外資の対日投資成功事例 - サクセススト-リ-AEGERION PHARMACEUTICALS 株式会社

産業:バイオテクノロジー/ライフサイエンス

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希少疾患に対して、革新的な治療の開発と販売に取り組む製薬会社である米国Aegerion Pharmaceuticals Inc.の日本法人、AEGERION PHARMACEUTICALS株式会社は、2016年12月、ホモ接合体家族性高コレステロール血症(HoFH)に対する新しい作用機序を有した経口治療薬を発売した。HoFHに苦しむ日本の患者の負担軽減が期待されている。


2016年12月15日、AEGERION PHARMACEUTICALS 株式会社(以下、エージェリオン社)は、ホモ接合体家族性高コレステロール血症治療薬「ジャクスタピッドカプセル5mg」、「ジャクスタピッドカプセル10mg」、「ジャクスタピッドカプセル20mg」[一般名:ロミタピドメシル酸塩、Lomitapide Mesilate](以下、ジャクスタピッド)を発売した。
ホモ接合体家族性高コレステロール血症(HoFH)は、生まれつき血液中の悪玉コレステロールといわれるLDLコレステロールの量が顕著に増えてしまう病気である。今回発売されたジャクスタピッドにより、既存の経口脂質低下薬を服用してもLDLコレステロールの低下効果が不十分なHoFHの患者に対してLDLコレステロール低下効果が期待できる。

ホモ接合体家族性高コレステロール血症の経口治療薬:ジャクスタピッド

日本法人設立、日本の患者への思い

本社であるAegerion Pharmaceuticals Inc.は、2005年に米国マサチューセッツ州ケンブリッジに設立された。その後、2012年12月、2013年7月にそれぞれ、アメリカ食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)より、Lomitapideの承認を取得し、2016年4月時点で、世界38カ国で承認されている。同社は、同じ症状に苦しむ日本の患者にも一刻も早く同じ薬を届けたい、アンメット・メディカル・ニーズに応えたいという思いから、2013年9月、東京港区に日本法人を設立した。
エージェリオン社の中邑昌子(なかむらまさこ)代表取締役(以下、中邑氏)によると、希少疾患に対する治療薬の多くは、先に米国や欧州で医薬品の承認が取得されるという。「日本の患者だけがいつも、何年も後にならなければ治療を受けられないのは納得がいかない」と、日本でも承認取得を模索し始めたという。
そうした強いモチベーションを持って、日本進出を検討する中で、決め手となったのは、「難病の患者に対する医療等に関する法律」だと言う。同法律の中で、医療費助成の対象となる疾患として、HoFHが指定難病に選定されていた。これにより、患者の医療費負担が軽減されると知り、日本でのビジネス展開の可能性を探るべく、マーケット調査を開始した。「難病患者の負担が軽減される、こうした制度は日本独自のもので、すばらしい」と中邑氏は語る。
マーケット調査の結果、HoFHの患者数などのマーケットサイズが日本は米国に続く、二番目に大きな市場だということが分かった。また、患者が代替可能な治療法を持たないことなどを確認し、日本法人設立を決意した。

