外資の対日投資成功事例 - サクセススト-リ-株式会社UL Japan

産業:サービス/その他

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1894年、電気製品が急速に普及した米国で多発した火災事故の客観的な安全性評価とリスク分析を行うため米国・シカゴに創立したUL。企業の使命として掲げた「公共安全への寄与」の想いは日本へも届き、1993年の東京での拠点設置に始まり、現在は三重本社を含めた7拠点へと拡大している。規格策定や認証試験を通して日本企業の技術・製品展開をサポートするUL Japanのコンシューマーテクノロジー事業部長 橋爪正人氏に日本での事業展開について聞いた。


ワンストップでのサービス提供

1894年に米国イリノイ州シカゴで設立されたULは現在、安全性・信頼性の高い製品の市場導入を支援している。もともと、電気不具合による火災事故調査をきっかけに設立された同社は、現在も火災安全や電気安全分野を軸として20以上の業種を対象に事業を展開している。目覚ましい技術の発展に伴い、製品認証の範囲を広げ、現在製品に表示されているULマーク数は220億以上、同社が策定した規格数は1,600以上にのぼり、全世界で抱える従業員数は1万4,000人を超える。

ULは1993年に東京に拠点を開設し、2003年に日本法人UL Japan(本社、三重県伊勢市)を設立した。三重県や愛知県など製造業が集積する地方に複数の拠点を構え、主に日本企業が海外で製品を展開する際の認証取得の業務を提供しており、海外企業が日本で製品を販売するためのサポートも行っている。

また、ULは40を超える国・地域に事業所や試験所を持っている。ほとんどの拠点には、日本同様、各国の強みの産業や技術に対応するような試験設備が配置されている。多くの日本のメーカーは海外に工場を持つが、国内で製品を開発し、海外で生産を行っている場合でも、ULの海外拠点を活用することで、ULのサービスを利用することができる。

「社内設備を多数構える国内メーカーは自社で対応可能なことは自社で行うと考える傾向があり、それが品質保証の一環となっている」と述べるのはUL Japanのコンシューマーテクノロジー事業部長の橋爪正人氏だ。一方で、ここ10年ほどの動きとして、メーカーが自社で完結できることが少なくなってきていることを同氏は指摘する。一つの製品を製造する過程で複雑化した様々な電子部品が必要となり、一つ一つの部品に対する品質保証が自社内だけでは追い付かなくなっているのだ。ある国内部品メーカーは、製造した部品の7割以上を国内のメーカーに納品していたが、現在では5割以上を海外のメーカーに納品しているという。海外での販売を増加に伴い、対応すべき規格数が格段に増えており、全ての品質保証を自社内で行えなくなってきている。

そこで、第三者の立場で規格を策定し、製品を検証するULのようなサービスを提供する機関の重要性が増している。橋爪氏は「より多くの企業が品質保証機能は専門機関に依頼し、社内では付加価値を高める活動にリソースを配分する動きがみられる」と強調する。ULは電気・電子分野、火災分野で様々な試験内容に対応する設備やノウハウを有し、「ワンストップで、リーズナブルな価格」の認証サービスやメーカーの依頼に基づく検証/試験サービスを提供している。UL Japanは、その理念に基づき、国内で多くの顧客を獲得している。

日本企業の真のパートナーを目指して活動

「日本に事業所を置いたのも、日本のお客様の近くで、日本語でサービスを提供したいというところから始まっている」と日本進出の背景を説明する。

UL Japanは、本社のある三重県をはじめとし、京都府、愛知県、神奈川県、東京都、千葉県に7拠点を構える。顧客のニーズに合わせて、測定、検証、認証作業を実施するため、物理的に顧客との距離が近いことが重要になる。実際に、2017年に開設した自動車関連施設であるATC(オートモーティブテクノロジーセンター)や2019年に開設した信頼性試験ラボは、自動車メーカーや関連部品メーカーが集積する愛知県や三重県に設立している。

「日本の産業界や技術開発の方向性に寄り添い、顧客の真のパートナーとしてやっていくということが大事。外資系ではあるが、日本のメーカーや政府と共に、産業を活性化したいという想いは強い」と橋爪氏は強調する。また、顧客である企業とUL Japanについて、「顧客が新製品の開発に力を入れ、その品質保証をUL Japanがお手伝いする」と相互補完関係にあるとする。

