外資の対日投資成功事例 - サクセススト-リ-ベッコフオートメーション株式会社

産業:ICT/その他製造業

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産業用制御機器(FA)の世界的メーカーであるドイツのBeckhoff Automation GmbH & Co. KGの日本法人ベッコフオートメーション株式会社は、2017年9月に日本で2番目の拠点を名古屋市に設立した。Beckhoffが開発した産業用ネットワークのオープン規格「EtherCAT」は、世界中で採用企業が増加する中、日本ではトヨタ自動車が全面採用を決めるなど注目度は非常に高い。ベッコフオートメーション社の代表取締役社長・川野俊充氏に、今後の展望などについて話を聞いた。


1980年に設立されたドイツのBeckhoff Automation GmbH & Co. KG (以下、Beckhoff)はPC ベースのオープン自動制御システムなどを提供する産業用制御機器(FA:ファクトリーオートメーション)のグローバルカンパニーである。ドイツ国内に14カ所の拠点を持つほか、全世界で総従業員数約3,400名、海外現地法人35社を有し、75ヵ国以上でビジネスを展開している。

ドイツでは政府を中心に「インダストリー4.0(第4次産業革命)」と呼ばれる産官学による製造業の産業振興プロジェクトが、2011年より進んでいる。ICT技術を活用して工場内外のモノやサービスを連携し、生産・流通工程のデジタル化により、生産や流通の自動化、バーチャル化を大幅に高め、コストの極小化や生産性向上を図ることを目指している。Beckhoffは、そのドイツにおいて「インダストリー4.0」を推進する中心企業の一つである。

Beckhoffの強み:オープン規格の「EtherCAT」

2003年にBeckhoffが開発した産業用ネットワーク規格「EtherCAT(イーサキャット)」は、現在世界中で急速に市場を拡大している。EtherCATとは、工場内に設置された制御機器のマスター(親機)とスレーブ(子機)を結ぶフィールドバスシステム(通信規格)のこと。EtherCATの仕様は、その後設立されたEtherCAT協会(以下、ETG)により全世界でオープン化(公開)され、ISOやIECなどで国際標準化されており、無料のライセンス契約により誰でもこの技術を使用できる。ETG加盟企業数は発足直後から右肩上がりに増加し、2017年には4,500社以上、日本企業も500社以上加盟している。2016年4月にトヨタ自動車がEtherCATの全面採用を発表したことで、日本での知名度も急速に高まった。

EtherCATについて、ベッコフオートメーション株式会社(以下、ベッコフ社)代表取締役の川野俊充氏は、「EtherCATは、”業界一の超高速性”、”省配線”、 ”オープン性” という3つの強みがある」と語る。どれも他社製品にはない強みであるが、川野氏は特に「オープン性」について力を込める。「産業用機器間の通信規格にはさまざまな種類があり、その互換性は製造現場において常に課題となってきた。そのような中で、EtherCAT規格が登場したことにより、製造システムの改善や改良のために必要な機器を幅広いメーカーのラインナップから自由に選択して使うことが可能になった。従来の産業機器業界では、規格による囲い込みが常識であったが、優れた特徴を持つ通信規格をオープンにするという革命をEtherCATは起こした。Beckhoffは自社製品の開発技術力にも大きな強みがあり、自社で開発した通信規格をオープンにしても、自社製品を顧客に選んでいただける自信があったからこそ、大胆な経営判断ができた」。

EtherCATの全面採用を決め握手するトヨタの大倉氏(右)とETGチェアマンのマーティン・ロスタン氏(左)

日本進出の背景:世界最大級のFA市場・日本

モノづくり大国・日本においても「インダストリー4.0」への注目は高く、更なる生産性向上、価値創出に向け、日本政府も主体となって意欲的なノウハウの吸収や、製造現場での実践が始まっている。

ベッコフ社は2011年に横浜市に日本で初めての拠点を設立した。日本進出の理由について川野氏は、「日本のFA市場は世界最大級であり、そのマーケットへの進出は当然の判断。また、我々がグローバル企業として世界で通用するブランドを築くには、日本での実績が必須だった。しかしその分、日本のFA市場は世界で一番参入の障壁が高いマーケットとも言われており、計画から実行までその準備には長い年月を費やしてきた」という。

