PVMSys Infra Solutions株式会社
自動車開発に携わる技術者向けに高度なIT技術を用いた計測システムを提供するiASYS (イアシス)Technology Solutions Pvt. Ltd.は2014年10月、日本法人PVMSys(ピーヴイエムシス) Infra Solutions株式会社を東京都に設立。現在は、日本において最先端の研究開発を行う企業・機関が集積するつくばに拠点を移し、日系自動車企業向けの営業やテクニカルサポートを行う。
インターネットの普及により、情報量が飛躍的に増加し、近年「ビッグデータ」や「IoT」、「AI」といった言葉を頻繁に耳にするようになった。膨大な情報を入手しやすくなった一方で、多くの企業は、これらのデータを管理・分析し、事業拡大やコスト削減に役立てようと躍起になっており、自動車業界においても同様のことが起きている。製品開発において最も重要なプロセスである実験と検証作業では、技術者は実験結果から得られた大量のデータを管理しなくてはならない。しかし、多種多様な計測装置や複雑なデータを取り扱うことから、互換性がないデータ形式の処理は非常に困難であり、時間がかかることが現場での課題となっている。
高度なIT技術で計測データの互換性の課題解決
iASYS Technology Solutions Pvt. Ltd.(以下iASYS社)は、1999年にインドのプネにて設立された。同社は、複雑で大量のデータマネジメントに課題を抱える多くの技術者に対し、業務をより効率化させるIT技術を活用した排ガス計測用のオートメーションシステム「Orbit-X」(オービット・エックス)を提供している。同システムにより、自動車の排ガス測定の際に用いられる様々なサードベンダー企業の計測装置を統合することで、計測実験を容易にした。製品開発はインド本社にて行っており、タタ自動車をはじめとするインド主要OEM企業のほとんどが同社の顧客となっている。またドイツ、日本、英国や、テストマーケティングを実施している米国にて、自動車関連会社への営業を行っている。現在、全世界で130名の社員を擁している。
データマネジメントシステムにより研究者や技術者の開発を支援
同社は2011年に日本の自動車会社とビジネスを開始し、2014年に東京都に日本法人PVMSys Infra Solutions株式会社(以下PVMSys社)を設立した。現在、日本人社員2名が日本国内における営業とテクニカルサポートを行っている。
日本においては、本社のiASYS社が主に取り扱う排ガス計測用のオートメーションシステム「Orbit-X」のほかに、先進的な計測データベースである「Brix(ブリックス)シリーズ」も提供する。Brixは実験データを蓄積し、製品開発の際のデータの再利用性に重点を置いたデータベースである。このデータベースは企業名にもなっている「PVM = Product Validation Management(製品の妥当性確認&検証管理)」というコンセプトが基になっている。蓄積したデータを他のグループのメンバーや解析システムとウェブ上で共有可能にすることで、データの再活用を容易にし、新たな製品開発に繋げることを支援する。同社はこれらの効率的なデータマネジメントシステムにより、開発に携わる研究者やエンジニアに活力を与えることを企業ビジョンとしている。
日本人の思考プロセスに合った商品コンセプト
同社は、これまで欧米においてもBrixシリーズの市場導入を試みてきたが、日本で本格的に販売していくことに決めたと本社社長のプーラン氏は話す。その理由について、「この商品は1つ1つのプロセスに従って導入をしていかなければならない。日本人は『構造化思考』の人が多く、プロセスに忠実に従うマインドセットが商品コンセプトに合致した。そのため、日本においては商品の導入がしやすく、顧客にも利用してもらいやすい。今後我々がグローバル展開していくにあたって、日本でのサクセスストーリーは自社にとって良いブランディングになる」と話す。現在、株式会社本田技術研究所をはじめとする大手自動車メーカーの研究・開発機関や計測設備メーカーが日本における主要取引先となっている。日本に拠点設立をしたことで顧客との距離が近くなり、意思の疎通がしやすくなったとプーラン氏は話す。
インド企業に対するイメージとの闘い
日本企業とビジネスを開始してから日本に拠点設立をするまでの4年間は、同社のブランドイメージを確立するのに苦労をした。日本法人代表の桑田氏は、「営業にいくと、インド企業というだけで必ず外注先として見られてしまう。しかし我々は外注先ではなく、実際に製品開発をしている企業である。それを顧客に理解してもらうのに時間がかかった。人材確保をする上でも、やはりブランド力は必要であると痛感している」と語る。しかし、同社はブランディングに対する課題を抱えながらも、複雑な商品説明を顧客のレベルに合わせて行ってきたことで、「現在はわが社の商品コンセプトや質を理解し、高く評価してくれる企業が増えた」と桑田氏は話す。
