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ジェトロ対日投資関連スピーチ バンコク「対日投資シンポジウム」基調講演

2017年11月24日

ジェトロ理事長 石毛 博行

本日は、『日タイ修好130周年』のタイミングで、このシンポジウムを開催できますことを、大変光栄に思います。
さて、日本とタイは130周年という新たな節目を迎えておりますが、両国の交流の歴史はもっと古く、600年前に遡ります。
日本とタイは、当時「琉球」と呼ばれていた沖縄地方を経由して、貿易をしており、沖縄の「泡盛」という米焼酎は、タイから製造方法が伝えられたそうです。タイから日本への技術輸出です。

ここで、ジェトロのタイにおける活動の歴史を振り返っておきましょう。
ジェトロ・バンコク事務所は、1958年のジェトロ創立以前からありました。
1954年10月に、ジェトロの前身である財団法人『海外貿易振興会』が、世界で2番目の事務所をバンコクに開設をしています。
今では、ジェトロ・バンコクは、ジェトロ・NYを抜いて世界中の海外事務所で最も職員が多く、最も来訪者、相談件数が多い事務所へと育っています。
実はジェトロの歴史を紐解くと、1953年12月の『第16回タイ国憲法記念博覧会』に、プミポン前国王がジェトロの日本館を訪問された記録が残っております。
60年以上前の話ですが、私は、理事長として、大変名誉なことと思うと共に、前国王の偉大な功績が新しい時代に引き継がれ、タイが更に繁栄することを心より願っております。

さて、本題に移ります。
本日のテーマは『対日投資』ですが、私はもう少し、広い観点からこのテーマを論じてみたいと思います。
3つの点について話をさせていただきます。
第1に『タイはいま、何を目指すのか?そのために何をするのか?』
第2に『その時の最良なパートナーは誰か?』
そして第3に、本日のテーマである『なぜ、対日投資』が重要なのか?

タイの変化

まず、『タイが今、目指している方向性』について、私の認識を述べたいと思います。
いまから2か月ほど前、私は、ジェトロが主催する『タイ経済ミッション』の機会を捉え、約600名の日本企業関係者とともに、ここバンコクを訪れました。
そして、両国政府・企業関係者、約1,300名が参加する大規模シンポジウムを開催いたしました。

その場で、私は、ソムキット副首相をはじめとするタイのリーダーから、「新しいタイ」の実現に向けた力強いメッセージを受け取りました。
すなわち、『中進国の罠』に陥らずに、持続的な成長を実現する。そのために、(1)「次世代のタイ」、その成長の新機軸となるThailand4.0を実現すること、(2)それを実現するため『東部経済回廊』、EECの開発を進めること、そして、(3)この開発を「財政措置」と「規制改革」によって強力に進めるというコミットメントであります。

その際、私もスピーチの機会を頂きました。
その中で、「新しいタイ」を実現するために取り組むべき課題として、(1)高度産業人材を育成、(2)研究開発機能の強化と自律的なイノベーション、そして、(3)ASEANの製造・物流ハブとなる、の3つのポイントを提案しました。
この提案は、タイの政府関係者に向けて発信したものです。

一方、この「新しいタイ」を実現するメインプレイヤーは、民間企業、『タイ企業』であります。
従来であれば、「新しいタイ」の実現のためには、『外資を導入して』実現するというのが伝統的なタイの産業政策でした。
しかし、「新しいタイ」を実現するためには、主役の「タイの企業」自身が、「この新しいタイ」の実現に関わってゆく必要があります。
タイ企業自身が競争力を強化してゆくことが必要です。
この点に関して、私はタイ企業による『対外直接投資の重要性』を強調したいと思います。
何故、「対外直接投資」は重要なのか?
それは、対外直接投資が、タイ企業自らをグローバル化し、周辺国、アジア全域、そして世界で成長の源泉を見出していくきっかけを提供するからです。
今、タイ企業自身にはそうした対外投資へチャレンジする「インセンティブ」があります。タイは日本と同様、少子高齢化の課題を抱えて海外市場の開拓は待ったなしです。
グローバルに活躍するには、先進技術、高度人材、経営ノウハウを獲得することも不可欠です。対外直接投資はその有力な手段です。

なお、これからのタイの経済にとって、対外投資はマクロ的に見ても重要になってきます。

経済成長を実現するためには、必要な財、サービスを輸入しなくてはなりません。輸入代金を支払うためには外貨が必要です。
それを稼ぐのは輸出ですが、経済発展した諸外国の発展の歴史を見ればわかります。
タイも今後輸出だけでなく『対外投資による収益で稼ぐ構造』に転換していく事が必要になると思います。
近年のタイの直接投資の動向をみると、2016年には、対外投資が対内投資を大幅に上回りました。資本の受け手から出し手へ、すなわち、タイは『対外直接投資国のステージ』に入りつつあるといえます。
アジアでは、日本の他、韓国、シンガポール、最近では中国も対外投資で稼ぐ経済モデルに変わってきています。
私は「新しいタイ」の実現のためタイが行うべきことは、(1)タイランド4.0を推進し、イノベーションを実現することだけではなく、(2)グローバル化を進めること、特に、タイ企業の海外展開を進めることが必要であると思います。

なぜ日本か

続いて第2のポイントです。
『イノベーションとグローバル化による新しいタイ』を実現するためにどうするか?良いパートナーを選ぶことが重要です。
最良のパートナーは、どの国でしょうか?
私は日本と言いたいのですが、なぜ、日本か?日本であるべきなのか?

