外資の対日投資成功事例 - サクセススト-リ-エレクタ株式会社

産業:バイオテクノロジー/ライフサイエンス

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スウェーデンの放射線治療機器メーカーElekta ABは、同分野における世界のリーディングカンパニー。1993年に日本に拠点を設立してから今年で25年になる。日本法人の代表取締役社長チャールズ・シャーネン氏に、同社の独自技術の強みや今後のビジネス展開について聞いた。


がんや脳内疾患等の放射線治療機器の開発・製造を専門とするスウェーデン企業Elekta AB(以下、Elekta)。1968年、スウェーデン カロリンスカ研究所(医科大学)の脳神経外科医ラース・レクセル教授が、開頭せずに治療できる脳内疾患専用の定位放射線治療機器「Gamma Knife(ガンマナイフ)」を開発した後、1972年に教授の子息が創業者として同社を設立。現在は世界25カ国・40カ所に拠点を置き、放射線治療機器の製造・販売、クラウドサービスを用いた治療データ管理システムの開発も行う、同分野のパイオニア企業だ。

放射線治療のための総合ソリューションを提供

同社が開発した「Leksell Gamma Knife」は、1990年に日本第一号機が導入された。現在は世界で336台が導入され、そのうち54台が日本にあり、米国に次いで設置台数が多い。

頭部向けの放射線治療は大きく分けて2種類あり、脳全体に放射線を当てる全脳照射と、病巣のみに放射線を当てる定位放射線照射だ。Elektaが自社技術の強みとする定位放射線照射は、全脳照射による認知機能低下や、開頭手術によるリスクを回避するために用いられることが多い。

同社の製品展開は多岐に亘る。例えば、頭部専用の定位放射線治療機器「Leksell Gamma Knife Icon」は、ガンマナイフの代名詞である病変への高精度照射はそのままに、ガンマナイフでは初めてとなるマスクシステムを導入したことで、治療を受ける患者の負担(それ以前は金属のフレームとピンによる頭部の固定)を軽減している。

また、同社が開発した高精度放射線治療システム「Versa HD」は、1台で全身の様々ながんを治療できる。

同社の頭部専用定位放射線治療機器
「Leksell Gamma Knife Icon」

ソフトウェアでは、高精度治療をサポートする治療計画システム「Monaco」や、患者データを一元管理できる治療情報管理システム「MOSAIQ」などを提供。放射線治療のための総合ソリューションを、日本をはじめ世界各国に提供している。

高齢化により、ニーズが高い日本で取り組みを強化

日本では高齢化に伴い、がん罹患数・がんで亡くなる患者数が年々増加傾向にある。2016年にがんで亡くなった数は約37万人で、1985年の数値の約2倍。日本人の死亡理由の約3割にあたると言われており、2017年には、新たに約101万人が罹患すると予測されている(*1)。がんの治療技術は、今後さらに需要が増えることが見込まれる。
*1 出典:公益財団法人 がん研究振興財団「がんの統計’17」

「我々にとって、日本は米国、中国に次ぐ世界3位の重要な市場」とシャーネン氏は強調する。同氏は、中国にある同社の研究開発拠点で責任者を務め、その後はアジア大洋州地域(APAC)のヘッドとして勤務。2017年、日本でのビジネス強化のため、日本拠点のオペレーションがAPACから独立したことを受け、シャーネン氏が日本法人社長に抜擢された。

Elektaは、1993年に日本法人エレクタ株式会社(以下、エレクタ)を設立。東京都に日本法人の本社を構える。販売提携先のキャノンメディカルシステムズとは、栃木県に合同で顧客をはじめとする医療従事者を対象に治療研修を行う放射線治療研修センターを、都内に全製品のサポート拠点であるエレクタ ケア サポートセンターを設置した。現在エレクタは日本全国で150名体制にまで拡大しており、放射線治療に関わる製品及びサービスを医療施設に提供し、治療プロセスをサポートしている。

前述の「Leksell Gamma Knife Icon」は2016年6月に日本での製造販売の承認が下りた後、すでに日本各地に設置され、治療が行われている。今後、同社と地方の医療機関の連携が活発化することにより、日本の地域医療の質の向上が期待できる。

「期待値が大きい日本のお客さまにご満足いただければ、他の国でも自信を持って挑戦できる。今後は、より重点的に日本でのビジネスに取り組む」と彼は意気込む。

日本でのクラウドサービス導入を目指す

エレクタは2016年、経済産業省とジェトロが募集した「グローバルイノベーション拠点設立等支援事業(*2)」に採択された。同社は日本政府の補助金を受けて、放射線治療に関わるデータをクラウド上で一元管理するクラウドサービスの日本への導入を見据えた、事業化可能性調査を実施した。なお、本社のElektaは、既に米国、オーストラリア、ニュージランド、英国への同サービスの導入実績を持つ。
*2 日本において、外国企業が日本企業と連携してイノベーション拠点設立や、実証研究等を実施するためのプロジェクトを支援するための補助金事業。

本事業において同社は、栃木県にある同社の放射線治療研修センターで、KDDI株式会社のセキュリティ通信回線を利用したクラウド導入テスト調査を実施。さらに、日本国内800のがん治療施設・病院を対象に、クラウドサービス利用に関するニーズ調査を行った。

