外資の対日投資成功事例 - サクセススト-リ-カクタス・コミュニケーションズ株式会社

産業:サービス/その他

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創業時、Cactus Communications Pvt. Ltd.は、翻訳や英文校正サービスの提供を通し、専門的・技術的な学術論文等の出版支援をインドにて開始した。同社は、日本においても同じニッチなニーズに対応するため、2007年7月、東京に日本法人カクタス・コミュニケーションズ株式会社を設立。
同社日本法人代表の湯浅誠氏は、ジェトロに日本進出の背景や今後のビジネス展開について語った。


Cactus Communications Pvt. Ltd.(以下、カクタス)は、日本を主要マーケットとし、主に研究者や大学などアカデミア業界向けの英文校正、翻訳のビジネスを展開することを目的に、2002年5月にインドのムンバイにて創設された。共同創業者の一人アビシェック・ゴエル氏は、当時海外インターンシップ交換プログラムで来日した際に、 東京大学工学部の教授を訪問。その際、同教授から執筆していた論文の英文校正を依頼されたことがきっかけで、日本のアカデミア業界の英文校正のニーズに気づき、学術論文に特化した校正、翻訳ビジネスを始めることとなった。

インドは大半の州で英語が公用言語となっており、ビジネスでの共通言語になっている。また、高い学位と専門的知識を持つ優秀な人材がたくさんいる。ゴエル氏は自身の来日経験を通し、日本には日英翻訳や英文校正の需要があり、またインドの利点-英語が流暢でコストパフォーマンスが良い-を活かしてビジネスができると実感したことから、当時ビジネスコンサルタントとして活躍していた兄のアヌラグ・ゴエル氏と共にカクタスを創業。2007年に、東京に日本法人カクタス・コミュニケーションズ株式会社を設立した。現在はインドを本社とし、日本、韓国、中国、シンガポール、米国の世界6ヶ国に拠点を持ち、科学論文の出版をする個人の研究者や、大学、研究機関などに向けて、学術論文の英文校正、翻訳サービスを支援をしている。全拠点の雇用者数は約650人で、その9割がインド本社に所属している。

日本においては、現在25人の従業員が主にカスタマーサービスや営業・マーケティングの仕事に携わっている。当初は英文校正作業を全て社内の英語ネイティブのインド人が行なっていたが、アカデミア業界でますます高度で専門的な校正が求められる中、現在は修士号、博士号など上級学位や業界の認定を取得した世界各国のフリーランス校正者を雇い、受注した原稿の専門分野にあわせて適切な知識を持つ作業者を割り当てるというビジネス形態を取っている。

日本市場開拓における挑戦

現在は東京大学や京都大学など国内の主要大学、研究機関、企業などを顧客企業に抱えているカクタスだが、「インドでの創業時は、日本での顧客獲得に苦戦しました」と同社日本法人代表の湯浅氏は話す。湯浅氏は創業まもない2003年から2005年まで交換プログラムでインド本社にインターンとして勤務していた。当時、湯浅氏は顧客開拓に向け、日本の大学教授に営業の電話をかけていたものの、日本で知名度がなかったため、相手にしてもらえず、なかなか顧客獲得に繋がらなかったという。そんなカクタスのビジネスが飛躍的に成長するきっかけになったのが、検索エンジンマーケティングだった。湯浅氏は当時まだ新しかった検索エンジンの最適化やリスティング広告を導入し、ホームページの拡充に注力。その後依頼が増え、少しずつ顧客獲得に繋がっていった。また、同社は、日本における販路拡大のため、大学との繋がりを多く持つ紀伊國屋書店などのパートナー企業と提携。さらに大学や研究機関の研究者に向けてセミナーやワークショップを提供するなどの積極的なブランディング活動を行った結果、徐々に同社に対する信頼度が上がり、さらなる顧客獲得に繋がったと話す。

