外資の対日投資成功事例 - サクセススト-リ-株式会社パンゴリン・ロボット・ジャパン

産業:その他製造

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サービスロボットの製造・販売を手掛ける中国Suzhou Pangolin Robot(蘇州穿山甲機器人)は2017年4月、日本市場の開拓および、日本の大学等との共同研究を目的に東京に日本法人を設立した。日本進出の経緯と今後の事業展開について日本法人社長の丁 勁松(てい じんそん)氏に聞いた。


中国で圧倒的シェアを誇るサービスロボットメーカー

2006年に設立された中国(江蘇省)のSuzhou Pangolin Robotは、企業向け大型サービスロボットの総合メーカー。主に案内ロボットや配膳ロボットを、銀行、ホテル、ショッピングモール、レストランなどのサービス業向けに開発、製造、販売している。本社のある江蘇省昆山のほか、北京、深圳、武漢、成都等に支社を持つ。また、生産拠点(4,000平方メートル)、研究開発センター(2,500平方メートル)を有し、年間のロボット生産能力は5万台にのぼる。中国各地に販売網を構築し、約200都市に商品を提供しており、顧客には、中国銀行、HSBC、マクドナルド、スターバックスコーヒーが名を連ねる。2017年2月には中国の新興市場で上場を果たし、現在同社は、中国の配膳サービスロボット分野で約70%の市場シェアを誇る。丁氏は、「中国では、主にB to C向けで需要の大きい玩具のような小型ロボット分野では競争が激しくなっているが、当社が扱う1.2メートル以上の大型ロボットでは、“運動”面で解決すべき点が多いので、競合他社は少ない」という。

同社の海外販売は現時点ではサンプル輸出が多いものの、米国、日本、韓国、シンガポール、ロシア、イタリア、スペインなど20ヶ国に及ぶ。丁氏は同社の営業方法について、「アリババなどのオンラインサイトを活用し、海外の顧客と商談している」と説明する。「現地に赴き営業を行うことはほとんどないが、製品が問題ないと評価されれば出荷数も増えていくはず」と今後の海外でのビジネス拡大について期待を込める。

「日本品質」で販路拡大をめざす

日本法人の株式会社パンゴリン・ロボット・ジャパン(以下、パンゴリン)は、親会社のSuzhou Pangolin Robotと、電気通信大学(以下、電通大)の技術移転機関(TLO)である株式会社キャンパスクリエイトと、ハウステンボス株式会社の子会社でロボット関連事業を行う株式会社hapi-robo stの3社合弁で設立された。丁氏は、日本留学と日本メーカー勤務の経験があり、同じく中国の日系電機メーカーで勤務経験がある同社CEO宋 育剛(そう いくごう)氏と意気投合し、日本法人の社長に抜擢された。事務所は、丁氏がかつて大学院に留学し、2014年よりSuzhou Pangolin Robotの共同研究先となっている電通大の共同研究施設UECアライアンスセンター内に設置した。丁氏は「留学時代の友人が、キャンパスクリエイトに勤務しているなど、人脈を活かすことができた。日本法人設立は、日本市場での販路拡大と、日本の大学や企業との共同研究を通じた最新技術の把握のため」という。「日本のロボット研究は世界最高レベルにあり、ロボット部品メーカーも多いため、共同研究開発相手として最適」と話す。

同社の配膳ロボットAmy ハウステンボスにて

一方で、販路拡大に向けた日本でのビジネスについて丁氏は、「顧客の品質への要求は世界で最も厳しい。例えば多くの国の人は初期段階でも関心を示してくれるが、日本人は完璧でないと関心を持ってくれない」と指摘した上で、「この厳しい要求に応えられれば、信用度も高まり、世界へ展開できる」とし、対策を講じている。

2018年から中国の本社工場では量産を計画しており、品質管理の体制強化のため長年メーカーで品質管理に携わってきた2名の日本人を工場長と品質管理部長として雇用した。丁氏は「中国製品の品質も上がってきてはいるが、日本製品との差がまだある。将来的には、日本製品と同水準の品質まで上げたい」と語る。パンゴリンは、長崎県のハウステンボス内のレストラン「変なレストランROBOT」に、人型の料理配膳ロボットAmyを同社にとって日本で初めて納品した。正しい操作方法を店員に理解してもらうため、納品当初はエンジニアを何度も現地に派遣した。「ロボットに問題が生じた場合は、すぐ現場へ赴ききちんとフォローする。アフターサービスを提供しないと、お客さんが困ってしまう。納品して終わりではなくて全部サポートする」とアフターサービスの重要性を説く。中国でもこのアフターケアが高く評価されているという。