現在、タイ政府は、Thailand 4.0の実現を目指しています。一方で日本政府も、「Society 5.0」の実現を目指しています。

日タイ両国が、社会課題の解決、経済発展で求めている方向性は、今や同じものだと思います。
では、具体的にどう進めるのか?
タイは単独で進めるのか?日本は単独で進めるのか?
それは違います。
キーワードは、『パートナーシップによるイノベーション』であります。
私は、日タイ企業間のパートナーシップで進めることが非常に大事であると思っています。
『Thailand 4.0に貢献するために、タイに進出します』という提案は、日本以外の国も行っています。
しかし、こうした『パートナーシップによって、タイでイノベーションを実現する』とコミットしている国はほかにありますか?
日本だけではないでしょうか?
なぜ、日本はそれを強調するのか?
それは、日本企業はタイの企業と共に発展してきたし、これからもそうし続けるからです。日本からタイには、既に5,500近くの企業が進出しています。我々は、日本企業のアセアンでの発展・成長はタイ企業とのパートナーシップなしには成り立たないと考えています。

こうした観点から、日本の経済産業省とジェトロは、今、次のようなプロジェクトを進めています。
即ち、日本とタイの企業による『パートナーシップ』を支援して、IOTやConnected industriesなどの「新産業分野でイノベーションにつなげよう」と言う実証事業です。
日タイのパートナーシップをイノベーションに向けようという試みです。
「新しいタイ」の実現のための実証事業です。
例えば、(1)インターネット経由の遠隔監視システムを使って、「タイの工場の設備の稼働状況」を正確に把握するプロジェクトや、(2)衛星を使って「バンコクの交通渋滞」を分析し、次世代のロジスティック・チェーンの構築を目指すプロジェクトです。
イノベーションを目指すこうした試みには当然リスクがあります。しかし、そのリスクにチャレンジすることなしにはイノベーションは実現しません。ですから、日本政府・ジェトロはサポートするのです。

協業の基盤としてのメガFTA

それからもう1点、企業間のパートナーシップを進める上で、重要なことがあります。
今、欧米では、アンチグローバリゼーションの風潮が起こっています。しかし、経済のグローバル化は進みます。止まりません。
グローバル化の中で生き残るポイントは何でしょうか?
効率的な「サプライチェーン」を作ってゆくことです。
このためには、広い地域全体をカバーする「自由で公平な、高いレベルの貿易・投資のルール作り」がますます重要になっています。

ご承知のとおり、いま、アジア太平洋では2つのメガFTAの交渉が進んでいます。
第一は、日本とタイがともに参加するRCEPの交渉です。今、最終段階を迎えています。
タイは、日本とともに、「質の高いRCEP」を通じた自由貿易を推進する役割を担っています。

第二は、つい2週間前、ベトナムで行われたAPECの閣僚会合で、大筋合意に達した所謂『TPP11』であります。アメリカ抜きのTPPです。アメリカが戻ってくれば、TPP12となります。本来のTPPとなります。
アメリカが今すぐ戻ってくるのは難しいかもしれませんが、働きかけ続けることが重要です。
そして将来的には、タイが、シンガポール、ベトナムなどのASEANのメンバーと同様に、このTPPの枠組みに参画し、ビジネスの信頼度を高める『新たなルールづくり』を、日本とともに担ってほしいと思います。それを、日本のビジネス界は期待しています。
日本は『新しいタイ、イノベーションとグローバル化に挑戦する新しいタイ』を一緒に実現しようと思います。

どこで何をやるか?

ここで、第3のポイントとして、『新しいタイ、特にグローバル化に挑戦するタイ』の実現のために、日本への直接投資は何故、重要なのか?本日の本題に触れます。
まず、タイの企業の海外展開を見てみましょう。
現状では、アセアン諸国、米国、中国が中心です。
アセアン、特にメコン地域に対して、不動産開発、建設素材、金融、小売りと幅広い分野の投資が行われています。
米国には、食品分野で大きな投資が目立ちます。2016年には、ユニオンフーズによる米国のシーフードレストラン「レッド・ロブスター」への出資、CPグループによる冷凍食品大手の買収などが報告されています。
中国では、情報通信やアグリビジネス、小売り分野の投資が行われています。
それでは、日本ではどういう分野で、タイ企業の投資が期待されるのでしょうか?

