外資の対日投資成功事例 - サクセススト-リ-エアソウル東京支店

産業:観光

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韓国のローコスト・キャリア(LCC)のAir Seoulは2016年の日本拠点設立以来、ソウルから日本の都市への定期便を続々と就航させ、12路線にまで拡大した。地方単独路線が多く、同社は日本の地方の魅力に触れたい韓国人旅行客を獲得している。また、日本企業と提携した搭乗者向けサービスの提供にも積極的に取り組んでいる。Air Seoulの日本代表として12支店を総括するエアソウル東京支店長の金玉鉉氏に聞いた。


Air Seoulは2015年にアシアナ航空の完全子会社として設立された。ソウル仁川国際空港を拠点に、韓国人観光客の需要が多い日本、香港、東南アジア、グアムに定期便を運航している。18ある就航先のうち日本に12路線が集中しているのは、需要が最も多く、飛行距離が短い分コスト・リスクも低いので、ビジネスが安定しやすいためだという。パッケージ旅行客のみならず個人旅行客が多いことも、事業が安定する要因の一つだという。日本を訪れる韓国人観光客は、日本の温泉・グルメ・ショッピングなどの観光資源、親切なおもてなしなどの文化、LCC就航拡大に伴う日本旅行の割安感に魅力を感じているようだ。

アシアナ航空から地方5路線を継承

日本のAir Seoul定期運航便の発着地

Air Seoulの日本路線の地方7路線のうち5路線(静岡、高松、広島、米子、富山)は、以前はフルサービスキャリアのアシアナ航空が運航していたものを、2016年に引き継いだ。同社はこれらに熊本、宇部を加えた地方7路線で、日韓間の定期運航便を就航している。韓国からの定期運航便が圧倒的に多いのは一般的に東京、大阪、福岡、北海道だが、日本旅行のリピーター客を中心に、地方ならではの魅力に触れたいというトレンドやニーズが増えてきている。同社の地方路線は、これに応えるものだ。さらに、日本や海外の目的地に国内便や新幹線を乗り継いで行く必要があった日本の地方在住者に、「直行便でソウルへ行き、ソウルで観光し一泊してから目的地へ行く」選択肢を提供している。

さらにAir Seoulは、日本でのビジネスを一層拡大させるため、多くの需要と便数が見込める路線の開拓にも着手した。2017年には大都市(大阪、成田)への路線を、2018年には韓国人旅行者の人気が高い都市(福岡、那覇、新千歳)への路線を、新たに就航させた。

地方単独路線の多さ、座席間隔の広さが特長

Air Seoulの主な利用者は20~30歳台の若年層。日本へ定期便を発着させる韓国の他のLCCとの競争は激しいという。そうした中で金支店長はAir Seoulの強みを5点挙げた。

第一に、日本の地方への単独路線の多さだ。発着都市間において1社のみが定期直行便を運航する路線は「単独路線」と呼ばれている。この単独路線が5カ所(高松、広島、米子、富山、宇部)もあるのは韓国系航空会社ではAir Seoulだけだという。

第二に、座席間隔の広さ。Air Seoulがリースしている7機のうち6機はアシアナ航空が使用していたAIRBUS321-200で、他のLCCよりも座席間隔が広いためフルサービスキャリア並みに座席でくつろげる。「LCCだけどLCCっぽくない」ことが、利用客の最大の評価であり、売りだという。

第三に、機材の使用年数が他の韓国LCCは10年超えのところ、Air Seoulでは平均5年と、新しく清潔感があって燃費も良い。機内ではUSBポートを使って充電することも可能だ。

第四に、韓国LCCとして初めて、機内に女性専用トイレを設置したこと。レジャー目的の搭乗客に占める女性の割合が高いことを受けて、2018年9月に全路線で、機内に4カ所あるトイレのうち1カ所を女性専用に変更した。

条件付き乗り放題定期券で認知度・売上向上

第五にして最強の切り札が、購入日から1年間、 条件付きでAir Seoulに何度でも乗れる「Mint Pass」だ。Air Seoulのロゴカラーのミント色から名付けられた。韓国から出発する場合に限って購入でき、利用できる路線・曜日・期間などは限られる。ピーク時や連休期間は利用対象外だが、利用者に好評だ。

日本旅行のリピーター客等からの日本の地方訪問へのニーズの高まりを捉えて2018年3月、地方の7路線に限定した「Mint Pass J」の販売を開始した。同パスの導入により、同路線での搭乗客数や搭乗率が上がったという。導入の理由を金支店長は以下のように語った。「日本に参入する韓国LCCとしては最後発であるため、認知度を上げるための独自策が必要だった。1往復分の航空券代の安さを売りにする他社と同じことをしては特徴にならないため、複数回利用でのメリットを打ち出した」。

