外資の対日投資成功事例 - サクセススト-リ-株式会社ストラタシス・ジャパン

産業:その他製造業

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世界最大の3Dプリンターメーカーであるストラタシスは、2012年に日本に進出。同社の製品は大型、高性能の産業用から個人生産者「プロシューマー」向けまで幅広い。日本進出から5年が経過した現在、日本でのビジネス拡大の経緯と今後の事業展開について、片山浩晶代表取締役社長に話を聞いた。


ストラタシスは、1989年に米国ミネソタ州で創業された。2012年にイスラエルの同業大手オブジェットと合併した後、2012年7月、オブジェットの日本法人を社名変更し、新しく(株)ストラタシス・ジャパンを設立。世界最大の3Dプリンターメーカーとして3Dプリンター市場を牽引している。同社にとって日本は、米国に次ぐ世界第2位の市場であるということだけでなく、日本企業とのコラボレーションを通じて、自社が成長することができる国と考えて進出した。アジアでは近年、中国の3Dプリンター市場が急激に拡大し重要性を増しているが、日本は引き続きアジアの最重要国であると同社は考えている。

試作用から製品生産への過渡期

同社の売上を国別にみると、米国、日本、ドイツ、中国、英国の順で、この5ヵ国で世界の7割の売上を占めている。数年前から日本でも3Dプリンターは注目度を増しているが、2016年頃からその「興奮」は少し落ち着きを取り戻している。一方で、3Dプリンターの工業利用への関心は着実に高まっている。新しい技術に保守的と言われる日本のメーカー各社も大型の3Dプリンターを自社で購入したり、受託生産サービスを利用したりして、その有効な活用方法を模索している。

急成長する世界の3Dプリンター市場と共に同社も売上を順調に伸ばしてきたが、2016年の世界の3Dプリンター市場成長率は17.4%にとどまり、2015年の25.9%から鈍化した。60億ドルの世界市場のうち、同社と3Dシステムズ社の売上が21.7%を占めるが、この2大巨頭の売上が減速したことによる影響が大きいという。

製品イメージ

同社の日本での売上げも2016年から横ばい状態が続いているが、片山社長は前向きである。「売上が伸びていないのは、3DプリンターがDDM(ダイレクト・デジタル・マニュファクチャリング)に使われるようになる過渡期にあるため。これまで3Dプリンターは主に製造業などで試作品を作るのに使われてきたが、徐々に冶具や部品など生産にまつわる用途および製品そのものを作る方向に広がってきている。これが更に広まれば、量産に使われるようになり、一気に3Dプリンターの利用が加速する」と話す。

日本企業との連携を通じ、更なる革新へ

同社は最近、イスラエルのR&D本部から研究開発の人材を日本に赴任させた。その目的は大きく分けて二つあるという。一つは、日本の既存ユーザーの要望を聞き、機器そのものの技術改善についての提案を米国、イスラエルの拠点に対して行うこと。もう一つは、日本企業の持つ技術についての「目利き」をすることである。同社員が来日してから、大手を中心とする日本企業複数社と技術提携等についての交渉が進められている。分野も、センサー、LED、素材、省エネ関連など幅広い。同社は、近い将来これら二つの機能を強化し、日本にR&Dの拠点を設立することも考えているという。

また、片山社長は、「海外ではシーメンス、フォード、ボーイング、マクラーレンなどと共同開発を行っているが、日本企業とも同様に、製品分野での共同開発を行いたい。日本企業は、本来非常に協力的で、共同で新しい価値を社会に生み出すことに積極的である。そのような企業と組んでいきたい」と期待を込める。

3Dプリンターの普及に向けて

同社は日本での3Dプリンターに関する認知度向上、知識向上のため、誰でも気軽にものづくりができるファブスペースや大学等の教育機関との連携を強めている。既に日本大学、多摩美術大学を含む複数の大学と連携し、3Dプリンターを授業に導入。学生の間に3Dプリンターの可能性を体感してもらい、彼らが企業のエンジニアとなった際に積極的に3Dプリンターを活用することを目指している。また、学生自身が新しいアプリケーションやサービスを生み出す原動力となってくれることを期待している。

