外資の対日投資成功事例 - サクセススト-リ-

トリップアドバイザー株式会社(西林 祥平氏)

産業:観光

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トリップアドバイザー株式会社

旅行情報サービス大手の米トリップアドバイザーが、日本市場での存在感を高めている。同社はこれまで、国内企業との戦略的な業務提携などを通じて、日本国内の顧客基盤を広げてきた。昨今の訪日客の増加によって、同社の旅行情報を利用する外国人旅行者と口コミ件数も増加している。同社は、訪日客数を上回る速度で増加するアクセス数を根拠に、訪日客は今後も堅調に増加すると見込む。同社の事業開発責任者である西林祥平マネージャーに話を聞いた。

日本市場の可能性に早くから注目

世界最大規模の旅行情報サイトを手がけるトリップアドバイザーは2008年に日本法人を設立した。(※1)2000年に設立された同社が、初の海外拠点としてアイルランドと英国に進出したのは2005年。その後、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、インドに進出したのに続き、日本法人を立ち上げた。当時、米国本社の親会社であったエクスペディア(※2)の日本法人に所属するスタッフが、日本担当に名乗り出たのが設立のきっかけだったという。

サービス利用者はトリップアドバイザーのウェブサイト上に自分自身の旅行体験や感想を自由に書き込むことができるとともに、他人が書き込んだ情報を無料で閲覧できる。また、宿泊先などを検索すると、複数のオンライン旅行会社などの最安値と空室状況をリアルタイムで表示するサービスを提供している。表示された情報を比較して、利用者が旅行代理店を選択(ウェブ上でクリック)すると、同社に広告収入が支払われる仕組みだ。人口の多い日本は、潜在的なサービス利用者数も多いことを意味する。日本法人の創成期を知り、同社のビジネスディベロップメント部門を率いる西林祥平マネージャー(写真)は「進出当初から、米国本社の日本法人への期待値は極めて高かった」と振り返る。

西林祥平マネージャー

インバウンド関係者の利用が急増

全世界での月間利用者数が3億5,000万人(2015年第3四半期、同社発表)を数えるなど、旅行者の同 社ウェブサイトの利用拡大が続く中、日本関連情報の利用も増えている。「米調査会社コムスコアが2015年4月に発表した資料によると、日本における旅行関連ウェブサイト利用者数ランキングで、大手旅行代理店が上位を独占する中、当社は外資系企業として唯一5位にランクインしている」と西林氏は話す。

日本法人は設立以来、日本国内利用者の拡大に力を入れてきたが、昨今の訪日外客の急増は、外国人旅行者による日本情報の利用拡大に直結している。「2014年と比較して日本情報の閲覧件数は、1.5~2倍程度に増加をみせている」と西林氏は現状を説明する。訪日客の増加によって、利用者が増えるとともに、新たな口コミ件数も拡大する相乗効果が生じている。また、ウェブサイト閲覧数は、来訪者数を占う上で先行指数としての性格も併せ持つ。西林氏は「インバウンド業界はかなりのスピードで伸びていることを実感している」とし、今後も訪日客の増加が続くと見込む。利用の伸びが目立つ地域をみると、訪日客数の増加率の高い中国、韓国、香港、台湾と一致するという。

旅行者向けポータル機能に強み

もっとも、日本法人の最大の使命は、前述したように日本人による利用拡大である。トリップアドバイザーのビジネスモデルからすれば、日本人旅行者がオンライン旅行会社(OTA)などを利用する際のポータルサイトとしての役割が大きくなればなるほど、同社の価値が高まるからだ。そのためには、魅力的なコンテンツを用意することが何よりも効果的となる。

一般的に、OTAが、フライト予約などの交通手段とホテルなどの宿泊先の手配をサービスの柱とするのに対して、トリップアドバイザーはフライト情報、宿泊施設のみならず、レストランをはじめとする飲食店情報、観光施設やアクティビティー(旅行先での活動)など旅行者が必要とする情報を包括的に提供するのが特徴だ。近年、世界のOTA業界では、顧客囲い込みの一環として、提供する旅行関連情報や予約サービスの内容を広げる動きがある。同社の場合、もとよりコンテンツを充実することによって、旅行者のポータルサイトとしての魅力を高めてきており、他社に大きく先んじた。

国内の企業や自治体などと提携

同社の強みである旅行情報のさらなる充実にも力をいれており、中でも、日本企業との業務提携に積極的な動きをみせる。例えば、2013年に日本各地のレストラン情報を提供する、ぐるなびと提携を発表(表参照)。以来、互いが持つコンテンツを双方で利用することを進めてきた。2016年春には、ぐるなびが提供する飲食店情報をトリップアドバイザーのウェブから利用できるようになる。

同社は現在も、同様の事業強化策を検討中だ。グローバルにみると、M&Aなどによってこれまで23社の旅行関連企業をグループ企業に加え、組織強化を図ってきた。「今後、日本国内に意中の企業がいれば、同様の可能性はある」と西林氏は語る。

文化・商慣習の違いに適応しながら成長

2014年に投稿口コミ総数が2億件を突破するなど世界規模で拡大する同社にとって日本の市場環境はどのように映るのか。西林氏は「法制度上の問題は特にないが、欧米系のOTAにとって日本市場は容易なマーケットではない」と指摘する。一例として、ホテル側との条件交渉などで、欧米で通用する方式が通じないことを挙げる。また、「地方自治体や業界関係者にはもっとリーダーシップを発揮して、新しいことにトライしてほしい」と力説する。インバウンドの取り組みを新規に進めるにあたって、新しいパートナーを検討することもなく、過去に取引実のあるなじみの旅行会社などに安易に相談するケースが今でも目立つという。こうした文化や商習慣の違いは、インバウンドビジネスを扱う地域企業側も直面する課題だ。この現状を認識しつつも、数多くの日本企業との協力関係を構築してきた同社の事例は、地域企業にも示唆を与えるものといえる。

表:日本での主な業務提携の動き
※1 トリップアドバイザーは旅行者の旅行計画、予約、実行を助ける情報提供サイトとして、2000年に米国で生まれた。現在、約3,000人の従業員を抱え、世界47カ国の国・地域、28言語でサービスを展開する。2014年売上高は12億4,600万米ドル。日本法人は2008年に従業員わずか1名で始まり、2015年12月時点での従業員数は約35 名。売上高は非公開。
※2 その後、米国のトリップアドバイザー本社は、米エクスペディアからスピンオフ

(2015年12月取材)


同社沿革

2008年 日本法人トリップアドバイザー(株)を設立
2009年 国内企業との業務提携を開始
2014年 口コミ情報総数(全世界)が2億件を突破、地方自治体との連携を開始
2015年 現在の本社オフィス(恵比寿)に移転

トリップアドバイザー株式会社

設立: 2008年3月
事業概要: 旅行情報サイトの運営
親会社: TripAdvisor, Inc.
URL : http://www.tripadvisor.jp外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

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