外資の対日投資成功事例 - サクセススト-リ-セニット・ジャパン株式会社

産業:ICT

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製造業や金融サービス業向けにソフトウェアを開発し、コンサルティングを行っているドイツのCENIT社は2011年7月、東京にセニット・ジャパン株式会社を設立した。顧客企業の日本本社工場から世界の工場を監視し、問題があればその場で対応することを可能にするスマート工場システムの構築を目指す。同社で代表取締役社長を務める東良昭氏に日本進出の経緯と事業展開について話を聞いた。


セニット・ジャパン株式会社は、ドイツ・シュトゥットガルトに本社を置くCENIT社の日本法人で、2011年7月に東京に設立された。1988年に設立した親会社のCENIT社は現在、欧州、北米、アジアの6ヵ国、17拠点に事業所を構え、世界に約700名の従業員を有するグローバル企業だ。

CENIT社は、主に製造業や金融サービス業向けにITソフトウェアの開発やコンサルティング業務を行っている。特に工場全体を3Dでシミュレーションし、設備の故障の予知などを可能にするソフトウェアの開発に力を入れている。ドイツ政府からは、航空機の自動組み立て過程で適用する3Dシミュレーション技術に補助金を受けていたほか、ダイムラー社とは、自動車製造の無人化工場の実現に向けた3Dシミュレーション技術で実証研究を行った実績を持つ。

また、ドイツのものづくり政策であるインダストリー4.0に関連する研究プロジェクトにも参加している。インダストリー4.0とは、工業のIoT(モノのインターネット)化によって製造業の国際競争力を高めるために、ドイツ政府が推進する国家戦略の一つだ。

日本企業との協業を見据えて日本法人を設立

CENIT社は2011年7月、東京都港区に日本法人セニット・ジャパン株式会社を設立。現在5名のエンジニアを含む7名が在籍し、日本の顧客企業の要望に応じてソフウェアをカスタマイズしている。設立の背景について東社長は「(1)日本法人ができる前はセニット本社やセニット北米経由で日本企業への納入実績があり、日本にはそれなりの顧客がいることがわかっていたこと、(2)世界的なロボットメーカーや工作機械メーカーの過半数は日本企業で、それら日本企業と協業しないことには本当の意味でインダストリー4.0の達成は難しいこと、(3)市場規模の大きな中国にいきなり進出するのではなく、人材の雇用、他社との協業、知財問題を考慮し、同じ価値観を持つ日本に拠点を設けることが妥当と考えたこと」の3点を挙げた。

日本の製造現場では、まだ生産ラインでの3Dシミュレーション技術の応用が進んでいない中、同社はスマート工場システムを構築すべく、日本企業との協業により、その技術の普及に取り組んでいる。スマート工場システムの目的の一つは、日本の本社工場に居ながら世界の工場を監視し、問題があればその場で対応できるようにすることだ。

同社はサイバー空間内に仮想工場を構築するソフトウェア「FASTSUITE Edition2」を開発し、製品化している。このソフトは、工場にある設備、製品、工程、制御などのデータを使用し、仮想のサイバー空間内で実際の工場と同じ稼働をさせ、ネットワーク経由で収集した工場内のデータを用いて、製品の製造前に必要な検証と解析を行い、生産ラインの最適化を提案する。製造過程で発生し得る不具合を削減し、将来的には工場を無人化に近づけていくことで生産性の向上とコスト削減に寄与することを目標とする。

セニット・ジャパン株式会社のソフト製品イメージ

操作性を重視したソフトで他社と差別化を図る

同社製品は既存機械やソフトと柔軟に接続できるオープン性の高い点で長けている。「如何に多くのハードメーカー、ソフトメーカーと協業できるかが重要」と東社長が指摘するように、国や企業ごとに異なるプログラム言語やネットワークの規格を融合させ、どの国のどの企業でも適用できるソフトウェアを開発することは、日本企業が世界に市場を拡大させていく上で競争力強化につながる。同社の製品はどのような人でも操作ができるよう、「オブジェクト指向」のユーザーインターフェイスを製造エンジニアリング系ソフトウェアで実現している点で他社との差別化を図る。「オブジェクト指向」とは、コンピューターにこれからヒトが何をしようとしているかを察知して存在する選択肢を提示させ、次に必要な動作をさせることを指す。例えば、データ入力する場面では入力のアイコン、データを処理する場面ではデータを計算するアイコン、解析をする場面になると解析に必要なアイコンしか出てこない。バージョンが変わっても基本的な操作方法やアイコンは変わらないため、いつでも誰でもマニュアルを見ずに操作ができるようにしている。