当時、事業を統括した同社のグローバルITジャパンITサイトマネージャーの前田幸良氏は、「現場では予想以上にクラウドサービスに対する関心の高さが伺え、本サービス実用化に向けた良いスタートを切ることができた」と言う。ニーズ調査の対象には、2011年3月の東日本大震災で被災した医療機関も含まれ、「クラウドサービスの活用は、災害時の速やかなデータ復旧に役立つ」と高く評価する声も聞かれたそうだ。

同社の高精度放射線治療システム
「Versa HD」

本サービスを導入すれば、放射線治療機器の稼働率や患者のデータ等、治療に係る情報をクラウドで一元管理できるようになり、地域間、病院間でのデータ共有が可能になる。これは、患者の転院時のデータ転送や、災害時のデータ復旧にも役立つという。加えて、病院側はデータ管理のための高額なサーバ機材を購入する必要がなくなるため、コスト削減にもつながる。一方で、院外で患者の治療データを管理することになるため、個人情報の取り扱いは今後検討すべき課題だとシャーネン氏は指摘する。

今回の調査をきっかけに、KDDI株式会社を含めた複数の企業と事業提携の話が進んでいるほか、国内の大学病院での同社サービスの試験導入が予定されている。同社は、日本でのクラウドサービス導入に向けた取り組みを継続して進める方針だ。

日本での課題は人材、言語、行政手続き

エレクタが、日本でビジネスをする上でまず直面した課題は、人材と言語だと言う。同社のような医療機器メーカーは、医学とITの知識に精通した人材と、医療現場での経験を持つ人材が必要である。現在は中途採用を行い、病院関係者との連携を図っているが、人材確保は依然として課題だという。

さらに、「日本では医療機器の申請から承認まで時間を要するため、日本ではイノベーション創出のスピードが遅れている。手続きの簡素化が進めば、治療を待つより多くの患者を救える」とシャーネン氏は訴える。

今後のビジネス展開

2018年1月、本社Elekta ABは、米国企業IBMと事業提携し、人工知能(AI)付きプラットフォーム「Watson for Oncology」の販売を開始した。本製品は、がん治療例に関わる無数の情報をデータベース化し、AIによって患者に最適な治療方法を数秒で提案する。放射線治療機器メーカーとして世界で初めて、従来の治療情報管理システムとAIを連動させた。エレクタは、2016年に日本で導入調査を行ったクラウドサービスと、このプラットフォームの連携可能性も検討している。

さらに、2018年6月には、革新的な放射線治療システム「Elekta Unity」の欧州での販売開始を本社が発表。パートナーのオランダ企業フィリップスやオランダのユトレヒト大学病院との共同研究を重ねた末、MR画像診断と放射線治療を組み合わせたシステムの開発に成功した。本製品は、医師が治療対象である腫瘍を目視しながら治療できる、最先端の医療機器として世界から注目を集める。米国でも2018年12月にFDA510(k)認証を取得している。

こうした新たな技術を日本に導入するに先立って、エレクタは、まず日本での既存の治療機器の保守点検を引き続き強化していく方針だ。現在、都内にあるエレクタ ケア サポート センターでは、製品サポートの窓口が早朝から深夜まで顧客対応している。独自のリモートサービス機能により、ソフトウェアについては遠隔操作で、ハードウェアについては出張対応で同社の社員がサポートする。さらに、東京本社と栃木県の放射線治療研修センターを活用した医療事業者向け研修の継続に加え、雇用人数の増員や販促広報活動の強化も目指す。

ジェトロのサポート

ジェトロは、エレクタを「グローバルイノベーション拠点設立等支援事業補助金」に採択し、各種情報提供を行った。ジェトロの支援について、シャーネン氏は「日本に拠点を置いて長い在日外資系企業であるのにもかかわらず、強力なサポートをいただき感謝している」、前田氏は「補助金事業を通じて、日本の多数の医療機関とネットワークを構築できた。今後は、外資系企業としてのプレゼンス向上に向けた、日本での広報活動の強化を支援いただきたい」と述べた。

日本法人代表の取締役社長のシャーネン氏(左)と、グローバルITジャパンITサイトマネージャーの前田氏(右)

(2019年1月記事作成)


同社沿革

1993年 エレクタ株式会社を、兵庫県神戸市に設立
2009年 東京都港区へ本社移転
2010年 CMSジャパン株式会社と合併
2012年 栃木県大田原市に、キャノンメディカルシステムズ株式会社(*)と合同で放射線治療研修センターを開設
(*)当時は東芝メディカルシステムズ株式会社
2014年 東京都港区に、キャノンメディカルシステムズ株式会社と合同でエレクタ ケア サポート センターを開設

エレクタ株式会社

設立 1993年
事業概要 医療機器および医療用放射線治療計画装置の輸入販売・保守
資本金 1億円
親会社 Elekta AB(スウェーデン)
住所 〒108-0023 東京都港区芝浦3-9-1 芝浦ルネサイトタワー7階
URL http://www.elekta.co.jp外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

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  • ジェトロ「グローバルイノベーション拠点設立等支援事業」採択

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