UL Japan 伊勢本社

UL Japanが顧客のニーズに添ったサービスを提供していくためには、政府や規格関連機関との情報共有が不可欠である。政府の目標やそれに伴う法律・規格の基準変更などは、UL Japanの試験方法にも大きく影響する。顧客の依頼に対応すべく環境の変化を先取りし、設備などの適切な投資を適切なタイミングで行う必要がある。また、自動車などにも使われる無線や身近にあるわずかなエネルギーを利用して発電する環境発電など、新技術の開発に伴い、その技術を検証、認証するための委員会や分科会にUL Japanも参加し、評価方法の確立や規格策定に関する議論に幅広く取り組んでいる。橋爪氏は、そのような会に参加することが認証作業の依頼を受けるうえで、顧客に安心感を提供できているのでは、と分析する。

政府や規格関連機関、企業からの情報や動向をいち早く汲み取ることで、新技術や新基準に対応するサービスをタイムリーに市場展開できている。

製品販売戦略としての試験

ULが従来から担っているのは、既存の国際規格やUL規格、顧客の納品先メーカーが設けている基準に基づく検証や認証であるが、最近企業から受ける依頼で多いものは、マーケティングのための試験実施だという。メーカーが付加価値をアピールするために必要な試験や評価をULと相談しながらカスタマイズしていくニーズが高まっている。

このような検証サービスの結果としてULが発行するのがUL Verified Markであり、企業が製品を市場に出す際に強調したい機能の評価を第三者であるUL が評価したという、より説得力のある製品アピールにつながる。どのような試験をクリアすることで製品のどういった機能をPRできるか、ULは企業と共に試験プランや検証方法を策定し、認証・検証をしている。企業は、取得した認証や規格を製品のプレスリリース、カタログ、取扱説明書などに記載するなどして性能を強調している。

例えば2018年、ソフトバンクコマース&サービス株式会社(現SB C&S株式会社)が販売する充電器「Softbank SELECTION」は、ACアダプタから発生する電磁波ノイズの抑制を厳しい値でクリアしたことで、充電器では日本初となるUL Verified Markが発行された。 ULにより第三者の立場から、科学的な検証が行われたことで、信頼性の高い性能の訴求が可能となった。

日本市場の強みの一つは自動車産業

橋爪氏は「自動車産業というのは現時点で日本が強みを持つ産業の一つ。ULをグローバルに見てみても、自動車分野ではUL Japanがトップを走って、一番大きなビジネスを展開している」と日本市場の強みを挙げた。

自動車産業の中でも、日本がリードする分野に自動運転技術が挙げられる。自動運転にはライダー(LiDAR)という車周辺の映像を描き出すためのレーザー技術が非常に重要だと言われているが、日本は独自の技術により本分野でリードしており、ULもこの分野におけるサービス提供に積極的に取り組んでいる。

「日本が強みを持つ産業というのは常にあり、常に変化し、進化している。メーカーは付加価値の高い技術を開発していち早く市場に展開することが一つの戦略なので、引き続き日本発の新規技術は生まれてくると思う。その新規技術の測定、検証、認証というのは大きな意味では開発プロセスの一環だと考えている。お客様が製品を開発して、それをいち早く市場に送り出す際には様々な課題が発生するので、これからもそれらの課題を解決するお手伝いをしていきたい」と橋爪氏は語る。

このように日本が主導する技術があれば、UL JapanからUL本社に意見を述べることもあるという。最近では、UL8139という電子たばこの規格が日本からの提言をもとに、策定された。また、2018年9月に愛知県ATC内に開設された、EHV Chamber(EV・HV機器向け固定型ダイナモメーター搭載電波暗室)は、日本国内で唯一であり、また他機関を含めても世界で数えるほどしかなく、世界のULの拠点の中でもUL Japanだけが所有する設備であり、国内需要の高いUL Japanだからこそ実現した設備投資である。さらに、2020年1月に千葉県の鹿島EMC試験所にはEHV Chamberを2基備えた次世代モビリティ棟を新設予定であり、ULに対する日本の自動車業界からの期待の高さを伺うことができる。