「拠点設立当初は直接の顧客はそれほど多くはなかったが、サポートを国内の近くでやってほしいという要望は強くあった。そうした声にきちんと応えていきたいという思いがあり、それが実現できることになり、とても嬉しかったことを覚えている。また、当社の日本拠点設立は、東日本大震災と同時期にあり、設立直後は、被災した既存顧客からの部品の修理・交換などの相談も多かった。そういった相談に一つずつ誠実に応えていくことが、日本法人のスタートであった」と川野氏は当時を振り返る。

トヨタ自動車によるEtherCATの全面採用:日本市場での躍進の経緯

グローバルカンパニーであるベッコフ社でも、進出当初は新規顧客の信頼を得るのには苦労したという。「当社の技術は革新的である分、『本当にそんなことができるのか』となかなか信用していただけないことも多かった」という。地道に営業活動を続ける一方で、川野氏自身が「インダストリー4.0の伝道師」としてメディアで注目されるなど、認知度も高まり、時間が経つにつれ、協業を申し出る日本企業も増えてきた。「日本の製造業の魅力の一つとして、会社規模はそれほど大きくないにしても、元気で革新的な企業が多いことだ。話が合う社長と一緒にICTやAIを活用した「工場のスマート化」を進めていくなど、少しずつ実績を作っていった。次第に、経済産業省から助成金をいただくなど、国からも注目され、ドイツのテレビ局にも取り上げられるようになった。先進的な事例ができはじめると、活動そのものが情報発信となっていった。仲間が増え、その仲間と一緒に新しい取り組みを行い、その事例をもとにまた新しい案件ができてくるというサイクルが生まれていった」。

着実に実績を積み上げていった同社だが、大きな転換点はトヨタ自動車によるEtherCATの全面採用だったという。「その件が報道されて以来、流れが一気に変わった。日本の顧客は、とても要求水準が高くあらゆる角度から技術を検証するので、新しい製品を認めてもらうのは難しく時間もかかる。逆に1回認めてもらえると、その後は大変信頼していただけるので、仕事もしやすくなってくる。それも日本市場の特徴であるが、日本の最大手の1社に認めてもらえたことは、当社にとって計り知れない信用となった」と川野氏は説明する。

ベッコフオートメーション株式会社
代表取締役社長 川野 俊充氏

今後の展望:チャンスが無限大の日本市場

横浜の本社に続き名古屋に拠点を設立したベッコフ社であるが、今後の展開について、「最終的には全国をカバーできるようにしたい。ただ、自分たちから大きな拠点を築くというよりは、顧客のニーズのあるエリアに数十人規模の支店を設置し、それぞれが自立して、顧客への営業サポートや技術サポートをするという体制だ。全国各地に存在する多くのユニークで素晴らしい企業とICTなどを駆使して一緒に新しい価値を作る仕事をしていきたい。まさに日本の製造業はチャンスが無限大だと思う」と語った。

ジェトロのサポート

ベッコフ社の日本法人設立(横浜市)および名古屋での拠点設立に際し、ジェトロ対日投資・ビジネスサポートセンター(IBSC)は、テンポラリーオフィスの貸与、会社設立手続き支援、物件探し・人材探し、インセンティブ情報の提供、マーケット情報提供、広報・PR活動の協力等の支援を行った。ジェトロのサポートに対して、「日本進出時から拠点拡大まで長きにわたって大変お世話になった。当初は新設の外国法人であるがゆえに、オフィス一つ借りるにも大変だった経験もあり、テンポラリーオフィスの貸与や、オフィス物件の業者を紹介していただけたのはとても助かった。名古屋拠点設立の際の共同記者発表では、地元の有力紙への声掛けなど、当社だけでは実現できなかったことまでサポートしてもらい、対外的な信用力を得ることができた。今後も当社発展の過程において、様々にご支援いただきたい」と川野氏は述べた。

(2017年9月取材)


同社沿革

1980年 Beckhoff Automation GmbH & Co. KG(ドイツ本社)設立
2003年 EtherCATを発表
2011年3月 日本法人ベッコフオートメーション株式会社を神奈川県横浜市に設立
2016年4月 トヨタ自動車がEtherCATの全面採用を発表
2017年9月 名古屋市に拠点を設立

ベッコフオートメーション株式会社

設立 2011年3月
事業概要 産業用自動制御システム機器の開発、製造、販売
親会社 Beckhoff Automation GmbH & Co. KG (ドイツ)
住所 〒231-0052神奈川県横浜市中区桜木町1-1-8日石横浜ビル18F
URL http://www.beckhoff.co.jp外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

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