エージェリオン社代表取締役 中邑昌子氏

変わる日本の製薬市場とオーファン・ドラッグ

日本の製薬市場は今劇的な変化を見せている。オーファン・ドラッグ(希少疾病用医薬品)を扱う企業にとって魅力的な制度も多い。
かつて日本は、他国では発売されている製品が、日本では発売されていない、もしくは日本で発売されているものの、発売までに要する審査時間が、他国に比べて非常に長いという問題が指摘されていた。この「ドラッグ・ラグ」の問題だが、政府の取り組みにより解消されてきている。
中邑氏は「日本の医薬品の承認のプロセスは非常にクリア。日本は承認手続きが不透明、遅いなどの声を聞くこともあるが、実際日本で手続きを行ってみて、他国に比べて非常に良いイメージを持っています。特にオーファン・ドラッグに関しては、9ヶ月という審査期間が明示されていて分かりやすい。実際、ジャクスタピッドは8.8ヶ月で承認を受けました。他国ではこんなにスムーズに進まない。ドラッグ・ラグはいまや完全に解消されたと言えます。これは、私自身で経験した事」と、実体験を元に、変わる日本の医薬品承認審査の今を語ってくれた。
ジャクスタピッドは2013年9月に希少疾病用医薬品指定を受けた後、国内での治験を経て、2016年1月に製造販売承認申請、同年9月に承認された。
日本では、希少疾病用医薬品指定を受けることで、医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN)より助成金を受けることも可能で、開発費にかかる税金なども一部控除されるなどメリットがある*。こうした制度は他国には見られない日本独自のもので、非常に優れているとの印象を受けたという。「様々な審査基準があるとはいえ、オーファン・ドラッグを取り扱う会社は注目すべき制度です」と中邑氏は強調した。
*希少疾病医薬品(オーファンドラッグ)研究開発促進制度

多くのサポーター

ジャクスタピッドの承認取得後の、薬価交渉も非常にスムーズだったという。日本では承認後、原則60日以内、遅くとも90日以内に薬価を決めることとされている。「90日以内に必ず薬価確定すると定められている国はなかなかない。欧州などでは、薬事承認の後も薬価が確定するまでに何年も時間がかかることが多い」と中邑氏。こうした制度が整っており、明確であることに加え、中邑氏が感銘を受けたのが、日本の人々の協力体制だったという。「株式会社設立、オーファン・ドラッグ指定の取得、承認取得、薬価交渉など様々な局面で、PMDA、厚生労働省、ジェトロなど多くの人の支えがありました。大変なこともあったが、周囲の人々が私達と同じくらい必死になって、取り組んでくれたことで今回の販売に繋がりました。サポーターが多くとても幸せです」と中邑氏は語る。

今後の展開

現在はジェトロ本部も入居するアーク森ビル内のオフィスで、中邑氏のほか、総括製造販売、品質保証、安全管理の各責任者である製造販売業三役を含む9名のスタッフが、ジャクスタピッドのために活動している。中邑氏は「最初の2年間は疾患に対する意識の向上、ならびに医学教育の取り組みに注力していきます。早期発見及び治療が鍵となります。そのため、とりわけ希少疾病患者一人ひとりにたいして、適切な治療が確保されるよう、啓発活動が重要なのです」と意気込みを語った。

ジェトロのサポート

ジェトロは、医療分野の産業アドバイザーによるコンサルテーションをはじめとする、薬事制度・難病対策・希少疾病制度等の情報提供や、無料テンポラリーオフィスの提供などを行った。中邑氏は「ジェトロはまさに私たちにとって、日本のFirst Stopで、優れた情報源です。東京で事務所を立ち上げる際に、会社法、税と財政についてジェトロが出している"Laws & Regulationsという冊子を頻繁に参考にさせてもらいました。」と語った。

オフィス前で目を入れた達磨と写る中邑氏、ジェトロスタッフとともに。

(2017年1月取材)


同社沿革

2005年  米国Aegerion Pharmaceuticals Inc.設立
2012年  アメリカ食品医薬品局(FDA)より、HoFH向けLomitapideの承認を取得
2013年  東京に日本法人設立
欧州医薬品庁(EMA)よりLomitapideの承認取得
日本で、Lomitapideが希少疾患医薬品指定を受ける(9月)
2014年  日本でのフェーズⅢ臨床試験開始
2016年  ジャクスタピッドの製造販売承認申請(1月)
ジャクスタピッドの承認取得(9月)、ジャクスタピッドの発売(12月)

AEGERION PHARMACEUTICALS株式会社

設立 2013年
事業概要 希少疾病に対する治療の開発と販売
親会社(グループ) Aegerion Pharmaceuticals
住所 (本社)〒107-6012 東京都港区赤坂1-12-32 アーク森ビル12階
URL http://www.aegerion.co.jp/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

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