Section 4. 人事・労務

4.5 労働時間・休憩・休日

4.5.1 労働時間・休憩・休日

  1. (1)

    労働時間は、原則として休憩時間を除き、1週間について40時間・1日8時間(法定労働時間)を超えてはいけません。ただし、常時10人未満の労働者を使用する小売・理容等の事業、映画・演劇の事業、保健衛生の事業、飲食店・娯楽場の事業については、1週44時間、1日8時間まで労働させることができます。

  2. (2)

    労働時間が6時間を超える場合には45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を労働時間の途中に与えなければなりません。

  3. (3)

    休日は、1週間に1日以上、または4週を通じて4日以上与えなければなりません(法定休日)。休日とは、日曜日や祝祭日である必要はなく、事業主と労働者の合意により任意に決定することができます。

4.5.2 時間外労働・休日労働に関する協定(三六協定)

事業所として、法定労働時間を超えた労働や法定休日における労働が必要な場合は、「時間外労働・休日労働に関する協定届」を所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。三六協定を提出せずに労働者に時間外労働や休日労働をさせた場合、罰則の対象となります。

三六協定を締結して届け出たからといって、時間外労働や休日労働が無制限に容認されるわけではなく、下表のように上限が設けられています。

表4-2 時間外労働・休日労働の限度時間
期間 1週間 2週間 4週間 1ヵ月 2ヵ月 3ヵ月 1年
限度時間 15時間 27時間 43時間 45時間 81時間 120時間 360時間

ただし、あらかじめ上の表のように限度以内の時間を定め、かつ限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない特別の事情が生じたときに限って、一定期間ごとに、労使当事者間において定める手続を経て、限度時間を超える一定の時間まで労働時間を延長することができる旨を協定に定めることが可能です(特別条項付三六協定)。

4.5.3 使用者の「労働時間の把握・算定義務」

労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たります。労働基準法においては、労働時間、休日、深夜残業等について規定を設けていることから、使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有しています。労働時間の把握については、原則としてタイムカードやパソコンの使用時間等の客観的な記録による必要があり、やむを得ず労働者の自己申告による管理を行う場合でも、申告された時間が適正か確認する等の措置が必要です。

4.5.4 割増賃金

法定労働時間を超えた労働、法定休日における労働、深夜(22時から5時)の労働に対しては、通常の賃金に下表のように一定の割り増しをした賃金を支払わなければなりません。

表4-3 時間外労働・休日労働等の賃金割増率
種別 賃金の割増率
1 法定労働時間を超えた労働 25 % 増
2 法定労働時間を超えた労働、かつ、1ヵ月60時間を超えた労働*1 50 % 増
3 法定休日における労働 35 % 増
4 深夜(22時から5時)における労働 25 % 増
5 法定労働時間を超えた深夜労働 50 % 増
6 法定労働時間を超えた深夜労働、かつ1ヵ月60時間を超えた労働*1 75 % 増
7 法定休日における深夜労働 60 % 増
  1. *1

    労使協定を締結すれば、改正法による引上げ分(25%から50%に引き上げた差の25%分)の割増賃金の支払に代えて、有給の休暇を付与することができる。

4.5.5 管理・監督者等に対する例外

管理・監督の地位にある者や機密の事務を取扱うもので経営者と一体となって仕事をする者は、深夜労働に対する規制を除き、労働時間・休憩・休日についての規制を受けません。なお、管理監督者に該当するか否かは、その者が労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な地位にあるかどうか、名称にとらわれず実質的な管理・監督者としての権限と地位を与えられているか、出社退社等労働時間について厳格な制限を受けていないか、このような地位にふさわしい資金面での処遇が基本給や手当、賞与等の面でなされているか、などの点を実態に即し総合的に判断する、とされています。

4.5.6 変形労働時間制

業務の種類によっては、年・月・週単位で労働時間に大きな偏りがあります。そのような場合、一定期間内の平均労働時間を法定労働時間内にすることにより、特定の週・日については、法定労働時間を超えても割増賃金の支払を必ずしも要さない以下のような労働時間制度の採用が認められています。各々の制度を採用する場合には、事前に労使協定または就業規則等で一定の取り決めをしなければいけません。

  1. (1)

    年単位の変形労働時間制

    1ヵ月超1年以内の期間を平均して週労働時間が40時間を超えない範囲で労働させる制度。この制度を採用した場合、特例措置[4.5.1(1)参照]により1週間の法定労働時間が44時間とされている事業場においても、1週40時間以下としなければなりません。

  2. (2)

    月単位の変形労働時間制

    1ヵ月以内の一定期間を平均して1週間の労働時間が40時間*1を超えない定めをした場合には、特定の週に40時間を超え特定の日に8時間を超えて労働させることができます。

  3. (3)