ジェトロの補助金を活用して実証研究を実施

セニット・ジャパン株式会社は、日本において外国企業が日本企業などと連携して取り組むIoTにおけるプロジェクトを支援する、ジェトロの「グローバルイノベーション拠点設立等支援事業」に2016年6月に採択された。その事業の一環として、2016年秋、広島に本社を置く国内有数の自動車車体部品メーカー、株式会社ヒロテックと提携し、実証研究に取り組んだ。ヒロテックは自動車車体部品の製造だけでなく、金型や冶具の開発、設計なども行う企業。今回の実証研究では、自動車のドア製品の溶接ラインで使用しているロボットや冶具などの設備をコンピューターと繋いでデータ収集が可能なデジタル設備ラインを構築。それら設備から収集したデータを読み取り、工場全体を3Dシミュレーション化する試みを実施した。同社との出会いのきっかけは、ジェトロが主催した「ハイテク分野国際ビジネスマッチングin広島2016」だ。このイベントに参加していたセニット・ジャパン株式会社は、同じくそこに参加していた株式会社ヒロテックと出会い、そこで提携の話が進んだ。

システムが実用化されれば、実際の工場内で発生し得るトラブルや緊急事態の際の対応方法をサイバー空間内で迅速に検討することができる。また、潜在的な設備の不具合などの予知も可能になる。事前にシミュレーションすることで、機械の修理や緊急時の対応にかける時間も短縮することができる。新規生産ラインの短期間での立ち上げや既存ラインの素早い段取り替えなど、世界市場での生き残りをかけて幅広い対応が求められる中で、日本企業の国際競争力強化にもつながる。

日本の製造業変革へ期待

日本の製造業の今後について、東社長は「この10年間で、日本で需要即応型の24時間体制無人工場ができていく」と指摘する。需要即応型とは顧客が希望するものを大量生産と同じ価格と品質で製造するマス・カスタマイゼーションを指す。今までは、商品をカスタマイズした場合、価格が上がり納期もかかったが、「価格も抑えられ、品質も良い商品を短期間で作り上げる生産体制が出来上がっていくだろう」と説明する。24時間体制の無人工場が出来ることで、日本企業は安価な人件費を求めて海外に進出する必要がなくなる。「例えば、インドで売るためにインドに工場を建設したとしても、コントロールは遠隔で日本で行う体制ができる。人口が減ってきたなかでも競争力を維持する必要がある日本の製造業には合っている」と東社長は述べる。「我々のソフトは、日本で製造して輸出するのではなく、日本でコントロールして世界で製造することが可能になるツール。これにより、貿易摩擦はなくなり、雇用は保たれる」と、同社のソフトを通じて日本の製造業に変革をもたらすことを期待する。

セニット・ジャパン株式会社
代表取締役社長 東良昭氏

ジェトロのサポート

セニット・ジャパン株式会社は、ジェトロ主催の「ハイテク分野国際ビジネスマッチングin広島2016」に参加したほか、ジェトロの「グローバルイノベーション拠点設立等支援事業」に採択され、株式会社ヒロテックと実証研究を行った。東社長は「ヒロテックと提携できたことで、同社に納入している機械やロボットメーカーから関心を持ってもらい、それら企業ともこれから一緒にプロジェクトをやろうと話をしている。今回、補助金を活用して実証研究を行えたことで、日本の製造業への適用を検証でき、今後国内に広めていくためのよい参考となった」と述べた。

(2017年9月取材)


同社沿革

1988年4月 CENIT AGをドイツに設立
2001年 CENIT 北米を設立
2007年 フランスに子会社を設立
2011年7月 東京都港区に日本法人を設立
2016年秋 株式会社ヒロテックと実証研究

セニット・ジャパン株式会社

設立 2011年7月
事業概要 情報技術に関するソフトウェア開発及びその利用に関するサービス
親会社 CENIT AG(ドイツ)
住所 〒108-0074 東京都港区高輪2-17-13テイケン東京ビル8階
URL http://www.cenit.com/ja_JP.html外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

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  • ハイテク分野国際ビジネスマッチングin広島2016に参加
  • ジェトロ「グローバルイノベーション拠点設立等支援事業」採択

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