外資の対日投資成功事例 - サクセススト-リ-MER MEC JAPAN合同会社

産業:ICT/その他製造業

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鉄道インフラの点検・診断システムの開発を行うイタリアのMER MEC社は2017年2月、東京都に日本法人MER MEC JAPAN合同会社を設立した。同社は、係員が目視で検査している鉄道の線路設備を、独自の検測システムを使って車両走行中に画像を取得するとともに、自動分析し、レールの欠損等をより速く正確に検出する技術を持つ。拠点設立の経緯から今後の日本でのビジネス展開について、日本支社エグゼクティブマネージャーのジュゼッペ・アウリジッキオ氏に話を聞いた。


MER MEC社は、1969年に農業用作業機械メーカーとして創業。1990年代には非接触で鉄道のインフラ状態を検査するシステムを開発し、世界各国の鉄道会社を相手にシステムの開発・製造及び検査・分析サービスの提供を行ってきた。現在では世界14ヶ所に拠点を構え、約50ヶ国で企業と取引を行っており、これまでに150社以上の顧客企業向けに1,500式以上のシステムを納入した実績を持つ。同社はイノベーション創出への取り組みに重点を置き、総売上の12%を研究開発費に投資している。また、SITAEL(イタリア最大の宇宙産業における非上場企業で、小型衛星分野の世界的リーダーであり、地球観測のためのターンキーソリューション、高度な推進システム、電気通信科学向けの航空機搭載電子機器を提供)やBLACKSHAPE(レジャー及び軍事訓練用に超軽量炭素繊維を使用した高性能の2人乗り航空機を開発、生産)等、同じAngel Company Groupに属する企業と共同開発も実施している。

日本はアジアのヘッドクォーター拠点

MER MEC社が代理店を通じて日本でビジネスを開始したのは2014年。今回、日本法人設立に至ったのは、日本の顧客企業向けのアフターサービスの提供、販路拡大、日本企業との共同開発を実現させるためだった。「顧客である日本企業の需要は大きく、技術的な要求水準も非常に高い。日本に拠点を構えてビジネスを行うことは挑戦であり、我々が成長できるチャンス」と、日本進出を決意したという。「日本市場は、世界の中でも際立った戦略的市場だと考えている。特に鉄道インフラの検査領域では、日本で歴史のある大手企業と競合する案件も多く、我々の製品・サービスで彼らをいかに満足させることができるかが鍵だ」とアウリジッキオ氏は分析する。アジアで同社は既に中国にも拠点を構えるが、日本法人をアジアのヘッドクォーターと位置付けている。今後は日本を中心に、韓国、台湾、シンガポールでのビジネスも強化する方針だ。

ジェトロとの出会い

「ジェトロのおかげで、困難を乗り越えられた」と、アウリジッキオ氏は言う。代理店経由で日本でのビジネスを開始した当初、日本の大手鉄道会社との大型契約締結にも成功し、日本での商売は軌道に乗っていた。しかし、2016年、代理店との協業を見直さざるを得なくなり、今後の日本での商売をどう進めていけばいいのか先行きが不透明となった時、当時MER MEC社の英国法人社長を務めていたアウリジッキオ氏のところへ、ジェトロのロンドン事務所から日本での拠点設立に係る提案があった。「イタリアにもItalian Trade Agency(ITA)という貿易投資促進機関があるが、彼らは主にイタリア企業の海外進出サポートを行う。ジェトロのように世界各地に拠点を構え、日本企業と海外企業のサポートを通じて、双方向の貿易投資を支援する政府機関があるということに驚いた」と言う。2017年2月に日本に拠点を構えてから1年が経過した現在、日本企業とのアライアンス締結を通じた複数の共同プロジェクトが計画、進行中だ。

同社の軌道検査測定装置 “V-CUBE”

日本との協業事例

2017年3月に、JR西日本の山陽新幹線の軌道を対象にMER MEC社の検測システムが試行導入された事例は、両社にとってトップニュースだった。2年前の2015年5月、ベルギーのブリュッセルで開かれた第3回 日EU鉄道産業間対話の場で、JR西日本が自社の軌道インフラ設備検査のため、MER MEC社製の「線路設備診断システム」を日本国内で初めて採用することを発表。本システムにより線路の設備点検作業が完全自動化されれば、旅客輸送のさらなる安全性確保と設備保守修繕業務の効率化が期待できる。日本の鉄道業界では、整備にかかわる人手不足や、それに起因する設備整備水準の確保という課題が懸念される中、MER MEC社のシステムは解決への糸口となる。アウリジッキオ氏は、「我々のシステムは、線路に立ち入って仕事をされる作業員の安全を確保するためでもある」と強調する。