    フレックスタイム制

    月単位で労働時間を調整する制度としては、フレックスタイム制もあります。これは、3ヵ月以内の一定期間(清算期間)の総労働時間を定めておき、労働者がその範囲で、各日の始業及び就業の時刻を自由に決められる制度です。

  4. (4)

    週単位の変形労働時間制

    1週間の労働時間が40時間の範囲内で、1日8時間を超え10時間まで労働させることができます。ただし、常時使用する労働者数が30人未満の小売業、旅館、料理店及び飲食店のみがこの制度を採用することができます。また、この制度を採用した場合、特例措置(4.5.1(1)参照)により1週間の法定労働時間が44時間とされている事業場においても、1週40時間以下としなければなりません。

    1. *1

      特例措置(4.5.1(1)参照)により1週間の法定労働時間が44時間とされている事業場においては、44時間。

4.5.7 裁量労働時間制

労働者が会社の外で働いている場合や仕事の進行を労働者に大幅に任せている場合には、通常の労働時間の算定方法では馴染まないことがあります。このような場合のため、一定の時間だけ働いたとみなす「みなし労働時間制」があります。みなされた労働時間が法定労働時間を超えている場合には、その超えた時間については割増賃金が発生します。

  1. (1)

    事業場外みなし労働時間制

    労働者が、営業や取材など事業場外で仕事をするため、労働時間の算定が困難な場合に、所定労働時間働いたものとみなす制度です。ただし、その業務を行うためには、通常、所定労働時間を超えて労働することが必要なときは、「その業務の遂行に通常必要とされる時間」または「労使協定で定められた時間」だけ働いたものとみなします。

  2. (2)

    専門業務型裁量労働制

    専門性が高く、業務の遂行手段や時間配分に関する具体的な指示をすることが難しい一定の業務については、労使協定で労働時間を定め、それを労働基準監督署長に届け出ることにより、実際の労働時間にかかわらず、協定で定めた時間だけ働いたものとみなします。

  3. (3)

    企画業務型裁量労働時間制

    その業務の遂行方法を大幅にその労働者の裁量にゆだねる必要のある企画、立案、調査及び分析の業務に従事する者について、労使委員会でその委員の5分の4以上の多数の議決により一定の事項を決議し、それを労働基準監督署長に届け出た場合には、実際の労働時間にかからず、労使委員会で決議された時間だけ働いたものとみなします。

4.5.8 高度プロフェッショナル

年間の支払いが確定している給与額が1075万円以上であって、金融商品の開発、資産運用・有価証券の売買等、投資に関する助言、調査・分析、若しくは研究開発の業務に就いている労働者が合意した場合、労使委員会の決議書を所轄労働基準監督署に届出ることにより、当該労働者を「高度プロフェッショナル」として、労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規制の適用から外すことが出来ます。但し、年間104日以上の休日確保措置や健康・福祉措置等を講ずる必要があります。

4.5.9 有給休暇

使用者は、労働者を雇入れてから6ヵ月間継続して、かつ、全労働日の8割以上を出勤した労働者に対して、継続し、または分割した10労働日の有給休暇を与えなければなりません。ただし、労働者からの有給休暇の申請に対し、事業の正常な運営を妨げる場合には、使用者はその時期の変更をさせることができます。勤続年数と年次有給休暇の付与日数の関係は、下表に示すとおりです。

表4-4 年次有給休暇の付与日数
勤続年数 6ヵ月 1年6ヵ月 2年6ヵ月 3年6ヵ月 4年6ヵ月 5年6ヵ月 6年6ヵ月以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

年次有給休暇の権利は、2年間をもって消滅します。つまり、その年に取得した年次有給休暇で休暇を取らなかった分については、その翌年に限り繰り超すことができます。よって、繰越分と新規に取得した有給休暇日数を合計して年最大40日(勤続年数が7年6ヵ月以上の者)までの有給休暇の取得が可能です。なお、労働者が年次有給休暇権を行使せず、時効や退職等の理由でこれが消滅する場合について、残日数に応じて調整的に金銭の給付をするか否かは会社での取り決めによります。しかし、このような取扱いによって年次有給休暇の取得を抑制する効果をもつようになることは好ましくなく、むしろ、年次有給休暇を取得しやすい環境を整備することが重要です。

会社は、年次有給休暇が10日以上付与される労働者について、年5日の年次有給休暇を確実に取得させる義務があります。

また、年次有給休暇は日単位で取得することが原則ですが、労使協定を締結すれば、1年に5日分を限度として時間単位で取得できます。

労働者の私傷病による休業に対しては、上記の有給休暇と別途の有給休暇を与える必要はありません。一方、労働者の結婚、近親者の死亡、配偶者の出産などにおいては、上記とは別途、数日間の有給休暇を与えることが日本の企業ではよく見られます。

勤務日数が少なく、1週間あたりの勤務時間が短いパートタイム労働者については、その所定労働日数に応じて比例的に年次有給休暇を付与します。

4.5.10 出産・育児・介護

  1. (1)