Mint Pass Jの成功により、Air Seoulは現在、東南アジア路線限定など、条件を変えてシリーズ化した複数の種類のMint Passを販売している。Air Seoulは、他社が導入しているマイレージを導入していないが、Mint Passのお蔭で客足が伸びている。

Air Seoulの機体

日本企業とも連携し乗客向けサービスを提供

Air Seoulは韓国任天堂と業務提携協約を結び、飛行時間が4~5時間と長い東南アジア路線において、搭乗客に「Nintendo Switch」を先着順に無料で貸し出すサービスを2018年9月に開始した。

また、単独路線の運航先である日本の地方の自治体や企業とは、Air Seoulが主なインバウンドの経路の1つとなっているため良好な関係が構築しやすく、広島の免税店や長崎のゴルフクラブで、Air Seoulの搭乗者向け優待サービスが提供されている。

同社は2019年2月から、総合量販店と提携しており、同社の全店舗でAir Seoulの利用客に購入価格に応じた割引が行われている。韓国人観光客からの人気も高い店であるため、Air Seoulにとっては利用客向けサービスになる。韓国人観光客の取り込みに強い関心を寄せる店側にとっても、同社の全国店舗をカバーする上で、地方路線が多いAir Seoulとの連携は有意義だ。

日本発便の搭乗率アップ目指し、マーケティングコミュニケーションを強化

Air Seoulは2016年に、非常に短い準備期間で日本の8都市に支店を開設し、地方路線を就航させた。金支店長は「アシアナ航空の既存インフラを活用できたという利点もあったため」と語る。子会社として、インフラに留まらず、アシアナ航空が築いてきた各地の自治体や住民との信頼関係も、円滑に引き継ぐことができたという。

他方、新路線の独自開発の際には既存インフラがなく、後発ゆえ運航発着枠を確保する際に選べる枠が限られたという。ジェトロ対日投資・ビジネスサポートセンター(IBSC)では、同社の東京支店設立に際し、テンポラリーオフィスの賃与、税理士によるコンサルテーション、市場情報の提供、内装工事業者の紹介を行った。金支店長は、「オフィスを無料で借りられ、行政手続面でも支援を得られたことは助かった。また、ジェトロ提供の市場情報は主に公的機関から収集した信頼性の高いもので、自社独自に集めた情報と重複しなかったので役立った」と述べた。

今後の展望を金支店長は次のように語った。「日本進出当初の目標である安全運航、販売体制の『安定』は、3年かけて達成できた。今後は日本発便の搭乗率アップを目標に、日本人の顧客に親密感を感じてもらうため、マーケティングとコミュニケーションの強化に取り組みたい。日本語でのSNS発信、日本のメディアへの露出、日本語ウェブサイトでのチェックインや手荷物に関する詳細情報の掲載、空港での分かり易い案内の表示といった、細やかな努力をしていく」。

さらに金支店長が以下のように締めくくった。「日本では国を挙げて、2020年東京オリンピック・パラリンピックの準備と、拡大するインバウンド需要への対応に取り組んでいる。弊社は日本国内での継続的な運航ネットワークの強化と差別化されたアイディアにより、日本へのインバウンドへの貢献に加えて、韓国を訪問する日本人旅行客の拡大にも取り組んでいきたい」。

エアソウル東京支店長の金 玉鉉氏

(2019年6月取材)


同社沿革

2015年4月 アシアナ航空の完全子会社として、韓国でAir Seoul Co., Ltd.が設立
2016年7月 アシアナ航空のコードシェア便として初運航(ソウル-済州間)
日本支店を静岡、高松、広島、米子、富山に設立
2016年10月 静岡、高松、広島、米子、富山の各空港-ソウル仁川間で就航
2016年11月 宇部支店を開設、宇部-ソウル仁川間で就航
2017年4月 熊本支店を開設、熊本-ソウル仁川間で就航
2017年8月 東京支店を開設
2017年9月 大阪支店を開設、関西-ソウル仁川間で就航
2017年10月 成田-ソウル仁川間で就航
2018年8月 福岡支店を開設、福岡-ソウル仁川間で就航
2018年9月 沖縄支店を開設、那覇-ソウル仁川間で就航
2018年11月 札幌支店を開設、新千歳-ソウル仁川間で就航

エアソウル東京支店

設立 2017年8月
事業概要 航空運輸、貨物輸送、免税品・土産物の販売、機内食の製造販売、航空券のオンライン販売
親会社 アシアナ航空(韓国)
住所 〒101-0052 東京都中央区日本橋浜町2-1-10 TKM日本橋浜町タワー11階
URL https://flyairseoul.com/CW/ja/main.do外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

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