産学連携によるイノベーション

現在日本に導入している同社のロボットは床の上に貼られた磁気テープの上を移動する仕組み。配膳ロボットAmyは料理を運ぶという必要最小限の機能にあえて絞ることでコストを抑えている。「日本では完璧なものでないと買わない」傾向が強いが、このロボットのおかげで今まで配膳を行っていたスタッフが別の仕事ができることで、人手不足の解消にもつながるとメリットを強調する。

一方で、同社は技術革新にも積極的だ。ロボット開発で優れた技術を持った電通大との共同開発で、レーザーセンサーを使って位置を特定するSLAM機能を組み込み、自立走行するAmyの次世代版ロボットを開発した。電通大との連携では技術の開発に加えて、「先生から世界のロボット市場の動向を提供してもらえることも助かる」という。先端的な技術の情報を把握することは、同社だけでは難しいという。電通大にとっても同社の製品を使用し、実際のレストランで様々な実験を行うことが可能となる。研究の成果を実用の場で生かせるため、こうした産学連携はwin-winの関係となっている。

コミュニケーションロボット、介護ロボットへの高い関心

丁氏は将来的には、どんな問いにも答えてくれるコミュニケーションロボットを作りたいと語る。そのために、すでにロボットを病院・学校・レストラン等へ投入してビックデータを集めて分析し、人工知能に機械学習をさせる試みを模索しているそうだ。丁氏は、「リスクもあるが、初期段階で製品を市場に出し、評価、知見、様々なデータを収集することで、顧客により良いサービスを提供できるようになる」と語る。

さらに、介護ロボットへの関心も高い。中国は60歳以上の人口が2億4,000万人(2017年末時点)に達し、総人口の約17%を占める。高齢化社会を迎える中国での介護分野の需要増を見込み、商機を見いだす。同社は現在中国で日本メーカーの介護ロボットのテスト販売を行っている。しかし、「日本のロボットの品質は素晴らしいが、中国製の2倍の価格」のため、今後は介護ロボットに特化した別会社を設立した上で、同メーカーと、中国市場向けのより安価な商品の共同開発を計画している。丁氏は、「パンゴリンのビジネスで利益を生み出し、大きな仕事に関わり、日本でも上場したい」とも語る。上場できれば、「日本での開発や設計、最終的には製造も行いたい」と夢は膨らむ。

ジェトロのサポート

パンゴリンの拠点設立に際し、ジェトロは日本のロボット産業等に係る企業情報やマーケット情報、規制・制度情報の提供を行った。丁氏は、「ロボット分野の日本企業の紹介は大変助かった。ジェトロは日本の各地のみならず、世界各国にネットワークがあり、外国企業と日本企業を双方に紹介することが可能な機関。また、日本でのアジア企業に対するイメージの向上にも貢献して欲しい。イメージを変えることは大変で、中国企業は日本企業と比較すると、完璧ではない点はあるが、良い製品やサービスを提供する企業が確実に存在する」と期待を寄せた。丁氏は最後に、「私は日本に留学し、日本の技術を学び、日本と中国の間で自分の力を発揮できている今の状態はとても良いと感じている。日本と中国の両方に活動の拠点があるので、両国の架け橋のような存在だと思う」と語り、インタビューを締めくくった。

(右からパンゴリン・ロボット・ジャパン代表取締役社長 丁氏、社長秘書の李氏、Suzhou Pangolin Robot CEOの宋氏と同社のロボットAmy,Snow,Alice)

(2018年3月取材)


同社沿革

2006年7月 中国江蘇省昆山市にて蘇州穿山甲機器人(Suzhou Pangolin Robot Co.,Ltd.)設立
2017年4月 東京都に株式会社パンゴリン・ロボット・ジャパンを設立

パンゴリン・ロボット・ジャパン株式会社

設立 2017年4月
事業 サービスロボットの販売・開発
資本金 1000万円
親会社 Suzhou pangolin robot Co., Ltd.
住所 〒182-0026 東京都調布市小島町1-1-1 UECアライアンスセンター522
URL http://en.csjbot.com/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

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