同社が拠点を置くつくば研究支援センター
最先端の研究開発機関の集積地「つくば」でのブランド構築戦略
同社は2014年に東京にて拠点設立をしたが、2015年に茨城県つくば市にあるつくば研究支援センターに拠点を移転。現在つくば市にて、日本企業への営業や筑波大学における講演活動等を行っている。つくば市は、東京都心から北東約60kmに位置し、日本が世界に誇る「科学技術拠点都市」として知られている。同市は、日本が直面する少子高齢化、エネルギー問題などの課題を「科学技術」で解決することを目標に、新しい産官学の連携システムの構築や環境整備に尽力している。現在300以上の研究機関や企業が集積しており、約2万人の研究者が世界最先端の設備が整う同市にて、世界をリードする革新的な研究に勤しんでいる。多くの外資系企業が東京都に拠点を集中させる中、ビジネスの面でも、ブランド構築の観点でも、同社はつくばの立地や環境に非常に満足していると語る。
「我々はエンジニアリングに注力したビジネスを行っているため、多くの研究が行われている場所に拠点を置きたかった。日本は単なる販売拠点ではなく、他の市場でも販売可能な新たな商品を生み出すための戦略的な拠点でもある。そういった意味で多くの研究機関や大学が集積しているつくばは我々にとって理想の場所である」と語る。PVMSys社はこれからもつくば市をベースに様々な企業や大学、研究機関とネットワークを構築し、ビジネス拡大を図っていくと話す。
今後のビジネス展開とジェトロのサポート
今後のビジネス展開について、「次のターゲットは名古屋である。名古屋をカバーすれば日本市場のほぼ50%近くをカバーすることになる」とプーラン氏は意気込む。自動車産業の集積地である名古屋や浜松を中心に積極的にビジネス展開していくと言う。
ジェトロ対日投資ビジネスサポートセンター(IBSC)は東京以外にも、横浜、名古屋、大阪、神戸、福岡に無料で利用ができるテンポラリーオフィスを所有している。企業は法人設立までの準備期間として原則50営業日利用でき、同社は東京のオフィスを利用した。「東京での拠点設立の際にもオフィスを利用させてもらったが、とても助かった。紹介いただいた行政書士の方にもビザの発行を頼んでいる。地方へ進出する際にも、ぜひまたサービスを利用させていただきたい」と桑田氏は述べた。
iASYS社 CEO兼マネージングディレクター プーラン氏(右)、PVMSys社マネージングディレクター 桑田氏(中央)、PVMSys社 カスタマーサポート 高橋氏(左)
(2017年9月取材)
同社沿革
- 1999年8月
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インド・プネにてiASYS Technology Solutions Pvt. Ltd.を設立
- 2014年10月
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東京都に日本法人PVMSys Infra Solutions株式会社を設立
- 2015年10月
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茨城県のつくば研究支援センターに移転
PVMSys Infra Solutions株式会社
- 設立
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2014年10月
- 事業概要
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自動車業界向けエンジニアリング・ソリューション及び自動車用製品の検証
- 親会社
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iASYS Technology Solutions Pvt. Ltd.
- 住所
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〒305-0047 茨城県つくば市千現2丁目1番6つくば研究支援センター
- URL
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- iASYS Technology Solutions Pvt. Ltd.
- http://www.iasys.co.in/
- PVMSys Infra Solutions株式会社
- http://pvmsys.jp/
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