本市ビジネスに限れば、ドイツでは2012年に161件の国際見本市が開催され、出展者数18万社、来場者数1,005万人に達するなど、好調な業績を維持している。ドイツの見本市ビジネスのトレンドや魅力について、ドイツ産業展示・見本市委員会(AUMA)広報担当のルース・ニコライ氏、およびグローバル・マーケット東アジア担当ナターシャ・ビンゲス氏に聞いた。

Q1.AUMAの機能・役割について教えてほしい
A1. 『AUMAは1907年に設立され、現在38の見本市主催者、38の業界団体から構成されるドイツ最大の見本市団体。ドイツ見本市に関する情報収集・発信を行うことで、国内見本市の競争力維持、ドイツ見本市運営会社が主催する国外見本市のサポート、といった役割を担っている。』

Q2.インターネットを通じて世界中の人とコンタクトがとれる時代に、なぜドイツではいまだに見本市がビジネスツールとして重要視されるのか? A2. 『ドイツ企業にとって見本市は、マーケット調査、新規顧客・パートナー探し、既存顧客との商談、自社製品のPRなどに最適なビジネスの場として認識されている。インターネットと異なり、フェイス・トゥ・フェイスで商談することができるのが見本市の最大の魅力であり、重要視される要因といえる。例えば、1,000万円以上もする高価な機械をインターネットで購入する人がいるだろうか?自分の目で機能性を確かめたうえで、販売メーカーと具体的な商談をしたいと思うはずだ。』

Q3.欧州債務危機の影響で2012年の欧州経済は厳しい状況であった。ドイツの見本市ビジネスへの影響はみられたか?
A3. 『欧州経済の不況はドイツの見本市ビジネスにそれほど大きな影響を与えない。2012年にドイツで開催された161件の国際展示会について、出展者数は18万社と前回開催イベントとの比較では1.5%増加した。内訳をみると、国内出展者は8万2,500社で、0.5%の増、国外からの出展者も9万7,500社(同2.5%増)となった。また、出展面積も1.5%増加し700万平方メートルへ、来場者数は1,005万人に達し、大方の予想に反し1%の減少に止まった。この事実は、欧州の経済不況がドイツの見本市ビジネスに与えた影響が限定的であったことを示している。この背景要因として見本市への出展は1年以上前から、企業戦略において重要なツールとして組み込まれており、景気が悪いから出展を取りやめよう、ということにはまずならないからだ。』

表1:国際見本市の変化(2012年)

数値 前回との増減率
出展者数(述べ件数) 180,000 1.5%
国内からの出展者(述べ件数) 82,500 0.5%
外国からの出展者数(述べ件数) 97,500 2.5%
出展面積(平方メートル) 7,000,000 1.5%
来場者数(人) 10,050,000 -1.0%

出所:AUMA

※国際見本市の定義:「有料出展スペース4,000平方メートル以上の催し」・「2,000人以上の来場者」・「専門来場者の50%以上が100km圏外、20%以上が300km圏外からの来場」・「出展者の10%以上が外国企業、専門来場者の5%以上が外国企業」の全ての条件を満たす見本市

表2:国際見本市開催件数の推移

※ドイツでは偶数年に隔年開催の見本市が多く開催される。

Q4.2012年のドイツ見本市ビジネスのトレンドについて教えてほしい。
A4. 『2012年のトレンドとして、国外からの出展者数が2.5%も増加したことが挙げられる。ドイツの国際見本市は外国からの出展者数の方が多い。これは隣国のイタリアやフランスで開催される見本市・展示会と比較すると顕著だ。外国企業もドイツ見本市の「多国籍・多様性」に期待しており、多様性を維持することがドイツ見本市の「クオリティ」維持に繋がっている。』

Q5.他方、ドイツの見本市運営会社がドイツ国外で開催(主催)する見本市の件数がますます増加している。この事実はドイツ国内で開催(主催)する見本市にどのような影響を与えているのか?
A5. 『ドイツの主催者は、国内の見本市と同じイベント名を用いて、海外で見本市を開催することが多い。このことによって、当該見本市のネームバリューが高まっている。例えば、アジアや南米などで開催した展示会の出展者や来場者が、「次はドイツの展示会に出展・来場してみよう」というケースは多い。このように、海外での見本市開催はドイツ国内見本市との間で明確な相乗効果を生んでいる。』

表3:ドイツ見本市運営会社による国外開催見本件数の推移

Q6.2013年のドイツ見本市ビジネスの見通しをお聞きしたい。
A6. 『ドイツ見本市ビジネスについて、2013年も引き続き安定した成長を予想している。国際見本市140件が開催され、出展者数16.5万社、展示面積660万平方メートル、来場者数1千万人を見込んでいる。特に、高成長を維持するアジアや南米諸国などの企業・ビジネス関係者がドイツの展示会に多く参加することを期待している。経済不況に苦しむイタリア・スペインなどからの来場者は若干減少すると思われるが、一方で中国やブラジルなどの新興国からの来場者が増加する見込みのため、総じて来場者数は伸びるとみている。』

Q7.ドイツなど欧州の展示会へ日本企業が出展する場合のアドバイスをお伺いしたい。
A7. 『見本市出展の目的を明確に設定することが非常に重要だ。中長期的な経営目標を達成するために、マーケティングの観点から設定しなければならない。これについては、AUMAのウェブサイト(以下参照)に有益な情報を掲載している。
次に、目的達成のために適切な見本市の選択も重要。AUMAの見本市データベース(以下参照)でドイツ国内の展示会およびドイツ主催者が国外で開催する見本市の詳細な情報を掲載しているので、有効に活用してもらいたい。
その他、出展する見本市の分野によっては、日本語・英語だけでなく、その国の言語でPR媒体を準備する必要があるだろう(ドイツの見本市ならドイツ語)。一般的に国際見本市であれば英語でもコミュニケーションは可能だが、それでも母国語のパンフレットがある方がバイヤーも安心してブースに立ち寄るはずだ。まずは来場者を惹付けるための工夫を最大限行うべきだと考えている。』

参考

(聞き手・執筆・取りまとめ:ベルリン事務所 望月 智治)

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