同様に、「日系、外資系を問わず様々な企業の3Dプリンティング市場への新規参入は大歓迎である」と片山社長は話す。2016年にはジェネラル・エレクトリック(GE)が複数の3Dプリンターメーカーを買収。今後10年間で1万台の3Dプリンターを販売すると発表し、業界内に衝撃が走った。このような状況でも、片山社長は、「3Dプリンターはマーケット自体の拡大が必要。プレス機や射出成型機などの企業が数えきれないほどあるのと同様に、3Dプリンターメーカーがもっと増え、広く使われる時代が早く来るべき」と考えている。3Dプリンターの専門調査会社ウォーラーズの2017年版レポートによると、2015年には62社が産業用の3Dプリンターを作っていたが、2017年には97社に増加している。それらは、60億ドルの3Dプリンター産業を形成しているが、まだ世界の製造業の0.05%を占めているに過ぎずない。同レポートは2022年には262億ドル規模になると予測しているが、これには新規参入企業の力が必要である。

製品イメージ

特に、現在最も多く使われている自動車、航空宇宙産業に加え、メディカル、デンタルなどを含むヘルスケア、およびアート、エンターテイメントなどでも3Dプリンターの市場は拡大余力が大きいと同社は考えている。

宇宙生活には3Dプリンターが不可欠

3Dプリンターの利用範囲は、アフリカや海上など物流面の条件が厳しい環境にも広がりつつある。その究極は宇宙空間であるが、既に3Dプリンターは国際宇宙ステーションにも設置されており、その最先端を走っている。

片山社長は、「SF映画などで人が火星に住む時、金属でできたような家に住んでいるのをよく見る。ただ実際には、地球からその材料や部品を宇宙船で送ることは現実的ではない。当然、宇宙に存在するもので作る必要が出てくる。現在、NASAはもちろん、中国、ロシアなどは地球以外で入手できる資材で部品生産が可能な3Dプリンターについて研究を行っている」と話す。

障害はマインド改革

日本は素晴らしいものづくりの伝統と技術、そしてプライドを持っているが、その反面、「新しい技術を疑ってかかる文化」も同時に持ち合わせている。日本のエンジニアは、新しい技術を取り入れる時に過度に慎重になり、慣れ親しんだ道具を使わずに失敗することを嫌う。このようなマインドを変えるのは容易ではなく、時間もかかる。

一方、米国企業は新しいものを積極的に試して、どういう場面、製品、タイミングで使えるかを探すことを厭わない。例えば、米国キャタピラー社は副社長自ら先頭に立ち、自社が持つあらゆる補修部品を3Dプリンターで作った場合のコスト、必要時間、製品の安全性などを総合的にデータ収集し、分析している。日本企業でもこのようなトップレベルからの3Dプリンター活用方針が示されれば、各部署が個別に性能を試し、多くのコストと時間を分散してかけてしまっている現状を打開できる。同時に、経営幹部が責任を担うことによってエンジニアは批判リスクから解放される。

ジェトロとは長期的に関係を強化したい

同社はこれまで、日本での展開を拡大する際、ジェトロから日本政府のR&DやIoTに関する補助金についての詳しい情報を得てきた。それ以外にも、提携パートナー候補に関する情報などジェトロのサポートを有効活用している。同社は、今後も日本での新たな展開を検討する際にはジェトロの力を借りたいと考えており、特に将来的なR&D施設の設置に向けては、ジェトロの支援が有効であると考えている。

株式会社ストラタシス・ジャパン 片山浩晶代表取締役社長

(2017年6月取材)


同社沿革

1989年 米国・ミネソタ州にてストラタシス設立
2012年 イスラエルの3Dプリンターメーカーオブジェットと合併し、イスラエルと米国を本社として業務を実施
(株)オブジェット・ジャパンを(株)ストラタシス・ジャパンに社名変更
2013年 個人向けの3Dプリントメーカー、メーカーボットを買収

株式会社ストラタシス・ジャパン

設立 2012年
事業概要 3Dプリンターの製造・販売
親会社 Stratasys Ltd.
住所 〒104‐0033 東京都中央区新川2-26-3 住友不動産茅場町ビル2号館8階
URL http://www.stratasys.co.jp外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

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