産業情報・レポート ジェトロ対日投資報告2016(要約)

1. 順調に推移する対日投資

2015年の対日直接投資残高は、24.4兆円で過去最高を更新

  • 2014年に初めて20兆円を超えた対日直接投資残高は、2015年末は24.4兆円で過去最高額を更新。
  • 2015年末残高の名目GDP比は、前年同率の4.9%で、国際的には依然として低い水準。
  • 日本の対内・対外直接投資残高を比較すると、1:6.2で依然として大きな開き。
  • 2016年上半期は大幅な流入超過で6月末の残高推計は26.7兆円(2016年9月財務省発表)。

対日直接投資残高の推移と対GDP比

2000年から2016年6月末一時推計までの対日直接投資残高と対GDP比の推移を示す。2015年末の対日直接投資残高は、24.4兆円で対GDP比は4.9%。2016年6月末時点での対日直接投資残高の一次推計値は26.7兆円。

〔出所〕「国際収支統計」(財務省)、「国民経済計算」(内閣府)より作成

地域別残高ではアジアがシェアを拡大

  • 地域別の対日直接投資残高は、欧州からの投資が全体の46%(約11.2兆円)で最大。次いで、北米28.8%(約7兆円)、アジア17.6%(約4.3兆円)。
  • アジアの割合は前年(15.5%)から2ポイント以上増加。シンガポール、香港がトップ10入りしていることに加え、台湾、韓国、中国等のアジア諸国が10年前と比べて順位を伸ばし、アジアの存在感が増している。

地域別対日直接投資残高(2015年末時点)

欧州からの投資が約11.2兆円で、全体の46%を占めた。北米は約7兆億円で全体の28.8%、アジアは約4.3兆円で全体の17.6%、中南米は約1.5兆円で全体の6%、大洋州は約0.3兆円で全体の1.3%を占めている。

〔出所〕「国際収支統計」(財務省)より作成

2000年時点残高を100とした場合の地域別対日直接投資残高の伸びの推移

2007年には北米が272、欧州が238、アジアが216であったが、2015年には、アジアが830、北米が366、欧州が354となっており、アジアの存在感が増している。

〔注〕2014年末以降の残高はBPM6基準、2013年以前の残高はジェトロが BPM5からBPM6基準に換算
〔出所〕「国際収支統計」(財務省)より作成

2015年のフローは4年ぶりのマイナス 2016年に入り大幅な流入超過

  • 2015年の対日直接投資フロー(国際収支ベース、ネット)は△164億円で、4年ぶりのマイナス。
  • グロスベースでは、対日投資の実行額、回収額ともに前年比で約45%縮小。全体的に小幅な動き。
  • 地域別では欧州が(スズキによる独フォルクス・ワーゲンの保有する自社株の買戻し(約5,000億円)の影響等で)1兆418億円の流出超過。一方、アジア、北米からの投資は観光関連分野等を中心に引き続き高水準。
  • 2016年は低調な動きから脱し、上期(1~6月)の対日直接投資は、前年同期比で709%増となる約2.6兆円で大幅な流入超過。

地域別対日直接投資フロー(ネット)の推移

(単位:億円)

2013年 2014年 2015年 2016年
(1-6月) 前年同期比伸び率
アジア 861 6,866 6,830 13,132 383%
 中国 138 800 674 -26 n/a
 香港 171 2,460 1,541 896 17%
 台湾 183 1,181 735 292 11%
 韓国 41 578 1,002 250 10%
 ASEAN 324 1,845 2,862 11,732 796%
 シンガポール 334 1,549 2,343 11,320 1,060%
北米 1,358 7,254 6,342 3,781 92%
 米国 1,323 7,236 6,312 3,820 100%
中南米 -1,309 674 -2,573 409 49%
大洋州 371 614 -749 283 n/a
欧州 966 3,167 -10,418 8,269 n/a
 EU 1,284 2,675 -10,032 7,862 n/a
世界 2,248 19,243 -164 25,963 709%

四半期ごとの対日直接投資フロー(ネット)の推移

2013年のフロー合計は1兆501億円、2014年の合計は1兆9,243億円、2015年の合計は-164億円であるのに対し、2016年上半期の対日直接投資は2兆5,963億円で急増している。

〔注〕四半期の区分は、Q1(1~3月)、Q2(4~6月)、Q3(7~9月)、Q4(10~12月)
〔出所〕「国際収支統計」(財務省)より作成

2015年の対日M&Aは低調 2016年は大型案件増加 サービス市場への参入拡大

  • 2015年の対日M&A(完了ベース)は9,196億円と低調(前年比27%減少)。
  • 2016年は大幅増に転じ、上半期の対日M&Aは2兆6,862億円で、2007年の過去最高額(3兆5,937億円)に次ぐ規模。
  • 2015年の最大案件である米NBCユニバーサルによるユー・エス・ジェイの買収(1,830億円)や、2016年の仏ヴァンシエアポート、オリックス等による関西国際空港および大阪国際空港の運営権取得(2兆2,500億円)など、近年、サービス分野への参入が拡大。また、サービス分野ではホテルやビジネスサービス、ヘルスケアなどへ裾野を拡大。
  • 近年のM&Aのトレンドとして、日本企業とアジア企業との協業の流れも定着。

対日 M&A 上位案件(2015 年~ 2016 年 6 月)

完了年月 被買収企業 被買収企業 業種 買収企業 買収企業 国籍 買収企業 業種 金額(億円) 買収後出資比率(%)
1 2016年4月 新関西国際空港株式会社(関西国際空港、大阪国際空港の運営権) 運輸(空港運営) オリックス、ヴァンシ・エアポート(仏)他 フランス他 運輸(空港運営) 22,500 100
2 2015年11月 ユー・エス・ジェイ 娯楽サービス コムキャストNBCユニバーサル 米国 メディア(CATV) 1,830 51
3 2016年2月 ワンエム・ロジスティクス合同会社 不動産 ラサールロジポート投資法人 米国 不動産投資信託 1,172 100
4 2016年4月 アステラス製薬(海外での皮膚病治療薬事業) 医薬品 レオ・ファーマ デンマーク 医薬品 892 100
5 2015年3月 MCアビエーション・パートナーズ(同社所有の航空機15機) ビジネスサービス(リース) 長江実業集団 香港 不動産他 833 100
6 2016年5月 武田薬品工業(呼吸器薬事業) 医薬品 アストラゼネカ 英国 医薬品 692 100
7 2016年3月 日信工業(ブレーキ部品事業) 自動車部品 オートリブ スウェーデン 自動車部品 650 100
8 2015年3月 パイオニア(DJ機器事業) 電気・電子機器 コールバーグ・クラビス・ロバーツ・アンド・カンパニー 米国 投資会社 590 85.1
9 2015年8月 キラリトギンザ 不動産 SOFAZ(アゼルバイジャン国家石油基金) アゼルバイジャン 投資会社 523 100
10 2015年10月 ビットアイル ビジネスサービス(データセンター) エクイニクス 米国 ビジネスサービス(データセンター) 520 96.8