私は、3つの分野が有望だと思っております。
まず、観光分野です。日本は、『2020年東京オリンピック・パラリンピック』を控え、訪日客が急増し、消費機運が高まっています。

既に、タイより、不動産・開発会社のプロパティ・パーフェクトなどが進出をしていますが、観光は、ホテルのみならず、エアライン、旅行予約サイト、外食など非常に幅広い産業です。
タイは「微笑みの国」です。観光産業は、高いサービス水準を強みとしています。
日本は「オモテナシの国」です。観光・インバウンドに力を入れています。
日本企業とのパートナーシップで、より競争力のあるタイの観光産業が生まれてきます。

次に、先端技術、研究開発の分野です。日本が強みを持つ分野です。『Thailand 4.0でイノベーションを目指す新しいタイ』が目指す方向性に合致します。
昨年は、台湾のフォックスコンによるシャープへの出資、今年は、つい先週、中国のハイセンスが東芝のテレビ部門の買収を発表しました。
タイ企業が、イノベーションを目指し、より一層グローバル化してゆくためには、先端技術、研究開発の基盤がある日本への投資を考えてみてはいかがでしょうか?
3点目は、食品産業です。タイが国際的に競争力を有している分野です。タイの代表的な産業です。
皆様がご承知の通り、日本には世界中から愛される和食、豊富な農水産物、そして、それを支える食品生産や加工の技術があります。(日本食が好きな方は?)
タイ企業もこれにアクセスして、日本企業と協業し、Made in Japan のタイ企業製品を日本から輸出したらどうでしょうか。

高まる日本の投資先としての魅力

ここで日本の投資環境、ビジネス環境について一言触れます。

日本は、2012年の安倍政権発足以来、「日本を世界で最もビジネス環境が優れた国にする」というスローガンのもと、規制改革を続けています。
法人税率は20%台になりました。外国人の高度人材にとって「世界最短レベル」でグリーンカードが取得できる国になりました。
第二に、日本に来ている外国企業の7割がビジネスの規模を拡大しようとしています。投資残高も約29兆円となり、目標の2020年に35兆円を実現する可能性も見えてきました。
第三に、それに伴い優秀な外国人が日本に活躍の場を求めています。

ところで、このスライドの女性は誰でしょう?駐日大使のバンサーン氏の右隣にいる方です。
そうです。彼女の名前はソマワン・クンプアンさん。

今年6月、安倍総理は、日経新聞の「アジアの未来」の晩さん会のスピーチで紹介したタイ人の研究者です。半導体製造技術で、設備投資を1,000分の1にできる画期的な技術開発に、彼女の存在が欠かせないという話です。

日本は、ソマワンさんのような外国人を積極的に受け入れ、楽しく、安心・安全に暮らせる『生活インフラ』を提供しています。
因みに、イギリスの情報誌「モノクル」は、東京を3年連続で「世界で最も住みやすい25都市」の第1位に選んでいます。

日タイ、双方向の時代へ

今日(こんにち)の両国の関係は、日本からタイへの一方的な流れにとどまりません。お互いに行き来する双方向の関係なのです。

佐賀県の祐徳稲荷神社では近年、タイ人の姿が目立つようになったそうです。
神社の関係者は、「タイ人が全く訪れない日はないですね」と言っています。タイの人気映画「タイムライン」、タイのドラマ「きもの秘伝」のロケ地になり、タイからの観光客が急増しています。

また、東京の新宿には、「六歌仙」という焼き肉屋があります。多い日には、100名のタイ人観光客が訪れるそうです。
日本人にもあまり知られていない観光スポットの魅力がタイ人観光客によって発掘されるといったことも珍しくありません。

昨年のタイからの訪日旅行者数は90万人を超え、今年は初めて100万人の大台に近づこうとしています。一方、日本からタイへの旅行者数は140万人とこちらも増加していますが、その差は年々縮まっています。

ビジネス面では、タイから日本への投資額が、昨年は、年間700億円を超え、韓国を上回る額になりましたが、まだまだタイからの投資が伸びる余地があると確信をしています。
ヒト、カネ、モノの流れはドンドン双方向になってきています。

Talk to JETRO First!

今朝、私は、プラユット首相と会談をしました。
日本とタイの経済関係の強化について意見交換をする中で、日本は、タイからの投資を歓迎すると申し上げました。
プラユット首相からも、対日投資の拡大へ強い意欲が示されました。そして「タイのBOIが日本企業を支援するのと同じように、タイ企業の日本進出をジェトロに支援してもらいたい」と真剣な眼差しで言われました。

ジェトロは、「商業・工業・金融合同常任委員会」とは従来から協力関係にありますが、それに加えて、今年9月には、ソムキット副首相や関係閣僚が見守る前で、タイ商業省・国際貿易振興局(DITP)と、対日投資促進を含むMOUを締結したところです。

今日の話のポイントは
「イノベーションとグローバル化によって持続的な成長を実現する。中進国の罠には陥らない。新しいタイを作る」
「新しいタイの担い手はタイの企業」
「新しいタイは、タイの企業と日本の企業とのパートナーシップで進める」
「両国政府はそのパートナーシップを支援する」
「その中で日本への直接投資はこれから大いに期待される」と言うものです。

ジェトロはこのパートナーシップをタイでも日本でも全力でサポートします。
プルックサー/ジェトロ/ペン/アンダップ/レーク
日本でのビジネスにご関心、ご要望があれば、まずジェトロへどうぞ。
ご清聴ありがとうございました。

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