文化の壁を乗り越え、日本式サービスを実現

日本法人設立当初、日本とインドのビジネスの違いについて、インド本社のスタッフと何度もディスカッションをしたと湯浅氏は当時の様子を振り返る。「ビジネスを始めた当初に直面した日印文化の最大の問題は、時間に対する考え方の違いでした。日本は納期に少しでも遅れると企業に対する信頼度が下がりますが、インドでは30分くらい遅れても問題ないという考え方があたりまえ。しかし、ディスカッションを通じて調整を重ね、現在は納期を厳守し、1分でも遅れた場合はサービス料を受け取らないという日本式のサービスを実現しています」

そのような徹底したサービスの実現に至った背景には、湯浅氏の地道な努力があった。インド本社を訪問する度に、日印のビジネス慣習の違いについてインド人社員への細かい説明を何度も重ねてきたという。その結果、インド人社員も日本のビジネス文化についての理解を深めてくれた。このような日本式の厳しいルールの中でも社員の退職率が低い理由は、「同社のフレキシブルな社風や互いの文化を尊重し、理解し合おうという姿勢にあります」と湯浅氏は話す。

同社が出版する英語論文に関する書籍

日本における労働倫理

日本でのビジネスは文化の違いによる苦労も多いが、日本人の真面目な国民性は同社がビジネス拡大をする上で大きな助けになったという。

「ノーベル賞を受賞した山中教授をはじめ、日本の研究内容は世界の学術業界においてトップレベルにあります。世の中に本気で貢献したいと考え、研究に取り組んでいる研究者が日本には多く、サポートのしがいがあります。また、良いサービスを提供すれば、顧客はきちんと評価をし、継続的な関係を構築してくれる。顧客からのフィードバックが新たな事業に繋がった例もあります」と湯浅氏は述べる。

同社では、これまで主な事業として提供してきた日英翻訳や英文校正サービスの他にも、大学・研究機関や学術協会の国際広報や研究広報コンサルティングサービスを展開し、英語ホームページ、パンフレット、動画制作など、日本のアカデミアの国際化をサポートする幅広いサービスを提供している。

研究者の支援による良い社会の実現に貢献

現在、米国・中国・英国をはじめ世界の論文数が伸びている中、2000年をピークに主要国の中では日本だけが右肩下がりだという。そのような厳しい状況の中で、同社は顧客のニーズを的確に把握し、研究者の支援をすることでより良い社会の実現に貢献していきたいと意気込む。「我々はただの校正会社ではなく、 優れた研究成果の発表とプロモーションを支援する企業として、顧客に付加価値を提供していきたい。著者一人一人に寄り添って論文掲載に向けた丁寧なサポートを提供するだけでなく、より広く、その研究成果を生み出している日本の大学・研究機関や学協会の活動を世界に伝える役割を担いたい。その結果、よりよい研究が社会に還元されることが私たちの仕事であり、やりがいです」と湯浅氏は同社のサービスの意義を語った。

ジェトロのサポート

ジェトロ対日投資・ビジネスサポートセンターは国内6拠点(東京・横浜・大阪・名古屋・神戸・福岡)に外国企業が無料で入居できるテンポラリーオフィスを有している。同社は日本市場進出前と拠点設立時に東京のオフィスを2回利用した。

「オフィスの立地も良く、ビジネスインフラも整っていた。税制、雇用などに関するコンサルも英語かつ無料だったのでとても助かった。西日本にも京都大学や同志社大学などの大学研究機関や製薬会社などがあり、研究の集積地であると考えている。今後西日本にビジネス展開する際には、ぜひまた利用したい」と湯浅氏は語った。

カクタス・コミュニケーションズ日本法人代表 湯浅氏

(2017年8月取材)


同社沿革

2002年5月 インド・ムンバイにてCactus Communications Pvt. Ltd.を設立
2007年7月 東京都に日本法人カクタス・コミュニケーションズ株式会社を設立

カクタス・コミュニケーションズ株式会社

設立 2007年7月
事業概要 学術論文の和英翻訳、英文校正、英語テープ起こし、論文投稿支援、組織の国際化サポート
資本金 2,000万円
親会社 Cactus Communications Pvt. Ltd.
住所 〒101-0061 東京都千代田区神田三崎町2-4-1 TUG-Iビル4F
URL https://www.cactus.co.jp/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(コーポレートサイト)
https://www.editage.jp/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英文校正・論文翻訳・投稿支援サービスサイト)

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