外資の対日投資成功事例 - サクセススト-リ-

スイスホテル大阪南海株式会社(クリスチャン・シャウフェルヴュル氏)

産業:観光

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2015年の外国人延宿泊者数が、前年比5割増の900万人超を記録した大阪府。ショッピングを嗜好する観光客が多く集まる大阪・ミナミ地区の代表的なラグジュアリーホテル、スイスホテル南海大阪は過去3年間で売上高が倍増するなど、インバウンド需要の取り込みにいち早く成功した。成功の要因について、同ホテルを指揮するクリスチャン・シャウフェルヴュル代表取締役・総支配人と深尾大地副総支配人兼事業開発部長に話を聞いた。


2011年以降インバウンド向け営業を本格化

スイスホテル(本社スイス)(注)が日本に進出したのは2003年。アジア地域へのビジネス拡大を図っていた同社と、当時サウスタワーホテルの名称で直営しつつ、提携先として海外大手ホテルチェーンを探していた南海鉄道の経営方針が一致した。「海外のホテルブランドが日本国内で信頼を得ることが今ほど簡単ではなく幸運だった」とクリスチャン・シャウフェルヴュル代表取締役・総支配人(写真)は当時の状況を説明する。「プロセスには直接関与してはいない」と前置きしつつ、大阪が選ばれた理由の一つとしてテストマーケティングに望ましい土地柄だったことも影響したとみる。「リッツカールトン、ハイアットリージェンシー、セントレジスなど海外のラグジュアリーホテルが大阪に初めに進出している。大阪という非常に挑戦し甲斐のある市場で結果が出れば、他所でも成功を見込める」と同氏は説く。

スイスホテルの外国人客比率は2003年の進出当時、既に約50%と比較的高かったが、今では80~85%にまで増加し、大阪のラグジュアリーホテルでは最高レベルの一つだ。大阪府は、2015年の外国人延宿泊者数が前年比5割増の900万人超を記録するなど、東京に次ぐ第2のインバウンド受入都市として不動の地位を占める(図)。その中で、同ホテルはインバウンドビジネスのパイオニア的存在として業界関係者から認識されている。その理由について「2012年以降、他の日系大手ホテルに先んじて、海外で自主的に販売促進活動(プロモーション)を続けてきた結果」と深尾大地副総支配人兼事業開発部長は胸を張る。

クリスチャン・シャウフェルヴュル氏

訪日客の取り込みにもスイスホテル独自の工夫がある。日本のホテル業界では、ボリュームが見込める法人顧客向けや旅行会社向けに割引レートを提供するのが一般的に行われてきたが、同ホテルは稼働率をあげることを目的に不要な値下げを行わない。関西空港へのアクセスが良く、周囲にショッピング施設が揃う同ホテルが訪日客に与える価値を適切に評価し、妥当な価格を提示している。同社も以前は法人向け割引の営業活動を一部行っていたそうだが、旅行会社経由の割引レート適用を順次見直した結果、「平均宿泊料金を競合先に比べて高めることに成功し、過去3年間で売上高が倍増した」(深尾氏)。こうした実績を通じて、今では、インバウンドビジネスの相談を受けることが増えたという。

オーストラリア、ベトナムをターゲットに追加

今後の展望について、「国際線と宿泊施設が増加すれば、今後も訪日客は増加を続ける」とシャウフェルヴュル氏は予想しつつも、ホテル経営そのものは楽観視していない。訪日経験のあるリピーター客は大阪に滞在せずに周辺の地方都市を訪問する可能性があることや、最大市場の中国の景気見通しが不透明なことがその理由だ。それを睨み、同ホテルは既に中国、韓国、台湾、香港といった主要市場に加えて、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンなどの新規市場へのプロモーションに余念がない。毎年対象国を見直し、直近ではオーストラリアとベトナムを追加したという。また、日本人客への営業も見直す。梅田周辺にオフィスをかまえる大手企業が、関西空港への利便性に勝るミナミ地域に関心を示し始めたのがその理由だ。2018年には隣接する高層ビルがオフィスビルになることも決まっている。

日本での新規ビジネスについても同社は関心を示す。東京を中心に、良案件を物色している最中だと言う。もっとも、ホテル不動産は供給が不足しており、苦戦が続く。「大手外資系ホテルチェーンに比べて、ホテル数や日本での歴史に劣る、当ホテルにとっては不利な状況が続く。フランス最大手のアコーグループに加わる6月以降、事態が改善すると期待している」(シャウフェルヴュル氏)。

目下最大の課題は人材不足だという。「不規則な勤務時間やクリーニングなどの業務内容を嫌い、ホテルで働きたいと考える若者が少ない」とシャウフェルヴュル氏は嘆く。同氏は、オーストラリア、シンガポールなどアジア大洋州の先進地域を経験し、日本での駐在も既に7年を数えている。「ホテル人材が不足しているのは世界共通のトレンド。いずれの国も外国人材を活用して対応している」と語り、日本も外国人材の受入制度を真剣に見直すべきだと自らの経験を踏まえて説いた。

(注)スイスホテルは「フェアモント・ラッフルズ・ホテルズ・インターナショナル」のブランドの一つ。2015年12月にフランス最大手アコーグループが買収することを発表。

(表)都道府県外国人別延べ宿泊者数推移表(上位10都道府県)(単位:人泊)

都道府県名 2012年 2013年 2014年 2015年
合計 合計 合計 合計 前年比増減
全国 26,314,340 33,495,730 44,824,600 66,372,660 48.1
東京都 8,291,740 9,830,950 13,195,260 17,779,970 34.7
大阪府 3,060,850 4,314,500 6,200,160 9,338,480 50.6
北海道 2,012,070 3,069,750 3,890,590 5,480,580 40.9
京都府 2,305,170 2,625,880 3,291,010 4,811,200 46.2
沖縄県 781,210 1,487,750 2,388,550 3,918,010 64
千葉県 1,794,850 2,048,240 2,667,200 3,478,190 30.4
福岡県 758,730 900,040 1,357,300 2,378,210 75.2
愛知県 944,640 1,147,560 1,489,680 2,245,450 50.7
神奈川県 924,550 1,067,440 1,432,500 2,172,550 51.7
静岡県 494,220 559,740 786,310 1,759,730 123.8

(2016年3月取材)


同社沿革

2003年 スイスホテル大阪南海株式会社設立(前身の「南海サウスタワーホテル大阪」より、「スイスホテル ホテルズ&リゾーツ」が経営権を引き継ぐ形でスタート)
2006年  経営権が、「フェアモント・ラッフルズ・ホテルズ・インターナショナル」に移行
2013年 ワールド ラグジュアリー ホテル アワード 2013 「ラグジュアリー・シティー・ホテル部門」
2014年 ワールド トラベル アワード 2014 「ジャパンズ リーディング部門」
2012年~2015年 TripAdvisor® サーティフィケート オブ エクセレンス

スイスホテル大阪南海株式会社 (施設名:スイスホテル南海大阪)

設立 2003年9月
事業概要 ホテル・宿泊業
親会社 フェアモント・ラッフルズ・ホテルズ・インターナショナル
URL http://www.swissotel-osaka.co.jp/index.html外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

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