JR西日本による厳格かつ長期的な選考プロセスを経て、MER MEC社は日本国内鉄道事業者にとって初の海外製検査システムサプライヤーの座を獲得した。同システムの優れたパフォーマンス、安定性、柔軟性が選考過程において高い評価だった。日系の大手競合他社もいる中、MER MEC社のシステムが採用されたことについて、アウリジッキオ氏は「他の大手企業にはない、特殊なシステムを高い技術レベルで提供できることが、JR西日本からの受注に繋がった」と自社の強みを分析する。

2017年11月の幕張メッセでの同社ブース

MER MEC社は、世界で20以上の国際共同研究プロジェクトに携わり、15以上の大学・研究機関とも共同研究を行っており、日本の学術機関へのアクセスがもっとしやすくなるよう改善を望んでいる。ジェトロのサポートもあり、日本の大学との研究連携の話が少しずつ進んでいるという。研究開発に力を注ぐ同社は、日本の大学や研究機関との共同開発実現のためにも、日本政府等、各関係機関による働きかけの強化を期待する。

今後の展望

MER MEC社は、今後の売上を毎年30%ずつ上げていく目標を掲げている。日本では、売上拡大に向けた販売促進、日本企業との協業、研究開発の3点を重点的に取り組む。新幹線以外の在来線や地方路線への同社システム導入提案を計画しており、関係省庁や自治体との交渉によっては、東北の被災地を走る鉄道へのシステム提供もあり得るという。「日本の鉄道業界を中心とする各関係事業者へのアプローチを通じて、外資系企業としてのプレゼンスをさらに高めていきたい」とアウリジッキオ氏は力強く語る。

今後はAngel Companyに所属するメンバーカンパニーと共に新規分野のプロジェクトを展開していく計画だ。例えば、人工衛星や航空機を活用して収集したデータを3Dモデル化することによって、自然災害による二次災害を防ぐための鉄道設備管理用ソフトウェアの開発が可能となる。地震、洪水、火山等の災害に見舞われることの多いイタリアと日本。この革新的なソフトウェア開発プロジェクトは今後日本でも導入が計画されており、同社はこれに係る日本への研究開発拠点設置のための投資も検討している。

左から、同社プロジェクトマネージャーの星野氏、事業開発部長の 大森氏、エグゼクティブマネージャーのアウリジッキオ氏

ジェトロのサポート

同社の日本法人設立に際し、ジェトロ対日投資・ビジネスサポートセンター(IBSC)は、テンポラリーオフィスの貸与、拠点設立に係るコンサルテーション(労務)、サービスプロバイダ(行政書士事務所、税理士事務所、社労士事務所、不動産会社)の紹介、マーケット情報の提供、ビジネスマッチング等の支援を行った。マッチングで出会ったある日本企業とは、海外での共同プロジェクトの話が進んでおり、今後の新規ビジネスにも期待ができるという。ジェトロのサービスに対してアウリジッキオ氏は、「困難に直面した際にも、ジェトロがいてくれたことが大変心強かった。今後の日本でのビジネス拡大に向けて、引き続きサポートをお願いしたい」と述べた。

(2018年2月取材)


同社沿革

1969年 イタリアのプーリア州バーリ県のモノポーリ市にてMeridional Meccanica(現MER MEC S.p.A)を設立
2017年2月 東京都千代田区にMER MEC JAPAN合同会社を設立

MER MEC JAPAN合同会社

設立 2017年2月
事業概要 鉄道インフラ設備検査システムの供給、検査・分析サービスの提供
資本金 1,200万円
親会社 MER MEC S.p.A(イタリア)
住所 〒101-0041 東京都千代田区神田須田町1-7-8 秋葉原成信ビル9階
URL http://www.mermecgroup.com/japan/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

ジェトロの支援

  • テンポラリーオフィスの貸与
  • 拠点設立に係るコンサルテーション(労務)
  • サービスプロバイダの紹介(行政書士事務所、税理士事務所、社労士事務所、不動産会社)
  • 市場情報、R&Dインセンティブに関する情報提供
  • ビジネスマッチング支援

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