日本のイノベーションをいち早く海外へ

UL Japanは、NTTドコモとハタプロが共同で運営する「39Meister™」と連携し、大手企業だけでなく、ベンチャー企業の支援も行っている。

39Meister™は、消費電力を抑えた遠距離通信を実現するLPWA(Low Power, Wide Area)という通信方式を含む先進技術を扱うIoT製品のハードウェアの設計・開発、量産までの事業化の支援を行ってきた。無線通信技術が搭載されているIoT製品が増える中、企業は技術開発に追われ、市場に展開する手前で想像以上に法規対応に時間やコストがかかってしまうケースが見られるという。製品開発に不慣れな企業であっても、国内外の無線通信の法規対応や認証に豊富なノウハウを持つUL Japanがサポートすることで、迅速かつ効率的に開発・法規対応し、スムーズな市場展開、グローバル展開が可能となる。

優秀な人材の確保が課題

500人以上の日本人を雇用しているUL Japanにとって、優秀な人材の確保は、拠点を持つ三重県でも愛知県でも不可欠である。

日本には電気用品安全法や電波法のような日本独自の法律が存在する。そこでの技術基準は、国際規格をベースに、日本の特殊事情を考慮し策定されたJIS規格が採用される場合も多い。例えば、多くの日本企業に関係するITE/AV製品の規格であるIEC 62368-1はJIS C 62368-1という日本の規格に落とし込む必要があった。この検討会議にはUL Japanからも積極的に参画し規格発行に貢献した。この検討においては、単なる英文和訳でなく、技術を深く理解したうえで規格を作成する際にどのような文言を使用するのが最善かを検討することができる技術理解のある人材が必要である。UL Japanでは専門技術に長けた理系の人材を多く採用しているが、ソフトウェアなど新規分野に対応できる優秀な人材の確保が日本でビジネスをする上での課題だという。

米国には、ヒューマンエラーを防止することを目的に人が危機的なパニックモードになっても、機械の誤作動を防止するための行動分析を行うヒューマン・ファクター・エンジニアリング(HFE)という分野がある。HFEは医療機器の操作だけではなく自動運転時にも応用できる技術であり、自動運転技術の開発に伴い重要度が増す。しかし、HFEを学べる大学が日本には少ないため、ULは海外で学んだ日本人や外国人を日本で採用することで、この分野での検証業務を日本においても提供している。

今後は5Gや自動運転向けサービスにも注力

日本企業の海外進出や海外企業の日本進出の規格における課題には、各国の規制情報が入手しにくいことや日本の規格が日本語のみで記載されていることが多いことなどが挙げられる。ULは、自社の持つ拠点とノウハウを駆使し、これらの企業が抱える課題のサポートを日本で提供している。

他にも、ジェトロの輸出支援サービスである「新輸出大国コンソーシアム」に参加し、規制に関する情報提供を行っている。同社は、自治体担当者の紹介やプレスリリースの実施といったジェトロが支援している企業であると同時に、ジェトロとともに日本企業の海外展開を支援する企業でもある。

今後は、5Gのような測定方法がまだ策定されていない技術や自動運転のソフトウェア分野など日本が力を入れていかなくてはいけない分野へのサービス提供に注力したいとしている。「今後も面白く、わくわくするような技術や製品が出てきてほしい。国内だけではなく、グローバルにより魅力的に広くいち早く知って頂けるよう、サポートをして行きたい」と橋爪氏は締めくくった。

コンシューマーテクノロジー事業部長 橋爪氏

(2019年3月取材)


同社沿革

2003年 株式会社ユーエル日本と株式会社エーペックス・インターナショナルの合併により、株式会社ユーエルエーペックスを設立。
2007年 社名をUL Japanへ変更。
2017年 自動車産業向け試験所ATCを愛知県みよし市に開設。
2019年 車載機器に特化した信頼性試験ラボを三重本社に開設。

株式会社UL Japan

設立 2003年
事業概要 製品、サービス、組織のコンプライアンスに関する試験・検査・認証・ソフトウエアソリューション・アドバイザリーサービス
親会社 UL LLC(米国)
住所 〒516-0021 三重県伊勢市朝熊町4383-326
URL https://japan.ul.com/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

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