外資の対日投資成功事例 - サクセススト-リ-アナログ・デバイセズ株式会社

産業:ICT

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高性能アナログ半導体分野において世界的シェアを誇る米国企業、Analog Devices, Inc.の日本法人アナログ・デバイセズ株式会社は、IoTを活用した「スマート農業システム」の実証実験を行った。生産人口の減少などの課題に直面する日本の農業において、同システムは生産効率の向上や生産量の増加につながる可能性があるとして、注目を集めている。アナログ・デバイセズ株式会社の代表取締役社長・馬渡修氏に、同社の取り組みについて話を聞いた。


米Analog Devices, Inc.(以下ADI)は、1965年設立の高性能アナログ半導体分野におけるリーディングカンパニーである。2016年度の売上は34億ドルだったが、2017年3月に同業のLinear Technology(リニアテクノロジー)を統合し、世界で45カ所のデザイン・センターおよび15,000名のスタッフ、43,000以上の製品、125,000社の顧客を有する売上50億ドル規模の企業となった。NASDAQ 100にも名を連ねる。

「半導体」と一口に言っても、同社の対象分野は限りなく広い。エンド・マーケットを例に挙げても、産業・計測機器、民生機器、通信機器、オートモーティブ、ヘルスケア機器などの分野があり、各分野で種類、数量ともに膨大な数の半導体IC(集積回路)が使われている。アナログICは、自然界の音声、圧力、温度、電気などのアナログ信号を検知したり、デジタル信号に変換したりする役割を担っている。ADIはそのアナログICで世界最高水準の技術を誇っている。

ADIは50年近く前の1970年に、日本法人アナログ・デバイセズ株式会社(以下、アナログ・デバイセズ)を設立。日本進出によって顧客企業からの信頼を獲得するとともに、日本の半導体市場の広がりに合わせて、同社のアナログICの売上も順調に拡大。現在、同社は知名度、実績、技術力で、日本の半導体業界の中で確固たる地位を築いている。

アナログ世界とデジタル世界の橋渡しをするADI

ADIの強みについて、アナログ・デバイセズ代表取締役社長・馬渡修氏は次のように語った。「当社の強みは自然界から情報を得るためのセンサーから、アナログ信号処理IC、データを伝送する通信ICまでフルラインナップで有していること。今後、デジタル機器はより一層高度になり、IoT(Internet of Things)も加速度的に普及していくが、デジタル化が進展するほど、自然界のアナログ情報を高精度に取り込む必要があり、支えになるのはアナログICである。当社のミッションは世界にインパクトを与えるイノベーションを実現するため、最先端のセンシング、計測、パワーマネジメント、通信、信号処理技術を用いて、アナログ世界とデジタル世界との架け橋になること」。また、ADIは近年、IoT分野にも注力しており、自社工場でのファクトリーオートメーション(スマート工場)や自動パーキングシステムなどの実証実験にも取り組んでいる。「半導体機器そのものの開発だけではなく、市場毎に最適化したシステムやソリューションの開発にも力を入れている。これには他社と連携し、技術や知識などを組み合わせていく必要があるが、基幹となるのはやはりアナログICだ。その技術に強みを有している当社では、どの分野でもチャレンジできる」という。

日本の農業を変える「スマート農業システム」

アナログ・デバイセズは、米国本社でも取組んでいる「スマート農業システム」を活用したイチゴの生育環境データの可視化実証実験を、茨城県のイチゴ専門農家の村田農園で行った。村田農園は「村田さんのいちご」として知られる大きくて高品質なイチゴを、有名果実店、製菓店やホテルに提供している。これまで高品質イチゴの栽培は、最適な生育環境を保つため、温度や湿度、二酸化炭素濃度、照度などの生育環境データを頻繁に計測する必要があるなど、作業者の負荷が大きいという課題があった。

同社の実験は、イチゴの温室内に複数個のIoTセンサーノード装置を設置し、イチゴの複雑な最適生育環境を可視化し、継続的にモニタリングすることで、効率的に生産量の増加を図ることを目指す仕組みだ。従来は作業者がその都度温室内に訪れ、手作業で行っていた生育環境のデータ計測を、PCやスマートフォンを用いて遠隔モニターで行うことができる。データの収集自体も自動化されるなど、作業者の負担は大幅に削減されることになる。今回の実証実験を踏まえ、今後も引き続きデータを蓄積するなど、生育環境のより一層の「見える化」を進め、農業プロセスの自動化に向けたセンサーシステムの確立を目指す。これまで個人の資質に頼ることも多かった日本の高品質農業は、就農人口の減少など技術継承や後継者不足の問題に直面している。スマート農業システムは日本の農業の効率や生産量を高めるものとして、期待が集まっている。実験は国内のパートナー企業数社との共同事業となっており、同社のアナログICをイチゴの温室内に設置するほか、他社のクラウド、IoTシステム・インテグレータ、ソフトウェアと連携したエコシステムを構築している。