    産前産後の休業

    事業主は、出産予定の女性労働者から出産予定日の6週間(多胎妊娠の場合は14週間)前から休業を取る請求があったときは、その請求を認めなければなりません。また、出産の翌日から8週の間は、原則として就労させてはいけません。

  2. (2)

    育児休業

    1歳未満の子を養育する労働者から休業(原則、子が1歳に達する日までの間で、一定条件を充たす場合には、最長で2歳に達するまでの間)の請求があったときは、その請求を認めなければいけません。また、妻が産後休業中、夫は出産時育児休業を通常の育児休業とは別に取得することが出来ます。労使協定で定めることにより、雇用されてから1年未満の者等を育児休業制度の適用除外とすることもできます。

  3. (3)

    所定外労働の免除・短時間勤務制度の義務・時間外労働の制限

    3歳に満たない子を養育する労働者が所定外労働の免除を請求した場合は、所定労働時間を超えて労働させてはいけません。同様に、3歳に満たない子を養育する労働者が請求した場合には、短時間勤務の措置を講じなければなりません。また、小学校就学前の子を養育する労働者が請求をした場合は、月24時間及び年150時間を超えて時間外労働をさせてはいけません。

  4. (4)

    介護休業

    一定の要介護状態の家族がいる労働者からその介護のための休業の請求があったときは、その請求は、その1人の家族につき、通算93日間、3回までを限度として認めなければなりません。労使協定で定めることにより、雇用されてから1年未満の者、93日から6ヶ月を経過する日までに雇用関係が終了する者等を適用除外とすることもできます。

  5. (5)

    子の看護休暇・介護休暇

    小学校就学前の子を養育する労働者は、1年に5日まで(小学校前の子が2人以上の場合は10日まで)、病気・ケガをした子の看護のために休暇を取得することができます。また、要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者は、その対象家族が1人であれば5日まで、2人以上であれば年10日まで、介護のための休暇を取得することができます。いずれの休暇も時間単位での取得が可能です。

上記の各休業期間は、無給でも構いません。ただし、一定の条件の下で、労働者は、前記(1)の期間は健康保険から、(2)および(4)の期間は雇用保険から一定の給付を受けることができます。

4.5.11 労働基準監督官による調査

労働基準監督官とは、日本の労働基準関係法令に基づいて、事業場(工場や事務所など)に立ち入り、法令等を事業主に遵守させるとともに、労働条件の確保・向上と働く人の健康の確保を図り、また、不幸にして労働災害にあわれた方に対する労災補償の業務を行うことを任務とする厚生労働省の専門職員です。

会社設立の手続き パンフレット

日本での会社設立に関わる基本的な法制度情報や各種手続きをまとめた冊子(PDF)を提供しています。8種類の言語(日本語、英語、ドイツ語、フランス語、中国語(簡体字)、中国語(繁体字)、韓国語、ベトナム語)で作成しています。
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Section 4:人事・労務 各種申請書類

Section 申請書式名 申請様式の掲載箇所 管轄省庁等
4-3 労働条件通知書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 主要様式ダウンロードコーナー→労働基準監督署に申請または届出する場合に使う様式→労働条件通知書→【一般労働者用】 常用、有期雇用型 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-3 雇用契約書(例) 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-5 時間外労働・休日労働に関する協定届(一般条項)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 主要様式ダウンロードコーナー→時間外労働・休日労働に関する協定届→限度時間以内で時間外・休日労働を行わせる場合(一般条項)→様式第9号 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-5 時間外労働・休日労働に関する協定届(特別条項)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 主要様式ダウンロードコーナー→時間外労働・休日労働に関する協定届→限度時間を超えて時間外・休日労働を行わせる場合(特別条項)→様式第9号の2 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-6 モデル就業規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます モデル就業規則について→モデル就業規則→全体版 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 雇用保険被保険者資格取得届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 「雇用保険被保険者資格取得届」から印刷 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 主な届出書様式の一覧→健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 日本年金機構外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 労働保険 概算・増加概算・確定保険料申告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 年度更新申告書計算支援ツール 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 被保険者報酬月額算定基礎届
70歳以上被用者算定届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
主な届出書様式の一覧→健康保険・厚生年金被保険者報酬月額算定基礎届 日本年金機構外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 第3号被保険者関係届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 主な届出書様式の一覧→健康保険被扶養者(異動)届 日本年金機構外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 労働保険、保険関係成立届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 雇用保険適用事業所設置届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 雇用保険適用事業所設置届→内容を入力して印刷 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 健康保険・厚生年金保険新規適用届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 事業所を設立し、健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき→健康保険・厚生年金保険新規適用届 日本年金機構外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告→令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 国税庁外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-10 給与所得の源泉徴収票外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます F1-1 給与所得の源泉徴収票(同合計表)→給与所得の源泉徴収票(各種) 国税庁外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

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