村田農園のセンサーノード

今回の実証実験について、馬渡氏は次のように振り返る。「以前から日本の高品質農業は、非常に競争力の高い産業だと考えていた。外国人観光客が日本の果物を食べると、味覚、食感、見た目など、どれをとってもその品質に驚く。高額なものであっても、皆がお金を出して買って帰っていく。これは日本が誇る産業の一つと言って良いだろう。このような高品質の農産物を生産すべく、多くの生産者は、早朝から深夜まで温室に出向きデータを取るなど、まさに24時間365日、果物づくりに心血を注いでいる。そうした一連の農業プロセスをIoTで見える化できれば、より的確に、より効率的に、良いものを作ることができる可能性がある。実験はまだ始まったばかりだが、今回そうした探究ができたことの意義は大きい」。

本実証実験は、ジェトロの「グローバルイノベーション拠点設立等支援事業費補助金」に採択されて実施した。馬渡氏は「民間の事業に行政からバックアップをいただけたことは大変有難かった。これによって、資金面で助かったのはもちろんのこと、パートナー企業とのつながりが作りやすくなり、プロジェクトをスムーズに行うことができた」という。

日本市場の魅力と今後の展開

日本市場の魅力について、長年日本でビジネスを行ってきた外資系企業の視点から、馬渡氏は次のように語る。「日本は、自然科学系のノーベル賞受賞者数が多いことに代表されるように、イノベーションを起こす底力を常に秘めている国であり、実際にクリエイティブな製品が数多く開発されている魅力的な市場だ。

これまでにも、カメラやゲーム機、ファクトリー・オートメーションなどの産業機器、クルマ、高度な医療画像装置など、数々の画期的な製品が生み出されてきた。このような環境で先進的な顧客と協業することは、当社にとって非常に有益である。また、日本の顧客は、一度信頼関係ができると、パートナーシップを組んで仕事がやりやすい。こうした点も日本の魅力であり、今回のプロジェクトが実施できたのもそうした土壌が大きい」。

一方、「課題先進国・日本」にもビジネスチャンスを感じている。「今後の日本は高齢化に伴う労働力不足など、多くの課題に直面する課題先進国だ。しかし、それは逆に今回のスマート農業システムのようにイノベーションを創出するチャンスでもあり、それも日本市場の大きな魅力。日本での成功事例を中国を始めとするアジア諸国に展開することも視野に入れており、そういう意味でも日本は重要な拠点である」という。

「スマート農業システム」の今後の計画については、「機会があれば、第二弾の実証実験を行ないたいと考えている。これがうまくいけばイチゴ以外にも、メロンや桃、マンゴーなど高品質を誇る日本の果物への応用を視野に入れている。その他にも新潟、福島など日本全国の農地に展開していきたい。当社の技術力を持って、未来の日本農業に貢献していく」と意気込む。

アナログ・デバイセズ株式会社 代表取締役社長 馬渡修氏

ジェトロのサポート

ジェトロは、アナログ・デバイセズの「グローバルイノベーション拠点設立等支援事業費補助金」に係る各種情報提供を行った。ジェトロのサポートに対して、「丁寧に働きかけてもらい、想像していたより迅速に実証実験が実施できたと感謝している。また、プロジェクトのPRについても、いろいろなやり方を提示いただいた。今後、補助金以外でも、当社成長の過程において、様々に支援をいただきたい」と馬渡氏は述べた。

(2017年7月取材)


同社沿革

1965年 米国Analog Devices, Inc.設立
1970年 日本法人アナログ・デバイセズ株式会社設立
1979年 NY証券取引所(NYSE)に上場
2012年 米NASDAQ市場に上場(NYSEより変更)
2017年3月 電源系アナログICの世界的企業Linear Technology社を買収

アナログ・デバイセズ株式会社

設立 1970年12月
事業概要 高性能半導体の市場調査、製品開発支援、販売
親会社 Analog Devices, Inc.(米国)
住所 〒105-6891 東京都港区海岸1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワー10F
URL http://www.analog.com/jp/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

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